修行中
細道の旅の二年前の『鹿島紀行』の話です。史実ネタ、人物、句が出て来ます。
出て来る人物は、鹿島詣でに同行した宗波に、旅先の鹿島に住んでいる仏頂和尚。旅の中でも痴話ゲンカしている弟子と師匠を温かく見守っています。…お疲れさまですv
周りに迷惑を掛けずにはいられないんですよね、この弟子と師匠ってば。困ったもんだ。(笑)
内容は、鹿島行きの小旅行に誘われた曽良が、天然な芭蕉さんにモヤモヤしています。
師匠の“特別な存在”になりたいのに、「自分も結局は、他の弟子と同じ存在なのでは」ということばかり気に掛かってしまう曽良。そんなことに全く気付くことなく、ナチュラルに曽良の怒りを煽りたててしまう師匠。
…このすれ違いCPめ…!v(ムズムズ)
ケンカの後、師匠が自分の心情を聞かせる場面が良いんです。そこで描かれる弟子のやるせなさ…!
そこの芭蕉さんのセリフが、また物凄い殺し文句!そりゃあ惚れますって。しかし、言葉は言葉、絶対ではない訳で…しかも気まぐれな風流人の言うこと。いつ自分への興味が無くなってしまうのかという恐怖と常に背中合わせです。ここでの曽良の心情を示す独白が心を打ちます。
「絶望と期待を あとどれだけ繰り返せばいいのだろう」
…大変だなあ曽良くん…!!(キューン)
仏頂和尚の言葉で明るい兆しを掴めた曽良なんですが、何にしても前途多難さが目に見えているんです。だって保証なんてどこにも無いんだもの。でも、それでもやはり師匠について行こうと決めているのが…愛だと思います。うう、切ない。
いや、このへんから最後にかけては読む人によって感じ方が違う気がする…普通にハッピーエンドって感じる人も居ると思います。私はとにかく切なかったな…。
明るく終わってる(オチがなにげに尾花沢ネタv)けど読後感がチリチリ来ます。後を引くキュン具合の一冊でした。