あの日、校舎の階段で

anohi kousha no kaidan de

あの日、校舎の階段で
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神21
  • 萌×26
  • 萌11
  • 中立2
  • しゅみじゃない1

--

レビュー数
15
得点
164
評価数
41
平均
4.1 / 5
神率
51.2%
著者
佐田三季 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
麻生ミツ晃 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラノベルス
発売日
価格
ISBN
9784778109738

あらすじ

高校の同窓会で、笠井亨は十年ぶりに元親友の遠藤圭祐と再会した。笠井に告白したゲイの同級生を遠藤が不登校に追い込んだことで仲違いしていた二人だが、また友人としてのつきあいが始まる。だが笠井は偶然、遠藤がゲイでしかも自分をずっと好きだったことを知ってしまう。友達でいい──そう言う遠藤を切り捨てられず表面上は受け入れる笠井だが、執着と欲望を隠そうとしない遠藤に苛立ち、彼の前から姿を消すが──。
(出版社より)

表題作あの日、校舎の階段で

元友人の同窓生 遠藤圭介・28歳
アクアリウムの趣味の会社員 笠井亨・28歳

その他の収録作品

  • アクアリウム
  • あとがき

レビュー投稿数15

初体験な読後感

文庫版は後日談があるのですね。間違えて単行本のほうを買ってしまいました。
でも見たいような見たくないような…(笑)
執着が勢い余ってストーカーになってしまった遠藤(攻め)も遠藤だけど、笠井(受け)の思考回路にもついていけませんでした。
とにかくこういう人達なのだと受け入れることしかできなかったです。
ただ、恋愛の狂気が他人事で恋って何さと冷めていた笠井が、いつの間にかその渦中にいるという所はホラー性を感じて凄く面白かったです。

10年ぶりに再会し和解できた遠藤と笠井ですが、遠藤は押し殺していた想いが解き放たれたように笠井に迫っていきます。
相手への気遣いや、嫌われたくないという臆病な気持ちよりも、毎日笠井の顔を見たい、声を聞きたいという想いのまま突っ走っているようでした。
そして、肉体関係を結んだことをきっかけに2人の関係が泥沼化していきます。

笠井は精神的にも肉体的にも追い詰められ、吐血してついに入院。
そこで初めて遠藤は我に帰るのですね。
好きな人を追い詰めた恐怖におののき離れようと決心したけど、肝心の笠井は友人としての遠藤を失いたくないと…
ここまでいかないと分からない遠藤なのに…。

最後に見せた笠井の情熱がどこから来たのかよく分からないし、遠藤に対する諦めや同情のようにも見えてしまいました。
遠藤は遠藤で、笠井の全てが欲しいという気持ちがエスカレートしていて、入院させたことの反省はどこかにいってしまった様子(笑)
こういう人達もありなんですかね?
ここの評価を見たらアリなんだなと思いました。もっと賛否両論あるのかと思った。
ただ、笠井の2人の父親には幸せな姿を見せてほしいなと思います。
笠井の家族を巻き込んだ微笑ましい光景は全く想像できませんが…
というか笠井の親的に、この2人が交際するのはOKなのだろうか。
2人がくっつかない方が安心できるって初体験でしたw
でももし友達に笠井みたいな人がいたら、やっぱり応援はできないよなと思います。

2

すごくやさしくしたいのに…

ヤバイ…ド真ん中入っちゃいました☆
話題の書ということで、このたび手に入れることが出来、
わくわくしながら読み始めました。

学生時代から、笠井(受け)を愛し続けていた遠藤(攻め)。
同窓会で再会したところからお話が始まります。

学生時代の怨恨が解けた後の、穏やかな友人関係。
メールのやりとりや家呑みなど、仲良しな場面が続き、
このあたりは安心して読めたのです…が…。

来た来た~!
…と思ってしまいました。
違和感、肌で感じる視線、じわじわ迫る恐怖感☆

笠井が遠藤の異常さに気付き、
離れようと決意する時点で、すでに遠藤は開き直っています。
友人付き合いは全て演技だったと白状し、
笠井を恐怖のどん底に陥れるのです。

卑猥な画像で脅し、同居を迫り、友人にも根回しするなど
行動力のある遠藤に惚れ惚れしました。
やることが早い!
フットワークが軽い!

追い詰められた笠井は、コーヒーショップで吐血。
臨場感のある描写に背筋が凍りそうでした。

笠井が死にそうになったことで、
次に追い詰められるのは、遠藤です。
病室で笠井の手を握り「こんなことをしたかったんじゃない」と
涙をこぼし、別れを告げる遠藤に、
心揺れる笠井の気持ちがよく分かりました。

もともと天文部の二人は、
最後に星を見に行って別れようということになります。
この設定すごく良いなと思いました。
未練もあり、思惑もあり、ちょっと偽善っぽいカホリもあり。

毛布を分けあい、手に触れることすらなく星を眺め、
静かに言葉を交わす場面は心に響きました。
これが最後と知りながら、本当のことは何も伝えられない二人。
「空が明るくなってくるのを、二人は黙って見つめた」
という1文が胸にしみました。

これでエンディングだろうと気を抜いていたら、
もう1回来た!!
美しい別れの余韻も冷めやらないまま、
ラストの短いエピローグを読んで驚愕しました。
なんだこれ?
こんなことってアリですか?
話の流れとして奇妙すぎて、
別時間枠の話かと思い、2回読み返したくらいです。
自分としては、ドンデン返しに近い衝撃がありました。

後日談はとても楽しかったです。
遠藤は最後まで“遠藤”していてブレがなく、
「ヘンだよなぁ、すごくやさしくしたいのに、結局こんなふうだ…」
という台詞に、彼の心情が凝縮されているように思いました。

同級生の友人や同僚、親とそのパートナーなど
脇役も光っていて、笠井が追い詰められる場面でも、
救いの手がそこかしこにあるのも良かったです。

遠藤が笠井に想いを寄せるきっかけとなったエピソードは
割とサラっと書かれているような気がしたので、
心をガッチリ掴まれた場面を、
もっと濃厚(?)に書いてもらえたら、
この本のタイトルがさらに生きたと思います。

最後に、自分的に最大に萌えたのは、
揺るぎなく笠井に執着する遠藤が、
要所要所で、迷いや罪悪感を感じているところです。
彼の弱さを見るにつけ、どんどん感情移入してしまいました。
愛や恋を理由に、何をしてもいいわけではないということを
遠藤自身が、一番よく分かっているように思えたからです。

それでもやめられない止まらないこの執着愛。
後日談があるので、読後感はスッキリしています。
執着好きな方にはオススメ。
佐田さんの他の作品も読んでみようと思います。

追記…
こちらの新書版には後日談は収録されておりません。
2013年出版の文庫版の方に収録されております。
紛らわしいレビューを掲載してしまい大変申し訳ありません。

6

痛いけど、イタ気持ちいい・・・

ヤンデレ好きーな私にはたまらない作品でした。
ここまでの執着、立派なストーカーです。

少々のストーカーならば深い愛情の裏返しとして美味しく思えるのがBLマジック。
でもこの作品の遠藤は脅迫までして、受けの笠井を手に入れようとするんです。
BLマジックでごまかせないほどの執着ぶりに恐怖 汗
それでも遠藤の切羽詰まった真剣な気持ち(相手の気持ちをないがしろにしてるから愛情とは言えないかも・・・)に同情しちゃいました。

手段を選ばずに笠井を手に入れようとする遠藤と、そんな遠藤に嫌悪感と恐怖を感じる笠井。どこまでも平行線の二人がどこに落ち着くのか、ハラハラしながら最後まで一気読みしました。

最後に遠藤視点の短編『アクアリウム』が入っています。
また笠井に逃げられるんじゃないか、結婚するからと捨てられるんじゃないかと不安になる遠藤は、関係が落ち着いてからも変わりません 笑

そんな遠藤がクセになる、イタ気持ちいい作品でした。
ヤンデレ好きーな方はぜひ読んでみて下さい(^^)

3

断じてホラーじゃない!(キリッ

みんなホラー、ホラーって言いますが、自分はそうでもないと思います。(苦笑)
執着ヤンデレ攻めなんで大好物すぎてたまらなかったです。

物語の見所はもちろん、攻めの受けが好き過ぎた故のやりすぎ行為です。
最初は友たちだけでいい、そばにいたい。そこで段々エスカレード、欲張っちゃって、受けを追い詰めました。
どうしても欲しい。体が欲しい。心も欲しい。魂までください。
受けへの限りない執着ぶりがかなりぐっときました。

終盤まで受けは攻めを拒絶して攻めへの気持ち認めたくなかったです。
育て親はゲイで子供の頃いじめられた事がトラウマになった受けは普通でいたかった。
普通でいたかった自分の夢を邪魔する攻めが憎い。その重い愛が気持ち悪い。
でも攻めは自分の人生から消えたら、さびしい。
短気で暴言吐きまくったけど、受けのやさしさは惚れるところだと思います。
ストーカーされても脅されても警察に助けを求めませんでした。
攻めを手放すと、攻めは狂って死ぬじゃないかと思って、受けは最後の最後、平凡な夢を諦めて攻めを選択しました。
それは受けのやさしさです。
でもやさしさだけではなく、愛もあります。

作中、受けは何度も疑問したけど、「恋」って、何?
「諦めきれない、それは恋」
なかなかいい回答だと思います。

2

ホラー映画

怖い 怖い 怖い。
ストーカー・ヤンデレ 頭オカシイからこの人。(攻め)
いくら相手(受け)の事を好きでも 脅して犯して好きになってもらおうとするなんて
最強のいっちゃっている人だ。
ゲイで有る事で お互いが逃げ場を失ってしまったのだろうか?
もっと話し合えばよかったのだろうか?
でも 話のわかる男なら絶対こんな恐ろしい事はしないはず。
攻めは受けの弱さをピンポイントで付いてくるから 最後はどうして?って感じで
物語は終わる。
ホラーだった。

1

もはやホラー

ひとことでいうと攻めはヤンデレなんですけど、並みのヤンデレではございません!
攻の思い詰めっぷり、受への執着そしてその行動が異常すぎて、本当身の毛がよだつ怖さだった・・・。
これ、もはや犯罪の域ですよね・・・。
遠藤はどう考えてもヤバいのにそれでも最終的に遠藤と生きることを選んでしまった笠井は、やっぱりもともと遠藤にどこか惹かれていたのかも。
尋常じゃない遠藤の執着心や笠井が育ってきた特殊な家庭環境など、難しい設定なのに
、攻が思い詰めていく過程や受が追い詰められていく心理描写が丁寧で、突拍子な感じがせずもうグイグイ話に引き込まれました。
すごい作者さんだなーと。そうかこれが佐田節か!と思いましたw

2

本当にそれでいいのか、と思いながら話に引き込まれる

そんな感じの話でした。
ヤンデレ執着攻めが好きな方にはかなりお勧めの話だと思います。
ただ、かなり受が攻によって精神的にも肉体的にも追い詰められるので、そういったのが嫌いなら駄目かも。
あとやたら受が攻に対して「ボケ」「アホ」「バカ」「死ね」などの暴言を吐いています。

高校時代に喧嘩別れした受・笠井と攻・遠藤が10年後に同窓会で再会(遠藤は別のクラスだったが共通の友人の長沼に頼んで参加)
高校時代の喧嘩は遠藤がほぼ100%悪く、遠藤が笠井に素直に謝った為、仲直りします。
その後家飲みなどもするようになるのですが、遠藤が笠井に告白してからおかしくなります。
笠井は家庭環境のせいでゲイには理解はありますが、自分の事となると話は別で拒絶しますが「友達としてでいいんだ」と遠藤に言われ、その後も遠藤は頻繁に笠井の家に遊びに来たり。しかし遠藤は明らかにそれ以上の物を笠井に求めています(昔笠井に告白した及川と笠井との友情が続いているのは、及川はそれ以上を求めて来なかったからだし)

そんな遠藤から笠井は逃げ出します。引っ越して携帯も着拒にして行方をくらませようとします
…が無駄でした。
会社に偽名で電話を掛けたり、会社から後をつけて笠井の転居先を突き止めたり。
その後更に追い詰められた笠井は「一度我慢して遠藤寝たら憑き物が落ちるように執着も消えるのではないか」と考え、遠藤に提案します。
読者視点では「それは絶対に駄目だろ!」と思うのですが、笠井はかなり追い詰められています。
遠藤は一回だけで済ますはずがありません。
その後遠藤は笠井の家に住むと言いはじめて家に居着かれてしまいます(仕事は普通にしている)
笠井は更に追い詰められ、相談しようと呼び出した長沼の目の前で血を吐いて倒れてしまいます。
笠井は入院、さすがに遠藤も反省したようで、更に遠藤は長沼にも責められて笠井に別れを切り出します。
笠井が退院後、二人で星を見に行って綺麗に二人は別れた…

と思ったら遠藤はこれで終わる男ではありませんでした。
その後も笠井をストーキング。
最後の笠井の選択は「血を吐く程嫌な思いをしたのに、本当にそれていいのか!」と心の中で叫びました。

後日談「アクアリウム」は遠藤視点での話。
長沼に「いつか道がわかれる日が来たら手を離してやれ」と窘められ、その時は「わかってるよ…」と返事し、残り時間が限られているなら、一分一秒でも多く、笠井のそばにいたいと思っていたが、
結局は手を離す気は無いようです。それでこそ遠藤です。

笠井と遠藤の共通の友人の長沼はとっても良い人です。
間違いなくこの話の中では性格は良いです。
他のBL小説だと「スピンオフが読みたい」と思うのですが、長沼の場合は「普通に幸せになってくれ」と思わずにはいられません。
作中で「おまえらとちがって、壊滅的にモテないんだよ、俺は。」と言ってましたが、回りの女性は人を見る目が無いな、と思いました。

どうでもいい事ですが、個人的に序盤で笠井が自分を裏切った彼女をバッサリと切り捨てたのにはとてもスカッとしました。

とにかく攻→→→→→受でゾクゾクしたい方にお勧めです。
遠藤は本当に自分にとって良いヤンデレでした。眼鏡だし。
文句無しの神評価です。

4

こわい(涙)

BLを読み慣れてる人ほど衝撃を受けるんじゃないかな。
拉致監禁レイプな展開にまったく衝撃を受けなくなってくるのが腐の宿命なんだけど。
で、この話は拉致監禁レイプと比べればよほど緩いことしかしてないんだけど、そこにあるリアリティが怖い。どんどん恋の狂気に蝕まれていくストーカー攻めが怖い。
ストーリーが面白いというのもあるけど、BL脳をリセットするのにもいい一冊だと思う。

笠井の人物造型がとくに凄いと思いました。
ぶっちゃけ私は、彼は生来のゲイだと思う。親も友人も遠藤も、そして本人も気づいてないけど。作者の佐田さんはそういうつもりで書かれてるような気がしたのですが、どうでしょう。
彼の生育環境を知った瞬間にいろんなことが腑に落ちて、「ああだから逆にゲイを必要以上に庇ったり、逆に必要以上に忌避したりするんだろうな」と。強烈なホモフォビアの多くがゲイである自分を認められないゲイであるというのもまた有名な話だし。
こういうキャラを造型できる作家さんは稀有で、説明ではなくエピソードを積み重ねて表現できる作家さんはさらに稀有で、佐田さんは物凄い才能の持ち主だなと思いました。

攻めの遠藤についてですが、まともな社会人やってるのが逆に怖いんだよね。笠井が絡むこと以外はまとも。しかも、怖くてたまらないのに、一途な想いが可哀想で、応援したくなってしまう、という…。
まあ実際にこんな男に惚れられたらたまったもんじゃないですが、「それなのに応援したくなるキャラ」を作り上げるっていうのも佐田さんの才能なんだろうなと思いました。

あと蛇足ですが、「気ちがい」という単語がサラッとナチュラルに登場したのにビックリでした。商業出版された小説で、この言葉が使われてるのを見たの、何年ぶりだろう?
確信犯かしらと考えて、ニヤリ。だとしたら佐田さん大好きですw

9

衝撃の・・・・・・

ここでの評価がよかったので、興味本位で買ってみました。
ですが!!これが正解。まだ腐女子歴が短いせいかもしれませんが
こんな衝撃作、小説で読んだことなかったです。
新人作家だそうですが、これは期待のルーキーです。

お話自体の構成もまとまっていて読みやすかったです。
本のボリュームもあるので読み応えがありました。
まずは執着。これは何よりも強烈な印象を植え付けた。
そんなそこらの可愛いもんじゃない、恐ろしいほどの妄執。殺意にも近い
彼の中の最大の愛。ストーカー行為にも走るところは気持ちの悪さと恐怖を持覚えるほどだ。そして見所は
受け様が攻め様に執拗に執着され追い詰められていく様を受けの笠井の視点
で描かれていました。
じわじわと心が崩れ落ちていく所をじっくり巧みな文章に惚れ惚れしました
普通はたとえノンケでも激しく求められる受けは攻めに愛情が芽生えていくというパターンが多いというか主流なんですが…これは見事に期待を裏切り
最後の最後まで逃げまどい拒絶し続ける。だけど期待を裏切ったとしても
がっかりさせない所がこの作者さんの持ち味なのかもしれない。と思う。
終盤になるまでどうなってしまうのか?とはらはらどきどきさせていただきました。数少ない圧倒的な心理描写の書く佐田先生に期待してます。
この作家さんの次回作が出たらぜひ買ってみたい、そしてこの作品と出合った時のような感動を味わいたいです。

2

怖すぎる…。

途中怖すぎて、本気でゾクゾクっと鳥肌が立ちました。

しつこく好きだと告げてきたり、「友達でいい」なんて言いながら熱い視線を送ってきたり、よくBLでは見る設定なんですが。
それにだんだんほだされていく…という展開に慣れている私には、このお話はちょっと衝撃でした。
そうだよね。
私の目が腐目線だから許されるんであって、実際の生活の中では許されるはずがないことって、いっぱいあるんですよね。
しかも相手のアプローチはどんどんエスカレートしていく。
気持ち悪い、気味悪い、ぞっとする、吐き気がする、消えてくれれば良いのに、死ねば良いのに。
笠井がだんだん追い詰められていくのがリアルに伝わってきて、本当に怖かったです。

はじめから異常な相手なら、まだ楽なんですよね。さっさと警察呼んじゃえば良いんだもの。
けど、段階を踏んで徐々に崩壊していくものは、どこで食い止めるべきだったのか、食い止める術があったのか、本当に難しいと思うんです。

遠藤はようやく仲直りをした友達なんです。
「再会」に始まって、友人、鬱陶しい友人、ストーキング、恐喝、そして「崩壊」。
さて、スタート地点と着地点はものすごく別世界のように離れているけど、じゃあどこで道を誤ったのかな?
私には分かりません。
家に遊びに来るとかっていう友達としてなら当然オッケーなことから徐々に変化していった場合、ある日突然「昨日までOKだったこと+α(←今まで遊びに来てただけだけど今日は泊めてとか)」を駄目って言うのはとても難しいと思うんです。
遠藤に好意はあれど悪気がないってのが分かるから、なおさら。

人に相談するのも同じことで、相談するタイミングが難しい。
本当に困って追い詰められている人って、思い切って相談したときには既に「何で今まで黙って許してたの?」と言われても仕方ない事態になっているのが常だから。

笠井の言動が正しかったとは思えないし、やっぱり笠井は迂闊だったなと心底思うんだけど、それでも笠井は良く戦ったとは思えます。
壊れる前に何とか救いを求めようと決心できたから。

最後に一度と歩み寄った2人でしたが、夜空を見ながらの遠藤のセリフにこのお話のタイトルが出てきた瞬間、なんだかぶわぁ~~~っと気持ちがかき混ぜられました。
歪んだ関係を掘って掘って掘り下げたら、すごく純粋で綺麗な根っこが出てきた!みたいな感じで。
なんでこんなになっちゃったの~…と、はじめて切なく思いました。

遠藤が大切なことに気付いたかっていうと、……どうだろう?
気付いちゃいるんだろうけど、だからと言ってまともになったとは到底思えません。
遠藤が壊れてしまうのは笠井のことが自分の許容量以上に好きすぎるからで、だからこそ遠藤が心から安心することは、この先ない気がするんです。
もちろん幸せだと感じる瞬間や、嬉しいとか楽しいとかそんなプラスの感情に身を浸すことはあるだろうけれど、遠藤はそれを「束の間の幸せだ」と思いながら、噛み締めるんだと思うんです。
それじゃあ笠井が遠藤の手を取った意味がない。

最後の1ページで、2人はこれから一緒に閉じた世界に沈んでいってしまうんじゃないか……と、ちょっと不安になりました。

「アクアリウム」まで読んで、やっと少しほっとしました。
遠藤はやっぱり変わらないけれど、笠井も変わらないから、良かった。
男女の恋愛にだって、相手を尊重するとか、仕事は仕事とか、沢山のルールがあるんだから、遠藤の全部を受け入れないのはなにも男だからじゃなくて、本気で好きじゃないからってわけでもなくて、長く付き合うためのケジメなんだと、ゆっくりで良いから遠藤が理解してくれれば良いな…と思いました。


5

この作品が収納されている本棚

レビューランキング

小説



人気シリーズ

  • 買う