__モコ__
『雪よ林檎の香のごとく』同人誌6冊目。
志緒が高校生のときのお話。
夕方の電車で、男子が女子に、痴漢に遭う。
そんな話を志緒が桂に話した数日後、志緒本人が当事者となります。
その女子が通う高校に乗り込む志緒。
駆けつける桂。
そして、保護者として訪れる志緒の父。
一生徒というより、誰よりも特別な志緒を守る為に、良くはない私情を思い切り挟んだ桂の姿は志緒の目と心に焼きついたはずで。
そして、「この父に志緒あり」という父子関係をまざまざと見せ付けられる桂も同様で。
「こんなの 嵌らないほうがおかしい」なんて、全くその通りだなぁと。
それぐらい、静かで真っ直ぐで濁りのない空気をまとった二人。
二人が付き合うようになって、初めてしっかり考えてしまう性のこと。
それを交えて自分を好きなのか。
はたまたそれは自分だけなのか。
無防備なのは可愛らしいけれど、それだけしか思っていないわけではない桂。
だからこそ、志緒を自宅に置いて戻ってきて、彼が例の本を読んでいたとき、桂はただならぬ興奮を覚えたんじゃないかな、と思えてならないです。
勿論、その後の一歩手前、未遂な行為も…ですが、そうじゃなく、志緒の手にそれ、というのがたまらなかったんじゃないかなぁ、と。
そして、一穂さんのあとがきのあとの、志緒目線のお話。
初めて特定の誰かを思い浮かべてした行為が、ひどく興奮して、という。
気持ち悪いことをされて精神的に参っていたはずなのに、それすら上回る、桂との未遂のひととき。
ひどい目に遭ったはずなのに、桂に、そうじゃないひどい目に遭わせて欲しいと思う感情。
その日、たくさんの初めてを知った彼の、最後の一文に心が高ぶってしまいました。
リアルな描写があるわけではないのに、とてつもなく官能的に感じます。
においも、しぐさも、てつきも、全て。
心に残って、何度も読んでしまう1冊です。
志緒の通う高校の男子生徒達が、電車の中で同じ沿線の女子高生達のいたずらにあう事件が続く。
ある日志緒も、見ず知らずの女子高生に耳を舐められ笑われる。
女子高生達にとってはからかってスリルを味わっているただの遊び。
今まで被害(?)にあった男子生徒達は、まんざらでもない気分もあって
事はそれほど大げさにならずに来ていた。
が、志緒にはとてもじゃないけれど理解できないし、許せない。
単身相手方の女子校に乗り込んで行く…
彼の高校にも連絡が来て職員室で電話を聞いた桂は、
矢も盾もたまらず、半ば強引に役割を引き受けて相手校に出かけて行く。
女子校側の先生方の対応も、生徒と同じ感覚でとても誠意は感じられない。
つい感情的になる桂。
そこにラフな格好の志緒の父親が迎えに来る。
全然違うようなんだけれど、根っこは一緒の流石のパパとブーストがかかった志緒くんの共同戦線、
その容赦なさと小気味よさがいい!
両親とぎくしゃくしていた志緒が、
少し大人になって彼らの子として生まれたことを感謝する下りもいい。
テンションが上がった一幕の後、学校で事後処理を済ませて自宅に戻っってみると
待っていた志緒はそこにあった吉行淳之介を読んで、スイッチが入ってしまっている。
志緒の未熟で真っすぐな発情、そんな志緒に刺激された桂の大人の欲情…
空気の濃度が増し、溢れ出す激情…
ああ、神様、あの誓いはどうなるんでしょうかっ?!
……家に帰って収まらない欲情をあらわに、自分を貪る志緒!
なんともエロティックで、悶えるような萌えの一冊です。
他校(女子高)の生徒に電車で耳をぺロッと舐められるという
痴漢行為に遭ってしまう志緒のお話なのですが
これがもう、本編より志緒も桂も志緒の両親も
大っっっ好きになってしまう同人誌です!!
男子高生ならば、女子に触られるだけでラッキーと思うケースが多い中、
志緒にしてみれば不快極まりなくて一人で女子高にのりこみ
学校へ連絡が入り、桂が自ら希望して駆けつける事に。
“何でお前って、いっつも俺が思う十倍くらいお前なんだろうね”と
思わず胸中でつぶやくくらい、志緒らしい。
真っ直ぐで自分を決して誤魔化さない。恐れを知らない。
女子高へ向かうと、相手の学校側が桂を若いというだけで
嘲笑うかのような態度に志緒は胸を痛めます。
自分の意思を曲げずに来たものの、まだ子供だからという理由で
先生まで馬鹿にされてしまったと。
その様子を見て桂は表面上の取り繕いを脱ぎ捨て女子高側に噛みつきますが
そこへ志緒のお父さんがやって来て…。
お父さんはフランクな態度で、なぁなぁにしようとする相手を
もしかしたらそのまま受け入れるのかと思いきや
あっさり「では書面でいただけますか」。
ここからの反撃!!惚れる!!!
「裁判になってもいい。父さんお金貸して」とまで言い切る志緒に
名刺入れから一枚抜き出し
「僕の名前を出して電話しなさい。学割はきかないと思うけど」
それは父自身の名刺でハッタリなのですが
志緒は自然にふるまうのです。
それに慌てた女子高側は
今迄のらりくらりかわそうとしていた態度を一変し志緒の要求をのみ、
期限付きで加害者生徒の謝罪文と校内処分を決める事になりました。
後でお父さんいわく、あうんの呼吸だとか!
このスマートさと賢さ!!
目の前にして、こんなのはまらない方がおかしいと思う桂でした。
この数日前、久しぶりに見つけ桂がふと読み返した文庫本は
妻子持ち40男と自称バージンな22歳の女の話。
挿入しないだけで様々な不埒な行為を行っていて
結婚したいとほのめかされたり関係を妻に暴露すると脅かされたり…。
それでも男は放したくないといった狡さの内容です。
志緒は自分と体の関係を望んでいるのだろうか。
今更だけど自分の好きとは違うんじゃないだろうか。
悩んだ桂ですが、事件後部屋でその文庫を読んだ志緒に欲情の表れが。
それまで志緒は小説に対し感情移入が出来ないらしく
(自分の意思がハッキリしすぎている人間なので)
曖昧な表現に首をかしげるくらいだったのですが…。
“知りたい。どんなに下衆だと分かっていても。
お前の欲望。お前の発情”
あんなに賢くて聡明な志緒の。
面白かった箇所を聞きだし、わざとあけすけにいやらしい単語を発して
その反応を楽しむ桂。
「『ねえ、ひどい目に遭わせて』」
そう作中のセリフを言った志緒の口へ指を入れ、噛みつかれ、
知らない女子生徒に舐められた耳を嬲る。
「ひどい目に遭わせてやる」
…で志緒の母から携帯に着信があり、STOP!!
志緒がちゃんとムラムラするのを知り安堵する桂の一方で
普段優しい感じで落ち着いている先生にせまられ、
帰宅後夜中じゃないのに一人でせずにいられなくなる志緒。
この、二人とも交わりたくて仕方ないのに出来ない状況って
悶えるーーーーーーーー!!!!
ちなみに桂が持っていた文庫は
吉行淳之介『夕暮まで』という事で私も読んでみましたが
あれは確かに10代が読むと刺激が強いかも…w
先生と生徒の作品でピカイチな桂×志緒!
年の差と立場の違い、
それについてお互いもどかしさがありつつ
それでも欲せずにいられないのが素晴らしすぎるのです!!!