成層圏の灯(2)

成層圏の灯(2)
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神13
  • 萌×22
  • 萌0
  • 中立0
  • しゅみじゃない1

--

レビュー数
4
得点
73
評価数
16
平均
4.6 / 5
神率
81.3%
著者
鳥人ヒロミ 

作家さんの新作発表
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媒体
漫画(コミック)
出版社
新書館
レーベル
Wings文庫
シリーズ
幾千の言葉より 成層圏の灯
発売日
価格
¥650(税抜)  
ISBN
9784403501036

あらすじ

重荷になってしまった恋を捨てた男。
捨てられた事で歯止めが利かなくなった男。
二人の進む道は激しくぶつかり合いながら
いつか収斂し、静かな一筋の流れとなって
続いてゆく。

喜瀬川の愛情が重荷になり、さらに彼の写真家としての才能に、同じ男として焦りを感じる佐伯。離ればなれになったふたりは、迷い、傷つき、悩みながら、日々を過ごしていく。一年後、ふたりは再会するが——…。 表題シリーズ六篇ほか短篇「薄紅」を収録。ボーイズ・ラブ史上に残る感動の名作、喜瀬川と佐伯のリアル・ラブ・グラフティ終幕!!

ビブロスより刊行されたシリーズ後半の
文庫化新装版。
旧版に収録された短編『薄紅』も収録。

表題作成層圏の灯(2)

喜瀬川英:大学生→カメラマン助手→カメラマン
佐伯徹:商社勤務→バイト→マネージャー

同時収録作品セミ・シングル

紙袋章太郎=カブ:カリスマ美容師
喜瀬川英:大学生→カメラマン助手

同時収録作品セミ・シングル

佐伯徹:リーマン
唯一:リーマン

同時収録作品薄紅:表題シリーズに非ず

水木一郎:医者
佐々木 功:女衒・金貸し

その他の収録作品

  • 愛と嘘つきの夜
  • instrumental
  • 幾千の言葉より
  • a cappella
  • HOLY LIGHT
  • おまけ

レビュー投稿数4

完結巻

◾︎喜瀬川英(大学生→カメラマンアシスタント)
◾︎佐伯徹(大学生→会社員)

第三者の読者だからこそ突っ込める点で、登場人物は敢えてスルーなのか知る人が極端に少ないのかわかりませんが、英が語る過去と、聖が回想するように描かれる過去とが微妙に違うのがじんわりきました。当たり前ですけど、英は聖に暴力を振るった過去を積極的に佐伯には話していないんではなかろうか。佐伯は一方的に聖を加害者視してるところがあるけど…となんとも人間の人間らしいところを見せつけられてる。
英が土下座したら満足しちゃったなどと、あっけらかんとしてるのもまた面白い。あんなに重い男だったのにどうしたよ!恋愛って外から見ると不思議…あいつの何がいいんだよと思ったり、そっちはやめとけと思えたり。アツコさん、男前だしかなり俯瞰で見てて面白かったな。

あとがきで英が死ぬラスト…と書かれていました。自分は断固反対である。商業作品はこのラストで良いと思うんですよ。その方が断然作品を愛せるもの。最終的に決めるのは作者様ですけど、このラストで良かった。でもそういう可能性もはらんだ上でこのラストだと知れることも大好きなので、あとがきの制作秘話は嬉しいです。

1

完結。燦然と輝くシリーズです

「成層圏の灯」シリーズの文庫版(2)、完結巻です。
こちらも短篇を積み重ねていくスタイル。

元々遊び人の徹は、やりたい事・目的がはっきりしている英に気後れ?劣等感を感じ、別れようとします。
やり方は結構ひどくて、親がガンだから地元で就職する、と。
英は捨てないで、と縋るけど、徹もその時はかなり冷めてたんでしょうね…結局地元に帰ってしまう。
そのあとは、お互い苦い想いを抱えながらもそれぞれお相手ができ。
英の相手は美容師のカブ。それは順当だけど、徹のお相手も男なのです。徹はそれについて忸怩たる思いがあるけど、年上だけどウブな男で徹はそれなりにハマっていく。
そんなお互いの様子がしばらく続きます。
その後それぞれが上海出張になって、シリーズ冒頭の「アジアの片隅で」での再会シーンになる、という展開。
その再会で英が復縁を懇願し、その後は元の鞘に納まるかと思いきや。
徹はなんだかんだと連絡せず、英はもういい、となる。
こういう展開ありますか?私はびっくりしましたよ…
そこからは今までの関係性とは逆で、徹が地元での全てを捨てカムアウトもして英の元に来るのだけれど、英は部屋にも入れず、1人で2年半NYに行き、戻ってからは徹をマネージャーにしながらもその後7年間も浮気を続ける…
へ〜!心底驚きました。
その上まだあるよ。
あのカブさんがお金を返して関係を終わらせるお土産に、英と聖の過去をゴシップとして週刊誌に売るんですよね。それを英は怒らない。英の肝の座り方。
自分を無力と感じ他人に捨てないでとすがる心はもう過去になったのか、強くなったのか。
スキャンダルを宣伝に変えるしたたかさを得て、ますます人気写真家になる英。
その後徹と入籍し(養子縁組?)、エベレスト登山の撮影スタッフの話も舞い込む。ついにあのヒマラヤの空を見るのですね。ここは遭難フラグ?とビビったけど…
無事に戻り、住まいに入ろうとする英を迎えるのは、あのフィンランドで見た「ウェルカム・ライト」だった…
キレイな終わりでした。英と徹はこれでもまだ40代くらい?2人の人生濃すぎですね…
過去と現在を織り交ぜながら、英の暗い生い立ち、人格形成、徹との出会い、2人の愛の形、ある時は離れまた結びつき、これからは多分二人三脚でやっていくであろう人生…
読み応えは超弩級。
ストーリー重視の方に大おすすめです。


「薄紅」(うすべに)
こちらは単独の短篇。
大正時代が舞台の、幼馴染の長年にわたる愛のような執着のような…女衒の家の子と代々医者の家の子と。
結核で血を吐いた功(いさお)の血を厭わず口づける一郎の激情。

「文庫版あとがき」
作者様曰く、このシリーズは望まれない仕事だったとか。その時代はそうだったのかも知れないけど…でも私は言いたいです。続けて描いて下さってありがとうございました。

1

やはり神

バブル弾けた後の就職氷河期という事もあり就職活動に苦戦する佐伯。そもそもその時が楽しければという理由で、お気軽にドラッグをやっていたような人物で特にやりたい職業がある訳でもなく、今まで真剣に考えてこなかったツケが回ってきている様子です。
一方、喜瀬川は写真家への道を目指す事になり、一緒にいると佐伯の劣等感はますます刺激されてしまう。
そして同性と付き合っている事の親バレ(佐伯はノンケ)などの覚悟もつかず、自分がつまらない人間だと喜瀬川に気づかれて手を離されてしまったら…と一気に悩みが佐伯を襲います。

佐伯が出した結論は地元に戻って喜瀬川と別れることでした。

二巻も一巻に続いて喜瀬川にどこまで試練を与えるの?ってくらいの追い込みです。

別れた後の喜多川は食べ物が喉を通らず骨と皮ばかりになり精神科通いと点滴で生き延びているような日々。そして狩りのような男漁りの末、ロクでもない男にゆすられたり、クスリ飲まされてバッドトリップして衝動的自殺未遂をしたり…。

途中で一巻冒頭で描かれていた再会を果たし、喜瀬川は土下座して佐伯に復縁を迫るんです。その理由もその姿も痛々しくて見てられません。佐伯も元サヤを了承するんだけど、佐伯も3ヶ月も喜瀬川に連絡しなかったりと…。
なんだかんだと佐伯が腹をくくって喜瀬川に復縁を迫って、元に戻るんですけど、その後の喜瀬川に疑問です。
燃え尽き症候群というか土下座して気が済んだという喜多川の気持ちもものすごくわかるのですが、7年間も復讐のつもりで浮気を繰り返すんですよ。男癖の悪いフォトグラファーとして有名になるほど。
佐伯も確かに酷かったと思います。でもその後、佐伯は腹をくくって実家にもカムアウトして、地元の彼とも別れ、仕事も辞めて喜瀬川の近所のスーパーでバイトして、タバコもやめたんですよ。そして「今まで人生の目標が何もなかったが、今は一つだけある。お前のどんな形でもいいから助けになりたい。」っていうメールを送っている。
それで充分だと思うんです。

それなのに、そこまでして佐伯が戻ってきてくれたのに喜瀬川は元彼とはずっと関係を続けているし、3Pしたいだの言ってるし、かなりの数の男と浮気を繰り返している。

作家さんは、立場が逆転したのは二人を対等な立場にしたかったんだと思います、とあとがきに書かれましたが、その必要性があったのか?

佐伯の心を試すにしても復讐にしても7年ですよ。奔放なゲイライフを楽しみたい喜瀬川の都合の良い言い訳にしか感じません。
ここがどうやっても自分の中で消化できないモヤモヤポイントでして、佐伯は男をあげたと思いますが、私の中で喜瀬川の株がかなり下がりました。被虐待児という事で、人への執着心が強い喜瀬川という事を差し置いてもです。

評価、とても迷いました。
上下通して、一つの作品だとすると神だと思います。一巻は文句なしの神でした。しかし二巻だけを評価するとなると難しい。二巻は喜瀬川に振り回された印象が強すぎるからです。

喜瀬川が浮気三昧の生活に終止符を打つのは佐伯からプロポーズをされたからです。(この時の喜瀬川は皮肉めいた顔もせず、昔のような表情に戻っていてとても嬉しそうでした。この顔がとても印象的です。)

結局、自暴自棄になるのも、浮気を繰り返すのも、浮気をやめるのも佐伯が理由であって、佐伯という存在により行動が左右されてしまう男という印象がどうやっても拭えません。
喜多川が自分の心や佐伯とも向き合わずに浮気に逃げてしまっているところが物凄く不満でして、何らか喜瀬川の心の成長により気づきを得るなりして浮気を自らやめて欲しかったです。
そして二人で愛を育んでいく事こそが、対等な付き合い方なのではないかと思うのですが、そこらへんがプロポーズ後から大団円に向かって急ピッチに進んでしまった印象を受けました。

結局、呪縛のようにもなっている成層圏の灯を目指して喜多川はヒマラヤにも登りますが、最後の最後、地上の灯に導かれる喜多川とその先にいる佐伯。幸せは遥か彼方に存在するものではなく、すぐそこにあったという感じで好きです。それと深海魚に例えた表現がとても素晴らしい。

ちるちるのランキング圏外だけど、心の琴線に触れた作品を教えてください」
http://www.chil-chil.net/answerList/question_id/4967/#IndexNews
で教えていただいたのが、こちらの作品です。

作品全体から受けるパワーというか、作家さんの書きたい!という力をすごく感じる2冊でした。
元々は読み切り短編だったものをここまで繋げて、編集部にはいい顔をされず、社会的にも不況のどん底で明るい話が求められているけど描いたという作家さんのあとがきがありますが、こんなヘビーな話を描くのって読むのもそうですけど、描かれる側は物凄い体力と気力を必要とすると思うんです。

そういった事もあるのでしょうか、作品そのものにパワーがあって、それはどうやっても無視できません。なので途中、好みの展開ではないにも関わらず、やはり神をつけざる得ないというのが正直な感想ですし、読んで良かったなと思います。美術手帖のボーイズラブ特集で「創世記の名作」とあったと記憶していますがその通りだと思います。

教えてくださり本当にありがとうございました。

3

巡る因果と大団円

短期決戦で関係の紆余曲折を描くのも手法ですが、
今作の様に長期に渡り関係の在り様を練り上げ、
収斂させてゆくのも手法でありましょう。
たまには流行を無視た矢作品が存在しても良いかと。
物語の中で因果が絡み合いつつ陰影が浮かび上がって
くるのを眺めるのもまた一興です。

どっしりと完結したからこその味わいがこの物語には
あります。時代に左右されなかった存在感も、何もかも。
未だに惹かれる人が多いのはそう言う部分故にでしょう。

その後デザートとして『薄紅』を読むとまた違った味わいが
感じられて良いものです。こちらも長期決戦の物語ですが。

2

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