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命を懸けた、せつない片想い。
tenkyuugi no umi
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
まさかこんなことをされるなんて!
一生忘れられないような出来事がありました。
小説としても大変おもしろかったです。
攻めの執着が意外とすごい。
幼少期に助けてもらったから憧れたみたいなきっかけだと言っていますが、別に彼にだけ助けられたわけじゃないので、単純に一目惚れとかそういうものだったんだと思いました。
手の甲のホクロ、そんなに気に入られてたんだな…
攻めのお父さんが普通にいい人で良かったです。
受け非常に大切に取り扱ってくれる、常識的なお父さんでした。
瑠璃色のとんぼ玉。鏡写しのオリオン。
傷ついたルリビタキ。透明なインク。
これらを鍵にしながら、物語は進んでいきます。
尾上先生の1945シリーズの1作目で、太平洋戦争時代を生きた人達の物語。シリーズの中でもこの作品は少し異色で、日本を舞台に物語が進んでいきます。痛くて、苦しくて、切ないけれど、とても美しいお話。私はシリーズの中でこれが一番好きです。
舞台は昭和19年で、終戦間近。戦況が思わしくない日本が、起死回生を狙って特攻隊を募り、敵軍を撃墜させようと躍起になっている時代。そんな中で、受けの希は自分の命の恩人であり、初恋の人でもある資紀が、特攻に行かなければならない状況にあると知る。希は自分が彼の身代わりとなるために資紀の家に養子としてやってくるけれど、資紀は自分を助けてくれた昔とは違う、冷たい青年に成長していた。それでも希は、昔の恩を返したいという一心で、特攻に行くまでの短い期間、資紀に報いようと様々な手を尽くすけれど、そんな希に、資紀はただつらく当たってくるばかりで…。というお話。
戦争の時代をテーマにしていますが、掘り下げすぎることなく、軽く扱っているわけでもなく。尾上先生独特の美しい言葉で物語が綴られていて、とても読みやすいです。戦闘機などの描写も、この作品ではほとんど出てきません。理由は主な舞台が戦場ではなく、出撃する前の日本での生活だというところが大きいかな。ただ平和な今の時代とは違い、常に死と隣り合わせという状況があるので、そこから生まれる感情や葛藤、覚悟なんかは重く苦しいものが多いです。でも読んでほしい。物語後半は涙無しには読めませんでした。
主人公の希がただひたすらに健気。天文学を志す父の元に生まれたため、賢くて聡くて、どこか達観してる所がある子なんですけど、そんな賢い子でも理由が分からないくらい、攻めから色んな理不尽な扱いを受けます。到底叶えられない無理難題を押し付けられたり、大切なものを壊されたり、無理やり体を暴かれたり…。でも、それでも希はひたすらに攻めを疑わずに慕い続けようとするんです。5歳の頃助けて貰った大切な思い出と、長年大事に温めてきた資紀への気持ちを、その張本人からどんどん粉々に壊されても尚。その姿が見ていて可哀想で、痛々しくて。読み進めるのが辛いシーンもありました。ほんとにこの子がいい子すぎて健気すぎて、攻めの資紀さんに対して疑心暗鬼になりながら読み進めました。
攻めの資紀の性格がなかなか拗れてて読めないです。優しいのか、冷たいのか、昔の彼と今の彼のどちらが本物なのかがほんとに分からない。彼の内面に触れられる描写が物語中にほとんどないので、読者は希と同じ気持ちで話を読んでいくことになると思います。なんで?どうして?そんな気持ちではらはらしながら私も読みました。
王道の展開かと思いきや、衝撃のシーンが待っていたり、なぞかけのようなものが端々に隠されていたり。読み応えは十分です。戦争物にありがちなきな臭さ、生臭さはあまり無く、星を大きなテーマとして、どこか幻想的で美しい雰囲気でストーリーは展開していきます。少しだけネタバレを含んで言いますと、死ネタ、バッドエンドはありません。そして読み終わった後は、資紀の視点でもう一度読みたくなるはず。私は彼が唯一優しく希を抱いたシーンを読み返して、涙が止まりませんでした。本編後の短編で、穏やかな2人のその後を垣間見ることが出来ます。この手のお話が苦手ではない方はぜひ、読んでみてください。
そして尾上先生が出されている同人誌「葉隠否定論」ではこの作品の資紀視点で物語が繰り広げられ、彼の葛藤や希への狂おしいほどの愛が描かれています。作品を気に入った方には必読かと思います。そちらも合わせて是非。
奇跡の泉シリーズで、尾上さんの描く命がけの愛に強く惹かれるものがありました。
そこで1945シリーズも思い切って読んでみました。年代から死に別れを連想してしまい、なかなか手を出せずにいました。
読んでよかったと思いました。別れの切なさを越えた、星空のように果てしなく深い愛が描かれていました。
日本の敗戦がささやかれ始めた頃、希は、名家の跡取りで海軍中尉の資紀の身代わりとなり、特攻に行くことを決めます。希は、幼い頃に命を救ってくれた資紀のために死ぬことは喜びだと懸命に伝えますが、資紀は強引に希を抱き、冷たい態度を取り続けるのでした。
資紀の真意は、あるとき突然、希にだけ分かる形で明らかになります。その衝撃の大きさに、私は物語のページを戻り、「あっ」となりました。最初読んだときは、資紀の手の中のルリビタキを、資紀と希が見ていると思った挿絵ですが、資紀は希の右手を見つめていたのです。裏返しのオリオン座の形にホクロが並ぶ希の右手を…。この右手を残酷な方法で奪い、自分の命を懸けて、希の命を守ろうと、ずっと前から資紀は決意していたことが、陰のある微妙な視線で暗示されていました。
資紀のために命を捨てようとする希は健気で、それだけで十分に心打たれるのですが、愛する希に本心を告げず、冷たい態度で思い出すら残させず、ただ一人、全てを抱えて特攻に飛び立つ資紀の想いの深さに圧倒されます。それは、静かにどこまでも広がる星空のようです。切ないけれど、資紀の愛の美しさに感動することを止められませんでした。
生きること、恋することが難しかった時代があったのだと、あらためて思わされます。
あとがきに尾上さんも書かれていましたが、二度と繰り返してほしくないと、私も切に願います。
最後に救いが用意されていたので、本当によかったです。未読の方も安心して読んでください。
この前に読もうとしたのがとんでもない作品だったので、これには非常に癒やされました。
こういうときに読むといいのかな?
これまで尾上作品は私にはNGで、おセンチな感じが合わないな、と思っていたのですが、これはよかったです。涙腺を刺激されました。
「碧のかたみ」と関連する作品ですが独立して読めます。
りりしい坊ちゃん、資紀と、その身代わりとして特攻に行くことになった希の恋。
幼いときに資紀に会い、凜々しさと聡明さに一目惚れした希。資紀の身代わりとなって資紀の家に養子に入り、特攻として死ぬことに喜びを感じる。一方、資紀は希を手ひどくだき、ひたすらつらく当たる。
このあたり、あとで種明かしはあるもののちょっとイライラします。
そもそも抱かなければいいのでは?と思ってしまうのですが。。
やがて事件は起こり、希は残って資紀が特攻として散ることに。そのとき、ようやく希は資紀の愛に気づきます。これっきりか、と思ったがカタルシスが用意されています。
8年後(だったかな?)、薬やを営むようになった希は、偶然、オリオンのほくろが刻まれた手を保存したいという人物がいることを知り、会いに行きます。
そこからはハッピーエンド。
甘い後日談もあります。
初恋の人を守るために特攻に行くことを決意した、航空兵、希(ゆき)の物語です。
尾上先生の1945シリーズ第1作目の舞台は唯一の日本国内で、そのためかシリーズの中でも独特の雰囲気があります。
5歳の時に助けられてから、ずっと忘れることのなかった名家の坊ちゃん、資紀(もとのり)。
資紀の身代わりになるために、成重家の養子となる、その道中を描いた冒頭は日本の童話のような趣きがあり、引き込まれていきます。
それから希は初恋の人、資紀とお屋敷の中で暫く暮らすことになるのですが、資紀は気難しい青年になっていて・・という展開です。
いつ、特攻の命令が下されるか分からない日々の中で、一途に資紀を想い続ける希。対して何を考えているのか分からない、現代にはいないタイプの男、資紀。二人の関係は昭和十九年という、閉塞感に満ちた中で静かに、だけど異様な緊迫感を持って描かれ、衝撃のクライマックスを迎えます。
(以下、ネタバレです)
希の右手首を切り落として、資紀は希を守るのです。何と凄絶な!
これは、この時代を描いたblならではですね。
巻末の「サイダーと金平糖」では、戦後の穏やかな二人が見れてホッとしましたが。
5歳の時の初恋を貫いた希と、如何にも戦前生まれといった感じの古風な男、資紀。なかなか印象に残る二人でありました。
そして希の兄、琴平ワタルが主人公のシリーズ2作目となっていくのです。
シリーズ第一弾という事で読み始めたものの、冒頭の"誰かの身代わりに特攻に行く、そして笑みがこぼれるほど嬉しい"、そして"恋の始まりがとても幼い"という点が私の心を開かず、読み切らずに放置していました。。。その後、「蒼穹のローレライ」「碧のかたみ」を読んでハマり、この「天球儀」に戻りました。私的には、希の兄が出てくる「碧のかたみ」を先に読んでこちらという順番がいいのではないかと思っています。途中非常に激しい事になりましたが、資紀が本気で希に生きて欲しいと思った結果、あの時代ではあそこまでする必要があったのかもしれないと後理解できたように思います。お互い凄い執着心ですが、読み終わってみるとその執着心がある意味羨ましいカップルでした。
同人誌「葉隠否定論」の感想も含みます。
この作品に惹かれた方は是非とも「葉隠〜」を読むのをオススメしたいのですが、現在は手に入りにくい様ですね。いずれは商業誌になったりしないのかなー。
本作「天球儀〜」は希目線のストーリーなので、希がどれほど一途に資紀を想い、身代わりに死ぬことを待ち望んだかが描かれています。資紀が飛び立った後、希が資紀の母親から責められるシーンは、胸が痛みます。殴られながらも、資紀が母親に愛されていたことを教えに行きたい、というんですよ。
ただこの作品だけだと、資紀の真意までは推し量れない気がします。
「葉隠〜」は同人誌として発行された資紀目線のストーリーです。正直これを読むまでは、希を特攻に行かせない為とはいえ、なにも手首を切り落とすまでやらなくても…。と思っていました。しかし、ただの骨折や怪我だけだと、治ってしまえばまた特攻に行く羽目になるし、身代わりができなくなった後の希が周りに責め立てられる。一見非道とも思える行為は、後々のことまで考えた上での苦肉の策だったんですね。冷たい態度をとり、傷つけながらも、身を引き裂かれる様な痛みに耐えていたのは資紀の方だったんだろうことがうかがえます。自分を憎み恨む様仕組んだ資紀の綿密な計画は、賢しい希には見抜かれてしまうわけですが。
二人が生きていてくれたことに涙が止まりませんでした。
私的には「天球儀」と「葉隠」両方対で神です。
ローレライの表紙にひとめぼれをいたしまして、
読みたいなーと思っていた矢先にシリーズかよwwな始まり。
評価も高そうだったので、どうせならシリーズ1からと思い
シリーズを大人買いさせていただきました。
第一段ですね。
幼いころに助けられた恩がある。
その恩人の代わりに命を捨てるのならば
こんなにうれしいことはない。
あこがれ続けた相手の為に。
冒頭から健気な展開なのであります。
かといって、さほど辛気臭くないのが良かった。
成重のお父さんがまたね。
もっと冷たくて非道で~な人であれば作品の印象もちがったかな
と思うくらいいい人。
なのですが、昔助けてくれた恩人である攻。
昔の優しい面影を見せつつも、冷たくひどい仕打ちが
続くわけです。
攻の友人から漏れ聞こえる話もろもろを見る限り
攻は受のこと大事におもってて、かわいいとおもってて
それが垣間見える部分もたくさん見えるわけです。
それなのに。。。。
おいおい・・・・やりすぎじゃ・・と思う描写がある。
あるのですが、本当はやりたくない。
でも、そこまでのことをせざるを得ない状況下だったのだと
おもうと、胸が詰まる思いがしました。
その後のお話。
本編に関しては、攻が何故に・・・な行動も多く
それでもなお。な受の気持ちにもさほど乗れず。
だったのですが、最後の昔話に思わず頬が緩みました。
受はずっと攻にあこがれて、少しでも近づきたくて。
そんな思いでずっと生きてきたわけですが
攻はといいますと、もっと早くから受の回りを徘徊してみたり
近づけないか試案してみたり
あまつさえ、こっそり置き土産を置いてみたり。
そんな姿がなんだか微笑ましく、可愛くみえました。
紆余曲折が大きい二人の道でしたが、ようやく合流点。
長く一緒にいてほしいなと思う一作でした。
尾上さんはデビュー作から何となく購入していて、例に漏れずこの作品も購入→積ん読コースだったのですが、またしてももっと早く読んどけば良かった! という展開です。
色々と話題になっていた作品ですが、戦争物です。
BLで戦争物を持ってくるだなんて、なんて勇者でしょう。
そしてこの作品を世に出してくれた蒼竜社さんの、あり得ない程にどでかすぎる懐に感謝。
不謹慎という声も聞こえてくることの多い作品ではありますが、身内が特攻の生き残りで、昔聞いた時には濁されながらもソッチもあるにはあったらしい、と特に深く考えずに読めました。
史実を絡めたファンタジーとして、割り切っていたからかもしれませんが。
で、その辺を頭にいれつつ読んでいくと、後半で目頭熱くなる。
最初は受、攻ともに頑というか、かたいなぁ、という読みにくさが目立ってたんですが、気づけばぐいぐい読まされちゃいました。
受が攻の身代わりとして特攻に行くはずだったのに、それをなんとかして止めたかった攻が、とんでもない暴挙に……。
いやぁ……衝撃の展開すぎて、ちょっと頭がついてかなかった。
そこに至るまで、攻の性格といい受に対する態度といい、酷いものがあったので、こっちまで振り回されました。
この攻の行動については賛否両論でしょうが、私は割と好ましくというか、そうでもしなければ健康体である人間が死地に赴くのを止められないという時代だったわけで。
個人的には攻を失ってからの受の葛藤だとかに、もう少しページ割いてくれても良かったような気がします。
離ればなれになるまでの時間が冗長になっていたので、その部分を削って、離れていた時間の描写をもっと詳しく書いてくれたら、ラストの感動がもっと大きかったんじゃないかなー、と勿体ない気がしました。
細かい時代考証や、綻びに気づいてしまうと、そっちばかりに目が言ってしまうので、平行宇宙を想像しながら読むことをオススメします。
好きな人の身代わりに特攻に行くことを決めた希。
そんなことは望んでいない、希を死なせたくない資紀。
口に出さない(出せない)お互いの想い故にすれ違う。
読みながら、とても切なかったです・・・・・・途中までは。
のめり込んでいた為か、希が右手を失うシーンが感覚的に痛くて痛くて・・・
右手を失って命を永らえる、それでいいのか?それしかないと思えるほどに資紀は追い詰められていたのか、そう思うとまた胸も痛くて・・・
痛くて痛くて、そこで少し引いてしまいました。ごめんなさい。
本編はのトーンは、切ないよりも痛い、雰囲気なのですが、最後の番外編が金平糖のように甘い。
他の方も書いていらっしゃいますが、私も切り替えてテンションを上げることが出来ませんでした。残念。
あと、私は希や資紀以上に新多坊ちゃんが気になってしまいました。
尾上さんの他の作品で出番があればいいな、と密かに思ってます。
2013年このblがやばい第3位。もう泣ける泣ける。
資紀が、希を助けるというただ一つの目的のために、父をだまし、同級生の新多を利用する。そして、希自身にもつらく当たるのは、見ていてつらかった。本当は優しいはずの坊ちゃんにつらく当たられながら、それでも坊ちゃんの求めに応じて毎夜のように身体をつなぐ希が健気だった。
やはり、戦争はつらい。死にたくない、生きていたいと、そう主張することもはばかられるような世論の中、希と資紀はあろうことか、自分を犠牲にして相手を助ける方法を遂行しようとする。
出撃のまさにその直前、資紀の真意を察した希が痛かった。
「待って、待ってください。行かないで。坊ちゃん」
と叫ぶ希。無常に飛び立つ特攻機。これは泣けます。
生きていることが当たり前で、会いたいときに会いたい人に会える現代は、本当に幸せな時代だと思う。いっぱい考えさせられた作品だった。blと侮ることなかれ。
巷では評価が高いので期待しすぎたのかもしれません。
どうにも、物語の肝である主人公が攻の身代わりとなって特攻に行く理由が釈然とせず。
5歳の頃、初恋とはいえたった1回だけ会った人間の為に身を投げ出せるもんなのでしょうか?
読み進めるにつれ、理解できると思いましたがそれもなく。
産み育ててくれた家族との別れもあっさりと感じました。
そこが健気と感じる人もいるんでしょうが、この時代とはいえ主人公が達観しすぎている。
後半の攻が特攻に行く時主人公の右手をっていうのも正直引いてしまいました。すみません。
後半の番外編も糖度高めすぎてなかなかテンションあげれなかったかな。
やはり全体を通して戦争の悲惨さが希薄すぎたかな、と。
BLはファンタジーと言われればそれまでですが、遠くはない過去の時代背景をモデルにしているので、もう少し盛り込んでほしかったと思います。
いろいろ文句を並べましたが、作者の小物使いはとても素敵でした。
文章も繊細で情景が浮かぶようでした。
今後も楽しみな作家さんなのは確かです。
琴平希は幼い頃に助けてくれた成重資紀の身代わりに特攻へ行くことを決心します。
物語は希が成重の家に向かうところから始まっています。
幼い頃から慕い続けた資紀の身代わりとして何の迷いもなく特攻へ向かおうとする希。
そんな希に対して冷たい態度と感情を向ける資紀。
互いが互いの想いを伝えることなくその日を迎えようとしたときに希を守るために資紀のとった行動が切なすぎる。
日本にはそういう時代が確かにあって・・・。
というようにある程度読み手があの時代を想像して読み進める必要があるように思ってしまった。
彼らの日常に戦渦の日本というあまりせっぱ詰まったものを感じなかったからかもしれません。
ふたりは生き残り再会を果たします。
なんとなく、ここで、めでたし、めでたしなの?と思わなかったわけではないですがこの結末はBLならではなのかなと・・・。
実際のふたりの中には取り返しのつかない痛みや悲しみがずっとそこにあり続けるように思うし、それを抱えてふたりで生きることを決めたんだろうと・・・。
生き残って良かったね。再会できて良かったね。そんな簡単な結末じゃない・・・そんなふうに感じました。
まず、時代背景、当時の描写が色々とツッコミどころ満載で・・・。
例えば受け様と攻め様の出会いのきっかけ、幼い頃に描かれた風景に登場する「防空壕」
本土空襲が本格的に始まったのが終戦の1年ほど前、サイパン島を米軍に奪われてからです。
10年以上前、アメリカとの戦争さえ始まっていない状況で防空壕・・・??
と、この時点でううう・・・と思ってしまったのが正直な感想。
細かいところかもしれませんが、こういった時代を書くのだから出来れば詳細に調べて欲しい。
次に、他の方も触れていますが特攻を各家から出せって(苦笑)
色々言われてはおりますが、あくまで特攻は志願制だったということになっています。
(勿論、志願と言いつつ志願せざる得ない状況だったと言われることは多いですが)
とりあえず、赤紙じゃないんだから召集令状ならぬ特攻礼状なんてものはありません。
この設定があまりにも強引で、こうなんとかならなかったかなあと。
文章がとてもきれいで(情景の描写が特に、素敵だと思いました)読みやすいのにとっても残念な気持ちになりました。
もっと言わせてもらえば、自分の息子を殺したくないがために他の人間を身代りにする・・・この人が海軍のお偉いさん??
旅順で二人も息子を失くして、それでも気丈に振る舞った乃木大将もそうですが、基本的に自分の身内だからこそエコ贔屓することなく前線に送るのが立派な軍人さんだと思うんですけどねえ。
いや、そりゃあ昭和の軍人は悪く言われることも多いですけど、これはいくらなんでも・・・。
ちなみに受け様の希君のお家柄も決して悪くないっていうか、当時帝国大学の研究者なんてもう本当のエリートですよ。
陸軍士官学校や海軍兵学校はお金がなくても入れましたが、帝大はそうじゃなかった。
ある程度の学がなければ希君の手にある星の説明も出来ないので、そういった設定になってるのもわかりますが、
もうなんか色々と無理がありすぎる気がしました・・・。
キャラクターもね、なんか当時の青年の潔さとか清廉さが残念ながら伝わらない。
そりゃ「学鷲は一応インテリです」みたいに希君が言っても違和感ありますが。
今時の大学生みたいなメンタルで、こんなゆとり世代の日本軍人嫌だなあと思っちゃいました。
色々とダメだしばかりしてしまいましたが。
でも、敢えて「シュミじゃない」にしなかったのは文章自体はとてもきれいだったのと、キャラクターも嫌いじゃなかったからです。
(いや、繰り返すようですがどっちもその当時の日本男児には見えなかったですが)
あと、やっぱり現代日本ってこの時代の事をBLで書くのってある意味「タブー」になってると思います。
BLではなく少女漫画なら、昔は里中満智子大先生等が書かれてましたがそれでも少数派ですし、BLの場合はそれこそ滅多にお目にかかることはない。
戦国時代をテーマにしたり、江戸期をテーマにすることは稀にあっても「あの時代」は書かれない。
だからこそ、敢えて先の戦争を背景に書かれた作者様に敬意を表したいと思いました。
読んだのがかなり前で、その時は「この結末は惜しいんじゃないか」と思っていました。
尾上先生も、本当は悲恋の物語にしたかったのではないかと失礼極まりないことまで考えていました。
私が未熟でした。
これぞBLです。
BLの名作です。
簡単に言ってしまうと
BLとして、戦争関係なくまっさらなファンタジーとして読むならありだと思います。
静かだけれど激しいお互いの想い――
出征に向けての駆け足の展開には咽び泣きました。
けれど、BLとして読んだとしてもラストには気持ちよく頷けませんでした。
安易に、良かったねー、とは言えない。
べつに悲恋ものが好きなわけでも死ネタ、死に別れが好きなわけでもないです。
むしろそーいった作品は苦手ですが、今回に限り、納得できなかった。
それまでの主人公の後悔や葛藤に涙したからこそ、ご都合主義に思えて仕方なかったです。
引き込まれまくって、感情移入して胸を震わせていたから余計にね。
あれだけのことをして、たくさんのひとが散って、それでこれかよ、と思ってしまった。
せめて再会したところで終えていればよかったのではないでしょうか。
終戦後のふたりの生活は、読者に対するボーナス的なものなのかもしれないけれど、
興ざめもいいところでした。
いままで目を瞑っていた、作中で気になった部分が気になってしまってしょうがなかったです。
日本は敗戦国なんですよね。
そこらへんをよく考えて書いて欲しかった。
けれどまぁ、ボーイズラブとしてはいいお話だったのではないでしょうか。
読みごたえはあります。
お好きな方には申し訳ない評価ですが、正直な感想です。
もちろん人の感じ方はそれぞれ。誰かの意見を否定する類のレビューではありません。
何の他意もない、至極個人的な意見です。
この作品を読んで思ったのは、なんぼーBLって言うても間違った日本の戦争の描き方をしちゃ駄目でしょうということ。
私は別に右翼とかじゃないけど、自分の国の確かにあった悲惨な時代のことを、
こんなふうに別次元に描くのはどうなんだろうって。
物書きさんとして間違った日本人像を描いてほしくないよ。
わざわざリアル日本を舞台にしたのにこれってどうなんだろうっていうことです。
たとえばコードギアスとか機動戦士ガンダムとか銀河英雄伝とか戦争をモチーフにした漫画アニメはたくさんあるけれど、超設定だから許せるんですよね。
下手にリアル日本を舞台にすべきじゃない。
作者様が一応戦争について調べていることは分かったけれど、でもそれはつじつま合わせやネタとして使われただけで、ちっとも当時の人間を描いておらんじゃないか。
ここに描かれている軍人はこんなの日本の軍人じゃない。
不謹慎な書き方しないでって思った。
それに、BLとしてみたときにキャラクターが全然自分の好きなキャラクターじゃなかった。一切萌えなし。
ちょっとセンセーショナルに書けば読者が神とか言ってくれるんだろうって感じの、
インパクト優先に思えた。
いや、作家さんとしてはインパクト与えたいと思って書くのは当然のことだし、それ自体を否定するわけじゃない。でもインパクトに走りすぎて第三者への気遣いが足りないなと感じた。
たとえば手首を切り落とすことに関しても、当時、戦争によって手足を失った人がどれだけいたかってこと。
名誉の負傷ならばまだしも、愛する者が愛するものの体を傷つけるなんて、
そんな無神経な書き方がよくできたなと思うのです。
俺はそんな愛イラネェ。
手首切られるぐらいなら男としてはお国のために名誉の死をくれたほうが嬉しいぜ。
私なんか完全に戦争を知らない世代で、自分が気づかないだけで平和ボケもいいところだと思うの。でもそれに慣れちゃって、何を読んでもオールオッケーとか言っちゃわないようにしたいのだ。
わたしが読みたかったものをカタチにしてくれた、というような素晴らしい一冊でした。
いやはや……読んだ後の余韻………こんな体験をしたのは初めてです。
素晴らしいです。素晴らしい。
年齢差。初恋。健気受け。執着攻め。時代背景。シチュエーション。文。
尾上先生の作品は初めて読みました。
完全に心奪われました。完全にです。天球儀の海、ただのBLなんて言っていいものじゃありません。まさに名作。何回も読みなおしたい。
綺麗なんです、どんどん読み進めたくなるしページを捲る手が止まらない。ハラハラさせるし感情移入してしまう。主人公の希が本当に魅力的なんです。
物語が最高潮に達するところは皆さんが同じ場面を示唆すると思います。読んでみれば絶対に解ります。そう、希の手首が鉈で切り落とされる場面です。私はそこで、何がおこったか全く分からなくなりましたね。何度も文を読み返してもわからない、否、解りたくなかったという表現の方が正しいかもしれない。そのページで何分か止まっていたと思います。衝撃でした。
ですが直ぐに解りました。それが資紀の愛なのであると。決意なのであると。
二人の初恋は言の葉に乗せられることなく育っていきます。賢い資紀はそれを悟られないよう、そして希を自分から引き離すように接する。それ故希の想いは不確かなものとなるが、でもやっぱり胸に突っ掛かる自分がいた。手首を切り落とされた後、何も考えられずなるがままに、人形のように生きる希に心が痛みました。引いては近づき、また引いては近づく。手首を切り落とされる前の優しい資紀。その理由が知りたいけれど、気になるけれど、ずっと追い求めてきた、たったの短い間だけでの愛でもいいから味わいたかった。
展開自体がドストライクだったんです。物語が進んで行くたびに「あぁ~」とか「うっ…来るか…」とか、「ひぃ……」とか、第三者から見たら蔑みの眼差しで見られるであろう反応が無条件で出てしまうくらい引きこまれました。重い苦しい切ないBLを求めていた私にとって、この作品はかけがえのない理想の一冊です。賞賛し続けたい。布教も存分にしていきたい。こんな素敵な作品に出会えたことに多大なる感謝です。
尾上与一さん、初読みです。
第2次世界大戦が舞台のBLは初めてです。
とても綺麗な純文学のような文章を書かれる作家さんでした。
希は幼い頃に命を救ってもらい、憧れた資紀の身代わりとして特攻に行く事を決めます。
卑屈な気持ちは全くなく、むしろその使命を誇りに思って。
ここら辺からもう切なくて悲しくて本を読んでいる間、始終泣けました。
しかし、5歳の時に会ったきりで、やっと再会できた資紀は希に対し不機嫌な態度ばかり取ります。どんな酷い対応をされても希は資紀の事を決して悪く思わないように良いように受けとるように必死で胸の中で言い訳を考えますが段々言い訳が聞かなくなってきて....
全てを語りたくないのでここでやめておきます。話は概ね良かったのですが中途半端感もありました。
希が資紀に強姦された後くらいから何となく違和感がありました。いきなり強姦はちょっと行き過ぎな気がします。途中までとても自然にすんなり入れた物語がBLにしなきゃいけないので無理やりBLの話を入れたような違和感がありました。もしかしたらページ数に限界があるのでそうしなければならなかったのかなーと思いました。それから希の家族が戦争の後どうなったのかも気になりました。特に一番年下の兄は軍艦に乗っていたので生き延びる事が出来たのか非常に気になりました。
テーマも大きいですし、上下巻などになってもいいからじっくり語って欲しかったです。そうしたら神になりえた作品と思えました。でもよかった事は間違いないので今回は萌x2の評価とします。
皆さんのレビューを見ていると涙が出たとか色々書いてあったので、
結構期待していたんですが、なんだか普通にすらすらと読んでしまいました。
戦争ものってものすごく難しいテーマだと思います。
分かる人が読んだら評価がガラリと変わる内容だと思います。
しかも読み手の持っているイデオロギーと関係してくるので、とても複雑で重いテーマだと思います。
読んでると違和感が色々と。
命を投げ出すこと、差し出す事の重々しさが全く感じられなかったことです。
次に主人公が喜々と命を差し出す相手との出会いがあれかぁ・・・と。
いつも思うんですが、小さい頃にあったことってそんなに引きずらないよなぁと。
自分にも覚えがありますが、小さいころの初恋の相手に、好きだからって、再開したからって命投げ出すほどのこたぁ無いよなぁと。
うわ~私って冷めてるかしら(汗)
でも、「助けられた=憧れている=好き=命あげる」っていう公式は成り立たないと思うんですよね~あぁん言えば言うほど酷い言い方になってますかね、
すいません作者様、ほんっと思ったまんま言ってごめんなさい。
でも違和感ありまくりだったんです。
それと、主人公がどうにも特攻隊に選ばれる人材に思えない(汗)
特攻隊に選ばれる人というのは優秀な若者です。
もっと雄々しく、頭が良く、体力がある人が選ばれます。
これは絵がいけないのかなぁ。あんなモヤシみたいな子が特攻に選ばれることはまず有り得ないですよ。
それに政治的圧力的なものがかかってそういう話に持っていくというのも無理な話だよなぁ・・・と。
それこそ家柄が上の人らっていうのはむしろ戦争に出さなくていい身分や役職に配置しちゃってるから、○○の家から特攻隊を差し出せとかないですよ。
だから、どうせなら特攻隊訓練所の話にすれば良かったのにーと思ったんですよねー。
そこの訓練指導をする人が資紀で訓練生が希。とかね。
あと、手を切るとか、どこの花魁かと。花魁だって小指くらいよ?せめて小指くらいにしたげてぇー!
資紀アホなのかなぁ。もっと賢いやり方あるでしょうに・・・と思ってしまいました。
作者様の文体が結構綺麗系だったので、この透明感を活かすなら、
ヤンデレ系ではなく、主人公と一緒に写真を撮るとか、もうちょっとピュアラブ系で締めた方が良かったんでは~と思いました。
でも、とっても文章がお綺麗で、読みやすかったので、今後に期待しております!
ここでの評価が凄く高かったので、期待して読み進めました。途中から、自分が何を読んでいるのか良く分からなくなりました。
衝撃的なシーンには目が覚め、涙腺を刺激されましたが、また読み進めていくうちに、先程の涙は何だったのか…という気分にさせられてしまいました。
萌評価にとどまった理由は3つあります。
予想を裏切られる結果に一時は興奮したものの、ああやっぱりね、に落ち着いてしまったこと。
挿絵がどうしても受け入れられなかったこと。ファンの方には申し訳ありませんが、この話にはあまりにも安っぽすぎる。この主人公が特攻兵とはあまりにも思えない。
そして戦時中にも関わらず、あまりにも「良い人」しか出てこなかったこと。特にこれが最も違和感を感じる部分です。
恥ずかしながら、私には赤っ恥と言われるくらい政治や歴史に関しての知識がありません。当時の実際の状況を知る術も知りませんし、「本当にこの通りだったのだ」と言われれば私は口をつぐむしかありません。
しかし、作者も後書きに書かれていますが「生きていることが難しかった時代」だった筈です。その様を、私は行間から読み取る事が出来ませんでした。
主人公らが住む家が大地主であり、破格の扱いを受けていた事、舞台が大分であり、直接戦争を目の当たりにするような土地では無かった事が事実としてありますが、それが理由ではありません。あまりにも、登場人物らの精神が豊か過ぎる。
血生臭い描写や、ひもじい争いを読みたい訳ではありません。書いて欲しい訳でもありません。しかし、どうしても拭えない違和感が、終始私のなかにありました。
明日明後日、いつ死にゆくか分からぬ身の上を、もっと繊細に描写して欲しかったというのが不満点です。
この主人公は、ある種異常な程、「死」に対する恐怖が薄い。この時代の少年達は、国からの刷り込みによって、お国の為の死こそ英雄だと教わってきた国家教育の賜物であったと聴きます。死に、恐怖よりも栄誉を感じる人は勿論いたでしょう。しかしそれも感じられないのが主人公で、正直当たり障りの無い優等生的な回答を読者に提示し、特攻兵としての任務を果たそうとしているのが、なんだかなあと。
大日本帝国の為ではなく、家族の為でもなく、愛する人の為に特攻する人が実際にいたことは、当時の遺書などからも推察出来ます。この主人公も例に漏れず、しかも身代わりに死に行く運命にある訳なのですが、彼が作中で最も気にしているのは自分の命でも、お国の運命でも、家族の安否でも、およそ愛する人の命でもなく「身代わりに死に行く自分を、愛する人に受け入れて欲しい」という、捉え方によっては非常に暴力的な愛にも思えました。本人それを全く意識していないところがちょっと恐いです。
「5歳の時にたった一度しか出会った事のない者の為に惜しまず死ねるか?」という問いは、恐らくしてはいけないのでしょうね…。
しかし天球儀という題や、空、海、星などの自然を鮮やかに感じさせる描写は、爽やかでとても良かったと思います。
「ま、BLですね…」という感じです。ごめんなさい。
初のレビューです。
よろしくおねがいします。m(_ _)m
尾上さんの作品ははじめて読みましたが、いやー、よかったです。
皆様がビシッと懇切丁寧にレビューを書かれていらっしゃるので、(私の文章力がショボいので)
そのへんはこれ以上は書き込みは必要ないかと。
でも私の感想をちょっとだけ書かせていただくと、皆さんと同じく資紀の希に対するはじめての出会いからそこまで執着する経緯というか、決定打がはっきりしないのが残念でした。
ひょっとしてページ数制限で削られちゃったんじゃね?ぐらいスコーンと無いんですよね。文章きれいだし、グッとくるポイントがちりばめられてるし、、、そこがあればもっと脳汁がジュワッと出るのに。
だが、それがいい(花の慶次風に。)
タイトルで使わせてもらいましたが、大事なことは二回。
10ではなく9.5くらいが読み手の後を引く感じが残って。ま、いっか。
作品の不満は作者さんのせいではなく、出版社と編集者がビシッとしていないのがいけないんだと思うので。 えっ?
BLというファンタジーな世界、なんでもありな設定。
こんな素晴らしいBLがあっていいんじゃないでしょうか。
平和と自由という麻薬に浸りきったこの時代、極限の生と死、あの戦争を生きていた人達がどれほどの思いをされていたかは絶対私達には理解出来ないでしょう。
そんな時代背景のなかの命を賭した資紀と希のお互いの思いを未読の方には是非是非読んでいただきたいです。
最後に
引用するのはアウトなのかもしれませんが(アウトならごめんなさい)、某本に載っていた神風特攻隊の軍神、関行男という方が最後に海軍報道班員のインタビューで話した言葉をこちらに書き込みさせていただきます。
「僕には体当たりしなくても敵空母に500キロ爆弾を命中させる自信がある。日本もおしまいだよ、僕のような優秀なパイロットを殺すなんてね。僕は天皇陛下のためとか日本帝国の為とかで行くんじゃないよ。妻を護るために行くんだ。最愛の者のために死ぬ。どうだ、すばらしいだろう!」
はい。予想通り、神評価がズラリと並ぶ結果になっております(苦笑)。
尾上与一先生の作品には色彩や音がうまく織り込まれていて、非常に詩的で美しい。
かといって、本作を大絶賛できるかというとちがうかな。
第二次世界大戦中を背景とした、という点においてはかなり斬新だし、
タブーに近い挑戦かもしれないんですが、
逆にそれがBLに『悪用』されているような気がしてしまうのはワタクシだけか?
愛した人の身代わりに死ぬ、という究極の献身愛はいいよ
ただ、あまりに戦争に対するリアリティー薄くて、
戦争を背景にしているにしては甘すぎる。
それをBLだからとどうしてもスル―できない自分が存在してしまいます。
相当時間かけて資料集めた、ということがあとがきで触れられていますが、
その結果がコレか???というのが率直なところ。
あまりに特攻隊を美化しすぎている。それをわかっていて書いてるにしても。
リアリティをどの程度BLというジャンルに持ち込むか、っていうのは
しばしば難しいところではありますが、
こんな中途半端な形で戦争を持ちこむのなら
やらないほうがよかったんじゃないかとすら思える。
あまりに命の値段が安売りなんですよ。
ゲーム世代にはこれぐらいがちょうどいいのかもしれないが。
すくなくとも祖母両親から聞く程度には戦争の悲惨さを知っている世代のワタクシとしては
どうもすっきりしないものが残る。
「二月病」からこっち、尾上作品を読んでいるが、
超辛口の言い方をすれば、題材のインパクトはあるが、
真価が問われるのはこれから先だろうなというところ。
暗い時代背景の中、鮮烈な物語だったと思います。
太平洋戦争の末期、九州大分の名家跡取りの海軍士官・資紀。
面子を立てる為に特攻隊員を出さねばならない家に、
資紀の身代わりになるべく養子に迎えられた、天文学者の家の四男坊・希。
希は幼い頃に資紀に命を助けられた経験があり、以来ひたすら彼を想っている。
心優しくまっすぐな希の、資紀の為ならば命も惜しまぬ健気な恋心。
しかし、彼以上に強い秘めていたのは実は資紀だったと、衝撃の事件を通して分かる…
その目を見開かされるような、鮮やかに突きつける迫力は、
事件のグロテスクさを凌駕して、読み手の胸を詰まらせます。
「遅れて届く光」「見えなくても常にそこにある」など、星を描写した言葉が散りばめられ、
振り返るとそれがまさに彼の心そのものであることも、切ななさを際立たせます。
脇役の光子や新多もキャラクラーとして魅力的ですし、資紀の母の造形もいい。
ただ、すいません、ここからは皆様に顰蹙かもなのですが…
まず、あの泣き喚いていた5歳の子どもにあそこまで執着する資紀の気持ちが、
どうしても分かりません。
希の方はまだ分かるんです、でも。
幼い日の出会い以降、希が養子に入るまでの
振り返ればなるほどなぁと彼の想いが腑に落ちるようなエピソードが欲しかった…
それから、書庫で星空を見ながら「何故予科練に行った」と問う…場面はいいのですが
以降、お正月まで彼が繰り返し希を抱いていたことが、しっくりこない。
そして。
個人的には戦後は不要に思えました。
死亡を伝えられたが、遠い星の瞬きのような一縷の望みを抱き続けずにいられない…
くらいの終わりが、好みでした。
番外の「サイダーと金平糖」は、全く別な可愛い話として読めるんですが、
本編での戦後の話は、そこまでとテンションが変わってしまった感じがして、
静かな星空を背景に描かれる、峻烈なクライマックスの事件までが、
非常に美しかっただけに、安っぽくなってしまったようで残念な感じがします。
楽しみにしていた尾上さんの新作。
でもその時代背景と特攻の文字に、ちるちるさんから届いた本を開くのがためらわれ、タオルを用意して思い切って読み始めたのを思い出します。あれから二週間、何度この本を読み返したでしょうか。そのたびに、希と資紀の一途さに心を打たれ涙が出てきて、タオルを手元に引き寄せています(笑)
ネタバレ有りで。
幼い頃自分の命を救ってくれた名家の坊ちゃんである資紀をずっと慕い続けていた希は、喜んで資紀の身代わりとして特攻に出ることを承知します。けれども再会した資紀は希にそっけなくて。しかし特攻に召集されるまでの間、時折見える資紀の優しさを、大切に拾い集めるようにして過す希です。
そして正月を境に、資紀は希にひどく冷たくなり、八つ当たりのような暴力までふるい出します。読んでいる私も、希と同じく坊ちゃんの気持ちがわからなくて、思い出のトンボ玉まで砕かれた時は、辛くて苦しくて。やっと心が通じたとのかと思った後のあのショッキングなシーンでは、心の中で悲鳴を上げていました。結局操縦桿を握れなくなった希の代わりに、資紀は特攻に出撃してしまいます。
・・・その胸に希の右手を抱いたまま。
この後はもう怒涛の展開へ。
どうして資紀は希に冷たい態度をとったのでしょうか。なぜ、希の右手を切り落とす暴挙にでたのでしょうか。謎が一挙に解けていくと同時に、資紀の深い愛に涙が止まらなくなりました。
すべては愛する希の命を救うため。あの海岸での出会いからずっと希が資紀を慕っていたように、資紀も希を愛していたのです。
“予科練卒は最も特攻に近い位置にあり、希の出撃を回避するために自分の身代わりとして希を大分に呼び戻す。そしていよいよ大分の部隊に出撃命令が下れば、操縦桿を握れないよう希の右手を切り落とし、彼の出撃を阻止して自分が特攻に出る”
資紀は考えに考え抜いて、この計画を立てたのでしょう。自分の死後に希が未練を残し悲しまないように、わざと希に冷たく当たりちらし、希の恋心を砕くためにトンボ玉を割った資紀。右手を切り落とすという冷徹で一見狂気ともとれる行動も、ただただ希の命を救うという目的から出たものだったのです。
こんな計画を抱く資紀が、再会した希に「坊ちゃんのためなら喜んで、俺は特攻に行きます」と言われ、「坊ちゃんの指揮下で活躍をしたいから予科練に進んだ」などと応えられて・・・そんな希に、わざと冷たく当たらなくてはならなくて・・・希も辛かったけれども、資紀の気持ちも苦しくて泣けてきます。
資紀の本当の想いを知った希。自分が資紀のシリウスだったことを知った希。
けれどもその資紀は、特攻で散っていってしまいました。
もう、悲しくて悲しくて、用意したタオルがびしょびしょで(苦笑)
でも、尾上さん、やってくださいました!!おおおおおお、資紀が生きていました!!ありがとうございます。
ここからはまた、歓喜の涙がドバっと。どれだけ泣いてるんでしょう(笑)資紀が死んであのまま物語が終わった方が、物語の完成度は高かったのかもしれませんが、それは辛すぎて私はちょっと浮上できなかったでしょう。“東映動画の西遊記”(古っ)でリンリンが死ななくて本当によかった派としては、このラストで一気にテンション盛り上がりました↑↑↑
その後のお話“サイダーと金平糖”の二人は、甘く優しくて。酔った資紀が次々といかに昔から希を想っていたかを披露していくのが、すごく微笑ましくて。家の前の餅のエピソードには爆笑しました。資紀、可愛い!!
本当に何度読んでも心にしみる素晴らしいお話です。希が小犬のような健気で一途な愛情を示すのに対して、一方の資紀は表面冷静で中身は愛の炎がゴーゴーと渦巻いているという・・・耐えて耐えて耐え抜いた資紀の愛に、読み返すたびに涙が出ます。大好きな本がまた一冊増えました。
(せっこさんが教えてくださっているように、尾上さんのHPにはssが二編、そしてイラスト担当の牧さんもピクシブに美しい絵をアップされています。この絵見たさにピクシブに登録した私(笑)牧さんのイラストもこの話の世界を深めています。海に映るオリオン、ジャノヒゲの実、希のてのひらのトンボ玉など、作中のキーワードとなる小物が澄んだ青の世界に並べられた表紙。その中に尾上さんの名前だけが鮮やかなオレンジから青へと溶け込んでいて。このあたたかいオレンジ色は、ルリビタキの脇腹の色なのかも・・・と、一人想像して楽しんでいます)
待ちに待っていた、尾上さんの新作。
ちるちるさんから本が届いた日、上京せねばならず後にしようかと思いましたが我慢できず、新幹線の中で読み始めました。
相変わらずの不穏な始まりと、美しい情景描写に胸がときめきます。
あとはもうこの作品の世界に没入していました。
大宮駅について、ギリギリに気が付いて慌てて降りましたが。
乗り換えで湘南新宿ラインの電車を待ちながら、彼らの佳境へ。
なぜ資紀は希にあんなに辛く当たっていたのに急に…と思っていたら…
ええっ!ええっ!ええっ!
ああ、そうか、そういうことか。
早く気が付け。希ちゃん!!
そう思っていたら電車が…
乗り込んで、我慢できずに続きを読み始めて。
滂沱…おばちゃんが恥ずかしげもなく電車の中で泣きながら本を読んでいる。
どれだけ周りの方を恐怖と嫌悪のどん底に突き落としているかわかっていても。
やめられない。とまらない。
池袋につく頃にはもうすぐエンディング。駅の近くの喫茶店に入り短編を読んで。
もうしばらく呆然…。陶然…。
この作品の世界から抜けて仕事するのが嫌で…(笑)
ネタバレ以下します…
ネタバレオッケーでアンハピ苦手で、ジュネ苦手な方。
安心して お読みください。
皆様おっしゃっていますが、三作目にして尾上さん、ばっちりボーイズラブに仕上げてきています。わかりやすくてけれど深い。
ちゃんと幸せになるけれど、カタルシスもあり、ドキドキもあり、謎もある。エッジもきいていて、個性的。
ラブもエンタメの要素もばっちりです。
物語の奥行きとは…作品には描かれなかったけれど作者の頭の中にはしっかりあるエピソードの数と表現されなかったけれど作者が読みこんだ資料の多さと取材と思案にあるのではないかと思います。
尾上さんのキャラクターには脇役一人一人に人生を感じます。
ストーリーの為だけの当て馬ではなく、それぞれのキャラクターにそれぞれのエピソードが作者の中ではいろいろあるに違いないと感じます。
気になるキャラもいっぱい。なのにそれをばっさりと切り捨てているからこそ、生まれる奥行きにうっとりします。
これを読まずして2012年を終えるのは大損ですよ!!
ぜひお読みください!
そして、尾上さんのHPにて番外編が読めます。
できれば本編読後にどうぞ。
尾上さんの新作が読めて本当に嬉しい。
ゆっくりでいいから、じっくりと。
こんなに素敵な作品をまた読ませてほしい。
大好きだ…
読者への誠実さと小説への尊敬と情熱とこの男同士の世界への愛情を心から感じさせてくれる尾上与一という作家さんの世界を早く早く経験してください。
天球儀、右手のホクロ、シリウス、片思い、反転、いくつかのキーポイントの言葉が
後半に怒涛のように押し寄せてきて唐突に真実が降り注いでくる。
う~ん、訳が分からない滑り出しですが、読み終えると浮かんでくる言葉の数々。
幼い日の二人の偶然の出会いが、その後の二人の一生を左右する事になります。
時代は戦時中、終戦間近の年代の神風特攻隊と言われていた航空特攻を背景にしてる話で
村の旧家で地主でもあり名門の家の一人息子のお坊ちゃまの代わりに、航空特攻に
いく事が決まっている受け様とそのお坊ちゃまの攻め様との愛の物語。
子供の頃に攻め様に助けられた時から攻め様に憧れ、軍の中尉でもある攻め様の父親から
攻め様の身代りに特攻に行く事を打診され、恩返しをしたかった受け様は喜んで引き受ける。
でも攻め様はそんなことは望んでいなくて、受け様に対して冷徹な態度をとるのです。
それでも、昔から憧れていた受け様は攻め様に嫌われていたとしても、攻め様の
身代りでお役に立てる事が幸せだと思える程攻め様に心酔してる受け様。
それに、攻め様が昔の事を思えていて、自分の右腕にある星座のようなホクロの事まで
しっかり覚えていてくれた事が更に受け様を幸せにする。
しかし、そんな幸せな気分も次第に攻め様の理不審な態度や言動に落ち込むようになる。
更には、攻め様に無理やり抱かれ、言葉も無く凌辱されるようになり、あれ程攻め様に
憧れ心酔していた受け様の心に困惑や戸惑い、理不尽さに対する怒りを思える。
そして、最後には、凌辱された後で星座をちりばめたような天球儀みたいだと言われた
右手を攻め様に鉈で切り落とされてしまう。
そこからは、攻め様に対する憎しみで、二度と飛行機に乗れない、操縦桿を握れない事に
絶望し、攻め様への思いが粉々に崩れ落ちてしまうのです。
そして、受け様は長く寝床に着く事態になり、攻め様は初めから決まっていたように
特攻へ任命され、飛び立つ事になり、別れの日がやってくる。
受け様は飛び立つ攻め様に対して憎悪を抱きながらも、気が付けば目で追ってしまう
自分に呆れながらも、何故か微妙な違和感を感じ始める。
攻め様の特攻服の胸元のシミ、奇妙な膨らみ、自分を見つめる穏やかな目。
そして唐突に目に前に見えなかった全ての事が・・・
不器用すぎる程の愛情を受け様に抱きながらも決して己の心を見せることなく、
過去の思い出や尊敬や優しさ絆、全てを受け様から断ち切るように冷徹に接した攻め様。
自分の狂おしいまでの愛情を隠し、酷い仕打ちをし、憎まれるように仕向け、
それでも成し遂げたかったのは攻め様の命を、愛する者を守る事、その1点だけ。
ヤンデレにも見える程の強い思いを感じる作品で、戦争の理不尽さを背景にした
物語は心を打たれる素敵な作品になっていました。
戦争末期の特攻を背景にしたお話。
そう聞いただけで、脳裏には過去june作品にあったような魂との再会や、生き延びてしまった恥を感じて病むとか、または体が不具になりという、悲しいお話を想像してしまいます。
しかし、これは現在のBLです。
戦争・特攻という背景をうまく使い、互いの、互いを想う気持ちのスレ違い、しかし深い想いという、愛情をきちんと真ん中に据えた安心して読めることのできるお話です。
経過には、とても辛い出来事も待っていたりします。
しかし、それも相手を思うが故なのです。
だから、ラストの展開に予想はできてもとてもほっとし、安心を得ることができるのです。
この作者さんの特徴でもある、言葉の選び方、印象的なエピソードの挿入とそれをキーワードにした使い方。
そこにも引き込まれる魅力があります。
そして、挿絵は「日本菊花聯合艦隊」という艦の擬人化漫画が絶賛された牧さんが担当しています。
漫画とはまた違った筆使いで新しい側面を見ることができました。
予科練を出た希は、子供の頃自分を助けてくれた人の恩に報いるため、
ずっと想っていた人の代わりができるならと、喜んで身代わりの特攻に出ることを承諾して、その人の家の養子になります。
その恩人で身代わり相手であり、長年ずっと想いを募らせていたその家の嫡男・資紀と再会することができますが、希に対して顔をしかめつれない態度を取る資紀。
それでも、保護したルリビタキの世話や、書庫の整理で言葉を交わすのだが、ある日突然押し倒されて無体に体を奪われる。
それからずっと、希には苦しい試練のような辛い交わりの日を強要されるのです。
そんなある日、初めて気持ちが通じたと思った日、希は右手首を切り落とされ、
そして、資紀が特攻へ出撃していくのでした。。。
彼等の初めての出会いのシーンが全ての始まりです。
希の手にあるオリオン座のような黒子。
それは裏表逆さまに記しているのですが、父親が天文学者だけあって、夢のある表現がさされています。
ただ水に写すのではなく、海に写った星とか、手に天球儀があるとか。
実にロマンチックなその話が、わずか5歳の希の口から語られる。
その時から資紀の希への執着と憧れと恋情は芽生え、そして育っていったのです。
まさに執着愛です。
なのにどうしてひどい仕打ちを?
それが時代背景なのです!
互いに互いを守りたい。
どうせ死にゆく身なら最後に好きな人に会いたい。
それが挺身であり、身代わりだったのです!
しかし、互いがそう思うがあまりに悲しいスレ違いは一見バッドエンドの様相をみせるのですが・・・
その後の展開において、資紀のしたたかさを見ました。
これも執着ではなかったでしょうか?
本編が切ない系の展開だった分、その後を描いた【サイダーと金平糖】は彼等基準で十分に甘いお話でした。
資紀の想いの深さを思い知ります。
作者さんはよく調べられたと思います。
戦況が悪化してきた44年10月に神風特別攻撃隊が編成され、予科練など航空隊所属の者はみなその配属になりました。そして、海軍は特に南九州にいくつかの特攻の基地がありました。(知覧や鹿屋が有名ですね)
ここの舞台になった串良の基地からは特攻で10人の戦死者を出しています。春から沖縄特攻の基地となったところです。
希は11月に呼ばれていますから、まだ予科練や学徒動員で海軍兵学校を出た人材が揃っている時期ですし、時期的にもぴったりと合います。
きっと調べるのは辛かったでしょうね。
「お国の為に行きます」というのは名目で、皆、国にいる愛する人を守るために志願して行ったのです。本当に死にたかったわけではない。
この愛する人が予科練に入ったと知ってなんとかしたいと思った資紀。
愛する人が死にに行くのがいやで身代わりにたった希。
まさに互いが守りたい人だったのですから。
希の髪が長めの設定になっています。
特攻隊では、残された写真など見ると、結構きちっとした人ばかりでなく、長髪にしたり自由な格好をして写真に写っている人もいます。神になるのだからと、結構自由にできたようです。
ですから、自分的に違和感をかんじませんでした。
自分的に、結構こういう戦争モノにはちょっとウルサイ部分があります。
しかし、その部分もクリアして、なおかつ、愛情の物語としてきちんと見せてくれた部分はとても見事だと思いました。
スレ違いは苦しかったけど、この「守りたい」想いがひしひしと伝わって、深く強い想いが伝わって、とてもよかったのです。
評価は、今のところ萌え萌えですが、ひょっとしてさらに読み返すと上がる可能性もあります。