お買い得商品、セール品、中古品も随時開催中
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
そこはかとなく薫る解放され切らぬからこそのカタルシスが覆う世界に浸れる1冊
表題作+短編で構成されています
表題作前に同時収録の「メガネをかけて」という短編
こちらは商業BLでは珍しいジジ専青年、園田の終わってしまった恋のその後を同年代の男との関りで覗くようなお話し
亡くなった恋人のメガネを後生大事にする園田が健気なお話しです
そして表題作!
こちらは小野塚先生文学とでも言いましょうか、、、
全てを描き切らないけれど、散りばめられたピースを嵌めていきながら繋げ、広げて咀嚼するようなお話しです
時代背景は遊郭もあるけれど電話も使われているので明治~昭和初期でしょうか?
登場人物は3人
坂田…教師への夢半ばで結核により療養生活を余儀なくされている
大学からの級友の羽生が坂田の身の回りを世話している
羽生…大学病院勤めの医者で既婚者
頭脳明晰、明朗快活な色男であるが故か、繊細な色恋には疎い様子
惣…雪の中で行き倒れていた所を坂田に保護される
口をきかない少年
以下、明確な答えのない作品なので自分なりの解釈を、、、
明確な答えはないものの作中でハッキリしているのは坂田の羽生への恋心
これが実に切なく見事な劣情として描かれています
ずっと羽生への想いを抱え続けていながらも、羽生と羽生の細君の助けにより生かされてる事への苦しさを内包し続けている坂田
その身の内に消えぬ想いが熱を帯び、彼は弱った体を厭いもせず寒空の中でも自身の熱を冷ますために窓を解放したがります
そんな折に雪の中で倒れている少年を発見する事から坂田の日常は変わって行きます
拾った少年は口をきかず坂田にも羽生にも素性が分かりません
が、読み進めるとどうやら不義の子として生まれ母は女郎に、自身は父方へ引き取られるも後妻により虐げられていた様子
断定はしていませんが、この夫婦を放火で亡き者とし、行方不明となった当時9歳の少年、惣が彼であろうと思います(現在は12歳)
惣は実母から必ず持っていなさいと渡された黒いマリア像を大事にしています
これは当時流行っていた迷信のようなもので病から身代わりで身を守ってくれるとされたお守りのようなモノ
この「黒いマリア像」が実は最後に望みを持たせてくれたのではないか?という演出に感じたのがすごく個人的にはグッと来ました
解釈としては、、、
長年告げる事などなく、ただ想い続けるだけで熱していく行き場の無い羽生への劣情を抱えた坂田
しかし、目の前に現れた少年により人肌の熱さを知ってしまい、その熱を内に止め続ける事が出来なくなってしまった坂田
少年を羽生の代わりにして熱の解放を試みるも虚しさは消えない事にまた苦しさを感じる
そしてその苦しさが身体を逼迫してしまう
そんな坂田を首からマリア像を下げた少年が慰める姿を目の当たりにする羽生
2人の様子から坂田の変化を感じる羽生
同時に医者である自分が坂田を救いたい!(マリア像の迷信などで坂田を救える訳がない!という張り合うような気持ちが芽生えているように見える)という執着を感じます
そしてとうとう羽生から坂田の気持ちを聞く覚悟が芽生えます
長年の願いを口にする坂田
その想いに精一杯の答えを返す羽生
そして2人の元から「さようなら」と雪に文字を書き残し去る惣
完全なるハッピーエンドではないけれど、私には未来が感じられる終わりだったと思います
惣が母親を想い続け、叶わなかった切なさは残りましたが、、、きっと坂田が惣の中で冷たい雪の中から熱を取り戻させてくれた大事な人として刻まれたと思います
羽生と坂田は今生で肩を並べる事は叶わずとも、次世へは共に連れ立って行こうという、、、その想いだけできっと報われ、平熱を思い出せたのではないでしょうか
もしかしたら惣は坂田の為にマリア像を渡したかも知れませんね
そして惣自身には坂田という存在が拠り所となったのではないでしょうか?
解釈の余地が無限にある世界
難しさもあるけれど、それもまた味
嗚呼、、、浸ってしまった(*˘︶˘*).。.:*
短編+表題作の2作品収録。
「メガネをかけて」
ストーリーとしては、アパートの大家の息子・園田が上の階に住んでいる男の元に通ってきていた若い男に惹かれるお話なんだけど、何と言ってもその「上の階の男」が老人であり、その恋人だった若い男は騙されていたのでも金目当てでもなく、真性のジジ専だという…
そしてそのきっかけは何と、自分の本当のお祖父さんが初体験だったという…
ある意味衝撃作。園田の恋は実るのか否か⁈実ってほしいけどね。
「我れに五月を」
昭和初期くらいの設定?
結核持ちの小説家が1人大きな家で療養しているのだが、ある雪の日、庭で少年が行き倒れていて…
…という冒頭。
勿論作家・坂田は彼を助け、いつも自分を診てくれて色々便宜を図ってくれる友人の医師・ 羽生(はにゅう)に彼も診てくれるように頼むが、少年は口を利かず体は傷痕だらけで。
少年は坂田の心の奥底を暴くように坂田に触れてきて、坂田は感じまいとしていた熱を抑えきれなくなっていく…
坂田は羽生が好きなのです。一方羽生は残酷なくらい鈍感な男。
少年の抱えていた悲劇、坂田の喀血など死の匂いもありつつ、ラストはそれほど暗くない。みんな生きていいんだよ、みんな愛を求めていいんだよ。
あとがきで、先生がおっしゃっているよう
「惚れたもん負け」
その一言に尽きます。
小野塚カホリさんのBLということで
本作もハッピーエンドとは言い難いお話となっています。甘々であったり、そういったBLが好きな方には重い内容であるかもしれません。
内容ですが、幕末から明治時代あたりでしょうか。
ある雪の日、雪の中生き倒れていた少年を、結核持ちの坂田(僕)が拾うところからお話は始まります。坂田が住むのは、大学からの友人で今は医者の羽生が用意してくれた家。
上記にある攻め受けでは
坂田×少年 (個人的には逆な気がするのですが?)
となっていますがわたしとしては
羽生(妻のいる医者で大学からの友人)←坂田 (眼鏡をかけた結核持ちの主人公) をピックアップしたい。
まず、結核持ちの友人に家を用意し、見舞いにご飯に診断に全てやってしまう羽生の、鈍感でできる男の人たらしぶり…
好きな人にこれだけのことをされているのに、その想いが報われないと知りながら、優しさを受け入れる坂田の可哀想で愛おしいこと…
こんな酷いことってありますか!最高ですか!
季節は冬で雪が積もってるというのに、どうしてこうも熱っぽいのか…時代設定や季節も相まって感傷的で耽美な雰囲気に溢れており わたしの性癖にとても…突き刺さります。
とにかく読んでこの世界感を体感して欲しい…
ということで、以下に突き刺ささった台詞を並べさせてもらいます!!!台詞が1つでも引っかかったり突き刺さったりした場合は是非読んでもらいたい…性癖に来るはずですから…!
"大学の頃から彼は文字どおり色のある男だった"
そうだ 僕は もっと小さな 子供の頃から
学校の先生を "恋しい" と思うような 人間だったのだ
「僕は昔 教師になりたくて入った大学で羽生と会ったんだ…その時からずっと… 」
「よしてくれ!何で 君はいつも 僕から大事なものを奪おうとするんだ 君は 君はいつでもわからないんだ いや わからないふりをしてるんだ 僕の気持ちだって」
「僕は 君の愛妻(の作った)弁当が 欲しいんじゃない
君の毎日の 見舞いが欲しいんじゃない こんな家が欲しかったんじゃない 僕が…僕が欲しいのは…」
「普通に女の人が好きな 君が好きで 好きで …好きで たまらない …どういう意味か わかるだろ? きっと君のおくさんにだって 負けはしないよ」
「このまま 二度と 会えなく なるのだけは 嫌だとしか 言えない …もしも もしもそういう時が来た時は その時は一緒に死のう」
ガッツリ ネタばれすみません、
最後に一言
坂田がどれだけ羽生を愛していて、その秘めた想いを熱を解放するか、そこの色っぽさが、たまりません…
普通に小野塚さんの作品が好ましいと思う方なら
併録作を褒めるでしょう。
表題作は小野塚さんの持ち味がしっかり詰まった
一編でありますがそれ故に胃にもたれ易いかと
評者は愚考します。
カバー下のワンカットこそが表題作の行き着く処で
ある筈です。ただ形通りの縁よりは。