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kare wa shisha no koe wo kiku
佐田先生の作品ははじめてです。タイトルでホラーなのかな?と思いましたが、心霊関係のホラー度は低かったです。そっちより攻めの激重感情ド執着っぷりが怖くて…!
こ、これは…ハピエンになる、のか…?と、ハピエン大好きな光の腐女子の身としましてはヒヤヒヤしながら読み進めました。ふたりがこれからも共に時を歩んでいきそうなラストに、それまでの苦悩を文章で追っていたわたしは、しあわせにねぇ!!!と涙しました。
登場人物みんな、生きていて。嫉妬、羨望、恋慕、執着…さまざまな想いを抱えながら、悩み、苦しんでいる様をこれでもかと見せられました。
攻めの執着っぷりはすさまじかった。こわいよぉこわいよぉと何度思ったことか…無理やりはやめてあげて。最終的にはわんこになってたので和みました。
痛々しい!つらい!と何度も思ったんですが、このふたり(3人かな)の結末を見届けねば…!と画面をスワイプする指がとまりませんでした。凄い作品を読んでしまった感でいっぱいです。
「あの日、校舎の階段で」が大好きなのですが今回もま~~攻めのド執着を受けが嫌う、嫌うわ…最高ですね!?
攻めの一途さ、受けがいないと死んでしまう。
そんな危うい執着を抱えて苦しくなる攻めが最高でした。
一方の受けも受けで、攻めの持っている才能に藻掻き、苦しみます。
たまに理由なき執着攻めとかいるじゃないですか。
それもそれで面白いのですが、佐田三季先生は受けが攻めを嫌う理由がしっかりしていて、湧き上がる感情がリアルなんです。
特殊な能力なのに読んでいて、なぜか違和感がない。
それはやはり彼らの感情が確立しているうえに、私たち読者に上手く伝わっているからだと思います。
分かりやすく、かつ丁寧に描かれている。
それは通常の小説よりも多めのページ数にも表れているんだと思います。
本当にいい執着攻めを描かれる先生です。
また、「あの日、校舎の階段で」での攻めが登場するのも嬉しかったです。
ああ、記憶を消してもう一度読みたいです。
どちらかというとオカルトが苦手なので、タイトルの「死者」という言葉から長年敬遠していましたが、読んでみると深い人間ドラマが描かれていて、BL以外の部分が素晴らしかったです。佐田作品のオハコの「偏執的な執着BL」に今回も引き気味でしたが、最後の最後に二人にも萌えられたので神評価にしました。
才能がある者に対する崇拝、羨望、葛藤、、。そういった複雑な人間感情が描かれている物語は描き古されていますが、この小説は素直に共感を呼び、心揺すぶられる内容でした…。
勉強、スポーツ等大抵の分野は、ある程度のレベルまでは努力、根性で何とかなりそうな部分もありそうですが、芸術は「センス」の有無で門が閉ざされてしまう厳しい世界だなーと実感しました。デザイン出版業界のお仕事ものとしてもリアリティーがあり楽しめました。
才能溢れて挫折を知らない「善」(真っ直ぐ)な人達に囲まれて、彼らに馴染めず屈折感から「悪人」ぶる主人公の斉木。そのスタンスは首尾一貫していて、人間臭い面は嫌いでなかったです。仕事に対するこだわりや執着は共感できるものでした。
双子の姉の朋のエピソードがとても良かったです。無垢で手がかかる分みんなから愛される、、。あるなーと思いました。学校の中だけが世間で、まだ遊びたい盛りの高校生くらいの斉木には、朋の事を責めるのは酷な話だと思いました。両親は本当の事を知っても、その時は罵倒したとしても最終的には受けいれたのではないかな。
それでも罪悪感は人は苛み、蝕んでいく…。心のわだかまりが解けるまでかなりの時間がかかりましたね…。何度も涙しました。
かなりのボリュームの長編小説は最後まで読むのに根気が入ります。派手な世界観や設定も無い現代ものですが、小説に求心力があったので、一気に読み進めました。元は自身のブログで部分的に公開された書き下ろし小説がショコラで完全版として出版されたようです。BL界にはこういうケースが多いですが、商業誌向けと違って多岐な内容が楽しめるのが嬉しいです。
佐田先生も心揺すぶられる小説を描ける類希な才能の持ち主。今なら発表の手段はいくらでもあるのにペンを置かれたのは、家庭の都合でしょうか。非常に残念です。いつか戻ってきて欲しいです。
分厚くて、暗くて、怖くて、でもグングン読み進められる。
重量感が凄かったけどラストはハッピーエンドの抜け感もあります。
主人公は編集プロダクション社員の斎木(ゲイ)。
彼のバックグラウンドがこの物語の大きな骨子。
彼は少し超常能力がある。死んだものの姿が見えるのだ…(ここでホラーか?と思うかもしれませんが、そうではありません)
斎木の父親は画家。絵画教室を開いている。
斎木の双子の姉・朋は知的障害者、そして斎木と朋の共通の友人・神成。
この2人は大変な絵の才能がある。だから斎木はいつもこの2人と比べられ、画家の父親から憐れまれて、朋と神成を激しく憎んでいる。
この斎木の世界への憎しみがキツい。
朋と一心同体だった幼少期、そして朋が「うすのろ」だと知って他者への恥ずかしさを覚えてしまった少年期。
無条件に愛される朋に嫉妬し、死ねばいいと願い続ける斎木の昏い心。
そして自分が朋を置いて男と会っている時に事故死してしまった朋と、そのために抱え込んだ罪悪感…
そんな罪の感情と、斎木が務めるブラックな編集プロダクション、朋の死を盾に償いを要求する神成。それらに押し流され押しつぶされる斎木の描写が容赦ない。
斎木は決して被害者一択ではなく、人間の嫌な面をこれでもかと出してくる。
一方、高校時代の斎木に酷く嫌われた神成は、今絶対的勝者として斎木を支配し尽くす存在になる。斎木は恥も外聞もなく怯えるが…
物語は斎木視点なので、劣等感、憧れ、嫉妬、恥、傲慢…それら全てをぶつける斎木に辟易としつつ斎木のねじれてしまった心根に同情する余地もある。
一方神成も、絵は止むに止まれぬ衝動で描いているだけ、周囲に賞賛されても本当に欲しいものは何一つ手に入らない…という慟哭も理解できるのです。
斎木は才能、学歴、賞賛、金、名誉、それらに激しく嫉妬しているけれど、神成の内面を見ようともしてこなかった。
こんな2人の血を流すような時を経てからの結び付くまで。
かなりの物語の長さですが、ギリギリと心を締め付けられるように読みました。
「小説」の持つガツンとくるパワー。
ぜひ色々な人に読んでもらいたい作品です。
むっ…難しかったです…。
これは主人公の斉木と、斉木に執着する幼馴染の神成と、そして今は亡き斉木の姉・朋の三人の物語だと思います。まさに運命が絡み合っているかのように二転三転する斉木と神成の関係性に惹き込まれつつ読みましたが、もっとシンプルに生きればいいのに…と思ったりもしました。素直になれない二人は、わざと過去を持ち出して、相手というよりは自分自身を傷つけているようで辛かったです。壊れそうになっても乗り越えて向き合った二人にホッとしました。
朋は優しいお姉ちゃんなので、きっと二人の間で右往左往していたでしょうね。ちゃんと仲直りするために斉木と神成を再会させてくれたのかなーと思いました。
長く(本が分厚い)、痛い展開の作品ですが、ちゃんとカタルシスが用意されているので読後感は清々しいものでした。
手に取った分厚さに思わず怯み積ん読してましたが、勢いで佐田さん作品3冊目。
今回も凄まじい執着攻でした……というか、この執着攻はもう佐田さんデフォなんでしょうか。
読んだ作品が全て同じ傾向だったので、正直食傷気味というか、またこのパターン??
という気持ちではありましたが、悔しいかな読み始めるとあっという間に惹き込まれてしまいます。
内容はもうとにかく重い。
知的障碍でありながら類い希なる画才を持つ双子の姉を持ち、隣家の幼なじみもまた天才的な画才を持つ。
そんな境遇の受は健康体だけれども画才はなく、プロの画家であり絵画教室を開く父は才能のある姉と幼なじみである攻ばかりを溺愛。
そして母もまた姉にばかり愛情を向け、寂しい気持ちを抱えながら受は姉と攻に対して激しく嫉妬する。
姉を疎ましく思うあまり、とんでもない過ちを犯してしまった受は、自分を取り巻く環境の全てに苦悩し逃げるように東京で生活をしてたんですが、なんかもうこの受の環境が働けど働けど~みたいな状態でBLではない。
再会した攻からは過去のことや学歴詐称を引き合いに脅迫され関係を持つんですが、今回もいつもと同じ展開です。
ステレオタイプの攻で、同じように受が毛嫌いし拒絶しまくりでも最後にはほだされる、という流れなんですけど、評価を高くしたのはBLを抜きにした部分に凄く共感したから。
就職難や過酷労働、才能の限界に、嫉妬や羨望といったどす黒い感情に振り回される人間。障碍を持った家族をとりまく環境。
決してきれい事でなく、目を背けたい部分をガンガンついてくるお話に胸が痛みます。
そしてラストが個人的にとても好きでした。
過去の姉と攻の日常のワンシーンを、受が攻と一緒に再現するかのように演じるんですが、そこがとても美しく映画の中のようで、透明な光がキラキラと降り注ぐようなあたたかいものを感じました。
霊としてそばにいた姉が消えていくシーンは、涙なしには読めません。
こんなに分厚い本でこのタイトルなので、読むのに覚悟がいるかと思いきや、あっという間に読めてしまいます。
佐田先生の作品にでてくる人間はヘンにいい子いい子してなくて、愛、嫉妬、憎しみ、執着など生々しい感情を持った等身大のキャラが多い。そしてそれをリアルに感じ取れる佐田先生の文章。
今回の主人公•斎木も、嫉妬、羨望、憎しみ、自己保身、後悔、そして愛情、さまざまな感情にとらわれています。
幼いころから、隣人の神成と双子の姉•朋は絵の才能を持ち、両親の期待と愛情を受けてきた。
そこから疎外された斎木は、自分に好意をもつ神成を蔑み犬のように扱い、知恵遅れの朋を嫌悪し、絵を描くことから遠ざかることで自分のプライドを保っていました。
斎木が幼い頃から持つ特異な能力。死者が見えるという目。
昔、自分が側にいなかったせいで命を落とすことになった朋の姿が今も左目にうつり、過去から逃れられずにいます。
そしてもうひとつの過去の存在•神成。
有名なイラストレーターとなった神成は、孤独だった彼の唯一の理解者である朋を失った憎しみや怒りを斎木にぶつけてきます。
斎木が学歴を詐称して就職した事実をネタに身体を蹂躙する日々。そこから滲み出る斎木への執着。
斎木を愛しているのに、朋を失った喪失感を憎しみに変えずにはいられなかった神成。
自分には無い絵の才能を妬み、絵描きである親の期待を一身にうけた神成を憎んだけど、彼の絵と彼自身にどうしても惹かれてしまう斎木。
お互いを憎み、蔑みあいながらも、行き着く先にある愛情に、普通の恋愛とは違う、重さや濃さを感じます。
終盤まではずっと重い雰囲気でした。しかし斎木が、文字通り憑き物がおちた後は、思いのほか斎木が男前でしっかりしてて、逆に前半恐ろしいほど斎木を蹂躙してた神成がワンコになっちゃったので、ダークさは軽減してます。
斎木のドロドロとした感情や、世間体を気にするプライドの高さ、姉への後悔と懺悔、いろいろあったけど、最終的には親や世間体よりも好きな男と一緒にいたい、という自分勝手だけど、人間くさいとこが好きです。
書き下ろしの最後の斎木のセリフ、
「おまえがとても嫌いで、とても好きだ」が
すごく印象的でした。
にしても、梨とりこ先生の挿絵で、ワンコ攻でしかも「あーちゃん」呼びって、宮緒葵先生のあの犬を思い出すのであっちもまた読まないと…
こんなに面白い作品を久々に読みました。
読後に、「ようやく読み切った…!でももっと読みたい!!」とそわそわするこの感じ。『箱の中』の時以来でしょうか。
幽霊が見える、という受けの設定を事前に聞いた時は、ちょっとファンタジー色が強いのかと思いましたが、そんなことは一切ありませんでした。
むしろ、こんなに現実味のある、リアルな人間社会を描いた作品は少ないのではないでしょうか。
人間は、例え仲のいい家族間であっても、時には嫉妬や羨望や憎悪を抱くもの。他人ならば尚更。
そういった人間の負の感情を、隠すことなく全て暴き、リアルな心境が描かれています。故に、とても共感できました。
愛情が憎しみに変わる瞬間の描写には、思わず背筋がぞっとしました。
そうそう、愛と憎しみって表裏一体なのよね…と。
執着攻め、特に、受けに執着しすぎてちょっとイッちゃってる感じの攻めが好きな方には、きっと面白いと思います。
受けも、決して弱くありません。必死で攻めに抗い、強気の態度を貫きながら、攻めの執着に怯えている姿がなんとも言えず。
なにより、心の弱さから周りに強く当ってしまう、受けの人間臭さが良かったです。こういう部分、絶対誰にでもあるんですよね。
BLというカテゴリだけに収めておくには、なんとも勿体ないと感じた作品でした。
家族とは何か、愛とは何か、人間とはどれだけ醜く愛しい存在かを考えさせられる作品です。
痛々しく、ダークではありましたが、そこが良い。
読み応えのある作品をお探しの方は、是非ご覧ください。
佐田さんは個人的に『あの日、校舎の階段で』が
ハピエンと言っていいのに後味がツラい作品でした…;
今作は文庫本2冊はあるだろうと思われる厚さで
霊もの!?という意外さも手伝って手に取ってしまったにも関わらず
読む勇気がなかなか持てなかったのです…。
しばらく積ませていただきました。すみません。
受けを、精神的にも肉体的にも追い詰めて愛する攻め、というのが
佐田さんのツボなんだろうなぁ…とやはり読み続けるのが苦痛でした。
私は、相手を愛しているならそんな事は決して欲しくないという甘ちゃんなのです。
ですが、今回は受けの斎木が攻めの神成にしてきた過去の事、
その他諸々の褒められない言動があってのことなので
自業自得かもしれないという気持ちもありました。
しかし、斎木だって神成の絵の才能が羨ましく妬ましく、
実父さえ自分より神成を愛していたと思ってしまう事に
じりじり胸が痛みました。
母は自分の考えを押し付けるようなタイプでしたし。
実家で逃げ場がないのはつらかっただろうなと。
双子の姉の朋が知恵遅れの為疎んでいた斎木は
姉が亡くなってもなお左目の端に彼女をいつも見てしまい
姉の死が自分のせいだったんじゃないかと責めたてられている気がするのです。
朋を人として、絵仲間として大事に想っていた
幼馴染の神成への罪悪感と共に。
斎木の職場の過酷さと上司の酷い態度によって、
ますます神成は絵の仕事で自由に暮らしているのに…という
妬ましさが消えないのです。
斎木の学歴詐称を脅しのネタに使い、無理矢理関係を持つ神成、
最初は愛を感じませんでしたが、次第に一途さが伝わってくるようでした。
最低な職場の中でも理解のある根岸、漫画家になった友人の西園寺、
神成のたった一人の友人と言える俳優の添田、
斎木の叔母で、面倒を見てくれた志奈子…。
支えてくれる人々がいて、素直に良かったと思えました。
こういう存在があるからこそ、人は生きていけるんだろうな。
逃げたい斎木、どこまでも追いつき縋りたい神成。
憎悪と愛の境がわからなくなるほどの情念。
最後は素直に好きだと言わない斎木でしたが
嘘でもいいから、の神成の言質をとって
「嘘をつく」と前ふりしてからの告白…。
じーんとしてしまいました。
一読目は気持ちの余裕もなく「どうなるの!?」と読み進めてしまいましたが
きっと二読目はもう少し落ち着いて味わえるんじゃないかと思いました。
重くてツラくてしんどかったですが、読めて良かったです!
そしてどうにか読み終えられた自分をちょっと褒めたい気分ですw
まずお話の前半をざっくりとご紹介します。
斉木明史には、知的障害を持つ双子の姉、朋がいた。
双子でありながら、健康、正常に生まれついた明史は彼女に負い目を持ち続けているが、同時に、プロの画家である父、感情的な母からの愛情を一身に受けている朋に複雑な思いを抱いていた。
彼女の持つ優れた画才も、明史には羨望の的であった。
隣家に住む明史の幼馴染である神成静彦も、また天才的な画才の持ち主であった。
神成と朋が築き上げた濃密な絆、神成の才能に明史は嫉妬し続けていた。
高校生になった神成は明史にひたすらな思慕を寄せるようになるが、明史は冷酷にそれを拒絶する。
明史が目を離した隙に朋がひき逃げにあい死亡するという事故が起こる。それ以来、元々死者をみることのできた斉木の左目には朋の姿が映るようになる。
激しく事故の責任を斉木になじる神成と 朋を死なせた罪の意識から逃げるように斉木は故郷を後にした。
それから10年がたち、斉木は就職難のため学歴を詐称して入社した編集プロダクションで働いていた。朋の姿は彼の目から消えず、斎木は罪の意識から逃れることができずにいた。
そこに、イラストレーターとして成功した神成が現れる。
神成は学歴詐称を暴露すると斎木を脅し彼を激しく陵辱する。神成は斎木に異常な執着を示し斎木の生活の全てを支配しはじめるが、仕事を失いたくない斉木は彼に従うしか道はなかった。
登場人物はみな複雑な人格を持ち、相対する人間によって様々な面を多角的に見せます。
残酷極まりない様に思える神成は、長年の友人にとっては誰よりも優しく信頼できる人物です。
斎木も一口に誰からもいい人といわれるような性格ではありませんが、彼も、窮地に無償で手を差し伸べてくれる複数の友人を持っているような人です。
斎木も神成も、自分が望んでやまないものをだけが手に入らないという苦悩にあえいでいます。
神成は経済的に満たされあふれるほどの画才を持ちながら、愛情に飢えています。斉木も暖かい家族には恵まれず、類まれな美貌と編集デザイナーとしての才能を持ちながらも、自身が渇望する絵の才能を持たないため自己を肯定できません。
斉木の神成から与えられる苦痛、逃げ場のない葛藤は読んでいて息苦しさを感じるほどでした。神成によって生活を侵食され体を蝕まれながらも、人間関係も就業状態も最悪の会社で真剣に仕事に取り組む斎木の姿には心打たれるものがあります
神成の才能を憎みながらも、それを上回る彼への愛情に気づいた斉木により、物語は一応の結末をむかえますが、単純なハッピーエンドとは言いがたいかなり緊張感をはらんだもののように感じられました。
無償の愛は存在するか、愛とは究極的には見返りを求める利己的なものなのかという著者の問いかけは恐ろしいものです。
ひとつ気になったのは、あくまでも朋が無垢で美しい存在として描かれている点です。成熟した女性の心を持つことのないまま亡くなった朋ですが、幼いながらも、彼女なりの思いもあったはずと思うのは穿った見方でしょうか。
ともあれ、450ページに亘る長い話を一気に読ませる作者の力量は並々ならぬものです。
甘く楽しい話ではありませんが、長く心に残る小説となりそうです。