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tsumibito no hana
ずうう……ん、と腹の奥底に重く響く作品です。
何しろ、設定が苦しい。
妻と死別し、男手一つで保育園児の娘・羽奈を育てる機械工の北川。
だが、芋掘り遠足の日、飲酒運転の車と園バスが衝突し羽奈は車外に投げ出される。
羽奈を喪った北川は、弔問にやってきた保育士の氏家に八つ当たりのように、償うというなら穴を貸せ、と…
このように、2人の始まりはレイプと恫喝、バラすぞという脅しで始まりますが、比較的すぐに北川は氏家を大切に扱い始め、彼の存在に寄りかかっていくように。
本作は、表題作の「つみびとの花」とその後を受け視点で描く「苦しい息もたえだえに」の2編で構成されていますが、この両編を読んではじめて展開に納得のいくような作品だと思います。
例えば、氏家は羽奈と同じく喘息で、発作が始まる氏家に対して北川が娘にしてあげたのと同じ処置をしてあげる、そしてその行為を驚きと泣けるような気持ちで受け入れる氏家の姿がありますが、これは「苦しい〜」の方で明かされる氏家の子供時代に受けたネグレクトと虐待体験に重なってくる…
この哀しい子供時代を持つ氏家が、北川の優しさにほだされてラストのある種唐突な「あなたがすき」発言につながりますが、これも後半に明かされる氏家と婚約者との関係性と関連している…
何より北川に降りかかった不幸が大きすぎて読んでてつらい…
どん底にいる北川の脳裏に浮かぶのが聖書の一節であったりハイネの詩だったり。インテリでも教育関係者でも宗教関係者でもないのに。それがより一層哀しい。
続く「苦しい息もたえだえに」は、氏家視点。
孤独な北川と生きづらさを抱える氏家の寄り添い合う姿。
氏家はもう1つの試練・婚約破棄をも乗り越えます。北川の与えてくれた暖かさに力をもらったのでしょう。
「娘の死」という現実を氏家と共に少しづつ乗り越えていく北川と、居場所を得た氏家の2人。読後感は悲しみではありません。少し暖かく、少し日が差して、少し幸せな。
基本的に自分は、一度読んだ小説は、気に入ったシーンのみを繰り返し読むことはあっても、最初から通しで読み直すことはしないのですが、この小説は最初から最後まで通して読むということを何度もしています。
内容もさることながら、何より文章が好きです。
ぱっとした派手さはないですし、全体通して仄暗い雰囲気が常に漂う話なのですが、じんわりと胸にくるものがあります。
前半は攻め視点、後半は受け視点、2編ある本編のその後の話は攻め視点、と視点がそれぞれ変わります。
物語の序盤、主人公北川(攻)の最愛の娘が、乗っていた園のバス事故により亡くなります。もうこの時点で主人公に感情移入しすぎてしまい胸が張り裂けそうなほど苦しいです。娘の羽奈ちゃんが良い子だけに余計…
家族を亡くし、妻にも先立たれ、追い討ちをかけるように娘も…北川の苦しみは計り知れません。
そして、その園バスを運転していた氏家(受)は責任を感じて、花を持参し北川の家を訪問するのですが……
基本的に自分はレイプから始まる話をあまり好みません。というのも、レイプってどう考えてもそう簡単に許せるような行為じゃないわけですよ。男なら余計。でも大抵の作品が、レイプから始まったにも関わらず割とあっさり受けがその事実を呑み込んで(許して)、はいハッピーエンド♡って、んなわけあるかい!って思ってしまって。
でもこの作品は、ほぼレイプの様な関係から始まるにも関わらず、どっちの気持ちも理解できるというか、いや、最初に北川が「穴を貸せ」言ったときはさすがに ええっ…って思いましたけど、氏家の気持ちの移り変わりは割とすんなり理解できたというか…
ただ、この受けが少々曲者で、攻め視点だからしょうがないですけど、なかなか気持ちが見えてこないんですよ。北川に惹かれているのは言葉の端々で感じるのに、掴めそうなところですり抜けていくというか…
だからね、歩道橋の上のシーンは本当にジーーンとしてしまって、何度も読み返しました。
けど、くっついたと思っても、それで終わりじゃない。
その後も、もうね、なんでこんなに2人を苦しめるのって何度思ったか知れません。
でも読み終えた後の読後感はすごく爽やかです。
なんでこの小説が好きなのかなー。って考えたのですが、この作品に出てくる登場人物が、みんなすごくリアルなんです。
職場の上司の奥さんとか、前園とか、あー、いるいるこんな人って納得できるっていうか…
こんな人いないだろwって人が1人もいない。みんなちゃんと生きてる人間だなーって思う。
佐田さんの文章、ほんと好きだなあとしみじみ思いました。
静かに泣かされました。
初っ端から、北川が唯一となった家族の娘を事故で亡くすという悲劇から始まります。
北川の過去が既に凄惨なもので、愛した妻も亡くし、たった一人の大切な娘ですら失う絶望。
どれだけ傷付こうが、苦しくて息が出来なくなりそうでも、時間は平等に巡り、必ず朝もやってきて刻一刻と時を刻んでいくその中で感じる孤独。
氏家は運転していた、その事故の当事者として重い責任を感じ、こちらも苦しんでいます。
氏家にも凄惨な過去が有り、愛されない絶望を知っています。自分だけの温かい家族という憧憬も強くあります。
仲睦まじい親子を、憧れていた家族を自分が壊してしまった(と背負い込んでいる)過ちから、北川に虐げられても償いだと受け入れる氏家の苦しみにも泣かされました。
お話の中で何度か出てくる、夜が明けていく空の色は、彼らの悲しみや苦しみが徐々に緩和されていく過程のように思えました。
時間と、そしてお互いの拙い人肌という温もり。ぎこちなくはあったけれど、当たり前のように差し出される思い遣りや気遣い。それらが、北川と氏家それぞれの抱える痛みや哀しみを、静かにゆっくりと薄めて夜が明けていくんだなぁと。
ジワジワと胸に突く、北川と氏家の孤独や愛情に飢えた幼少期、事故の被害者と過失者という立場、それぞれが抱える苦しみや哀しみに、とにかく終始涙がはらはらと溢れていきました。
嗚咽が漏れたり、声を上げるのではなく、本当に静かに泣かされました。
そういう意味では凪いだ切なさを孕んだお話です。
でも、静かな真っ暗だった夜から、少しずつ明けていく東の空のグラデーションのように、ゆっくりと二人が闇から這い出し、歩み始めていくという表現に、痛くて切ない話で終わるんではなく、ある種の爽やかな読後感を味わいました。
傷の舐め合いなのかも知れませんが、北川は庇護できる存在を、氏家は自分が大切にしたいと思う家族(人)を求め、お互いに優しく思い遣る関係を築いていたんだと思います。この先、この二人にはたくさんの障害や繰り返す哀しみ、苦しみがあるだろうけど、ゆっくりと二人で肩を並べて歩いて行くのだろうなぁと想像できる、優しいラストでした。
自分の当たり前のように存在している家族を大事にしていきたいと思わされました。
というか、きちんとしている?というか、
もはや純文学、
くらいのきちんと組まれたプロットを感じました。
二人の気持ちの時間軸にずれがあって、
(憎しみから好意にかわるまでの)
その時間差、温度差にリアリティーがある。
北川目線で読むので、前半は2回絶望を味わい、
やるせない気分になります。
後半はようやくじわじわ幸せになるんですが、
ほんと牛歩のごとく、いこかもどろかみたいな感じで、
ちょっと浮上しては落とされて、みたいな…
氏家の愛情表現が乏しいというか、
北川への遠慮がすごく、自己評価が低いので、
決して好意がないわけではないのに、
なかなかもどかしいです。
あと、この作者の方、他の作品もですが、
なかなか昭和枯れすすき的なわびしい雰囲気の描写が上手いので、それがさらに寒々しく感じさせてくれます。
だからこそあたためあう二人みたいな、
お互いがお互いしかいない、みたいな。
重いは重いですが、
なんだか読み返したくなります。
がんばって坂を登れば、
ある時点から下りで楽になるから、
それを味わいたい、変な中毒性がある。
時間長くなりますけどw
大変評価が高い作品なので、秋の夜長感動を求めて読みました。
家族の中で疎外感を感じながら育ち、大人になってようやく築いた自分の家庭だったのに
妻に病で先立たれ、シングルファザーとして保育園に通う娘を一生懸命に育てる男。
それなのに、無惨にも突然の事故でその宝物であった娘も奪われてしまう。
果てしない孤独。
これでもかと失い続ける男は、混沌とした暴力的な衝動に突き動かされて
娘の通っていた園の保育士を強姦する。
はじまりはそんなやりきれない交わりだったが、
やがてお互い温もりを手放したくないものと感じていく。
男が、そんな始まりの相手を大切にしたい優しくしたいと思う様は、せつなく心打たれます。
受けもまた、不幸な育ちの中で孤独を抱えてまるで修道僧のような暮らしをしている。
攻めの理不尽な要求にも、あたかもそれが自分に課せられた罰のように受け止める。
でも、それでもそこまで誰かと密接に触れ合った経験がない受けの心は
この強烈な出会いに動かされていく。
最後にスーパーで受けの義母がとった行動。
この場面や攻めが作ったお弁当など、主人公達の愛とは関係ない場面が心に残りました。
:
全体に良かったのですが、いざ評価する段になると難しいです。
心を動かされる話だったと思うし、新人さんとは思えない筆力だとも思うのだけれど
一言で言えば、私がBLに求めているものとは違うということだったと思います。
挿絵もなしで、一般書として(としては弱いかな?)読んだら違ったのかもしれません。
(心は動かされた+でも趣味じゃない)÷2=…ということで、中立にします。
私、ファンの多い木原音瀬さんが苦手なのですが、その苦手さとどこか通じるかもしれません。
ただ、木原さんの作品に比べるとインパクトが弱くひねりもないので、
スラスラ読めるかと思います。
そこが良いような悪いような、でしょうか。
自分の娘を失う。
どれほど辛い事だろう。
私にも娘が2人いるので人事ではない。
親より先に子どもが死ぬということは親は身を切られる想いだ。
毎日の日常は色の無い世界だろう。
自分も死へ行こうかと考える事は 大事な人を失った誰もが思う。
この世には娘も妻もいない。
「ひとり」の現実。
辛く寂しい喪失感。
何もかもが空想ではないかと子どもを捜す。
この主人公のやりきれない想いが心を打つ。
だからこそ これからの人生を愛する人と歩んでいって欲しい。
必ず泣けると言う高評価作品だから、期待を胸に取って置いたのです。泣きたかったから手にしました。
「北川」の一人娘を亡くした喪失感や絶望感は、想像して果てしないです。
誰を恨めば良いのか怒りの矛先も見えない。
茫然自失の内に葬式が済んで、気が付けば1人ぼっちで骨壷を前にしている。未来は無い絶望しかない。
そんな時に、体を震わせ頭を下げた「氏家」が、心ならずの慰謝料を持って来てしまった。
細かな背景や心情が、紙面からずんずん伝わってきました。
北川の悲しみや怒りを思うと、誰かにぶつけ壊してしまいたくなるのも分かります。
それが、1人ぽっちの悲しさを知る氏家だったから“理不尽”でも北川を受け止めたんだと思うのです。
北川の、加害者が得る“ある種の充足感”が、留まったままの自分を動かす燃料となり、被害者の氏家を思い遣る気持ちも湧かせていきます。
負の感情が別の負を覆い隠そうとする図が浮かんだんですね、北川と氏家の両方に。
そして、北川が揶揄した、ヨブ記の「主は与え、主は奪う」
善人で家族に恵まれ金持ちのヨブが一瞬で全てを失って、それでも神を崇めたというあの話。
ここで、
「無が全って事なんだろう?」
「“我が神、我が神、何故、我を見捨てたもうや”の方じゃないか?」
と逡巡する自分に、作者はその直後、氏家に「好き」「とても好き」と告白させました。
北川も(自分も)救われる希望が、心にじわじわと浸透してきます。
表題作は、北川と氏家がお互いの気持ちを確かめあう迄。
【苦しい息もたえだえに】は、
主に、氏家と婚約者家族の悶悩の部。
同性愛・・・刹那の関係だからと、沢口や当事者のまどかが嫌悪するのは仕方ないです。
(【どうしても触れたくない】を思い浮かべた)
でも、氏家は北川をきっぱり取ってくれた!潔い清々しさが良い!
北川側の、同情する周りのおせっかいのあれこれ話も、小説に現実感を出しているのだと思います。
悲しみは消えるものではないけれど、薄めてくれるものはあるんです。救いがあって良かった。
ちゃんと心の中で泣いたと思います。有難うございました。
深い作品でした。
シングルファーザーである攻めが、いきなり娘を事故でなくしてしまうところから物語がはじまります。
どうしようもない悲しみの中で、「本当は責任はないけど少しは責任のある男」をレイプする。攻め本人も、自分のしたことが無茶苦茶なことだというのを自覚している。
最初はやり場のない感情(悲しみ、怒り、苦しみ、その他ぐちゃぐちゃの名前もつけられないような感情)のはけ口でしかなかった受け。
でも受けは娘と同じ喘息の病気を持ってて、その看護をしたことから、攻めは受けを「娘の身代わり」として慈しみはじめた――ように思えました。
後半あきらかになってくる受けの半生も相当過酷なもので、読み進むうち、この二人が惹かれあった理由が分かる気がしました。
受けもまた、「親の愛」に激しく飢えてる人間だったのだ。
二人ともはっきり自覚はしてないけど、互いに求めるものが一致してたんだなって思って。
もちろん性的な関係があるわけだから親子愛じゃないし、恋愛感情も芽生えてくるんだけど、それ以上に「子供を慈しみたい気持ち」と「親から慈しまれたい気持ち」が合致して、ゆえに余計に惹かれあったんじゃないかなって。
読んでる間ずっと胸がちりちりと痛かったです。
ノベルスでしかも二段組み…本を開いた瞬間に怖じ気づきましたが、みなさんのレビューを信頼して読み進めること数ページ。
そこでもう、二段組みなんて苦ではなくなるくらいお話にのめり込んでました。
主人公の二人ともが不遇の人生であり、その人物の背景が暗くてそして深いです。
物語を彩る周りの人たちも、個性的というか…本当にお話の中で生きてるんだなと感じる自然さ。
こういう人いるいる…!と感じるリアリティがありました。
お話はこれでもかというほどの不幸とやるせなさ。
設定自体がずるいくらい悲しいので、泣くものかと悔しくなりつつ…
やっぱり涙を我慢できませんでした。
ずるいです。こんな設定じゃあ泣ける話になるのは必至…!
でも、本当に泣ける話に出来るのは佐田先生の文章力の成せる技なんでしょうね。
なんだか、雰囲気がBLではなくJUNEのようで、昔っぽさというか…
なぜか懐かしい気持ちにもなってしまいます。不思議。
ハッピーエンドが当たり前で、ほんわか明るいBLが好きな方には合わないかもしれませんが、たまにはこんな深くて暗くて切ないお話もいいものです!
涙と鼻水で、お顔ぐしゃぐしゃになるし。
まず、いきなり男手一つで育てていた一人娘が事故で死にます。
初っぱなから泣かされレベルMAXのネタです。
その後、一度ゆるんだ涙腺はノンストップダダ漏れ状態のまま。
それでも、それが、別にイヤじゃなかった。
多分、北川の性格が、後ろ向きだったり、自分の悲しみに酔ったりするタイプだったら、こんなに気持ちよく泣けなかったと思う。
北川の優しさや愛が、この作品を、ただのお涙頂戴の詰め合わせにさせないでいるのかな。
秋の夜長に、しっかり泣く準備をしてからどうぞ。
非常にボリューミーでしたが、堅苦しい言葉遣いなどは無く、スラスラ読めました。
内容はドシリアスで、かなり暗い話でした。感動…というよりは、暗い話に救いがちょこちょこ…という感じです。
確かに良い話であり、切ないながらも最後には、全ての問題に決着をつけ明るい方向に落ち着かせているので読後感は晴れやかです。
が、申し訳ありませんが今回は「中立」評価です。
以下、ネタバレを含みます。
設定について
攻めは男やもめで妻はすでに他界、本編最初に娘の事故死、過去に親兄弟は心中。(親兄弟の心中に関してはさほど苦しんではいないが)
そんな負の連鎖の中、孤独と絶望のやりきれなさのなか、半ば八つ当たりで受けを組み敷きます。
受けは保育士で婚約者あり。過去にトラウマを持ち、また保育園のバス事故に関しても罪悪感を持っており、償いという名目があるため組み敷かれても攻めに対して責めることは無く、攻めが提示した期間中、体の関係を受け入れています。
本編では攻めが娘の事故死を乗り越えて、受けを好きになるのがメインでした。
最後の2ページはなんとも言えませんでした。(良い意味で!)
くっついているのに、まだくっついていない所が…やりきれず、もどかしかったです。
続編は受けの婚約破棄がメインとなっており、婚約者も出てきてます。(本編にもちょろっといましたが)
実は婚約者が同性愛者で、世間体を考えたうえで偽装結婚を申し出、受けは婚約者から「必要」とされたことが過去のトラウマを払拭できる要素だったこと、また偽装でも「家族」が手に入るということからお互い利害の一致で婚約したことが書かれています。
結局は受けが攻めと添い遂げると決めたことで婚約を破棄する流れから、カミングアウトにまで至るという話。
(ちなみに受けは攻めとどうこうなる前から、婚約は破棄するつもりだったとのこと)
最後に、受けと攻めが一緒に暮らし始め、日常の描写がある所が幸せそうだな…と感じ取れてほっこりします。
以上、内容についてでしたが、本当に話自体は悪くなく、他の方と同様に「神」評価をしたいんですが…
設定だけで、なんというか本当に個人的な意見ですがどうにも「泣ける」要素がすでにあるんです。
はい、泣ける要素盛り込みましたよ、すぐにでも切なくなりたい方はこちらにどうぞ~という風に感じてしまうんです。
ホラ!いま最愛の娘が亡くなりましたよ!辛いでしょ?辛いでしょ?!みたいな。
人や動物が亡くなる描写、特にそれが登場人物の身近な存在であればある程泣けるのは当たり前なんです。
だからこそ、力のある作家さんにはそういった有り体のお涙頂戴設定ではなく、別の設定でもっと深い話を書いて頂きたいな…と。
いやもう、本当に偉そうにすみません。
でもこの作品は読みやすくて、切ないけれども最後にほっこりなので、お勧めです。まだ切ない系のBLに手を出してないという方には特にお勧めです。
帯「二ヶ月連続刊行第一弾。期待の新人、初ノベルズ」
255P(後書き2P、口絵カラー1P、本部内イラスト10P)
こりゃどえらい新人さんが現れたもんです、すげー。
これは迷わず神です、新人神!!!
初ノベルズにしてこの完成度の高さはまさに帯通り「期待の新人」ですね。
後書きに続刊報告があったので読み終えて即効買いリストに入れましたよ。
こういう表現は好きじゃないんですが、BL枠だけに留まらないものを感じました(うーん、やっぱりこの表現は好きじゃないけどこうとしか書き様がないです)
作中でタイトルの「つみびとの花」の言葉が出てくる部分で無性に感動しました。
喘息が北川[攻]と氏家[受]との2人にとってそれぞれ意味を持ち、2人を繋ぐ要因の一つにもなるのですが、一般小説も合わせてここまで喘息描写を丁寧に書いた作品も珍しいんじゃないでしょうか。
あと漢字とひらがなのバランスが絶妙、普通これは漢字変換するんじゃね?って字をあえてひらがなが使われてるんですがその匙加減がいいんですよ。
安さ優先で基本文庫大好き人間なんですが、これはハードカバーで読みたい!と思いました。
ともふみさんのレビューに「挿絵なしでもいい」とありましたが、それ凄いよく分かります。
ハードカバーの挿絵なしで読みたい、そんな作品です。
二段組でボリュームたっぷりなのでがっつり時間を忘れて読みたい、そんな時にお勧め。
久々に泣ける作品と出会えた、佐田先生の本は初めてだが、とても実力のある作家さんです
他の方々も言ってたように、号泣するような展開ではないが、じんわり、ホロホロと涙が零れる。悲しくて、愛しくて、苦しくて、切なくてそして優しい気持ちになれる一冊でした。救いようのない展開だが、最後の結末にちゃんと光が見えて、また泣けた。どうかみんなに幸せが、と思わず願いたい
作品全体に漂う雰囲気に呑まれてしまいました。
泣けるところは沢山あるんですが、どこかでドバーっと泣くというよりは、全編を通してず~っとじわっと涙目で読んだ感じです。
主人公である北川がとても人間らしくて、悲しんだり、途方にくれたり、理不尽な八つ当たりをしたり、酷いとしたり、優しくしたり、甘えたり、大事にしたり、落ち込んだり、無理したり……、本当に沢山の感情を見せるのですが、それが全然ブレて見えないのはバックボーンがしっかりしてるからなんだな、と、佐田さんの力量と丁寧さに感嘆させられました。
当人同士だけじゃなく、脇のキャラたちも、漫画的いい人でも極悪人でもなくて、それぞれに事情を抱えている普通の人たちで、ホントに人間くさい。
BLというよりも、ヒューマンドラマを見たような気がします。
いや、もちろんちゃんとガッツリBL要素はあるんですが。
こんなに切ないお話の中、私は北川が好意を隠さない人だったことが、本当に救いでした。
強姦から始まった関係だから、好きだと自覚しても「今更好きなんて言えない」って展開に転ぶこともありえたと思うし、実際BLではそういう展開のほうが多い気がするんです。
それももちろん好きだけど、このお話に関しては「好きになったから傍に居て」と言ってくれて良かったと思いました。
縋るようで痛々しくはあったけれど、北川が氏家を求めるたびに、「この人はまだ大丈夫。何度も一人ぼっちにされてしまった人だけれど、まだ誰かに優しくしたりされたりすることを諦めてない」と、そう思えました。
この作家さんの書かれるお話を、もっと読みたい!
もっといろんな人に読んで欲しい!
いや、きっと近いうちにとても大きく羽ばたかれる方だから、今くらいはこっそり宝物として大事にしときたい!
読み終えてそんな気持ちになりました。
これまた不幸のオンパレード。
でも単純に、可哀想なシチュで泣かせるためだけのお話ではないと思う。
上手く言えなくてもどかしいんですが、物語の根っこには人と人の関わり合いがあって、切実で真摯な人間ドラマのような趣きがあります。でもちゃんと恋愛もの。
恋愛だって人と人が向き合う上で生まれる関係性の一つなんだから、人間ドラマとも言える。そんな風に感じました。
最愛の娘を事故で亡くした北川(攻め)の前に現れたのは、バス事故の時に運転していた氏家(受け)という青年。直接的な加害者ではないけれど、監督責任があった保育士です。
圧倒的な喪失感の中で自分を見失っている北川は、目の前に転がり込んで来たこの青年の罪悪感に付け込み身体を強要することで、自分が味わっている地獄への道連れにしようとします。
なんともシビアな始まり。
でも、テーマは贖罪や愛憎ではありません。
脅しという非常識な形で始まった関係の変化。それをもたらす心の推移がメインとなっていて、ヒリヒリとした重たい話ながらも余韻は優しく、心に残る良作でした。
主役である北川が色んな顔を覗かせていて、いちいち胸にきました。
娘を心から愛する父親、劣情を抱く雄、愛情深い世話焼きな保護者、脅迫する犯罪者、寂しくてたまらない弱り切った孤独者、恋をする一人の男。
そのひとつひとつの感情が、淡々としているのに切実で、身につまされます。
恐怖に近い孤独感に苛まれていた北川が氏家を求める様子は、陵辱ではなく、ほとんど溺れる者が藁をも縋るような切迫感があります。
そういう意味では完全な依存で、純粋な恋愛感情とは言えないかも。
でも、純粋な恋愛ってなんだろうな?
北川にとって氏家は、偶然見つけた八つ当たりの道具でしかなかった。多分誰でも良かった。でも、「だれもな、だれかのかわりになれないんだよ」という台詞が示すように、その後に生まれた関係性は氏家相手だから築けた。
娘の羽奈ちゃんの先生であり、同じく孤独を知る氏家だったからこそ、北川の苦しみや寂しさや優しさを違えずに汲み取れたんだろうな。
誰かを愛しく思う感情は、巡り合わせなんだなあとしみじみしてしまいました。
色んな箇所でホロリとなりました。
特に2話目でのまどかちゃんや柳瀬親子とのエピソードでは、やたら涙が出てしょうがなかったです。
なんていうか、脇役がみな生きているんですね。
キャラが立っているという意味じゃなくて、小さな子から年配者まで例外なく、それぞれの事情と価値観のもとで自分の人生を生きているんです。
日々を送る中で時にはそんな彼らと接点があり、その都度で何かを得たり、噛み合わなかったり。
主役たちの目を通して彼らを嫌だなと思うシーンはあっても、(主役を含め)そこには「いい人」「悪い人」という作者による線引きがありません。そういう人と人の関わり合い方が描かれている。
もはやBLとしての感想なのか自分でも疑問ですが、単純な勧善懲悪ではないそんな世界観が、個人的にはとても好きだなあと思いました。
それとこのお話、イラスト無しでいいかもと感じたり。。
レーターさんには申し訳ないんだけど、漫画的な挿し絵にもの凄く違和感が…って、わたしだけでしょうか?萌えを求める話ではないからかな。
そんな話が好きな方は、是非是非読んでみてほしいです。
こんばんは茶鬼さん!
はい、ようやく読めて嬉しいです~。
ネットで読んでいるので多分3度目なのにのめり込む様に読んで、またしてもボロボロ泣いちゃって、鼻が詰まってオエッってなりました。
悲しい話なんですが、癒しがありますよね…タイトルも沁みました。
ほんと、色んな人に試してみてほしい本だと思います。
おふたりのレビューのおかげで再び巡り会えてよかった…。ありがとうございますーーーーーーーーーーーー!
マイページの好きな作家さんリストに加えねば!
ともふみさま
よまれましたね♪
「神」がついていて、感激しました!!
本当に、BLっていう枠を超えてズシンと心に響くお話でしたよね。
自分も、共依存が始まりだなとは思いましたが、ものすごく納得のいく展開でした。
涙もボロボロでした~
イラストは、、気にしなかった、というか話に熱中するあまり、絵があることにもあまり気がつかなかったくらいです。
この本、もっと皆に知ってもらいたいし、読んでもらいたいと思いますっ!!
ページをめくると文章は二段組み。
あらすじを見ると娘をなくした父親が、怒りを保育士へぶつけるという、大変に重苦しそうな内容。
しかし読み始めると、すっかりのめり込んで、胸が痛くて痛くて、、、鼻の奥がツーンとして、、、一気に読み終えてしまいました。
読み終わっても胸がいたかったです。
保育園のバスが衝突事故を起こし、運悪く娘が亡くなってしまった妻を亡くし男手一つで育ててきた北川。
誰にも怒りをぶつけられなくて、謝罪に来た保育士の氏家を強姦し、教会系の保育士であることから脅し、謝罪するなら毎週家へ来いという。
逃げようとする氏家と、氏家に段々執着する北川。
婚約者がいるという氏家と北川が、どのように寄り添っていくようになるのか・・・?
読み進めるうちに、共依存・転移・逆転移 という言葉がよぎりました。
北川も氏家もまったくのノーマルな男性です。
しかし、それぞれに事情を持ち、幼いころのトラウマを抱え、愛を求めていたのは間違いないのです。
特に、北川の娘と氏家が同じ病気を持っていたと言う部分が大きいでしょう。
無理矢理な性交渉であるから、逃げたくてしようがないのに、今まで与えてもらえなかったぬくもりを氏家は知ってしまったからです。
そこで、お互いに失くしたもの、欲しかったものへの依存が始まってしまったのかもしれません。
氏家が、とてもうじうじ(洒落ではない?)した性格で色々なものを呑みこんでしまう人なので、余計に苦しさを感じます。
北川が一人になったことでの周りの人間が色々な形で関与して出てきますが、女性の存在がまた一つ大きな役割を担っていました。
氏家の婚約者である、里親の娘。
北川に縁談を勧める会社の社長の奥さんと、進められた子持ちの女性。
いずれも、とても自分勝手に見えるのですが、それはこの話の主人公もそうであるかもしれないのです。
ただ、接点が交わらない人達であるということ、だからここの女性達を嫌ったり、蔑んだりすることはできないのです。
氏家の婚約者が帰国するまで、と期限を付けて氏家を自分のものにした北川が、手放す時、彼の心もまた切なくて、どれだけ氏家に依存していたかわかります。
北川の為に、それとなく知られないように九官鳥を託す氏家の心のおくゆかしさは、そんな意味があったのかとまた切なさを誘いました。
『苦しい息もたえだえに』
北川も氏家も弱い人間です。
でも一つの事故を通して離れられない存在となったときに、氏家は、北川は二人でいる為に勇気を振り絞ります。
婚約者の女性の思惑はずるさを感じさせるが、人の幸せを踏み台にして自分の幸せは成り立たないのですよね。
決して明るい話ではありません。
全編通して、重く、苦しく、時には怒りさえ感じます。
新人作家さんで、ご自身のブログで書き連ねてきた作品だけにとてもこの世界にのめり込んで作られているような感じも見られますが、この丁寧さが逆に初々しくて、こなれた作品を次々に出す中堅の作家さんの作品よりも、読ませる作品になっていることは間違いありません。
来月の刊行作品、そしてまたその先も期待したいですね。
最初に…ほんっとにこの方の作品素晴らしいです!!
デビューされたばかりとは思えません!
どうか、どうぞ読んでみて下さい。
何かを感じて頂けると思うのですが…
なんか回し者みたいですね(笑)
私はまだ、この作品は買ってはいないのですが、以前佐田さんが小説ブログをされていた時に『つみびとの花』読ませて頂きました。
ちょっと話の雰囲気として水城せとなさん寄りかな~と思ったり。
ネタバレはあえてしませんがとにかくお話が深いです。考えさせられるし、男同士、お互い対等な関係で書かれていますので女々しかったりショタが苦手の方にとってはかなりの確率でヒットなんではないでしょうか。
佐田三季さんのファンがどんどん増えたらいいなーと思う今日この頃です。
再びこんばんはです。
わー、わー、やはり同じ方なんですね!嬉しいです。
日記ブログのお知らせもありがとうございました。早速のぞいてきましたよ~。やはり小説の方は休止されたままなんですね。残念ですが、これからは商業の方での活躍を応援したいと思います。
そして明日の仕事帰りに、スキップで買いに行ってきまっス!押忍!
うわーコメント有り難うございます!!
そうです!まさにその方です!!
今はブログの方は休止されてますが日記の方のブログは続けてらっしゃいますよ★(夜の終わりに ちょっと一服)
本当、佐田さんのお話は痛くて暗いんですが最後は救われるし、その救われ方が100パーセントじゃない所が自然でいいんですよね…
あ、調度今『あの日、校舎の~』がアマゾンから来ました(笑)
ともふみさんも書店へダッシュですねb
ルイさん、こんにちは!&はじめまして、ともふみと申します
ルイさんと茶鬼さんのレビューに惹かれて二作品ともとても気になっていました。
でも、あらすじを読むとものすっごくデジャブ感があって自分でも??だったのですが、ルイさんのレビューを拝見して、もしかしてネット小説として掲載されていた頃に泣きながら読んだ作品と同じような気がしてきて、確認したくていてもたってもいられずコメントしてしまいました。
作者さまのHNを全く覚えていないのですが、確かサイト名が「夜のホニャララに(←うろ覚え)愛について」というような感じで、BLの他に男女ものの作品も一緒に掲載されていた小説ブログさまでしょうか??
もしそうなら、好きな作風の方だったのに読めなくなってしまい悲しかったので、書店にダッシュしなきゃー!と、ウズウズしてます。