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new moon ni aimashou
旧版レビュー済みです。
新装版で改めて読んでみたんですが、以前とはかなり感想が変わってることに驚きました。旧版を読んだときは、依田沙江美作品の中ではまあまあかなって位置づけで、再読しようとしなかったんですよね。それを後悔するほどに。
これはたぶん、今の私は昔の私以上に依田沙江美愛が深くなったからだろうと思います。「依田沙江美さんなら、行間にナニカをたくさん散りばめてくれてるはずだ!」という心構えで読むようになってるもんで。
一つ目は狼男と人間の話。
普通の作家さんなら描くだろうエピソードをかなりはしょってます。
以前はそれを不満に思ったりしたんですが、今回はむしろ、だからこそイイと思いました。
刑事さんの関わるとある過去の事件の真相が分かるタイミングが素晴らしいと思います。
二つ目はアホアホでいい加減な魔性の受けの話。
無自覚に周りを惹き付けて振り回して傷つけるの、あちゃーサイテーだなと思いつつも、滑稽で可愛いから憎めませんでした。かなり好きなキャラです。
『春にして君を離れ』
青春ですな。
切ないよ。
学生時代って、渦中にいるときより、思い出のなかで反芻するときのほうがきらめいて見えるのが不思議。
みんなが依田作品はいいというので、超人気作品を読んでみたけど全くその良さが分からず、それでも根気よく新旧取り混ぜて色々と挑戦してきた結果、なんとなくこの作家さんのいいところが見えてきたような気がします。
それは、多分重さと軽さのバランスなんだろうな~と。
全体の雰囲気が”ひょうひょう”としてるのです。
悩んだり苦しんだりするけれど、いつも最後は前向きなんです。
重篤なことも笑い飛ばすキャラクターたちに、ベクトルが下降すると、作者さんがよいしょ、よいしょ、ってテコでその矢印を上へ向けるんです(!?)
そして潔さがあるんですよ。
もう面倒くさいことは省きますっ!
彼等の今だけ見てくださいね。お品書きが決められて定番メニューとかお任せがないんですよwオススメだけしか置いてない食堂みたいな(?)
何だかよくわからんことを書いてしまいましたが、、、
このニュームーンに逢いましょうは”人狼”とその恋人の医大生の話です。
人狼は成長が早く、、、という事は寿命が短い。
だから、彼と一緒にいるために医学部を目指した主人公。
むしろ、それは彼等が恋人である以上逃れられない宿命なんだけど、だからといって悲観したり、ドラマティックに恋愛するんじゃなくて、ただ、ごく普通に相手を愛してるという関係です、っていう話なんです。
たまたま、恋人が人狼だったよってだけのことなんです。
そのとっつきは、人狼というだけで一つ壮大なファンタジーができるはずなのに、日常物語にしてしまってるのが、いいところなんだと。
『渇きの海』は他の人狼が登場します。
一度人の肉の味を覚えると、もう人間に戻れなくなる。
そんな馬鹿なことはしないよという結末ではあるのですが、これはミステリータッチですね。
『暗殺者のプロフィール』
推理小説を目指したのかな?
お調子ものの高校生はある生徒が好きで、みんなでバンドをやろうよと誘う。
その中のひとりと体の関係はあるのだが相手が一方的に思うだけで、主人公は軽くあしらっている感じがある。
文化祭に向けて練習を重ねていくうちに、主人公の周りでモノがなくなったり、モノが落ちてきたり、ひょっとして命を狙われているのか?と思うような事が連続して起きる。
この主人公には実は、バンドメンバーには恨みを買うような覚えがそれぞれにあり・・・
結末に「えっ!?」と思わされるのだが、そこで思い起こすのです。そうだ、これは学園モノだったとwww
『春にして君を離れ』中二病的作品www
特にすばらしい!と絶賛するほどの作品ではないが、こうした作品は依田沙江美だからこその作品なんだと、作者さんの作品の特徴がよく見える作品だと思います。
佑介の恋人は、人間じゃない。
はじめて会った時、彗はランドセルを背負っていた。なのに今は2〜3才年上みたいに見える。背も高くなって…
でも、この作品の主題は別に「人狼x人間」でもなく、生きる時間の差異に伴う切なさでもなく、どちらかというと並行して起こる連続殺人事件の怖さみたい。いや、それすらも主題ではなさそうで。
佑介は彗との時間を考えると悲しくなって、何とかしたくて医者を目指している。でも彗の方は……佑介の想いは置いといて、って感じみたい。今一緒に居られる時間、それだけを見ている。
それより、人間社会に何気な〜く非人間がいますよ、の世界観。これが静かに怖いんです。
「暗殺者のプロフィール」
ここで怖いのは人間の心。でもね、わかりやすい話じゃないです、これは。
他人との距離を測るのが苦手な塚原采。そのために誤解や敵意を抱かれている、という話。
想いを言葉にしてもしなくても、他人との関わりはこうも厄介で。
『世の中、どうにもならないことが多すぎるんだよ』
加害者のキミ、采は確かに思慮足らずだ。でもキミのした事は…犯罪。
なのにこのラストは何〜!ただのラブストーリーで終わっていーんですか?
「春にして君を離れ」
これは女、特に腐女子、が想像する(妄想する?)男同士の恋情、ですね。
卒業式、告白、涙、キス、そして別れ。(腐女子の萌えの盛り合わせ)
それにしても、依田作品の男の子はよく泣きますね。涙にキュンとする私は見透かされてんな〜。