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ケータイ小説が原作とのことで、あまりに御都合主義の超展開がマンガ化特有のものなのか確かめるべく、原作まで読みに行ってしまいました。
親友だと思っていた男に無理矢理犯された過去を持つ啓と、それまでもそれ以降もずっと変わらずそばにいてくれたもう一人の親友・春樹。
あのことから10年(原作だと途中から8年になったり10年に戻ったりしています)、春樹の父が経営する会社に勤めている啓のそばには変わらず春樹がいる。
ある日、残業で終電を逃した啓は、春樹の家へ泊まりに行くことになり…。
という始まりです。
いやはや、ここから怒涛の超展開でした。
予想通りとは思いますが、春樹は啓をずっと好きだった→「啓の嫌がることはしない」と言いつつ、「(下の名前を呼ばなかった)お仕置き」と言って嫌がることをする→後輩社員も啓狙いで無理矢理…→後輩社員は実はあの人の弟で…→啓のアパートが火事に遭って春樹の家に居候することに→春樹の父(社長)が引き抜いてきた社員が実は…→その社員が「春樹、今日泊めて」→さらにその社員が「オレは啓を諦めない!」
と、いう。
ほぼネタバレしてますが、そういうことです。
10年前のトラウマの元が同じ会社へやってきて、しかも受けが居候する攻めの家に泊まる、という。
さらに言ってしまえば、トラウマの元の弟もずっと啓が好きだった、という。
そして春樹の父(母親の再婚相手)はトラウマの元の弟狙いっぽい、という。
扱い方によっては面白いテーマだと思うのです。
過去に無理矢理犯されたことがトラウマになって、同性愛は絶対に無理!という主人公。
その主人公を一途に想い続けたものの、気持ちが抑えきれなくなってしまう攻め。
なのですが。
啓の「男はもう好きにはなれない」(原作も同じ表現でした)というモノローグだと、一度は好きになったという風に読めてしまう。
さらに攻めがすぐえろす方向にちょっかいを出すのも、10年隠し通した気持ちにしてはやり方が何か軽い。
トラウマの元の弟に至っては行動からも言動からも表情からも啓への愛情が感じられなくて、何かに復讐しているかのような含みがあるようにしか見えず。
しかも上司や先輩社員をいきなりの呼び捨てには面食らいました。
トラウマの元も強姦→転校で10年会っていなかったにも関わらず軽い。
「あー、あのときはマジごめん。でもオレ、啓のこと、今もマジだからサー」くらいのノリ。
自分の仕出かしたことで相手がどれだけ傷ついたか感じ取ることが一切できないのです。
もう少し殊勝にしてくれていたら、「それだけ想いが強くて、切羽詰まっていたのか…」と思えたかもしれないのに、そういう余地が全くなかったです。
さらにこちらも社長にタメ口という暴挙。
そして主人公は春樹に気持ちが傾いていて、体も流されているのですが、それも軽く感じられてしまう。
性的ちょっかいに簡単にどぎまぎする度に、こちらは「あれ、トラウマってそんなもん?」と鼻白む思いでした。
もう少し、トラウマとの葛藤と春樹だけが特別な理由っていうか、エピソード的なものがあれば説得力が増したのになあと残念でした。
春樹も余裕の表情でいたずらやからかい半分に手を出すのではなくて、切羽詰まった感じ、抑えきれない感じで手を出してくれていたら…と、こちらも残念。
コテンパンですが。
作画もかなり残念でした。
1〜3話辺りは攻めの懇願するときの顔が全部同じ顔(下がり眉)で、ギャグに見えてしまいます。
途中から扉絵が劇的に変化して、攻めの表情も大分豊かにはなるものの、「他に頼める作家さんがいなかったものか…」と思ってしまいました。
ちなみに原作ではもう少し啓の逡巡や春樹の抑えられない気持ちの描写はあるものの、トラウマ兄弟と社長の軽さは変わらずでした。
マンガの方はRentaで6話まで購入できますが、続きがずっと更新されないので打ち切りでしょうか。
BLを文字で読むのは気恥ずかしさが勝って苦手なのでえろすシーンを流し読みしたものの、全体的にそんなに長くはないので、結末が気になる方は原作を読んでみてはいかがでしょうか。
トラウマ兄弟のスピンオフ作品などもありました。