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steno grafica
…どうしてこう、ミチさんの文章は私の心を捉えて離さないのでしょうか…。
どうやって敬意を表して良いのかわかりません。
年の差ラブ、と言ってしまえばそれまでかもしれないんですが、
この度も素晴らしい心情の描写の嵐!!!
大体にして、速記者を主人公にするあたりから凄いですよ!
色々勉強なさったでしょうね…。
頭が下がる思いになってしまいます。
正直、私は頭が悪いので国会や政治の事はちんぷんかんぷんですが、
それなりにわかりやすく説明して下さっていますし、
やっぱり(当然でしょうけど)様々な人の感情が行き交う場所なんだなぁと。
誰にも気に留められず、ひっそりとただ毎日職務を遂行していて、
家事一般をそつなくこなし、
感情の起伏にも恋愛にも縁が無い碧。
反対に、誰にも愛想が良く、
下ネタを他人と話しても下品さを感じさせず、
若者を盛り上げつつ、仕事にも全力な西口。
碧が西口の声と話し方と食べ方がずっと気になっていたというのも萌で、
話すきっかけになったトラブルで、
西口に庇ってもらったにも関わらず
素直にすぐ感謝の気持ちを伝えられないで悩むところも萌!!
序盤からぐぐぐいぃぃぃと掴まれました。
碧の手作り弁当を奥さんの愛妻弁当と勘違いしてっていうのも
後々引きずるんですが、これがまたいいわけですよw
年上の西口が、大人らしいスマートさを見せたかと思えば
子供みたいな面をさらけ出したりして、
これで好きにならないわけないって!!っていう。
別れた奥さんの事も、同僚の想いを寄せてくれている女性に対しても
西口なりの誠実さで関係していて、
本音を吐露する時にはわざと茶化したり…。
そして、別れた奥さんに仕事でも、人間としても負けたと
敗北感に打ちのめされた過去があり、
それを碧には話してしまいます。
好きすぎる、こんなおっさん!(そんなにおっさんぽくなかったけども)
愛しくてかなわんのです。
碧は近年の若者には滅多にいないような
真面目でまっすぐで…。
いつも、簡単とは言いながら
きっちり食材を使いこなして食事を作る自分が
男として恥ずかしい気がしてくる可愛らしさがいい!
コンプレックスに思う事ないじゃんか!
むしろ凄い事なんだよ、碧!
ちょっとした諍いがありながらも、
助け助けられの種明かしが、とにかくずっしり来ました。
それぞれの人間関係が、二人をそのまま象徴しているようでした。
心が温かくなって、涙ぐんでしまいましたよ。
そんな二人が愛を確かめ合うシーン、
西口がここで少しおやじっぽくて良かったです!
そうこなくちゃーw
頑なな受けが恥じらいながらも感じて乱れていく姿は
これこそBLの醍醐味!!みたいな気さえします。
敬語もいいし♪
『off you go』の佐伯は本当に口が悪くて、
実は私ちょっと苦手なんですけどもw
でも今回は良いスパイスになってくれました。
静はパートナーですごいなというかw
全部込みで愛しているんですけどね。
そしてこのシリーズの挿絵、青石ももこさん、
ミチさんもあとがきでおっしゃっていましたが、
「ちょっと体温の低そうな男の人」がたまらんです!
更にミチさんのブログのSS『ハートグラフィカ』
本編読後に是非是非!!
短いのに悶えるー!!ぐあー!!
ささいな、同じ様な事考えても
こっそり思うだけで口に出さない大人の男二人。
もう、勘弁して…。
(嘘です!もっともっと読みたいです!!)
一穂先生の作品は独特の文体(体言止め、修飾語が若干多め)から今まではちょっと避けておりました。
(先生の大ファンの方、申し訳ございません!あくまでも私独自の感想なので許してください)
しかしこの作品、読んでみると…高評価も納得です。
ステノグラフィカは暗号という意味を含むそうです。
国会速記が暗号のようだから、ということと、
「人の本当の想いはまるで暗号のように隠れて見えず、解読して(心を通わせて)初めて理解できるもの」であると、ダブルミーニングを持たせたタイトルではないか、と思います。
顕著に感じたのは皆様も書かれている、あのご老人のくだり。
本編もさることながら、萌え心を多いにくすぐられました。
この一作で一穂ミチファンになりました。
一穂さんの描く年の差カップルが結構すきです。
シュガーギルドもそう。
職業や仕事の描写がかなりリアルできちんと描かれているところや独特な表現の上手さにいつも脱帽です。
しかも今回は主人公碧の作るお弁当ったら!
本人は至って普通のどこにでもある珍しくもない弁当と謙遜していますが、主婦歴だけは無駄に長い私にとってはもう、参りました〜って感じです。
家事も淡々とソツなくこなして、それが全く当たり前で特別なことと思っておらず、全てにおいて几帳面に丁寧に日々を過ごしている、しかも謙虚に。
西口じゃないけど、どうしたら今どきこんな青年が育つんでしょうね。
碧の作る料理は、まるで本人を表すように派手さは無いけど、文字で読むだけでもおいしさが伝わってくるようでした。地味な作業にも愛着を持って手を抜かず丁寧に仕上げてゆく。こんなところも目立つことが好きではない碧の人柄を上手く表しているなと感心します。
西口がうんと年下の碧に安らぎと愛しさを感じ、時に甘えたり、鼻の下を伸ばして締りのない顔をしてるところがかわいいな、と。
つい二人の幸せを祈ってしまいました。
続きのお話をまた書いて欲しいです。
is in you、off you go、そしてステノグラフィカと三作続けて読みました。
なんか、もうどっぷりこの世界観にハマってしまいました!
一穂ミチ先生の本は他にも何冊も読んでますが、
このシリーズが一番好きです。
私は「国会速記者」という仕事は全く知りませんでした。
国会中継自体、見る事無かったですし。
でも読んでると、なんとなく国会に興味も湧いてくるし、
議事堂にも行ってみたくなる。ほんと、野次馬ですが(笑)
壁のアンモナイトの化石や、郵便ポストの描写の部分とか、すごく好きです。
この本で一番の見所は、もちろん碧のお弁当でしょう。
本当に美味しそう!毎日これだけのお弁当を作ってる碧はすごい。
西口じゃなくても、一度食べてみたくなります。
碧と西口は、議員に無理を言われて困っていた碧に、
西口が助け船を出した事がきっかけで言葉を交わすようになります。
でも本当は、知りあうずっと以前からお互いに意識しあってたんですよね。
碧は、西口のしゃべっている声を聞いて。
西口は、碧のお弁当を食べている姿を見て。
二人が惹かれあいながらも、碧には妻が、西口には元妻がと、
それぞれ愛する人がいると勘違いして一歩を踏み出せずにいる様子は、もどかしいです。
(碧の「妻が居る」説が、訂正出来ぬ間にどんどんドツボにハマっていくのは
可笑しくもありましたが)
碧の「あの日、あなたに見つけてもらえて、どんなに嬉しかったか」
が、なんかすごくいじらしくて切なかったです。
大磯の松田老人、存在感がありました。
西口がすみれの事件の責任を取る事になった時に、碧が松田の前で泣く場面、
松田の懐の大きさを感じました。碧と松田の関係も、すごく好きです。
最後に松田の過去が少し明かされますが、これがまた痛い話でした。
ある意味で本編よりインパクトがあったかも・・・
「off you go」の佐伯と静も登場しますが、
佐伯、さすがです。チョイ役でも相変わらずブラックで(笑)
初対面の碧に「こいつ悪気があって口も悪い」
と紹介されてしまう佐伯は、ある意味大物かもしれません。
三作読み終わると、また最初から読みたくなってしまいます。
無限ループにハマってますね。
新聞社シリーズ3作目になる今作品。3作目ではありますがそれぞれ独立しているお話なので、これ単品でも問題なく読めます。新聞社シリーズは今現在4作品出ていますが、私はこれが一番好きです。なんといっても碧が可愛い!
この作品を読んで初めて「国会速記者」という仕事を知りました。なじみのない仕事ゆえに非常に興味深く読みました。目立たず、影のように表に出てはいけない仕事。それにうってつけのような地味な碧。これと言った趣味もなく外出と言えばボランティアで年配の方のところに出かけるくらい。家事は完璧で、すごくおいしそうなお弁当まで作れる。こんなお嫁さんが欲しいなあ(自分がなろうとは決して思わないけどw)。
お弁当って料理を作れるってことももちろん大事なことだけれど、それ以上に、あるものをうまく組み合わせて作るとか一度にたくさんの種類の料理をパパッと作れるとか、いつもきちんと食料品を管理しておくとか、いろいろな要素が組み合わさってないと毎日作るって大変なもの。碧のきちんとしていて、整理上手で細やかな性格を表すのにとても効果的な表現だと思いました。
対して攻めの西口さん。彼もとても好き。個人的に、ああいうさっぱりしていて頼りがいのある年上の攻めが好きということもあると思いますが。普段はざっくりしているのに、碧のことが絡むと途端にワタワタしてしまう西口さんもとても可愛らしいと思いました。
性格が真逆だったり、西口さんの前妻さんのことがあったり、碧に奥さんがいると西口さんが勘違いしていたりとバタバタするところもあるのですが、根本のところに二人がお互いを思う気持ちが溢れていてほんわかと読むことができました。
それと、「off you go」の佐伯さんは出てくる作品ごとに印象が変わりました。今まではあまり好きなキャラではなかったのですが、今作品の佐伯さんはいい味出してます。スルメのような…(噛めば噛むほど味が出る)?イヤ、失礼。
一見良妻賢母のような碧ですが、自分の仕事に誇りを持っていたり、人に対する気持ちも一本筋が通っていたり、非常に男前な性格なんじゃないかなと思いました。
作家買いで一穂さんの作品を手当たり次第に読んでいた時に出会いました。
一穂さんの新聞社シリーズ(?でいいのかな?)の中で一番好きなのがこれでした。
攻めも受けもキャラクターがいいです。バツイチ国会記者の攻めと古風で番茶の茶殻を床にまいて掃除しちゃう家事が得意な国会速記者。
夜討ち朝駆けの仕事をしている記者と判を押したように決まった生活をする速記者。
最初は受けが声から惹かれはじめるんですが、お互いに惹かれあう流れが実に自然で納得がいく。
受けが毎日手の込んだお弁当を持参することから、攻めは既婚者と勝手に誤解するのですが、それを否定できずにそれでも近づいていく過程が秀逸です。
攻めは(俺の気持ちを)
「もうわかってんだろ?」
というんですけど、そのあと思いが通じ合う場面よりそのシーンの方がキュンとしましたね。
この作家さんの作品は大好きです、言葉の使い方も好きです。描写はしつこいところがあるけど、それが後で必要だったと感じることもあるので上手だなと思う。
でもHシーンが物足りないなって感じることが結構あるんですね。これもそのひとつかな、と思います。
受けが意外とすんなり受け入れてうまくできちゃうところもちょっと戸惑ったし、本当ならもう少し回数を重ねて慣れていく過程とか感度があがっていく感じが欲しかったな~と。
ただ、そのほかは私の中でトップクラスに好きな作品なので、☆5で。
acopさま、はじめまして。
私もちょうど今現在紛糾している国会のニュースを見ながら、
西口さぞ大変だろうなぁ……、
碧は揉みくちゃにされちゃわないかしら……、
いつも規則正しい生活なのに、超残業?とかあれこれ思っております。
実は私にとってはこの作品は、ちるちる初レビューの作品。
そんな思い入れもある作品なので、ついコメントをさせて頂き
失礼いたしましたm(_ _)m
面白かった〜‼︎
大きな声で一言、初めに書きたかったのです笑
『is in you』シリーズ3作目、今作のカップルはかなりの年の差ということで、読む前は若干尻込みをしておりました。
44歳は、一般的におじさんと言うのでしょうか?私見ですが、30代後半からは印象によりけり、その人となりによると思っています。結論からして、西口さんは私にとっておじさんではありませんでした。壮年期真っ只中の、魅力的な大人に見えました。
今回も舞台設定が本当に見事でした。遠い記憶ですが小学生の頃、国会議事堂見学に行ったのを思い出しました。行った人はわかる、あの独特の雰囲気、周囲から逸脱した世界観が大変面白いので、まだの方は見学ツアーがオススメです。
また碧の速記者という職業ですが、知ってはいたものの深く考えたことがなかったので、すごく興味深い内容でした。碧は、速記者は透明人間、影側の仕事という風に捉えているのですが、本当に一種の特殊能力のような職業でした。一穂先生にはぜひ、一般誌でノンフィクション系のお仕事小説も書いて欲しいです。
私事ですが、ここのところ心から揺さぶられる!という作品がご無沙汰でしたので、興奮しております。今作の特に惹かれた部分は、登場人物を多面的に描いているところと、碧の初恋の、片想いのみずみずしさが文を通してありありと伝わってきたところです。
多面的、というと特に西口さんの性格付けが好ましく思いました。
グイグイ来るけど基本的に優しくて、優しいかと思えば、優しさ故に冷酷で。彼の、悩ましいが切り捨てたくない過去が、心の強弱のバランスが、最高でした。
そして、碧が西口さんに恋をしていく様子。美しささえ感じるほどにみずみずしくて、涙が出そうになりました。碧は四角四面とは違うけれど、すごくそれに近い真面目で、生きる喜びもまだ知らないような、無垢な印象を受けました。自分で丁寧に生活をする姿、布巾を縫ったり、お料理をしたりする彼には、私が持っていない物を持っている人だ、とめちゃくちゃ癒されました。家事の合間に布巾を縫う26歳、最高に可愛いです。
碧が西口に対して、すみれという女性の存在を通して、好意から来る怒りの感情が発露する場面は特に圧巻でした。
普段冷静な彼が、冷静でいられなくなり、そんな自分を、ああ、恋をしているからだとやはり冷静に見ている。その辺りの表現が秀逸でゾクゾクしました。
碧のモノローグに
『あなたと出会ってから、僕はすこし変わったような気がする。透明だったはずの僕を見ていてくれたと知った時から』
という一文が、ぽつりと出てきます。この言い回し自体は、特段珍しいものでは無いと思います。ですが、そのタイミングと一連の流れが本当に良くて、一気に心を持って行かれてしまいました。
最後まで勢いを落とさず読ませてくれる作品です。
今のところシリーズ内ではこちらの続編が1番読みたいです。
とっても面白かったです!
一穂ミチ先生の本はどれも優しい雰囲気で、今回もなんだか
ほっこりした気分になりました。
碧はとにかく大人しくて慎ましやかで可愛らしいです!
西口も優しく甘くてとてもいい中年だったと思います!
それだけではないのですが。
内容は結構出来事がとんとんと進んでいくイメージだったのですが、
一穂ミチ先生独特のゆったりとした空気が漂っていました。
二人がくっつくまでの間はなんだかちょっともどかしいです。
展開もちょっとひやひやしたり。
でも一穂ミチ先生の書くお話は大抵ハッピーエンドなので、安心して読めました。
可愛らしいお話を読みたい方には、うってつけだと思います。
一穂さんの職業ものが大好きで、本作品は新聞記者と速記者という組み合わせに大いに興味が湧いて読みました。新聞が好きだし、速記は昔、漫画雑誌に通信添削の広告が載っていたのを思い出しましたので。年代がわかってしまうかしら(笑)。
新聞記者の西口(攻)は、明朗快活だけれど、自分の器の小ささから妻と別れた過去が未だ傷になっている。国会速記者の名波碧(受)は、自分の仕事が時代の流れに消えゆくことを受け入れながら、研鑽を怠らず、日々を静かに丁寧に暮らしている。
そんな対照的な二人が、ふとしたことから友人のような付き合いをすることになり、やがて互いに強く惹かれていきます。
碧が、その職業ゆえに身についた観察力で、明るい西口の寂しい部分に気づき、自分もまた寂しいのだと気づく描写が、しみじみと胸に沁みて、上手いと思いました。西口が碧に、「最高の、最後の速記者だ」とエールを送る場面にも胸が熱くなります。
言葉を扱う仕事に真摯に打ち込んでいる者同士だからこそ、響くものがある。二人が惹かれ合うのが納得できるし、かれらの職業設定がすごく効いていると思いました。
西口と妻が結婚時代に読んでいた文庫本『ムーン・パレス』が、碧の気持ちの変化、西口と妻の年月を表すのに、大きな役回りを果たしているように感じました。言葉に関わる仕事をしている彼等らしい知的な描写がとても好きです。この小説、実在するものなのですね。
碧は、西口が貸してくれたその本を読み、最初は二種類の傍線に二人の仲睦まじい姿を思い浮かべて、その別れに胸を痛めます。そして、二度目は、二人の痕跡に胸が苦しくなって、西口への想いに気付きます。
西口は、傍線のことなどすっかり忘れています。
今は国会議員となった西口の元妻は、かつて西口が激しく嫉妬するほど有能な新聞記者でした。執務室に新たに買った『ムーン・パレス』を置いていて、それが今も大切な本であることが分かります。しかし、昔読み流していたところに小さな発見や感動を感じると話す彼女に、碧は西口の妻だったころの彼女はもういないのだな、と感じるのです。
なんとなくですが、『ムーン・パレス』は、人の出会いの不思議さとか、年月の流れをモチーフにしているのかもしれないと感じました。
西口と碧が惹かれ合うのも、出会いの不思議さゆえなのでしょう。西口のセリフ「恥ずかしいよ、俺。こんなに夢中になっちゃって」が、すごく可愛いです。掃除や洗濯はしないで、と碧に言うのも、好きな気持ちだけで一緒にいたいという純粋さを感じます。愛する人を得て、西口の心の傷は癒えていくのでしょうね。
碧が定年退職したら、最後の速記者として西口が取材する。約束で結ばれた二人は、それぞれの仕事を全うするのでしょう。素敵だと思いました。
この作品を読んだ後、国会中継等で速記者の方に目がいくようになりました。本当にチラッとしか映らないし、碧が言っていたように地味な服装をしていらっしゃいます。日本の議会政治を見守ってきた大切なお仕事、どうぞ頑張ってほしいと念を送っています。
国会記者の年上攻めと国会速記者の年下受けのお話。速記って何か分かりますか?私は知らなかった。国会での議員の発言を話すのと同じスピードで全て書き留めて、議事録を作る仕事なんだそうです。普通の文章だとまず追いつかないから、訓練された速記者だけが使える、暗号のような、速記文字という記号を使うそう。求められるスピードは10分間に4000字。速記者は記録することが仕事だから、議会では何か発言をすることも、書く文章に自分の感情を乗せる事もなく、ただひたすらに黒子として徹して、ペンを滑らせるのみ。
そんな仕事に就く受けの名波は、普段の生活でも物静かで落ち着いた性格。自分のことを「透明人間」と表現するけれど、仕事に対しては誇りとやりがいを持っていて、真面目に務めていた。そんな名波が少しだけ気になっている人物が、攻めの西口。昼食の時間に食堂でいつも聞こえてくる彼の声は滑舌良く、区切りが明確で、聞き取りやすい。名波は職業柄か、西口の声が聞こえた時、いつも思わず耳をそばだててしまう。けれども直接会話したことがある訳では無いので、一方的に相手のことを知っている、という少し不思議な関係が続いていた。
ある日二日酔いの西口に、名波が自分で作ったお弁当を食べさせたことをきっかけに、2人は仲良くなっていく。少しずつ会う機会が増え、会話をしていく内にお互い恋愛対象として意識していくものの、西口は名波が毎日持参する手の込んだ弁当を理由に、名波のことを妻帯者だと勘違いしていて…。というお話。
しっとりした大人の上質なBL。あとお料理の描写がとっても魅力的。国会とかほんと全然分からないアホな私だけど、とっても面白く読めました。こんな難しい業界や職種をなんの違和感も感じさせずサラッと書いてしまってる一穂先生はやっぱりすごい。
受けの名波碧がとっても健気でいじらしいくてかわいい。料理上手。家事全般もできる。そして相手を立てながら聞くのも上手という、少し女性的な、不思議な魅力を持っている受けです。でも仕事はバッチリこなすし、しっかり自分の考えを持っているので決して女々しい訳ではありません。話の中で、この子が攻めの帰りを待って1人で眠る描写があるんだけど、すんごい広いベッドなのに、壁際にちいさくちいさく丸くなって寝てるんですよ。こういう、わざとらしさとか押し付けがましさのない健気さが物語の端々に自然に組み込まれてて、この子のことがとっても好きになりました。
攻めは40代既婚者バツイチ。大人の魅力たっぷりで、受けと違って社交的で、記者という職業柄、とても華やかな人物。普段は堂々と構えているけれど、受けのことになると動揺してわたわたしてしまったり、悶々としたり…。と、とても見ていて可愛らしかった。普段は受けのことを「名波くん」て呼んで、年の差を意識せず気さくに話すんだけど、大事な時に「碧」って呼び捨てにして年上らしく振る舞う所がずるいしかっこいい。あと絶対受けのことだけは「お前」って呼ばずに「君」って呼ぶんです。そういう丁寧な部分も素敵だなと思いました。
好きなシーンは自己嫌悪と疲れと受けの健気さに我慢がきかなくなって思わず受けを呼び捨てにして無理やりキスしてしまう場面と、思いが通じあって、攻めが受けに優しく語りかけるところです。
全体的に静かで優しい雰囲気が漂う素敵な小説。とってもオススメです!