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好きになってはいけない、恋してはいけない相手だなんて、知らなかった──
いつもレビューをする時に、タイトルに困るのです。
というのも、良いところが沢山ありすぎて、一言にまとめられないからなのですが。
椎崎先生の作品は初読みで、好きになるはずがないを購入するついでにたまたま少しだけ興味が湧いて、健気受け、年上攻め、登場人物のおじいちゃんに惹かれ手に取りました。
ですがまさかまさかの、好きになるはずがないよりも断然こちらの方が好みでした。
元々健気受けが好きなので好みの問題かもしれませんが、受けの真巳が本当にいい子。
いい子というか、健気受けによくある女々しい感じや不幸に酔ってる?感じが一切ありません。
椎崎先生の文体の影響なのかもしれませんが、辛い日々や過去も淡々と描かれていて、だからこそ胸にぐっと迫るものがありました。
そもそも登場人物が皆いい人過ぎるんです(褒めてます…)
おじいちゃん筆頭に、駒沢さん。
駒沢さんのんて、マジで良い人すぎて、一瞬江島さんの存在が掠れるほどでした。
この方のスピンオフ、出ないのかなぁ。読みたいなぁ、と思いつつ、けれどももう少しの間は、真巳の保護者として目を光らせて欲しいという淡い期待も無きにしも非ず…
そしておじいちゃんとの場面。おじいちゃんが絡んでくる一つ一つ、もう、駄目ですね。
涙腺崩壊も甚だしい。
真巳におじいちゃんが居てくれて、本当に本当に良かった。
愛を知らないまま育たなくて本当に良かった。
また、江島さん。
攻め様。なんなのこの穏やかなのに、えっちいキスをするお方は。
中盤で、最初で最後だと思い、他に好きな人が居るけれども処女は面倒くさがられてるからと言いつつ真巳がお願いするシーン。
あのやり取りは本当にもう、悶えて悶えてたまりませんでした。
だってどう考えたってその態度、江島さんは完璧にもう真巳に落ちてるじゃないですか。
なのになのに何も言葉にはしてくれない。
真巳は江島さんの真意なんて知るよしもないですから、夜明け前に目が覚めて隣で眠る江島さんを目に焼きつけるんですよ。
もう最後だってわかっているから。
たまらんよ…なんて切ないんだ……
そしてすごく良かったなぁと思うのが、挿絵で物語の先を想像できてしまう小説とは違って、いつ何が潜んでいるのかわからないという物語展開。
ギッシリ2段構成で、丁寧に綴られた恋物語は本当に素敵でした。
小冊子で続きが読めるそうなのでどうにか手に入れられないかと画策中です。
何度も何度も、読みながら手を止めて、切なさや愛しさ、辛さにぐうううっと唸ってしまいました。
思わぬ所でこんなに素敵なお話に出会えると思いませんでした。
穏やかで、けれどえっちい年上攻めの余裕のない態度が見たい方や、切ない生い立ちにありながらも健気に真面目に優しく生きている受けが幸せになる話を読みたい方、ぜひ読んで欲しいです。
2010年作。椎崎先生の過去作品おっかけで購入したのですが、やっぱり先生好きだなあと再確認したので萌2にしました。美味しい珈琲が飲みたくなるせつなさたっぷりの一冊です。本編2段組230Pほど+あとがき。
両親は亡く入院中の祖父と二人の真巳(まさみ)。昼間は工場勤務、夜は高校の夜間部に通い、合間に祖父のお見舞いという生活です。ある日、コーヒー大好きな祖父のために、美味しいと聞いた珈琲屋さんの珈琲をテイクアウトできないかと立ち寄ったところ・・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
受け祖父、駒沢(昔受け祖父に世話になったという弁護士)、桧山(受け友人)、規一(攻め元カレ)ぐらいかな。駒沢さん良かったなあ。この方のスピンオフってないのかな。
++攻め受けについて
攻めに傲慢さ俺様風味が無かった!穏やかなじっくりゆっくり包容力たっぷりという印象です。受けさんは何もなければごく普通の高校生活をおくっていたであろう子。ただ両親+義兄がもらい事故で死亡し、父が事業を傾けていたせいで家を無くし、じいちゃんとほそぼそ生活するしかなかった苦労人。高校出てないのはやっぱりキツイです。そして祖父は病で倒れちゃうし・・不憫さんです。ひねくれず忍耐強いのは、本当に凄いです。
せつないお話の正統派、王道だと思うのですが、じいちゃんの親心が私を泣かせて、駒沢さんの恋心も悲しくて、とても沁みました。一生懸命頑張ってたら、幸せになっていいんだよ、とエールを送りたいお話でした。
主人公の受けと家族との関係性や、受けと攻めの関係性の進み方や背景など、BL要素だけでなく面白い作品だなと思います。物語の中心となる「翠雨」という喫茶店など、世界観にまつわる物事の描写がきれいでわかりやすく、内容に浸ることができました。主人公が後半に攻めに対してヤケクソになってしまうシーンに胸を締め付けられ、その後の展開描写も切なくて印象的でした。攻め側にも受け側にも当て馬的な存在がいるのがいいスパイスだったと思います。
9年前の作品……確かにそういう香りはします。
お話に『完全に没入!』となりきれない部分も感じるんです。
でも、それを凌駕してしまうのは、真巳の心情に寄り添ってしまわざるを得ない文章の所為。
少女の頃に戻ったごとく、素直に泣けました。
名作っていつになっても名作なんだなぁ……
交通事故で父と義母、義兄を亡くした真巳のたった1人の肉親である祖父は病院で不治の病に冒されています。父が亡くなった時、経営していた会社に借金があったため、真巳は高校を中退。働きながら夜学に通っています。食欲がなくなった祖父のために、真巳は祖父の口に合うコーヒーを探しています。友人の紹介で行った喫茶店のマスターに親切にしてもらい、また、そこの味を祖父が気に入った為、足繁く店似通う様になる、という形でお話が始まるのですが、この後、真巳を次々と不幸が襲うんですね。
失業と、それに伴う金銭的な苦慮、日を追うに従ってどんどん衰えていく祖父。そして決定的だったのは、心の支えになってもらい、いつしか恋してしまったマスターが真巳の因縁の人であり、余命幾ばくもない祖父から喫茶店に行くことを止められてしまうこと。
一部を除き、出てくる人の殆どがいい人なんですよ。
だからこそ真巳も、相手のことを考えて本当のことを言えないんです。
そして、自分を更なる苦境に追い込んでしまうのです。
「いくら何でもこの不幸は盛りすぎなんじゃないの?」と思う位だったのですけれど、椎崎さんの丁寧な語り口の妙のおかげで、いつしか真巳と一緒に、悲しくなり、絶望し、空っぽになった様な孤独感を味わってしまいました。
でも、冷静になって考えてみると、悪い時って言うのはとことん悪くなったりしますものねぇ……
真巳の祖父を恩人と慕う弁護士が当て馬の位置で登場します。
この人もとってもいい人なんですけれども、ちょっとばかり私には唐突に感じられちゃいました。
しかし、その違和感があっても、かなり満足いたしました。
これからお読みになる方は、電車とか公共の場では読まない方が良いと思います。
泣いちゃうかもしれませんので。
帯に「好きになってはいけない人だった」って書いていたんですが、本編を暫く読み進めてなんとなくハッとさせられました。
こういう攻めと受けの複雑な関係の話は難しい立ち位置なために葛藤して、どういう結論を出すのか、そこが着目すべきポイントだと思います。
ただお互いが好き、それだけでいいじゃない。と割り切ってしまえば簡単な話です。ですが、そういう人間味の感じられない話は好きではありません。如何に受けと攻めがその問題に対面して、受け止め、解決するのかがこの物語の裏のテーマだったんではないかと感じています。そうであってほしいです。
途中まで攻めの名前が出てこないまま、むしろBLのBの文字も出てこないまま、話が進められていって、これはLOVEになるのか?と不安でたまりませんでしたが、受けが攻めの前で泣いて、バイトをするようになってから関係性が変わって、俄然読む気が沸いてきました。
攻めの友達(・・・)の規一さんが意外と良いキャラしていましたね。登場シーンが、あんなだっただけに、もっとヒールなのかと思っていましたが、そんなことはありませんでした。あと、受けの友達も、おじいちゃんとも友達のような関係らしく、性格もからっとしていて好感をもてました。
弁護士の先生の駒沢さんについても、どうせお前もそうなんだろう?とBL脳のわたしは淀みきった目で見ていたんですが、間違っていなくてほっとしました。彼には是非とも幸せになってもらいたいものです。受けの体に触れる時の描写が壊れ物を触るように繊細な手つきだったし、中断してあげたところに大人らしさを感じました。
攻めのいざ致すってことになり、我に返った受けが逃げ出そうとして引き留めるシーンが一番どきっとしました。普段やさしく振る舞っている人のスイッチが入った言動ってたまりません。
暫く受けと攻めがすれ違って会わなくなるところまでが、わたしの中で一番盛り上がりがあったように思います。その後は、とんとん拍子に進んで、最終的に丸く収まったようですが、なんとなく納得いかないというか、ちょっと背景などを考えて、あっさりしすぎな気がしたので、この評価です。
帯『好きになってはいけない、恋してはいけない相手だなんて、知らなかった-』
やばい時期に読んでしまいました、もっそい泣けました。
身内が入院して同じ様に弱っていって病院で亡くなってからそう時間たってないので、無茶苦茶泣けました。
自分も真巳の様にもっと優しくして面倒みてあげれば良かったなあ。
仕事の忙しさとかにかまけないでもっともっといくらでも優しくしてあげれば良かったともう号泣。
真巳みたいにもっと頑張れば良かった。
闘病物とか病死物とか読んでたけど平気だったのにこれには涙腺直撃されました。
何この破壊力ーー。
おそらく凄く丁寧に丁寧に祖父と真巳の関係が書かれていて、祖父が実に人間らしいいい味出してて読んでる内にどんどん好きになってたからだろうな。
お祖父さんが凄くいいんですよ。
ちょっと頑固だけど唯一の身内の孫と2人で頑張って生きてきてコーヒーが好き。
入院中のその祖父の為に、持ち帰り出来る美味しいコーヒーを探していて真巳は江島の経営する喫茶店を訪れコーヒーを買いに行く様になるのですね。
真巳は夜は定時高校に通い、昼は働きながら祖父の面倒もみて健気に頑張ってるのですがリストラされたり祖父の余命が幾ばくもない事を知らされたりとそういうものが色々とのし掛かってきて、そんな彼が心の拠り所にしているのが何故か江島なのです。
祖父と真巳以外の家族は事故で亡くなっているのですが、そんな彼等に親身になってくれるのがかつて祖父に恩を受けた駒沢。
この駒沢も凄くいいです。
途中でもう駒沢とくっついちゃえ!真巳!!って思った位にいい男なんですよー。
江島と真巳は実は因縁とも言える関係で、他にも色々あって真巳は江島に自分の心を打ち明けられません。
まさに切ない恋で読んでて胸しめつけられる描写がしばしば。
二段組みで読み応えもがっつり、恋愛描写も祖父と孫との家族愛描写も丁寧にじっくり表現されてます。
読んだ時期が丁度シンクロしたっていうのもありますがまさに号泣作品でした。
挿絵の穂波さんはあれ…絵が変わった??持ち味である表情や線のまろやかさが減ってしまっていてそこが少し残念でした。
特に穂波さんの描く少年好きとしては、その良さが今回は出ていなかった様な~~自分的には前の絵柄の方が好きだなー。
大洋図書での二カ月連続刊行の二冊目は何と二段組み!!
思わずビビって、中々手を出せないでいましたがこれが読んでみると案外スラスラと一気にいってしまえました。
面白く読むためにあらすじも一切見ず、チラ読みも速読も止めてじっくりいきましたが、この作戦は正解。
派手さはないけれど、丁寧に綴られているので二段組になってしまったんだな、と思いますが、
主人公と祖父の関係、
主人公と喫茶店のマスターの関係
主人公と弁護士の関係、
それらを全部ひっくるめた全ての関係は、必要なものでしたのでどれかが薄くなってしまったら、心にも引っかからない話になってしまったかもです。
何と言っても、実を言うと主人公達を置いてぐんを抜いて祖父であるおじいちゃん!!彼にもっていかれた部分があります。
このおじいちゃんに何度も涙を誘われて、こういうのって絶対無条件で感情移入して涙が出てくるに間違いないです。
ずるい、ずるい、と思いつつ、自分の祖父母とかをつい重ねてしまい涙がとまりませんでしたからね(この時点でBLからはずれてる?)
そして弁護士の駒澤さんにも・・・!!
彼が主人公・真巳にとてもよくするのは祖父に恩があるからとはいえ、本当に親身になっている姿がよくわかります。
そして、実は真巳が好きになるのですが、でも真巳の選ぶ人は違う人で振られる形になるのですが、それすらもすごく大人な態度で、正直だし、いい人なんですよねー!
この2人が助演男優賞ものですよ。
主人公とカプになるはずの喫茶店のマスター・江島はちょっと影が薄かったですもん。
真巳の心情はさすが二段組だけあってすごくよくわかりました。
彼の境遇、唯一の身内である祖父への深い愛情。
過去による我慢してしまう、ちょっと可哀そうな性格。
でも、それは少し大げさでもあるけれど感覚としてはごくごく普通の態度だと思うので、身近な人間だと思います。
そんな彼が初めて恋を自覚して、でも思うようにならないことに捨て身の行動に出るのは切なかった・・・
でも真巳に涙を誘われる事はなくて、やっぱりおじいちゃんなんですよねww
一方、攻めになるマスターの江島・・・これはラストの種明かしがあって初めてそうだったのかー、、ということで彼の心の動きはよくわかりません。
どんなに説明されても、コレ! という決め手には今一つ~
ただラストが、一応ハッピーエンドではあるものの、初恋の成就という一場面を抜き出して描いているので、その先はわからないわけで。
そんなエンディングに、思わず納得する自分がいました。
これでもか、という不幸オンパレードというわけではないけれど、それでも温かく見守ってくれる人達がいて、そこで救われる。
主人公の淋しい気持ち、切ない気持は充分に伝わってくるよい作品だったと思います。
何度読み返しても、おじいちゃんの下りは泣かせます(号泣でした)