条件付き送料無料あり!アニメイト特典付き商品も多数取扱中♪
ugetsumonogatari
江戸の怪奇小説『雨月物語』から、四つの怪談をマンガ化。
原作のような、人間から見た幽霊のたたずまいとか不気味さはあまりなく。
霊の恐ろしさではなく、そうなってしまった過程や、霊への同情的視点が強い感じ。
怪談としては弱いけど、文学的な要素のあるマンガとしては一つの幻想的な世界観を作っていて完成度は高いかと。
台詞のリズムと人物の表情がシンクロしていて読みやすく、小野塚作品の独特の魅力が健在でした。
四作品中二つは男女もの、二つは男同士で、濡れ場があるのは「菊花の約」のみです。
「菊花の約」
時は戦国時代、播磨国加古で、行きずりの武士・宗右衛門を看病した儒学者・左門。
祖国へ戻るという宗右衛門と兄弟の契りを交わし、菊の節句に再会することを約束。
約束の日の夜更けに現れた宗右衛門だが様子がおかしく…という話。
宗右衛門と左門の双方の心情描写がしっかりしていて、恋愛物として読めます。
その分、原作と違って宗右衛門に何が起きたかすぐ分かってしまうので、意外性はない。オチは原作ほどの寒々しさはなく、背中越しに抱き合う二人が切ない悲恋物。
「浅芽が宿」
戦国時代の下総国葛飾郡真間郷に暮らす夫婦、勝四郎と宮木。
宮木は、商売のため京にのぼった夫を待ち続けるうち、不思議な夢を見るようになる。
原作とちがって宮木の視点だけで進行します。
勝四郎が宮木との再会を喜んでいる裏で(←原作の筋書き)、
本物の?宮木はこんなことを考えていたかも…という解釈で、より時代に呑み込まれた女性の哀しさが伝わってくる作りになっています。
「青頭巾」
若い禅僧が、美濃から奥州への旅の途中、泊めてもらった先で奇妙なうわさを聞く。
山の上にある寺には鬼がいて、村人をおどしたり墓を荒らしたりしている。
かつては尊敬を集める住職だった。しかし、可愛がっていた童児の死後、その肉を食らい
鬼になったと…。
四つの話の中では、一番救いのある話かもしれません。
禅僧と住職の対話が、マンガだとかなり穏やか(原作はもっと激しい)ですが、それ以外は比較的原作に忠実。
「吉備津の釜」
時は幕末。
結婚後、愛人をつくって家に帰らなくなった正太郎。居所を知らせていないはずの妻・磯良から手紙が届くことを不審に思う。まもなく愛人・袖が謎の病に倒れたり、色々と不可解な出来事に襲われ…という話。
原作と違い、正太郎の妻への気持ちに救いがあり、呪われた運命に翻弄された二人の哀しさが出てます。
実は二人の縁談には凶相が出ていて…という母からの手紙で終わる演出がなかなかブラックで、この本の中では一番ホラーっぽく好きな話でした。
どうしても原作と比べて物足りないのと、有名で個人的に好きな「蛇性の婬」がないのが解せぬという点から中立で。
小野塚さん独自の解釈と繊細な絵柄を堪能するにはオススメです。