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この作品はBLではありません。
オノナツメや黒娜さかきが連載しているIKKIコミックスから、才能のある新人や中堅をバックアップしていこうというコンセプトの元設立されたrareというレーベルで第一弾としてコミックス描き下ろしにて発売されたものです。
値段が高いのは書籍扱いのコミックスだからで、置く書店も限定されています。
一言で言い表すなら耽美なオノナツメといったところでしょうか?
しかし、これは素晴らしい、絶対読んでもらいたい!と大プッシュするのです。
舞台はフランス。
愛書家の父を失くした少年リュカが、本を愛でた父の気持ち、本から溢れる職人の愛を知りたいと飛び込んだ製本職人のアトリエ。
そこにいたのは、製本家のステファン・ルイと装飾家のステファン・ボッシュ。
二人のステファンの繋がりと、少年リュカとの触れあいを通じて完成される一冊の本。
家族、絆、自分の居場所、そんなものをこの一冊にふんわりと空気のように漂わせた優れた作品です。
BL的匂い系と言ったら作者が顔をしかめてしまうかもしれませんが、しかし、それはとてもとても匂わせるのです。
家族に居場所がなかったルイに初めてできた居場所、そして相棒。
それがボッシュ。
リュカがアトリエにやってきたことで、気軽に接するボッシュを見てルイは複雑な気持ちでいます。
それは、単に彼が人見知りとかシャイとかそれだけでは語れない、意味深なボッシュとの会話。
ボッシュがさりげなくルイに寄り添い引き寄せ、その腕に掌を寄せる時、どうして匂いを感じずにいられるでしょうか!
リュカに自分の居場所を取られてしまうのではないかと不安がるルイに「オレ達の関係もそのまま」と言うボッシュのその言葉の意味を邪推する自分は汚いでしょうか?
しかし、リュカもルイにはボッシュという居場所があるということに羨ましいという気持ちをもっている。
それは、一体どんな羨望なのか?またまた邪推してしまうのです。
腐の目で見てしまうと、限りなくグレーなこの本の登場人物ですが、そのフィルターをはずしても、その物語は素敵な物語として心に染みいる感動を与えます。
まさに白い本のその意味が充分に表現された秀作です。
是非是非にお勧めしたい一冊です!