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hachieu no junin
古街キッカさんの本はすべて読みましたがこの本が一番好きです。
さっぱりしたイラストからはちょっと想像できない、リアリティがあって深い心理描写までよく書き込まれた作風です。
表題作は精霊と人間の恋模様を描いていますが、ファンタジーというわけでもなく、やっぱりリアル…。人間の重々しい感情までよく描かれています。
BLはファンタジーなんてよく言いますが、生身の人間が恋したらきっとこんな展開なんだろうと現実感。
この本の中の砂漠の井戸という作品がこの作者の作品全ての中で一番好き。何回読んでも涙腺がゆるんでしまう。悲しいお話ではないんですが。
結婚にあせる同級生や、結婚に失敗した姉などとと話し、男同士のこの関係は何だろうねとゆるく話し合うカップルが描かれています。
といっても重々しい感じでなく悪魔でゆるい2人。結婚もできないし子供も生まれないし、じゃあ一緒に住む?と言われたら「気を使うからヤダ」返し、じゃあ指輪を買ってあげようか?と言われたら「それも気持ち悪い」と言う主人公。
この関係をなんて呼ぼうと関係なく、互いの面倒を見て一緒に行事を祝って、子供も出来ず最後はひとりになっても互いを選んだことは後悔しないだろうという結論で終わっています。
同性同士だというくくりに限らず、全ての人間関係において究極の結論ではないかと何だかこれを書くのに読み返す間もちょっとうるっとしてしまう…。
他の本も読んだけど、この方は中篇よりも短編のほうが上手い気がします。
自分のなかで変わらない特別感のある一冊です。
ほかにも作者のお気に入り本があるのですが、こちらの本はふとしたときに無性に読みたくなります。各タイトルがまた素敵なんです。
作者の作品は、ほんわかする、やさしい気持ちになる、というような印象のものは少ないかもしれない、たとえほのぼのとしたシーンでさえも。その分複雑な気持ちが絶妙に描かれます。実際、ピリリと辛いものが印象的な作家ですが、私の場合この本は読後がとても爽やかでしたよ。いろいろと複雑でも、けっきょく甘めな関係だからかな。そして甘えん坊さんたちです。
『鉢植えの住人(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)』p.5-
『砂漠の井戸』p.89-
『終末の空、茜色、そして宇宙 』p.117-
『金曜、君に会いに行く』p.141-(上記1つ前の作品の続編)
『結婚行進曲はいらない』pp.151-174(初出:BLアンソロジー『CuCue VOL.1』2008年)
表紙のように振り返りながらも強く進んでいくような表題作は、とても前向きなエンディングだと思っていますが、一方でいつまでも終わってほしくないものでした。表題以外の短編も、ひとつひとつ、"強く感じる"ことのできる作品揃いではないでしょうか。実際読んでいて躍動感はあまり感じられないのですが、どの作品もよい意味でセリフがのしかかってくるため、それが現実味を帯びさせこんなにも心に残るのだろうと思います。
読み終えた瞬間の気持ちを大切にしたくなる一冊。
絵の好みがあるかもしれないけれど、ぜひ多くの方に読んでみてほしいなぁ。古街キッカ作品を初めて読もうとされている方には、まずこちらをおすすめしたいです。私だったら、ですけどね。
詩雪さん
こんにちわ、はじめまして^^
古街キッカさんは作品数は多くないですが、どれもぶれていない、優しい感じの作風ですよね。詩雪さんの書かれている「よい意味でセリフがのしかかってくる」というのはまさにそうだと思いました。
深々と進んでいくのに、ハッとくるシーンや台詞がずっしりと(悪い意味でなく)いつまでも残る感じです。
絵柄からは想像できないリアルさがあると思います。もっと読みたい作家さんの1人です。
詩雪さんのレビューはいつも優しく語りかけるようでとても読みやすいです^^これからも参考にさせて頂きます。
それでは、失礼致しましたm(_ _)m
古街さんの著作を初めて読んだのは、この話でした。
正直絵のバランスは微妙なんですが(頭部が大きいのかな?)気になる話を描かれる方です。
表題作も良かったですが、ゲイカップルの想いを淡々と描いた「砂漠の井戸」が好きです。
こういう話を描くのが上手い作家さんだなあと。
「オルタナ」が一番好きですが、この本を読まなかったらそこに辿り着く事もなかったので、出会えてよかった!!
これからが期待出来る作家さんだと思っていたのですが、今は商業やられていないのかしら。
二次は見かけましたが、絵ももう誰だか分からない絵になっていて勝手にちょっと淋しい気持ちになっています。
またいつか描いて下さるといいなあ。
とても静かな作風の作家さまです。レビューで気になり読んだのは大分前なのですが、なぜこのタイミングでレビューをしたためる気持ちになったかと申しますと、同時収録作品に「こたつプレイ」があるから♡四十八手アンソロジーにもありましたけれど、見えないところで…って萌えますね。
表題作は、鉢植えのガジュマルから現れた妖精・カイとの彼氏と別れたばかりの智久との不思議な共同生活を描いたお話。ファンタジーといってよいのかもしれませんが、とてもリアルに感じられる切ない物語でした。映画にしても魅せられてしまいそうな独特の空気感が漂っています。
「砂漠の月」
姉の出産や女友達の失恋をきっかけに、ゲイの直哉と彼氏の泰幸がお互いの将来について見つめ直すお話。女の役割、男の役割を真面目に突き詰めていった先、男同士の関係は何も生み出さないかもしれない。けれどもそこに一緒にいる理由があるわけじゃない。二人が出した結論はとてもオトメで男前です。
「終末の空、茜色、そして宇宙」&「金曜、君に会いにいく」
こたつの回。タイトルが素敵です。高校で出会った二人なのかな?幼なじみではないと思うのですが、航と翔の微妙な関係を航の部屋にあるこたつが取り持ってくれた物語。淡々としているのにエロさと切なさを湛えているんです。プラス少しのユーモア。密かに萌え滾ったお話です。
「結婚行進曲はいらない」
高校の同級生三人組のこじれた関係の結果…、のお話。浦和と付き合っていた春日部が結婚した。お互い振られたと思っていた二人の間に大宮が実は絡んでいて…。終わりよければすべてよし。丸く収まったのでしょうか。
『オルタナ』は三角関係のお話でとても好きでした。この作品集もしっかり読み込むと何かしらカップルの間に第三者が関わって現状に変化をもたらす、という展開に近いのかなと気付きました。そこが妙にリアリティを感じさせてくれるカギなのかなとも。こういった派手さはないけれど読んだ後から沁みてくるような作品を描かれる作家さまに出会えると、凄く嬉しい。寡作な作家さまで現在は活動されていらっしゃるのか存じ上げないのですが、もっと読んでみたいんだけどなぁ、というのが正直なところです。
この作家さんの作品は初読みです。
が、良かった!!!
台詞の流れや間がなんか面白くて、
笑ってしまう場面が多かったですwww
切ないけれど笑える部分があるから
重苦しくならずにライトに読めるような感覚。
表題作品の「鉢植えの住人」
ガジュマルの妖精のカイト、
恋人だった一謙のことを好きな智久、
智久と別れたけれど心残りのある一謙。
三者それぞれの心情が揺れて
最後はぎゅっと胸が苦しくなります。
私から見たら一謙の存在は許せなかったけど
智久のことを考えたらカイトと同じように
身を引くべきなのかな、と思ってしまった。
智久のことをことを好きだったカイトには
幸せな出会いが訪れて欲しい。
収録されてる三作品の中でも「結婚行進曲はいらない」
春日部と恋人同士だった浦和、
浦和のことが好きな大宮。
結婚した春日部に言われ、無意識のうちに大宮に
色々話したり頼ったりしていた浦和が、
大宮の元へ会いに行きます。
大宮の
「9年も待たされればキャラが変わるだろ」
「いい。百回止められても釣りが出る」
には、なんとも言えない切なさを感じました。
他の二作品も良かったです。
こたつでエッチには、私も萌えました(*´ω`*)ww
「悪魔でハニー」と同時発売。あっちはギャグよりのファンタジー、こっちはファンタジー系のシリアスです。
男同士は幸せになれないから、お互い彼女を作って幸せになろうなんていう理由で振られ、打ちひしがれていた智久のところへやってきたのが、鉢植えのガジュマルに棲む妖精のカイト。
都会の木に棲む妖精の孤独と、振られた男の孤独。
実は振った方の一謙も智久の幸せを願っているからこそおかしな行動に出ていたようで・・・
誤解されたり、辛くなったり紆余曲折がありますが、二人がカイトのおかげ(だと思う・・・だって、一謙の頭痛ってカイトが誘発していたんでしょ?)で元サヤに戻ったあとの展開がけっこう感動的でした。
アパートで一人ぼっちになってしまったカイトの後姿は哀しかったですが、ちゃんとフォローがされていて良かった良かった。
みんな幸せにならなくちゃね。
同時収録の【砂漠の井戸】は、
一組のゲイカップルを通して、女、男、夫婦の関係、こどもをつくること、現代社会の問題、果ては今後の展望まで考えさせられる良作でした。
お話の最後に主人公が語る“みんなで老老介護する時の夢”
『お金を沢山稼いで 家を買って 遺産を残る人に渡していくの アンカーはそのお金で老人ホームに入って 遺産を全て砂漠の子供に寄付するんだ』
って、なんていいアイデアなんだと感心しました。
【終末の空、茜色、そして宇宙】と【金曜、君に会いに行く】は、
コタツというエロアイテムを中心に、二人の関係が 発展していくお話です。
黙ってエロイことをし、それがどんどんエスカレートしていく航ちゃん(インテリ眼鏡のムッツリスケベ)と黙ってそれを受け入れている翔(ポヤヤンと可愛い系)。
どう考えても何の問題も無いバカップルだと思っていたのですが、おおっ!そんな隠し球!!があったので、航ちゃんだけでなく私も驚きましたよ。
面白かったけど。
で読み返してみて気がつきました。翔は航ちゃん航ちゃんと連発しているのですが、航ちゃんはたったの1回しか翔を名前で呼ぶことをしていません。
どんだけシャイなんだ。
でも好きの度合いは間違いなく、航ちゃん>翔だと思います。
そして、こっちにも埼玉県内市町村擬人化作品(?)がひとつ。【結婚行進曲はいらない】。こっちは浦和くんと春日部くんと大宮くんの三角関係のような違うようなお話。
さいたま市的に浦和と大宮が最終的にくっつくのは納得。
読み終わって、いちばん印象に残っているのは……こたつ!!!!
こたつで、こんな体勢で、本当にできるのだろうか。
こたつでエッチ! 萌えた。
萌えすぎて、何度も読んだ。同時発売の「悪魔でハニー」はエロが全然足りなくて、ちょっとがっかりしてたんですが、このこたつのお話で満足しました。
表題作の「鉢植えの住人」はガジュマルに宿った精霊と、主人公と元恋人のお話。ガジュマルが主人公の恋を、結果的には手助けするのね。ファンタジーBL、最高です。
ただ……うちのガジュマル、枯らしてしまったんですが。幸福、逃げて行きそうです。
ファンタジーありーの、現実的なお話がありーの、エッチな作品ありーの、でバライティーに富んだ一冊でした。
詩雪さま
はじめまして! コメントいただきありがとうございます。
私も久しぶりに読みたくなりました。そういえばこの作家さん、最近見かけませんねー。結構好きだったのに、残念です。こたつエッチ、読み返したいです。
表題作『鉢植えの住人』は、恋人にフラれたばかりの大学生・智久の前に、
ガジュマルの妖精・カイトが現れます。
傷心の智久。一方カイトは自分自身もほかの人間から見えない、ということで寂しい思いを抱えており、その寂しさを慰め合うように、二人は体を重ねるようになるのだが――。
カイトも、智久も、一謙も、みんなみんな切ない恋をしていましたね。
でも結局はカイトはガジュマルの妖精。“幸せの木”の妖精なんです。
智久を幸せにするために、ある行動をとることになります。
ここがこの作品の見どころですねー
智久も一謙も、結局逃げてたのはお互い様ってところなんでしょうね。
切ないけれど、どこか懐かしいような、心が温かくなるファンタジーでした。
個人的に好きだったのが『終末の空、茜色、そして宇宙』『金曜、君に会いに行く』のこたつエッチシリーズ(笑)
もう、話の要訳も見どころもこたつエッチなんですっ!!
しかも、よくある“こたつの同じ方向に二人で入ってそのまま背面座位で挿入”じゃなくて、
“反対方面からこたつ挟んで中で合体”なんですwwわかりますか??笑
「こたつの中は宇宙につながっている」
そんなロマンチックなこと言っておいて、そんな宇宙の中で繋がってしまうんですよww
久々に萌えたエッチシーンでしたよ!!
こたつ、グッジョブ!!
話的には幼馴染モノでした。
『終末の空~』が主にこたつでエッチする話で、『金曜~』のほうで、ようやく話がわかります。
イケてるのかダサいのかよくわかんない攻が嫉妬している姿が可愛かったww
彼女とヤった計6回分、今夜取り戻すってww
こたつエッチしといて今さら何言ってんのってくらい純情で可愛いかった~!
『砂漠の井戸』
恋人同士の話。
男同士の関係に、非生産的だとか、無駄なことだとか、いろんなことは考えるけど、
自分たちの関係を後悔はしないよっていうお話。(ざっくり要訳しすぎww)
三十路間際の二人がセックスしながら「まだまだイケるな」って確認し合うのが可愛いww
『結婚行進曲はいらない』
元恋人の結婚式に呼ばれた浦和。そしてそんな彼に片想いし続けている大宮。
恋心を捧げられる相手と、甘えられる相手。どっちを選ぶことが幸せなんでしょう。
表題作以外も密度の濃い、というか
色がしっかりした短編集だなという印象でした。
表題作『鉢植えの住人』は
妖精モノBLというファンタジー。
無理な設定な気はするものの、
主人公が追求する性格でないことも手伝って、
いつの間にか妖精カイトの存在は物語に馴染み、
不快感は感じませんでした。
智久を好きになりながらも、
最後は智久の恋を後押しして
身を引くカイトがじわりと切ないです。
沖縄の地に還って、カイトも幸せになれるといいね。
『砂漠の井戸』は付き合う恋人同士のお話。
自分たちの愛情が変わらなくても、
友人や家族は結婚して形を変えていき、
お金や老後の問題は現実をしっかり見るほどに
目をそむけたくなるけれど不可避なこと。
端的にいえば、男同士が添い遂げることについて
考える話なのだけれども、
そこにBL的あまあまファンタジー脳は無く、
あくまで現実的だからこそ後味が良い。
『終末の空、茜色、そして宇宙 』
『 金曜、君に会いに行く 』
話題の悪戯こたつエッチからの、
好きという確認まで。
体から始まる関係ながらも、
悪戯の元凶となった「コタツ」が
部屋からなくなることで、
すれ違わずに「好き」を秘密にしなくても
よくなった、という感じなのかなと思った。
二人がとてもかわいくて一番萌えた作品。
『結婚行進曲はいらない』
擬人化、なのかな?
物語はゲイならでは、仲良し同級生だった仲間、
ならではの大人な物語でした。
どの短編も後味が
とてもすっきりしているというか、
読んだ後に気分が良いです。
絵柄はすっきりですが、
登場人物の関係性自体や
コタツというシチュエーションは
萌えに溢れている。
バラエティ豊かな短編なので、
どれかひとつはツボにはまりやすいのでは。
BLという分野にトライするきっかけに
いい一冊なのではないかと思います。
良作。
作者様の他作品も見てみたくなりました。