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いかにもJuneらしい、そして坂田靖子さんだからこそのウィットが光る作品の数々。
愛だの恋だの、あれやこれやしている最近のBLの合間にこうした作品はとても新鮮で気持ちを和らげてくれます。
魔のものに魅入られてしまうお話は定番ですね。
そして、不思議な空間と世界のお話も。
南極で助手を必死でひきとめようとかいがいしい努力をする教授の話は思わずクスクスと笑ってしまう。
「デカダン」がテーマの作品も何故か坂田流に展開すると、それは甘美で耽美な味のする思わず外国へ来たような雰囲気をそのまま伝える。
修道士が出てくるのも、坂田作品ならではですね。
そんな中、この表題となっている『オレンジとレモン』は実にわかりやすく、しかもホロっとさせる展開を見せて思わず胸が熱くなる!
妻も子供もある庭師が気になり始めた王様は、たまたま見つけた魔の者に願いをかなえさせる命令をするが、そのうっかり者の魔の者は何と!相手が自分に惚れるという魔法ではなくて「一緒に旅に行きたくなる」という魔法をかけてしまうのです。
・・・しかし・・・あんまり効果はなかったみたいww
その庭師のエステファンを旅のお供にし、夜伽を命じるのですが、エステファンは委縮するだけで一向に王様の方を向いてはくれない。
旅も終わり、エステファンを妻子の元へ帰すつもりだったのに、何とその妻子は豚飼いと駆け落ちを!?
素直に愛情を語れないツンデレな王様が実に味わい深くかわいらしい。
彼は彼なりの優しさと愛情を注いでいるはずなのに、エステファンには届かない。
まず、それが切ない。
一見傲慢で我儘で短気で怖い王様なんだけど、彼が一人で空回りしてカワイソウに見えるが、とても優しい人なのです。
其れに比べてエステファンの節操のなさよ~
でも、最後に王様の恋が実ってすごく嬉しくなる作品です。
この王様と桁違いの身分違いという部分が最大限に生かされて、おとぎ話になると、こんなにも甘くなるのだという素敵なお話です。
この作家さんにしか描けない世界です。
ご存知でなない方に是非一度読んでほしい素敵な短編集です。