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tada hitori no otoko
作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
連続して発刊になっているシリーズの最終巻ですが
やはり簡単には幸せになれないんだと感じる作品。
刊が進むほど受け様の中で普通の人が感じる感覚を
徐々に取り戻す片鱗を見せながら初めて人として認識し
執着にも似た思いで攻め様一人を見つめ愛する受け様。
その思いを象徴するかのような出来事が起こるんです。
最近ホテルのオープンに向けて更に忙しくなった攻め様
そんな時に攻め様から合わせたい人がいるからと言われ・・・
それは受け様の両親を殺害した被告の国選弁護士で
受け様に事件の話を聞きたいとやって来たのですが
何も覚えていない受け様は話すこともなく淡々と対応
そして流れで初公判の日に傍聴する事になる。
受け様を心配し付いてきた攻め様と裁判を傍聴するが
やはり犯人を見ても何も感じなくて・・・
それと同時期に職場である店のマスターが事故に遭ったと
連絡があり、受け様は見舞いに行くのですが病室で
横たわったマスターを見たときに受け様はショックを・・・
それから受け様は悪夢を見るようになってしまうのです。
自分の心を殺してしまったように幼い時に見ていた悪夢。
攻め様と出会い二度とみる事は無いと思っていたのに
それも、両親が殺される場面だけではなくて、攻め様が
犯人に殺害されると言う悪夢を見るようになります。
日々不安と寂しさと恐怖に苛まれるようになりますが
忙しい攻め様を案じて寂しさや不安を言い出せない。
そしてどんどん受け様の精神状態が不安定になって行く。
運の悪いことに攻め様忙しすぎて帰ってこれない時も多く
受け様は現実と架空の出来事や過去の出来事が混同して
追い詰められていくんですよね。
1度子供の頃に自分を守るように感情を殺してしまった
受け様が感情を取り戻す為の試練がかなり壮絶で可哀想。
まるで新しい感情や捨て去ってしまった思いを
再度、生み出す苦しみのようで切なかったです。
そして受け様は全てが混濁したかのよに狂気の世界に
入り込んで両親を殺害した犯人を法廷で殺そうと・・・
攻め様に身を挺してギリギリで止められますが
攻め様は怪我をして、それがさらに受け様の錯乱に
連れ戻され、攻め様に詰られる受け様。
この辺りは双方の思いがすれ違ってしまってるんですよね。
攻め様はそれ程憎いのなら自分が殺してやると、
何故自分に相談し頼らなかったのかと怒りともジレンマとも
付かない思いに駆られてしまいます。
受け様は亡き両親の仇を打ちたかったんじゃ無いんですよね。
悪夢で攻め様が犯人に殺される姿をみて混乱して
大人で理性的な考えが出来なくなってしまい攻め様を
守りたい一心での強行だったのです。
この時の受け様は大人の外見をした子供そのものでした。
攻め様に誤解され背中を向けられた時の受け様の慟哭にも
似た悲壮な嘆きと言葉は胸を抉られるようです。
この辺でちょっと攻め様に文句を言いたくなるんですよね。
でも読者の代わりにカウンセラーの多和田が攻め様を
手荒く叱ってくれます。読んでて安心します(笑)
後半は今度こそ穏やかに落ち着いていきます。
受け様が今度こそ攻め様の傍で幸せになって行く感じで
書下ろし部分で受け様の感情が安定してきているんだと
感じるエピソードがあって読みごたえがありました。
やはりとても良い作品だと思います。
本シリーズは強面な元ヤクザの組長で現不動産会社社長と
ある事件で感情の起伏がないバーテンダーのお話です。
受様の両親殺害事件の犯人逮捕を発端した
受様の犯人殺害未遂事件を描いた本編と
ホテル開業後の二人の後日談を収録。
受様は両親を押込強盗に殺された日の経験により
『人間』を動く『人形』にしか思えませんでしたが
元極道ながらも細やかでおおらかな心を持つ
不動産会社社長である攻様との出会いで
『人間』として認識できる人達を増やしていました。
攻様は
ホテル落成が迫り一段と忙しくなりつつも
受様と過ごす時間を大切にしてくれ
文字通りの幸せをかみしめるのですが
両親を殺害した男が逮捕され
彼の弁護士と引き合わされた事から
受様の中に新たな感情が芽生え始めます。
犯人とされる男は別の強盗殺人で捕まり
受様の両親殺害を告白したらしく
当時の事を知りたいと言われる受様ですが
感情の凍った受様には応える事ができず
誘われるままに彼の初公判を傍聴しても
受様の中で大きな変化はありませんでした。
しかし、
受様が務めるバーの老マスターが事故にあい
横たわるマスターに攻様の姿を重ね見た受様は
今まで意識もしなかった【死】に囚われていくのです。
犯人を知った事で
ぼんやりしていた最後の日の記憶に
おりこまれる大切な人を奪う存在。
初めて知る恐怖に受様は
今までなら平気だったはずの事も
心が悲鳴をあげるようになっていくのです。
両親の死という過去が
攻様の死という起こりうる未来として
受様を襲い始めた時、
受様は恐怖の対象である存在そのものを
排除しようと思い立つのです。
そして
向かった犯人の二度目の公判で
受様は退廷する犯人にナイフを向けるのですが
刺した人物は立ちふさがった攻様だったのです!!
攻様は悪夢に囚われた受様を救えるのか?!
ショコラノベルズのリメイク版4巻目で
シリーズ完結巻になります♪
攻様は
人として有るべき感情が欠けている受様を
なんとか人並みにしたいと思っていました。
今回、
受様と両親殺害犯の弁護士との接触を図った事も
受様の感情を揺さぶる為でしかなかったのですが
受様は攻様が思った以上に
攻様を失えない存在として認識していたので
揺り動かされた思いを内に抱えるようになります。
その上、
マスターの急病で受様は休業中、
ホテル開業控えた攻様は超多忙というすれ違いで
受様の思考は益々深みにはまって行き
結果的に受様は裁判所での殺人という
攻様の思考では思いもつかない行動をとるのです。
受様視点なので
攻様を失うかもしれないという悪夢に囚われ
更に深みにハマっていく様子にハラハラしました。
今回の事件によって受様は
自分が感情を手放さざるを得なかった原因に
真正面から対する事になります。
心が壊れない為に閉ざした感情は
攻様と生きていきたいと思ったからこそ
取り戻す事が出来たのでしょう。
今回の書き下ろしは
ホテル開業後の二人のお話になります。
旧版での最後である本編は
二人は幸せになるのだろうなって
予想的に最後でしたが
今回の書き下ろしでは
ホテルが無事に開業して
肩の荷を下ろした攻様の様子や
受様が客にアプローチされて
攻様がヤキモチ焼く様子が描かれていて
ホントにシリーズが終わっちゃうのだな
って感じの小話でした。
コレを読んじゃうと
なんで旧版にはコレが無かったんだ!!
って思っちゃう位良かったです♪
ホントに大好きなシリーズなので
スピンオフ作と雑誌付録作も文庫化して
もっと二人の世界を堪能させてほしいですね。
初版鋏み込みのペーパーは
受様がヤキモチやくお話になります。
一計を案じた攻様のオチが笑えます。
今回はバーテンダー繋がりで一作、
火崎さん『らしくない恋 』をおススメしますね。