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主に秋田書店にて活躍されている方なのでマイナーかと思いますが、
少女漫画で時代物を描く人となると、この方は有名でないでしょうか。
史実からかなり脚色をされることが多いので、その辺りはすきずきだと思いますが、
逆に史実にがんじがらめになってないからこそ、フランクに読めるよさもあると思います。
また、恐らくこの方の唯一のネックであろう、人物の書き分けが甘いところがありまして、
立て続けに読みずらい、ということがありますが、
残念ながらもこの方の男色ものはこの一冊のみなので、人物でこんがらがることもありません。
戦乱の世の話となるので明るく終わる話はありませんが、
その点で問題なければ、時代物の醍醐味と実力作家さんの短編の巧さに酔える一冊であると思います。
それにしても、この本が発行されてから15年も経つのですね。
書店で見つけた時の衝撃と嬉しさ、忘れられないなぁ…。
この一冊で終わってほしくないー!とずっと願っていたのですが、
思っているだけではダメですよね。
なので、せめてレビューを書かせていただきます。
【うき世語り】
岡清三郎が宇喜多の手先として、男色家の瀧口の城主のところに忍んで来るのは史実なようです。
しかし清三郎は宇喜多直家のところに戻り、宇喜多家が毛利家に敗れるまでは存命してたようなので、そこはこの短編と史実の差でしょう。
とはいえ岡清三郎でなくても、主君と忍んだ先の敵方との間で心が揺れることは、当時多々あったのではないでしょうか。
宇喜多直家に見せた岡清三郎の笑顔が年齢相応の可愛らしさで、よけいにその心の内を思うと苦しくなります。
調べたら大竹直子さんも岡清三郎のことを「阿修羅の契」(非BL作品)で描かれているそうです。
私はまだ読んでませんが、合わせて読むとより面白いかもしれませんね。
【浮説 鞘当】
「戦国3大美少年」のうち二人の競演です。
この短編は歌舞伎の「鞘当(浮世柄比翼稲妻)」にある、
路上で名古屋山三郎と不破伴作の刀の鞘が触れ合い、喧嘩に発展するという話を下敷きにされてるようです。
お互いが持ちえない性質への憧れから発展した友情のような愛情と、彼らの主君への忠義が交錯…。
不破伴作は快活ではあったかもしれませんが、頭が良く優しい人であった説もあるので、
こんなにも抜けてて笑える人ではなかったかと(笑)
でもそこは河村さん流の美味しい料理の仕方で好感持てます。
豊臣秀次と不破伴作の可愛らしいやり取り、そして蒲生氏郷と名古屋山三郎の静かで深い情。
それぞれの行き着く先の対比が余韻となって迫ってくるお話です。
【心の果て】
この二人は非常に有名ですね!平教経と菊王丸。
やはりいいですね~!話としても、文句なし。
きっと二人が一緒に居れた時間は短かったのでしょう。
でも時間と想いの深さは比例しない。
生きることが難しい時代であり立場であったけど、彼らはしっかり生き抜いたのだと思います。
【炎塵】
非常に戦国時代らしい一遍。
大内義隆の小姓であった陶晴賢がいかにして主君を慕い、家の為に主君に反旗を翻したかを描いています。
その引き裂かれる思いに、戦国の世の難しさを思います。
ページ数は少ないけれど、晴賢の苦悩の長さと深さがよく描かれて、流石は時代物の名手だと思わされました。
【夜が終わる時】
これは河村さんにしては珍しい、現代が舞台のお話。
非BLですが兄弟愛色が濃く切ない話なので、短編集としての流れは悪くないかと思います。
最後に作者が人物紹介をされていますが、
過去に描いた自身の作品について懺悔しているのに笑ってしまいます。
男女の恋愛よりも、男同士のほうが史実に沿っていることが多いとは何事w
ネタはまだまだある(そりゃそうでしょうとも!)というのならば、是非に第2弾をお願いしたいです!!
描いてくださるのなら、あと何年でも待ちますとも!
『祈る人』(旧版)で語っていた、深井結己さんがデビュー前にアシスタントへ行ったまんが家さんです。
麗人で描かれたのはそのつながりですかね?
戦乱の時代の悲恋4編、非BL1編収録。
『うき世語り』
毛利と宇喜多、二大勢力が争う乱世、小国・龍口の領内に迷い込んできた一人の若者・清三郎。
彼の狙いは城主・撮所元常の寝首を掻くこと。
しかし元常の深い優しさに触れ、彼に惹かれていくが・・・。
主君の命には背けず、涙を流しながら本懐を遂げます。
『浮説 鞘当』
歌舞伎の『鞘当』では名古屋山三郎と不破伴作が遊女を争いますが、こちらは山三郎が伴作に軽くちょっかいをかけるといったお話です。
山三郎は主君・蒲生氏郷の方とデキていて(史実の通り?)、伴作は主君・豊臣秀次と恋人未満の兄弟のような仲の良さ。
山三郎は氏郷と共に死ぬことを拒まれ、伴作は秀次に殉じて自刃。
河村さんは短編をたくさん描かれているので、山三郎、氏郷、秀次それぞれが主人公となった他の作品もあります。
ここで注目したいのが、氏郷と織田信長の娘・冬姫が結ばれる『花散る里』。
二人の恋仲を見守る信長と明智光秀が、とても息の合ったボケツッコミを披露してるんですね。
そんな仲の良い二人だったのに、史実通りラストで光秀が裏切ります。
非情です。
『心の果て』
源平合戦の時代。
平清盛の甥・平教経×菊王丸。
この登場人物でも何作か描かれていますね。
平氏側なので、結ばれても哀しい最期を遂げます。
『炎塵』
このお話が一番好きです。
同じ人物で『氷の修羅』という作品も描かれているのですが、非BL誌掲載だったので、きっと描き足りなかったのでしょう。
主君・大内義隆を慕っていた、まだ年若い陶五郎(晴賢)。
武芸に秀でた義隆は五郎のあこがれの存在だった。
「恋しい人に贈ればその方の心を射止めるだろう」と言われてもらった素晴らしい扇を、家臣の目の前で五郎に手渡す義隆。
義隆の言動に頬を染める五郎は純情で純粋で。
二人は結ばれるのですが・・・。
時は流れ、義隆は戦を避け、宴や管弦など遊興にふけるようになってしまった。
そこで五郎が下した決断。
光秀と同じです。
『夜が終わる時』
非BL。
しかも珍しい現代劇。
交通事故で亡くなった可愛がっていた弟のために、兄が弟の望みを叶えようとする。
これもちょっと哀しいお話です。