ボーダー

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ボーダー
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神14
  • 萌×233
  • 萌6
  • 中立3
  • しゅみじゃない3

--

レビュー数
9
得点
223
評価数
59
平均
3.9 / 5
神率
23.7%
著者
佐田三季 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
価格
¥660(税抜)  
ISBN
9784778116903

あらすじ

高校教師の渡部が初めてゲイバーを訪れたのは、数年前に姿を消した友人・環が働いていると知ったからだ。だが環は渡部を突き放し、ゲイの自分と渡部の間に線を引こうとする。それでも渡部は店に通い、男の元教え子に告白されたことを相談するが――。(「ボーダー」)
ゲイ嫌いの佐々木は、友人の渡部と環の関係が許せない。けれど皮肉にも自身は従弟の国見に長い間恋心を抱かれ、それを口に出させぬよう苦心していた。年末の寒空に実家を追い出された佐々木は、仕方なく国見宅に転がり込むが……。(「揺れる境界線の上」)

表題作ボーダー

渡部康孝,高校教師,30歳
環 祐介,ゲイバーのバーテンダー,30歳

同時収録作品揺れる境界線の上

国見大介,従弟 左官,29歳
佐々木 充,ゲイ嫌いのバツイチ会社員,30歳

その他の収録作品

  • あとがき

レビュー投稿数9

自分の気持ちの境界線

今までの佐田作品に比べると痛さダークさが随分穏やかです。
ものすごいトラウマとか、近しい人物が若くして死ぬとか、病的にストーキングされるとか、そういうことはありませんので、今までダークな作風かと佐田作品を敬遠していた方にも入りやすいと思われます。
しかし、やはりしっかり切なくて今回も泣かされてしまいました。

「ボーダー」
高校時代の同級生で友人の渡部と環。卒業以来、環が距離をおいているようで疎遠になっていて、環の居所を探していた渡部が、環があるゲイバーで働いてることを知り、会いに行くところからお話は始まります。

環はゲイバーで働いていて、高校時代からすでに渡部に思いを寄せていてゲイですがビッチなどとはほど遠いです。
地雷になりそうかなぁと思う要素は特になかったように思います。
二人の間のやりとりだけじゃなくて、渡部の職場である高校でのエピソード、家族の話がストーリーに深みを持たせています。
気持ちのすれ違い、ゲイであることへの葛藤、体を重ねることで環に惹かれていることをはっきり自覚していく様子…とても切なくて引き込まれました。
『自分の境界線は自分で決める』すごく印象的なセリフでした。

「揺れる境界線の上」
表題作「ボーダー」のカップルの共通の友人で、ゲイ嫌いな佐々木が受になる話。
お相手は佐々木の従弟の国見。国見は昔から佐々木に恋心を抱いていて佐々木も薄々気づきながらも気づかないようにしていたけれど、ある年末諸事情から佐々木が国見の家に転がりこむことで、今まで保っていた関係が崩れます。
人を選ぶかもしれない要素を列挙しておくと…
・佐々木はバツイチで風俗通いが趣味
・最初の絡みは一歩間違えたら強姦…テープでグルグルに拘束
・剃毛プレイ・放尿?シーンがある
・AVを見るシーン、デリヘル譲とラブホでプレイしたという描写がある
・回想で、学生時代に国見が当時の佐々木の彼女を嫌味で寝取った上に佐々木が事後を目撃
こんな感じでしょうか…
これでも既刊作品に比べるとかなりマイルドですw雰囲気的にもダークさはあまりないかと思います。

家庭の事情や周りの目、気づかないフリをしてきた自分の気持ち
佐田作品はBLドリームじゃなくてリアルな部分もまざまざと見せつけられる感じで、それでストーリーに深みが出ていてやっぱり好きです。
既刊作品で挫折した方にも、一度挑戦してもらいたい…切ない系が好きな方にはぜひおすすめしたい作品です。

14

粗削りだから、生々しさが引き立つ。

◆あらすじ◆

高校教師の渡部(30歳)が、男子生徒に告白され、
「考えたことがないなら、一度、考えてくれませんか。男もだいじょうぶか。」
と言われて、男同士のセックスを試してみることに。
トライアルの相手は、高校時代の友人でゲイの環(30歳)。しかし、意外なことに環とのセックスは快くて――という、「ボーダー」。
スピンオフ的位置付けの同時収録作「揺れる境界線の上」は、渡部・環の共通の友人でゲイフォビアの佐々木(30歳)が主人公。
佐々木を子供の頃から想い続けてきた従兄弟の国見(29歳)と、ひょんなことから一線を超えてしまいます。
国見から見た、佐々木が渡部と環の関係を必要以上に嫌悪する理由とは――ゲイフォビアとゲイもまた表裏一体という、意外な真理を突いた作品です。

◆レビュー◆

ノンケがゲイに、そしてそれを非難していたゲイフォビアまでが、ミイラ取りがミイラ式にゲイの側へと転んでしまう――一体、ゲイとノンケの境界線って何なのか、それは思っているほど堅固な壁ではないのかも?
「ボーダー」=境界線というタイトル通り、そんなことを考えさせられる作品です。
そもそもゲイフォビアのはずの佐々木の趣味というのが風俗通いで、好みのプレイはエネマグラを使っての前立腺マッサージって・・・あれ?なんだかホモセとの共通項が。このプレイ、普通に女性とやることじゃないですよね。
女に関心がなく、男の教え子に告白されちゃう渡部にしても、もともとそちらの芽はあったような。
自称ノンケの男性の中には、向こう側の世界へと飛び越えられる潜在的な可能性を秘めている人も意外に多いのかも。

ただ、彼らが境界線を越えることを阻むのが、「常識」と周囲の偏見。
親が望む形での幸せな姿を見せてやれない苦しみ、ノンケだった相手をそんな苦しみに落としてしまう、ゲイの側の罪悪感・・・そんな、同性愛のマイナス面もしっかり描写されています。

ノンケがゲイに、という展開は、BLでは当然すぎて今さら感さえありますが、この作品が一般的なBLと一線を画すのは、同性愛の美化・讃美を一切志向していないこと。
その上で、ゲイとノンケという二つの生き方の間で揺れる男の葛藤を、より生々しく、赤裸々に炙り出そうとしている点です。
どこまでリアルと言えるのかはともかくとして、少なくともBLらしからぬ顔を持ったBL、と言えるんじゃないでしょうか。

佐田さんの文体って、いわゆる流れるような美文とは対極で、すごく粗削りな印象なんですよね。それだけに、作者の想いをぎゅっと絞り出したような、熱いものを感じます。
読み始めはとっつきにくいんだけれど、この文体がまたこの作品のテーマとすごく相性がいいんだろうな。

そもそも万人受けなんて全く眼中にないというか、むしろ目指す方向性はBLのボーダー?という気さえしてしまう独自路線・・・大ヒットはしないかもしれませんが、好きな人にはたまらない、異彩を放つ作品だと思います。
骨のあるBLが読みたい気分の時にお勧め。

13

本当に欲しいものは、何?

佐田さん一年半ぶりの新作、待ってました!
今回私的には地雷がないので、じっくり時間をかけて完読しました。

「ボーダー」と「揺れる境界線の上」二つのカプの話ですが、どっちかっていうと、「揺れる境界線の上」のほうが好きです。
あらすじ読むと佐々木は嫌なやつだなと思い、性悪受けが好きな自分は「揺れる境界線の上」を読むのが結構楽しみにしていました。そして期待通り面白かったです。
前職が倒産してエリート人生から転落し、元嫁と両親から邪険にされ、辛くてやってられなくて、そのやるせない思いを晴らすように佐々木が風俗通いという趣味に走ってしまいました。
佐々木は従弟の国見が自分に対する想いを知りつつ、国見を牽制して見て見ぬ振りをしてきました。しかしある日風俗ネタで国見を牽制しようとしたが、牽制(むしろ挑発?)が導火線になってしまい、国見の抑えきれぬ思いを誘爆しました。国見のヤンデレぶりは見どころです(笑)。
佐々木のゲイ嫌いの原因が分かった瞬間、あっこいつもただの素直になれない哀れなやつだなぁって苦笑しました。でも自分の心に正直に生きて行くことがとても難しいですね。世間体とか、人の目とか。欲しいものは手に入れないからと、早々に潔く諦めたほうが楽ですが、その代わり失うことも多いです。
佐々木の心の中にずっと大きな穴があいて、他人を、多分自分も愛せなかったです。でも国見なら、きっと、その大きな穴を塞いでくれると思います。

「ボーダー」は……嫌いじゃないですが、環のあなたのために身を引くという思考にイラっときました。せっかく好きな人が振り向いてくれたのに、一番欲しいものを手に入れたのに、なぜこうもあっさり渡部を諦めるのか理解できません。しかも二度も勝手に消えるとか。悲劇ヒロインじゃないですからもうちょっと頑張って欲しいですね。
でも渡部は好きです。多分佐田さんの作品の中で一番性格がよくてかっこいい攻めだと思います!是非是非読んでみて比較してみてください!

7

タイトルが全てを表現

佐田さん、初読みです。
アワードノミネート作品でしてので、ちょうど良いタイミングでした。
表題作の方は雑誌掲載のため、書き下ろしよりも短いです。
表題作と書き下ろしではカップルは別物となっております。

**********************
攻めの渡部は、ガタイの良いノンケで30歳。
人当たりが良い、社会科の高校教師。

受けは涼しげな顔立ちの持ち主で、区役所を退職し現在はゲイバーで働く環。
渡部とは元同級生。
**********************

中学・高校と友人として過ごしたふたりの、八年ぶりの再会。
そこからふたりの止まっていた時間が動き出します。
それは渡部が友人から環の職場であるバーを聞き、訪ねたことがきっかけでした。

環は初登場時の印象と違って、意外に口が悪くスパッとした男性でした。
そしてそんな男前な環が渡部に対して、自分の性癖を恥じているということが感じ取れるシーンがかなり序盤にあるのですが、そこが堪らなく切ないです。
そして渡部は犬です、ワンコです、大型犬です。
これもまた意外でした。
走り寄り、顔を舐め回す。
でもこれって、心がこもらない本能だけであったら向けられた方は虚しいですよね。
視点は終始渡部なのですが、渡部の一挙手一投足に浮き沈み傷つく環の様子がありありと伝わってきます。
『ゲイ』という自分の性癖を否定はしないし出来ないけれど、ノンケである渡部は結婚して家庭を持つといういわゆる世間一般の『普通』が出来る男で、それを自分が邪魔してはいけないと思っているし、環自身が渡部をそこまで完全には引きずり落とせないと決めている感じなんですよね。
ものすごく環にとっては、渡部がキラキラした犯せない存在なのだなあと。
ノンケの世間と身近な人間への葛藤と、ゲイの悲しいまでの遠慮がうまく組み合わさった作品でした。
つらいBLで確かノミネートされていましたが、痛くはないなあと思いますよ。
理解されることをつい望んでしまう欲と、理解されないことでの失望とが書かれていますが、でもラストのおさめ方はなんとも言えない余韻があって良かったです。


書き下ろしの『揺れる境界線の上』はなるほどのタイトルですね。
ノンケとゲイの境界線。
受けは本編のふたりの友人・佐々木、30歳。
そして攻めは、佐々木の従兄弟の国見で29歳です。

や、しかし読んでビックリ、あの佐々木ですか!?という感じです。
しかも、まさかの受け?やー、度肝を抜きました。
佐々木はノンケで結婚していたこともありますし、風俗大好き。
本編ふたりをノンケにしようとデリカシーなく風俗へ誘い、極めつけにゲイを馬鹿にしていました。
まあ、実際は佐々木みたいな思考というか価値観の人間はその辺にゴロゴロいると思いますよ。
そういう人間の方が多いはず。
そういう価値観を『当たり前』だと決めつけている人間をメインに書くって、佐田さんもOK出した編集さんもすごい。
もちろんホモフォビアの人が出てくるBLもありますけど、文体のせいかすごくリアルな人間として書かれていて生々しいのです。
こういうのは作家さんご自身のスタイルでしょうね。

そんなわけで佐々木がねえ…と思っていたら、最初は無理やりでした(苦笑
しかし風俗で鍛えられているせいか中が気持ち良すぎちゃうし、風俗防止に剃毛させられちゃうし。
違う意味で本編よりも濃い展開となっておりました。
家庭内のトラブルで子供の頃に祖父の元へ引き取らた国見にとって、自分の世界を180度変えたのが佐々木だったわけですから、執着も半端ないんですよ。
これは本編カップルも負けますね。
佐々木も佐々木で後半は見ないふりをしてきた自分の心に対峙しなければならなくなり、気の毒といえば気の毒でしたね(苦笑
それこそこういうのは環が渡部へ願っていた、気づかなければ『普通』でいられるというやつです。
ラストには本編カップルもゴタゴタと絡んでくるわけですが、その時の渡部がね。
環といるようになって強い人になったなあと、なんだかお母さんのような気持ちになりました(苦笑
やっぱり個人的には、本編カップルの方が葛藤まみれの卑下まみれで可愛いかな。
人間臭いです。

6

ふたつの線を踏み越える

【ボーダー】
ノンケの攻めとゲイのバーテンダーの受けの話。
攻めの渡部は受けの環に近づくが、環はゲイである自分とノーマルである渡部を線引きして突き放す。好きだけど距離を置いて、好きだから遠ざかる。環の中にノンケに恋をしてしまったゲイの苦悩が伺えて読んでいてつらくなりました。

【揺れる境界線の上】
ずっと受けのことが好きな攻めと、ゲイフォビアのバツイチ受けの話。ボーダーではさんざんゲイを嫌っていてBLの登場人物としては嫌われ要素満載な役回りだった佐々木でしたが、今回は主役のしかも受けとして登場します。
男は女を好きになることが当たり前。同性同士の恋愛なんて気持ち悪いだけ。そんな自分の価値観を環や渡部に無理矢理押し付けていた佐々木ですが、まさかそんな彼が線を飛び越えてしまうとは。
ゲイという人種をずっと毛嫌いしていた佐々木が国見の気持ちと向き合ったとき、自分が今まで必死に線引きしてきた境界は意外にもあっさりとなくなってしまいました。けれどもそこに行きつくまでの過程が長く、リアルに描かれていてとても良かったです。
最近何の疑問や葛藤も抱かずにすんなり男と男がくっついてしまうBLが増えてきているなか、「ゲイフォビア」のキャラクターを出して世間体や常識、価値観の違いをぶつけてきたのはとても新鮮でした。

6

「線」があるわけではなくて…グラデーション世界

表題作+スピンオフ作の2編収録。

「ボーダー」
ノンケの高校教師・渡部が元同級生の環に恋をしてしまうお話。
…とひとくくりにしてしまうには重すぎる物語です。
環はゲイで、これまでの交友関係を切って音信不通になっている。そこにたまたま会ってしまった級友がいて、高校時代に仲の良かった渡部がしつこく旧友を温めようとしている。
ゲイの環は頑なに渡部を拒絶するんだけど、ゲイのお作法的な「一線」がわからない渡部がそこを越えてきてしまう。
環は元々渡部が好きで。
なら尚更「情」を持ち込まないセフレ関係を提案し。
すると渡部は本気でのめり込んでくるわけ。
環は自ら身を引くんだけど、とにかく渡部は引かない。
一貫して攻めの渡部視点で描かれ、環の行動は渡部にとっては「嫌われて逃げられている」という描写になっています。
だからこそ、ノンケとしての平穏な世界を捨てて環を選ぶ渡部の姿が際立ちます。

「揺れる境界線の上」
「ボーダー」にて、ゲイの環を「正常に戻す」というおせっかいを続けるもう1人の級友・佐々木が主人公になっています。
佐々木は勤めていた会社が倒産し、離婚もして実家に転がり込んでいた。
佐々木には国見という従弟がいて、どうやら国見が自分に度を越した好意を抱いていることを感知している。
…という設定。
佐々木はゲイフォビア。それも攻撃的な…
だから自分に好意を抱いている国見に対して、わざと風俗通いを強調したり、わざと目の前でAVを見たり、男同士でくっついてしまった親友の渡部をけなしたり。
正月。妹に実家から追い出されて国見の家に泊めてもらう佐々木は、いつも通り国見に世話になりながら国見の告白を「言わせない」態度。
だが今年は今までのようにはいかなかった…
体格に勝る国見は、嫌がる佐々木を押さえつけて三日三晩の強引な性交を。
自分だけの家もなく、拠り所の会社も妻を失い、実家で肩身は狭く。
ホモは嫌いだったのに。ホモなんて、ホモなんて。
それでも優しく温かい国見の腕の中にいつしか救いを求める。どうしても求めてしまう自分。
それは恋なのか?それは愛なのか?
そのどれでもなくてもそれでいいと腕に抱いてくれる国見に寄りかかっていく佐々木の姿。
佐々木があれほど嫌がっていた「ホモ」に墜ちる。そこには何か「線(ボーダー)」はあるのか?
グラデーション、今の言葉で言うとスペクトラムを描いて圧巻な一編です。

2

王道幼馴染みラブのはずなのにやはりストーカー

佐田三季さんの小説、やはり読み応えがあって面白いです。2カップル出てくる二本立ての小説ですが、2つの話はリンクしており、アラサーの主人公達4人は幼馴染みのような関係です。これはストーカーものではないけど、2作目の従兄弟同士の話は攻めの執着が相当強く、レイプして受けの体を奪ってるのでかなりヤバい人です。

表題作「ボーダー」は元高校同級生同士のノンケ×ゲイの恋。高校時代に片想いしていたのは受けの環の方だったけど再会して体の関係を持ってからは攻めの渡部の方が執着が強くなってしまい…やはりこっちもストーカー気味の人でした。

「ボーダー」で受けと攻めに差別的な態度を取り、かなり嫌な奴だった佐々木も環と渡部とは高校の時の同級生。一つ下の従兄弟の国見に子供の頃から執着されている事に気づいていて、牽制しながらも思わせぶりな態度を取る…という話が「揺れる境界線の上」。こちらの話は攻め受け2人共、同情すべき境遇でかなり拗らせているし、闇が深い気がする。まあ血が繋がってるしお似合いなんじゃない?と軽く言ってみる。

1話目の攻めと2話目の受けは、自分が男性同性愛者の気があるのかどうかボーダーギリギリの気がしていて、最初は世間体を気にして、悪気なくゲイへの偏見の塊のような言動や行動を繰り返します。でも間違いなくあの2人はゲイよりのバイなので最終的にはボーダーを完全に超えるのだろうなと思いました。

気の毒なのは当事者達の3人の両親が(2話めの攻めには両親がいない)、全て多様性を認めるような人格ではなく我が子の幸せより世間体を優先する人達だった事。リアリティがあるけど親との修羅場が痛すぎて辛かった。特に感情的になりすぎる母親とか…この話で母親は悪にしか描かれていません。1人くらい温かみのある親がいてもいいと思ったけど佐田さんの作品はそんなに甘くありません。でもまた胃のキリキリするような痛くて怖くて、これフィクションでよかったー!と思える中毒性のあるお話、読んでみたいです。

最後の最後に明かされる佐々木の秘密にはあっと脅かされました。1話目での態度の悪さにも少し納得というか同情しました。

1

中編2つ

文章がわりとしっかりしていてなかなかよかったです。

まじめな無骨系の高校教師、渡部と、乙女な環のカップル。そしてキーマンとなる友人の佐々木。

佐々木から、環がホモになった、と聞いた渡部は、高校を卒業後久しく会っていなかった環をゲイバーに尋ねる。
拒絶する環だが、渡部はだんだん惹かれてしまい、自宅におしかけたりするように。

ノンケの渡部は自覚無しだが、お互いに”お試し”などと冗談めかして体を重ねる。でも、本気になってきて耐えられなくなった環は渡部を突き放す。

逡巡する渡部が、自分の恋を自覚し意思をもって環を追いかけるまでの物語でした。そうとなれば初恋の人だった渡部を前にぐずぐずになってしまう環であった。
(まるこ風)

もう1編、ホモをかたくなに否定していた佐々木の話。

兄弟同然にして育った国見との関係が描かれます。佐々木は、がたいがよいがどこか飄々として無口な国見が苦手。それは自分への行為を感じるから。
これまで何度も冗談にしてかわしてきたが、年末年始を二人で過ごすことになって、避けがたく対面する二人。

だんだんと国見の執着があらわれ、空恐ろしくさえなってくるのが秀逸。それにまきこまれてゆく佐々木。

佐々木が無自覚に渡部を好きだった設定も良し。

1

渡部と環の性格の差が良い

 攻め視点。
 友人・佐々木が、ゲイの環(受)に対して、道を踏み外しただの、気持ち悪いだの、矯正するとか言って、女と会わせたり風俗連れていこうとするから、ちょっとストレスを感じます。(このあと受けとして出てくるキャラなのに)
 攻めの母親デリカシーない系です。口を開けば結婚、子供、と昭和脳ですね。
 渡部が少し押しが弱いのに対し、環は強気な態度だから、渡部が振り回される感じなのが好き。

 次が問題のゲイ嫌い・佐々木が主人公の話。
 従兄弟の国見と女絡みで穴兄弟になる描写はあるし、風俗デリヘル大好きだし、創作上の人物なのにすっごく不快になる。
 子供作れねーだろ不毛だろって頑固。自分と正反対の思考すぎて、全然のれなかった……。
 風俗通いさせない為に、国見が佐々木をパイパンにするけど、清潔になるし逆効果なのでは、と思った。

 そして渡部環カップルに問題が起こる。お互いの親関連で。このシーンはめちゃくちゃ胸糞というかイライラが止みません。
 
 でも渡部がめちゃくちゃいいセリフを言ってくれる。
「俺ら以外の誰かを幸せにするために付き合ってるんじゃない。親はどうでもいい。ババア共は放っておけよ」
 快晴。天晴。スカッとした。

 モヤァ……とした終わり方だったので、欲を言えば、受け(佐々木)ザマァ展開を見たかった。

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