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愛がアンビバレンツな物で出来ているなら
愛は本来辛いものなのかもしれない
エバ、愛ってさ…
ただ一緒に居続けるって事なんだ――
生きてる時も死んだ後も…
言葉のチョイスがいつも詩的で素敵な藤たまき先生ですが、
愛のアンビバレンツさというのは先生の色んな作品に共通するテーマの1つのように思います。
特にこの作品は繊細でグロテスクで、暗くて、
エバの過去は痛々しくて、読んでいて辛い部分もありましたが、
ルーサがエバを囚われた過去から連れ出してくれる役割を果たしてくれたので、明るく優しいラストでした。
愛と救済については、「ホライズン」「桜並木袋小路」「アタ」
等でも描かれていますが、(これも先生の作品に共通したテーマの1つのように思いますが)不安定で繊細で時に大胆な心の動きを、
美しい言葉と可愛い絵柄で形を持たせる、すごい力量のある作家さんだと思います。
柔らかくて優しい童話や絵本のようなふんわりとした雰囲気ながら、テーマは結構重いものでした。
焼身自殺をする前に、エバに謝罪して自分の行ってきた行為を悔いていたエンリケ。
そんな彼に無垢な顔をして、自分のことを信じ切ったエバの言葉はどんなふうに届いたんだろう…。
幼いエバから沢山のものを奪いながら、結局その罪の重さに耐えきれなくて“逃げた”のかな。
その中途半端な行動のせいで、死して尚エバの心に存在している様はまるで呪縛のよう…。
年下ながら一生懸命にエバの全てを愛そうとするルーサが本当に健気だった。
少しずつエンリケに奪われてしまったものを取り戻していってくれたらいいなって思う。
これからも色々な“赤”をエバに見せてあげてね。
表題が素敵。
1,アナトミア(解剖学)
2,かりんの天蓋
3,海の果実
4,鐘楼 カンパニーレ
5,ベル・コンポスト
6,リ・トライアル
新旧表紙、個人的にこちらの表紙のほうが好き(*´艸`*)
草間さんが帯を書いていたらしいです、見たかった。
詩的なモノローグと自然の描写が素敵な作家さま。お伽話やファンタジーが似合いそうな、線の細かい個性的な絵柄と淡い色使いにほっとしますが、ストーリーに込められたテーマは重めです。
好きな作家さんの一人なのでわりと読んできたつもりでしたが、この作品は新装版のカバーでなければ手に取らなかったかもしれません。シルバーの帯に草間さかえ先生推薦!!!の文字と、先生によるイラストとコメントが添えられています。「ふわふわして キラキラして 苦しくて。でも大切なもの」
舞台はイギリス。ボタニカルアートの勉強を目指してアートカレッジに通う十六歳のルーサと、素描・彫刻担当教師エバの物語。両親の仕事のため幼い頃から諸国を転々としていたルーサは、フィレンツェに住んでいた頃に見かけた、色褪せた長い金髪の少女(年?)のことが忘れられずにいた。本と絵が好きで空想してばかりの子供だった彼にとって、その記憶は今や夢なのか現実なのかすらも怪しいものだったが、新任教師のエバと出会った時、曖昧だったその記憶に確信が生まれる…。
教師としては自由で風変わりなキャラクターのエバだが、アートに対する情熱は深く激しいものだった。どうやらルーサが彼の謎めいた魅力に心惹かれてならないのは、運命的なものが背景にある予感が。まだ青年とも呼べず、恋を知らなかったルーサがエバに魅了され、フィジカルな繋がりを得て、愛の辛さを知っていく。年上なのに頼りなく危なげなエバをまるごと包んであげたいと、彼を追い続けるルーサが健気です。
ルーサが忘れられずにいた幻の少女(年)へ抱き続けていた願いに胸打たれます。君のことを一つ残らず受け止めてあげたい。骨も血も肉も髪も。だから壊れないで。生きていて。その願いが叶えられた時、彼は大人になったのかもしれません。
生と死、芸術とセックス、愛と救済など、とても大きなテーマを掲げながらも、作家さまらしい柔らかく優しい物語となっていて、読むたびに癒されます。
私は新装版になる前の「アナトミア」の肋骨の見えている表紙絵に心奪われて、速攻購入しました。
新装版が出ていたのを知ったのはつい最近で、こっちの表紙も美しいです。
藤たまき先生のイラストはとても、独特ですが、上手く表現出来ませんが好きで堪りません。
エバが美しい。裸で窓に座るエバはとても、儚い感じがする。
エバがエンリケと過ごした日々は痛々しいんですが、そんな過去に囚われてるエバが好きです。
美人でわがままで年下のルーサを振り回してたりするんですけど、優しい所もあって、エバの笑顔は天使のようだし、無邪気で可愛いんです。
萌えというより、ひとつの童話を読んでいるような気分になりました。
なので評価は中立とさせて頂きました、決して何か疑問に思ったとか、内容が琴線に触れなかったとかそういうのではないのです。
美術学生ルーサ×美術教師エバの連載が一冊にぎゅっと詰まった単行本。
とにもかくにも、ファンタジーの空気が漂い(絵の傾向もありますが)舞台となるヨーロッパの雰囲気にマッチしています。
どのページもキラキラしています。帯として草間先生推薦文字イラストが巻かれており、そこにもキラキラ、というワードが入っていますが、本当にキラキラ。空気も、花も、木も、風も、何もかもが輝いている世界。ルーサの目にはこんな風に映っているのかな?と感じました。
またルーサはとっても詩人。その言葉やモノローグひとつひとつがこのお話の深さを色づけています。
エロよりも雰囲気が大事、欧風漂う空気が好き、じっくり読みたい派な方にはおすすめします!
読了後は満足。ボーイズラブというよりJUNEの色を少なからず感じたような気がしました。
旧版より表紙がすごく洗練されて素敵に仕上がってます。
一冊読み終わって、その余韻と満足感にすごく満ち足りたものを感じます。
たった一冊なのに、ものすごく中身が濃いです!
決して雰囲気系というわけではなく、登場人物達の想いが見事に重なって上へ上へと引き上げていく様が、まるで光が上に登っていくように(天国への階段?)感じられます。
ルーサは少年の頃塔の窓に見える不思議な髪の色をした白い背中の少年に惹かれ、空想と妄想の世界で彼の総てを血や肉や骨まで抱きとめようとさえ思う初恋をします。
16歳になり美術学校へ入ったルーサはそこで、多分その塔で見た少年にそっくりな、エキセントリックな奇行の多い教師・エバに出会います。
ボタニカルアートを目指すルーサは温室の手入れを始めますが、そこはエバが男と逢い引きをしていた場所。
そんな場面に偶然出会ってしまい、でも、それから二人の居心地の良い場所として温室で会うようになります。
そしてエバが火に対して異常な怖がり方をすると知った日、自暴自棄のように何かにかられるエバに押し倒されてルーセは身体の関係を持ってしまうのです。
恋人になりたいルーセと、友達でいたいエバ。
果たしてエバには一体何があるのか?
エバの抱えるトラウマが少しづつ明かされる時、それはルーセが幼い頃願った彼への思慕と一致することがわかります。
純粋な一途な少年の想いは、ともすれば10歳以上も年上のエバより大人な包容力を持ちますが、それが嫌味じゃない。
それくらいに、エバの過去の傷はひどく重く彼にのしかかっているのです。
性格だけでなく、それは芸術に関しても・・・
彼に影響を与えたエンリケの存在は壮絶でした。
でも、不遇なエバにはエンリケが自分の映し鏡になっていたんではないだろうか?
エンリケの呪縛から解き放つのがルーセの役割。
その時、初めて恋人として二人が向きあえる時。
単なる歳の差とか、ヤンデレとか単純な萌えではなく、この二人の在り方がごくごく自然に普通に存在して受け入れられる、ちょっと重さもあるけれど、でもとても素敵なお話でした。