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dokonimo nai kuni
第二次世界大戦中、南方戦線の隊長と部下。
問題を起こす部下に体罰を与える隊長というシーンから始まるこのお話…とても短いです。
異常な事態での南の島での濃い生活は、戦争が終結して復員兵となり二人で暮らす日々にきっといつまでも影を射し、それがまた二人を支えることにもなるのかなあ。
ちら見せされた感じで、もっと続きを読みたい!
この表紙の空の青さは、なるほど日本じゃあないのですね。
日本は湿度が高いからどうしても空が白っぽいとか。それにしても美しい表紙だわ~。
これPCでペイントされてるなあ。ほんと綺麗!!などとどっぷりと戦中戦後の話に浸ってたら急に合コンの話に。ぐーん!と時代を無理やり戻された感じだったけど、これまたはまり込んで読みました。
いやーアホわんこ哲男も可愛いし狂犬みっちゃんも素敵すぎる。
こういう話、ほかでたくさん読んだはずなのに、なぜこうも心に残るのか。
ついこないだクリントイーストウッド監督の『グラントリノ』を観たんですが、どうってことない話なのに、心かきむしられ、泣いちゃうんですよねえ。んで、しばらく心囚われてしまう。
草間さんの作品も、読み終えてからしばらく作品のキャラのこと考えちゃう。なにかの拍子の思い出しては、あんなこと言ってたよね、こうすればどうだったかなって考えちゃう。
てことはもう忘れがたい作品なわけですよ。
相変わらず定規なしの背景すべてが素晴らしいし、コマのラインが多少はみ出ていようとラインから絵がはみ出ていようと、それが勢いになっていたり味わい深かったり。
とにかく秀逸です。
「明け方に止む雨」で草間作品に魅せられ、「マッチ売り」「やぎさん郵便」、そして今回この「どこにもない国」と作家買いしてみたのですが、なんと1冊もハズレなし!
中でも「どこにもない国」は、一番ツッコミどころ満載であるにもかかわらず、一番好きになった作品集です。
◆「どこにもない国」「パラダイムロスト」「遠き島より」◆
太平洋戦争末期、南方の戦線で戦う海軍所属部隊の「隊長」・竹内(受け)と、その隊員の早川(攻め)のストイックだけど淫靡な恋の物語。
表題作は戦地での二人、「パラダイムロスト」「遠き島より」では、復員後、帰国を待ち続ける家族の元へ帰らず、二人だけで暮らし続ける竹内と早川を描いています。
◆「1と2の間」「0と1の間」「0か1かの世界」◆
第一高校バレー部の面々の、それぞれの恋模様。
「1と2の間」では、部員の哲男が、子供の頃出会った、イチモツの付いたセーラー服の「少女」への長年の想いを実らせます。
「0と1の間」「0か1の世界」は、OBになった部員たちのその後。
実業団入りした花形選手の鶴田(受け)を、同級生の三ツ矢(攻め)はいまだに思い続けています。
高校時代三ツ矢が鬼副部長を演じていたのも、実は頼りない部長の鶴田を守るため。
三ツ矢の想いを知らず、やがて結婚する鶴田ですが、足の怪我で選手生命が危うくなり、妻とも離婚。そんな時に彼が頼るのは、何故か三ツ矢で…
16ページの小品「もののこだわり」を含め、どの作品も、部下(または年下)の側が攻め。かといって下剋上というのとは違って、攻めが少し頼りない受けの番犬という感じ。そういう意味での「わんこ攻め」なんですよね。
どの作品をとっても、濡れ場シーンの少なさに対して、漂って来るエロスがハンパないです。
草間作品でこんなにエロを感じるなんて、もしや私ってビョーキの域…?という気さえしてしまったのですが、こちらのレビューを見ると皆さん「エロい」と書いていらっしゃるのでかなり安心しました(笑)
しかし、なんでしょうね?このエロさ。
例えば、表題作の早川は、隊長なのに少し統率力が弱い竹内の威厳を保つため、わざと殴られ役を演じるんです。
他の隊員たちに背を向けて早川を殴る時の竹内の泣きそうな顔(竹内も早川の意図は知っています)は、早川しか知らない彼だけの竹内。
「不思議と二人しかいない感じがする」この瞬間が好きだという、早川…
こんなことをしてる二人、勿論すでにただならぬ関係なんでしょうね。
心の裡にドロドロした恋愛感情を秘めた上司と部下が、こんな形で愛情を確かめ合ってるなんて…それも、戦場で。
そう考えるだけで、身悶えするほどくっそエロい。
戦地での濡れ場は一切描かれていないんですが、下手に濡れ場を描かれるよりもずっと萌えます。
心に秘めた息苦しいほどの愛情に裏打ちされた、男の友情・信頼関係。
この作品集には、このテの垂涎モノの愛のカタチが詰まっています。
ちょっと気になるツッコミどころはいくつかあるのですが、そんな瑣末なことを気にしてこの作品が楽しめなくなるのはもったいないと思うので、書きません。
例によって草間さんの絵が戦中戦後の雰囲気を絶妙に映し出していることも、言うまでもなく。
まさにオトナのBLとして楽しめる本だと思います。思い入れを込めて「神」!
眼鏡濃度和服率高め、年上受過半数。なんという私得な一冊。
表題作の慎さんがストイックでエロい。わざと叱られる早川もいじらしい。
二編とも核心を突く台詞をぽつりと投げてぷっつり切る(一話目は隊長、二話目は早川という対比も鮮やか)幕切れが舞台劇っぽく技巧的で好き。かなり計算された構成だと感じた。
関係ないけど慎さんは野田先生とどっかで繋がっているに違いないと思ったぞw
幼馴染物は久々に災厄の手紙辺りの淫靡な部分が出た感じ。始まりから倒錯的。
バレー部のは受攻が微妙に好みじゃなかったり。なんでだろ、普段は好みのハズなんだが。
お茶の先生の年上ならではの余裕が妙にツボ。魔性っていうかいけない大人って感じがすこぶる良いw
表題作に続きここでも黒髪短髪眼鏡に和服が堪らん。
地下鉄の犬でも描いてた継ぎのエピが絡んだけど修繕しながら愛おしむというのは草間さんの好きなモチーフなんだろうか。
全体的に草間さんの作品によく見られる閉鎖的な空気が印象的。閉ざされているが故に濃密になるのがなんともいい。
【どこにもない国】
時は第二次世界大戦の末期、海軍所属部隊が降り立った南方の小島でのお話。
こういう状況下のBLというのにまず驚きました。
生きるか死ぬかという瀬戸際の日々、上官とその部下、部隊での規律。
安穏な日々を過ごす我々からは想像もつかないような状況下にいる二人。
わざと規律を破る早川と、他の隊員への示しをつけるために早川を殴る隊長の竹内。
竹内の手は震えていて、今にも泣きそうで、すまない・・と言いながら殴らざるを得ない。
早川は殴られている時、一番近くに竹内を感じる。。。
南国特有の湿度というんでしょうか、そういうものも含めて、エロい事はなにもしていないのに二人の様子にごくり・・・と生唾を飲みたくなるような濃厚なものを感じます。
特に川で竹内の身体を洗っているシーン。
二人の様子を、ジャングルの葉陰から息をひそめて伺っている・・・
自分の心臓の鼓動や生唾を飲む音が二人に聞こえてはまずい・・そんな気分になる。
だから表題作を読んでいると何故か息苦しくなってくる。
連作の【パラダイムロスト】
復員船で日本に戻ってきた二人。
日本にいながらあの南方の小島を想う竹内。
南方の小島は彼にとってのパラダイムロスト・失楽園。
【1と2の間】【0と1の間】
ポヤポヤとした天然年下ワンコの哲夫と過去のトラウマ持ち正良と、哲夫の高校の同級生二人という二つのカップルのお話。
もう一つのカップルの攻め、三ツ矢が凄い。
おすすめ頂いた姐さまからのコメント「メガネ、ヒゲ、執着、寡黙(でも実力行使型)というキーワードに反応される方は、ぜひとも。」との事でしたが、本当にその通り。
「俺の気は短い」って本人は言ってるんだけど、いやいや貴方ね、気の短い人が、高校時代からずーっと、しかも鶴田がモデルさんと結婚しても想い続けている人のセリフじゃないですよ。。って。
受けの鶴田は三ツ矢が一番優しいと思っているんだけど、鶴田の敵=自分の敵と見なして全部陰ながら排除しており、周囲の仲間たちからは怖い怖いと思われているんですよ、三ツ矢は。
くううぅぅぅっ!目頭がっ!
で、最後のページはちょっと笑いました。
三ツ矢に一本を取られた感が。鶴田の「一本」を、しかも永久にね。
【もののことわり】
ちょっとガサツな年下ワンコとお茶の先生。普段から着物で、割れた器は金継ぎをして再び愛でるようなしっとりとした眼鏡受け。
年下ワンコに振り回されっぱなしではなく、穏やかながらも手綱を引いている感が良かったです。
がっかりしたのが電子書籍だと書き下ろしの「遠き島より」とあとがきが収録されていなかったこと・・・ひどい・・・。読みたいーっ!(大絶叫)
私がトピ立てした「ちるちるのランキング圏外だけど、心の琴線に触れた作品を教えてください」
http://www.chil-chil.net/answerList/question_id/4967/#IndexNews
で教えていただいたのがこちらの一冊。
特に表題作に痺れました。
普段から共依存系の作品が好きな私にとって、このように物理的にも精神的にも閉ざされた二人、大・好・物。最高でした。
教えてくださり本当にありがとうございました。
表題作「どこにもない国」の2人がすごく好みのCPでした!
「どこにもない国」が戦時中の2人で、続きの「パラダイムロスト」が戦後な2人。
隊長の尊厳を守る為、わざと他の兵の前で隊長に叱られ殴られる早川。それを分かってて泣きそうになりながら殴る竹内隊長。
殴られる時「二人しかいない感じがする」と思う早川と、仮病をして2人きりになる
状況を作り「二人になってみたかっただけだが?お前だってそうなんだろう」という言葉をかける隊長。
…なんだろう、このやけに淫靡な感じの両想い(笑)
受の隊長は一見無愛想で分かりにくい人に見えるけど、情が深いし実は独占欲も
とても強い人なんだろうと思いました。こんな隊長を受け止められるのは
早川しかいません(笑)
隊長にとって「どこにもない国」の時は非現実だからこその幸せ。
「パラダイムロスト」の時は現実であり日常。あの時の幸せを続けたいけどそれを望んではいけない、と葛藤します。しかし早川はどこであっても隊長と居たいという気持ちがあり、隊長はその気持ちに救われたんではないでしょうか。
話の雰囲気は華美では無いし、淡々と進む感じなんですが感情が現れる
所などとても色っぽいです。そして余韻の美を感じます。
欲を言えばこの2人の続きがもっと見たい…!
第二次世界大戦ものは読むのがただでさえつらいのに、BLでは大体微妙な事が多いので読んでがっかりするという理由で避けてました。
しかし、流石草間さん。
此処まで戦中の雰囲気を描けるBL作家さんは、私が知る限りではいない気がします。
色々なものに背いて築かれた二人だけの閉ざされた世界は、このまま誰も介入する事なく終わるのですね。
ある意味、ハッピーエンドなのかもしれません。
「間」の連作、色々たまらないです。
何より正良くんが色々好みでして、あほのこ大型わんこ×年上美人なんて、大好物過ぎて興奮しました。
哲くんが、本当にあほのこで愛おしい。
あとですね、みっちゃんが鶴田くんをずっと長い間本気で好き過ぎて切ないですが、結果オーライですかね。
最後の話は、この二人の関係性が謎でした。
でも着物眼鏡先生は大好物です!
あと金で継いだ焼き物、味があって好きです、
『どこにもない国』を雑誌掲載時に見て、これはコミック化したら絶対買わねば!!
と待ち焦がれた作品です。
『パラダイムロスト』と繋がってます。
表題作は、正直エロシーンとはっきり言えるような事、なにもしてないんですよ。
なのに、とんでもなく官能的。
ストイックエロを描かせたら草間さんの右に出る方ってそうそう居ない気がします。
【どこにもない国】
戦時中。どこかの国の森の奥深く。海軍の隊長と隊員の話です。
皆の前で自分を殴れ、と促す隊員の早川。建て前は小器用だと揶揄され舐められがちな隊長竹内の威厳を皆に示すため、ですが、本音は想いを寄せる隊長を近くに感じられる気がするから。
爆撃で耳が聴こえくなった竹内の身の回りの世話をする早川。好きな男の裸体を前に興奮を隠せないシーンの官能的な事!一糸纏わぬ背中に両手を這わせ、息は自然と乱れ、一人達してしまいます。
ゾクッと来たのが竹内もひと皮剥けば同じ穴の狢だった事。
本当は耳、聴こえているんです。理由を問いただす早川に「2人きりになりたかっただけ、おまえもそうだろう?」と平然と答えます。
*生死の境を彷徨って張り詰めていたものがプツンと切れたのでしょうか。タガが外れ大胆な行動を起こした隊長がいい意味で壊れていて良いです。
殴らせる早川の想いも全てお見通しだったのでしょうね。それともプレイの一環として楽しんでいたのでしょうか?致してはいないものの完全に確信を持った誘い受けでした。素晴らしい2人だけの世界…!
【パラダイムロスト】
どこにもない国の続きです。
帰国の混乱の中、早川の実家(老舗旅館)からの使いを見ぬ振りをし通りすぎた竹内。そのまま早川と暮らすも罪悪感に苛まれて…
*竹内視点なので現実から目をそらしきれない描写が切ない。「なぜ祖国にいて戦地を思う?」はシャバの居心地が悪くてわざとムショに戻る心理のようで印象的。それ程までに早川の事を…。
ただ早川にだって意思はあるのです。勇気を持って早く打ち明けていればっていうエンド。(そもそも草間さんのワンコ攻めが受けを置いてくはずない)
他の4編も面白いです。女子にもチンコが付いてると高校生まで信じてきた子がいて衝撃的でした。どんだけピュアやねん!
ラストの器の話好きです、草間さんの描く素直な年下ワンコ攻めは愛いなぁ。
第二次世界大戦時の日本が舞台の表題作、戦争をBL漫画で扱うって相当難しいと思うのですが、描いた草間さかえ先生も編集の方もすごいと思う。
台詞で多くを表現せずに、漫画の流れや空気で読み手に訴えかけてくる作品です。直接的な性描写がなくても淫靡さを感じさせたり、人間性を感じ取らせたり。
草間先生はまた、そういう作品しか描かないのではなく、学生同士の恋愛やワンコ攻め漫画も描かれるのがより一層いいですね。しかもどれも草間先生しか描けないお話。
※電子書籍 白抜き
掲題作は戦争が終わる直前の上司の部下の話なんだけどエロスの真髄って感じがするというか二人の醸し出す空気感に胸が締め付けられました。やっぱり草間さかえ先生は天才すぎてどうしていいかわからない!もうわからん!短編が素晴らしすぎる(長編も然り)
他に3CP描かれているけれどもう大変…素晴らしすぎる。どれもこれもエロスが素晴らしいし、なんだかもうB L的な素晴らしさを超えた文学って感じなんだけど読みやすくて説明がないが全てが理解できる。受けでも攻めでも短髪メガネをここまで魅力的に描く先生は他におりません。というか全てのキャラもストーリーも素晴らしすぎて息ができん。です。
イサヲ
東雲さんはじめまして!随分前にコメントいただいておりましたのに、今頃気づいて慌ててお返事しております。大変失礼いたしました。
草間さんはちょっと別格ですよね。この強烈な個性と画力とストーリーのハイセンス…私ももっともっと褒め称えたいのに、うまいこと言えてません。
次々出される作品には、どれもこれもゴロンゴロンしてますとかそんな拙い表現ばかり(笑)
こんな調子で数だけはたくさんレビューしておりますが、内容がなにしろ偏ってますので、共感していただけただなんて、ほんとに嬉しいです。
ありがとうございました( '∇' )
東雲月虹
はじめまして。こんにちは!東雲月虹と申します。
イサヲさんはすごい数のレビューですね!大先輩です!
そして、好みが大体かぶってる事に気が付きましたw
イサヲさんの、こちらのレビューに「そうなんですよ!!」と激しく同意してしまい、コメントさせていただきました。
草間さんて、本当に雰囲気があって、無駄な説明も無く、セリフのセンスやら背景の味やら…たまりません!!
はみだした線ですら、っていうのが本当にもうその通りで、昨日は草間さかえ祭りを一人で開催致しました。(既刊を読みつくしました)
すごく好きで、でも私の語彙では表現できなくて、はがゆい想いもしていますが、大先輩方がきっちり草間さんの良さをレビューしてくれているので嬉しいです。
これからもまたイサヲさんのレビューを楽しみにしています♪
長文失礼致しました。