君に降る白

kimi ni furu shiro

君に降る白
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神35
  • 萌×212
  • 萌15
  • 中立4
  • しゅみじゃない18

--

レビュー数
20
得点
272
評価数
84
平均
3.5 / 5
神率
41.7%
著者
朝丘戻 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
麻生ミツ晃 
媒体
小説
出版社
フロンティアワークス
レーベル
ダリア文庫
発売日
価格
¥571(税抜)  
ISBN
9784861343537

あらすじ

高校を卒業してから二年。芹田藍は昼は古本屋、夜は身体を売るバイトをしていた。淡々としている藍を玩具のように扱う客が多い中、愛情を教えてくれたのは自分の身体を一切求めてこない客、成瀬恵一だった。平凡なサラリーマンで、温かく純粋な成瀬。だが彼に心惹かれるも、過去の出来事から自分自身を認められない藍は、遠ざかることしかできず――。切なく心揺れるラブストーリー。

表題作君に降る白

28歳
20歳?

その他の収録作品

  • 温かい白日
  • あとがき

レビュー投稿数20

やっぱり好き

昼は古本屋でバイト、夜は身体を売る仕事をして2年間過ごしていた藍。
ある日指名が入った相手からの指定は、白シャツに白い靴下。変態かと思いきや、抱きしめるだけで、それ以上はしてこない成瀬。
成瀬は藍を気に入り指名を繰り返すが。。。

夜の仕事に罪悪感はなく、暴力を振るわれても耐える藍が、唯一気に入っていた古本屋バイト。夜の事がバレて、店長に体を触られるようになり、信用していた人からの裏切り。読んでいて苦しかったです。藍にとって身体を売ること以上に、辛く感じることも悲しいし、店長が最後にしたことが、本当に酷い。
でも、朝丘先生の文章は、その酷さを明確に表現するのではなく、心情で伝えているので、読んでいて感じる辛さも、どん底ではなく、そこから成瀬とのやり取りが救い。
せつなくて、藍のマイナスな思考の意味もわかるからこそ、告白を断って分かれてしまった時には、不安になりましたが、予想外の救世主!私は宮野が店長と同じ類の人間なのかと疑っていたので、ここでやっと信用できました(笑)
夜の仕事の店長も、なんやかんやで藍を守ろうとしていたし、悪い人ばかりではないという終わり方が、私は好きです。

やっと掴んだ幸せを願わずにはいられない、せつないけれど、出会えたことの素晴らしさを感じられる、とても好きなお話でした。

2

ふんわりとしたポエム。

電子書籍サイトを徘徊しておりましたところ、「あめと星の降るところ-Complete Book 1-」(と2)がセットでお勧めされていたので、「Completeとあるので、Completeなのだろう」と深く考えずにポチ。そうしたら、それは既存作品の番外編等を集めた本でした…というわけで、せっかくなので、そちらの本編を少しずつ先に読もうということでの初読みです。

ふんわりときれいで詩的な、女性的な作品でした。リアリティを追求するタイプではなく、登場人物たちの心の動きを詩のように表現している。夜中などに自分の世界に浸りきって、ひとときのファンタジーとして楽しむにはぴったりですが、表現が少々過剰…というか、ちょっと〝詩的な表現に酔いすぎかなぁ〟と思ってしまうようなところもありました。とは言え、これは個人的な好みもありますので、「これがいいのよ!」という方にはたまらないポイントだったりもするかもしれません。(私自身、初読みですので、繰り返し読んでいくとハマる瞬間が来ないとも限りません)

売春などの要素はあるのですが、ロマンティック極まる作風を読みたい時に良い一冊だと思います。

0

本当に好きな相手へ告白するって勇気がいりますよね

攻めの成瀬さん、いい人だけど奥手すぎて心配になります。

受けの藍は、育った家庭環境からこじらせ、夜のバイトをしており自己否定がとても強いです。

2人の距離は、もう、本当、もどかしいんですが、成瀬さんの藍への愛はとても深くと後半になってくにつれて、どんどん成瀬さんの見え方が変わっていきました。
奥手で消極的で頼りがないかと思えば、芯が強く本質を分かっている!そんな成瀬さんに萌えました!

二人は似ていないようで、本が好きだという共通点があったり、ずれてた歯車が合っていく過程がよかったです。あめと星の降るところcomplete bookでは8年後の二人が読めます。こちらも更にあったかい気持ちで読めるのでオススメです!このエピソードを合わせて読むと神作品です!

3

危ういバランス

リトマス試験紙的な作品だと思います。ここにきて作家さまの作風が好きな人と苦手な人とにはっきりと別れる、微妙なラインの作品なんじゃないかな。デビュー作(コバルト文庫だったのも何かしら影響していそう)で、先生の萌えがツボだな~と感じてハマり、この作品でもキャラクターや人物の関係性に萌えたので、わたしはとても好きな作品。受けの心と身体の傷を、攻めが優しく優しく癒していく物語です。

高校卒業後、日中は古本屋、夜はウリ(コスプレ)のバイトをしている藍が主人公。実の母親の兄夫婦のところへ養子に出されて育った藍。彼がちょっとばかし人間不信で、人と深く関わることを避けているのはそういった背景があるからなのでしょう。古本屋では優しい佐藤店長や気さくだけどガサツな?野宮と共に淡々と働き、夜は客の要望に応え、身体に傷をつくるような日も。そんな中、藍は夜の仕事で成瀬という客と出会います。

成瀬は藍に白シャツとソックスを着せて満足するチラリズムフェチで、月に一、二度ほど藍を指名するけれど、行為を要求することはありませんでした。いつしか藍は、他愛のない話をして、ただ自分を抱きしめるだけの時間を過ごす成瀬に心を許していきます。

成瀬さんのムッツリなフェチに激しく共感したのと、藍が彼に振り向いて心が通じるまで辛抱強く待つところに萌えました。よくよく考えれば、はっきりいって成瀬はストーカー。しかもちょっとマニアックな。かなりの執着攻めだと思いますが、キャラのせいなのか全く嫌な感じはしなかったです。

古本屋が舞台にもなっているため、お話の中では何冊かの本が二人を繋ぐ大きな役目を果たしています。他の作品でもそうなのかなと思うんですが、朝丘作品の作中作品って、先生によるオリジナルなんですよね。その文章とか一節にもジーンときちゃって…。既存の有名作品を借りてくるより、オリジナルの方が作品の世界観が崩れず、どっぷり浸れるような気がしました。ただし、作家さまと相性が合わなければ苦しいかもですけど。。

先生の初期作品は、根が純粋な受けと包容力のある攻めの王道な組み合わせが多く、悲しい終わり方ばかりのイメージでしたが、今作でやっとハッピーエンディングに到達して感無量でした。

この作品を読み、作家さまが一つ一つの物語を魂を込めて大切にしていらっしゃるのがヒシヒシと伝わってきましたし、挿絵を担当された麻生ミツ晃先生のコメントからも、藍と成瀬への特別な思い入れを感じました。作家さんご本人とイラストレーターさんの両方に、とっても愛されている作品なのだなぁと思いました。

4

美しい表現と透き通るような透明感に

坂道のソラから朝丘さんの本を読むのは2冊目なのですが、読みにくいと感じること一切なく1日で読み切ってしまうほど良い作品でした。

主役の2人だけではなく、周囲の人間もひとりひとり魅力を感じました。店長も前まで優しく穏やかだった面もそれは必ず店長の一部であると信じていたかったと思えるようになった藍の心の変化など細かく表現されていて感情を自然とリンクさせながら読み進められました。
軽い気持ちで読める話ではないと思いますが、人に勧めたいと思う本でした

4

キャラは苦手だったけど、話はよかった

昼は古本屋でのバイトをし、夜は体を売る仕事をしている藍。

そんな夜のバイトでお客として現れた成瀬は、1時間抱きしめたり手をつなぐだけで、それ以上の何も求めてきません。
そんな変わった成瀬から伝わってくる今まで味わったことがない暖かさが藍の心を変化させます。

客としてではなく藍を大事に思う成瀬に対し、藍は本当は惹かれているのに、自分にはその資格がないと一歩を踏み出せません。
うまく絡み合わない二人の関係が切なかったです。
汚い自分が相手を求めてはいけない、でも失いたくないと思う藍の葛藤に涙でした。

個人的には成瀬のキャラも藍のキャラも好きではありませんでした。(暗いし、はっきりしないし、ずっと敬語なのも気になりました)
でもストーリーはとても切なくてよかったです。

1

根性で最後まで読みましたOrz

朝丘先生の作品は評価に苦しむ。
読みやすいかどうかで言えば、なかなか読みづらかったです。
読んでてすごく苦しい。ちょうどこの小説を読んだ頃天気が曇っていて気分が暗いから余計に重く感じます。
朝丘先生の小説って、BLの中の純文学だよな。
暇つぶしの気分で読めるような小説ではないですね。
ストーリーのメリハリより、主人公の精神世界を築き、読者をそこへ引き込むような神描写です。これを頑張って最後まで読みきった自分を褒めて欲しいぐらい、この小説を読むときは苦しかったです。
切ないものは好きだけど、これはもう普通の「切ない」範囲ではないです。相当の心構えがないと、朝丘先生の作品を手に取れないですね。

0

優しさで包んで愛してくれる攻めと自分を愛せない受け

優しくて淡々としたお話でした。

藍は両親が健在なのに叔母夫婦の養子になるが、そのことを苦にしないようにと気を使われる度に居場所がない思いにかられ、実の親にすら愛されないことから自己否定してしまう。
ただそのことから身を売るに繋がる状況はよく見えませんでした。

登場人物に悪人はいないんです。
ただ自分本位だったり少し狡かったり考えが足りない人たちばかりで、どこにでもいつ普通の人たちだと思います。

でも、藍の両親たちは親として足りないことが多すぎる気がしました。
実の両親は息子を養子に出した事情を話さず姉の結婚式に招待します。一人息子は人にあげたのに大事にしている娘が幸せになる席に呼ぶのは皮肉としか考えられない。
養父母は養子にも関わらず実の子のように愛し愛されていることを他者に認められたいがために育てているようです。
藍の視点で描写されている展開なので実際は違っていても、藍が親に捨てられ養父母には自己のプライドだけで養育されていると思わせる何かがあるのだからどんな事情があったにせよ対処を間違ったと思います。

会社員の成瀬は白いシャツと靴下だけの男の子を抱きしめるのが好きという性指向を変態じみていると恥じながら、藍に会って好きになるけれど抱きしめる以上はしない優しいけれどヘタレなお兄さんです。

藍がだんだん、成瀬を意識してついには好意を自覚しながら釣り合わない相手だからこれ以上好きになってはいけないと離れようとしたり、贈られた指輪を会うとき以外なるべく身に着けないようにする努力が切なかったです。

藍の昼間のバイト先の古書店のバイト仲間の野宮が面白いです。
面倒見の良い気のいい美大生ですがそれほど親切でもないしいい加減で的外れなところもあるけれど不器用な優しさで癒してくれる不思議な人でした。
また、人を愛することに臆病な藍の背中を押してくれたり、成瀬の性指向が男のロマンスと言い切りなんだそんなことかと思わせてあげられた恩人でもあります。
思わぬ行動をしそうな彼主役のスピンオフがあったら面白そうです。

古書店のセクハラ店長は気持ち悪いです。
藍のことが好きらしいけれどそれはそれは厭らしくねちっこく、ギリギリのところでとどまっていたいるけれど絶対身近にいてほしくない男でした。

後日譚の『温かい白日』はバカップルの愉快な一日でした。
訪ねてきた野宮はあてられてやれやれな感じでしたが、ちっともへこたれずこれからも度々二人の邪魔をしにきては追い返されるのでしょう。
なにより藍をちゃんと愛して受け止めてくれる人と出会えてよかったなと思います。

2

雰囲気はあるが、独りよがりに思える。

孤独で無愛想な藍は、昼は古本屋で、夜は体を売るバイトをしている。
藍にとっては、体を売る事も単なる肉体労働、
親に捨てられ心に巣食う自己否定感に、感情が動かずに過ごす日々、
世の中は灰色だ。

そんな彼が客として出逢ったサラリーマンの成瀬。
体を求めず、ただ温かく抱きしめられる時間を過ごすうちに
少しずつ動き出し色づいていく世界…

友人が泣いた、と言って貸してくれた本です。
あああ、こういういかにも私が好きそうなモチーフを並べてくれちゃって!
でも、それなのに、なんでこんなに好きじゃないんだろう?

よく一穂ミチさんと、並び称される朝丘さんなのですが、
どうして自分の中でこう極端に位置づけが違うのだろうか?と考えてみました。

一穂さんの描く人物には、確固たるその人らしさがある。
透明感とか、叙情性とか、そういう点では共通なのだと思うのですが、
朝丘さんの描く人物は、ふわふわと軸のはっきりしない絵空事に感じて乗れないのです。

この話も、そもそも藍が何故こんな生き方をしているのかちっとも分からない。
こういう頑な可愛げのない性格のキャラは好きなのだけれど、
親に捨てられたと言っても、うーん、売春をする必然性って何なのだろうか?
意地悪な言い方をすれば、一人芝居をしているように映る。
いや、藍の一人芝居じゃなくて、作者の一人ファンタジーなのか。

攻めの成瀬さんも、風俗に行って白シャツ着せてただ抱きしめてるって何?
その上、大阪に藍がやってきて雪の中やっと想いが通じ合った、はずなのに
そこから1ヶ月半何もないって、優しいっていうより気持ち悪っ!と思ってしまいました。
藍をカタカナのクン付けで呼ぶのも、個人的には苦手。

それと、最後のバイトの先輩野宮の下りは、急にコミカルなトーンになって
(こっちの方が好きだけれど)これまた違和感がありました。

ということで、私自身は好きではありませんが、
お好きな方はいらっしゃるだろうなーとは思います。
いつもでしたらこういう時には「中立」にするのですが、
なんとなくムシャクシャとして(笑、すいません;)☆一つマイナスにしてしまいました。

13

ファンタジーにファンタジーを重ねて無理があるような気がします。

朝丘さんのセールスポイントは「綺麗・透明感のある・叙情的・詩的・切ない」といったところだと思います。そこはいいんです。私もそういう表現をされる文体の作家さん、好きなので。
んが!
この本の話、文体はいいんだけど、内容が私には全く受け付けませんでした。

どういう所が、というと、
まず「受」が夜はウリのバイトって・・・ぶっちゃけその性格でなんでウリなのよ?
受の性格ならわざわざウリは選ばないでしょ。しかもウリするような切羽詰まった状況でも無いのに・・・。あまりにもキャラクターの性格と行動に矛盾があると感じました。
ウリの理由が軽いのでまずそれがダメでした。
これは物語だから現実のウリの話を参考にする必要はないかもしれないけど、それにしても現実を無視しすぎの展開。

更に。ウリ子を買いにくる「攻」。抱かないのが優しさとか意味不明!ウリに来るお客さんは普通やる気満々の人しか来ないです。高い金払うんだから。
ただ眺めたいだけなら、あるいはお話したいだけなら、ゲイバーとかその手のお店に行けばいくらでもソレ出来ますから!もうその時点で寒イボ立った。意味不明な「優しさ」?を醸し出す攻が気持ち悪い男にしか思えなくなりました。

というわけで、二人のキャラがウリで出会う必然性が全くナイので自分はしらけてしまいました。

大変失礼な物言いは承知で言わせていただければ、
キャラクターの性格を無視して、ご自分の書きたい内容を書いた、という感じがしました。

つまり作者さんの「理想」や「描きたい(言いたい)内容」があって、そこにただ人物が出てきてその話の流れに従っている、という感じがするんです。
だから変な話、キャラクターが入れ替わっても何の問題もない作品だと思うんですね。

このキャラクターじゃないとこの物語を動かせない!という感じではない。
キャラクターは内容に従っているだけだから、そこに生きている人として感じられない。
本当にただのキャラクター、作者の操り人形、という感じ。キャラクターがご臨終していらっしゃいます。

これは私の完全な主観なので、別にキャラクターが作者の操り人形でいいじゃんという人もいるでしょう。それはそれで良いです。面白い効果が得られる場合もあると思うので。
でも、お願いだからキャラクターに生命を吹き込んであげて欲しいと思うのです。
そこに生きている、息遣いを感じる、そんなキャラクターにしてあげて欲しいです。

12

くらい

暗くて趣味じゃありませんでした・・・。
ストーリーの起伏も少なく心情描写中心です。

7

自業自得

不幸に酔いたいM体質の子が、自分の不幸に酔いしれるお話。
なのに最後はハッピーエンドなの、

自業自得?
っていうか、自分の気持ちの持ちようひとつで、人生はちゃんと開けるんだよってお話。

評価がばっさり割れているこの作品。
主人公の藍のことを、自分から不幸を呼び込んでおいて、自分を可哀相がって酔っているとしか思えない、いらっとくる子だと思うなら「しゅみじゃない」だし。
藍と成瀬の関係を、不器用でもどかしい純愛と思うなら「神」なのかもしれないし。
やっぱり他の方も触れているように、「藍が売春をする理由」を、ちゃんとはっきり描いて欲しかったな。
この設定の根幹に共感できたら、結末がちゃんと前向きになっているし、もっと+評価するのに。
ちょっと残念。

2

本当によかった。

切なく美しいお話を書くことに定評がある作者の朝丘戻。さんの作品です。

私はこの方の本が本当に好きで、よく読みます。
切なくて、透明感があって、綺麗なこの方の文章が、物語が、大好きです。
ですが、一つだけ不満がありました。
それは、物語の最後がハッピーエンドにならないということです。
正確に言うと、ハッピーエンドではあるけれど二人が一緒にならない。ですね。
とにかく受けと攻めが2人がくっつくことは極端に少ないんです。

そこが切なくてまたいいんですが、でもやっぱり二人には幸せになってほしい……。
ずっと思っていました。

そんななか読んだのが本作品!

今回は2人が無事にくっついてくれて、本当に安心しました。

途中まではいつも通りのくっつかないエンドまっしぐらな展開なんですよ。
「あぁ、やっぱり……この二人が少しでも幸せになってくれることを祈ろう。」と、思いました。
しかし、その後の展開が違います。

いつもの朝丘さんの受けなら、泣きながら「さようなら……」
なシーンですが、受けが攻めを追いかけに走るんですよ。
よくやった!と、声にだしそうになりました。

朝丘さんの作品には毎回切なくて泣かされてしまいますが、今回はよかったね、と涙ぐむ形になりました。

朝丘さんのハッピーエンド、予想以上に綺麗で、透明で、美しかったです。

呼んで絶対に損はない、と私は思います。

4

恋愛感情描写は神なんですが

帯『本当は恋をしました。罪を犯すように-…。』

夜は売りをする藍[受]と彼の客成瀬[攻]との淡々と交わされる会話が丁寧に書かれています。
彼等2人の感情が繊細に綴られて行きます。
それにどっぷり身を任せて読んでしまえばこの世界に浸れるのですが、
(でも藍が必死に売りする必要がどこに?)
そう思った瞬間にそれがふいに元に戻されちゃうんですね。

藍は昼は古本屋で働き借金も無く地味に暮らしてます。
何の為にそんなにお金が必要だったのか?生活費にそんなに必要?
古本屋だけでは足りないというのは分かるとしても、そこで何故一足飛び売春に行ったのかが分からない。
ここはなー、ご都合主義でも何でもいいから藍が売りをする理由、売りでなければいけない理由が欲しかったです。
どうもそこのスタート時点で躓いてしまって、話にのめり込もうとすると「でもこれ藍が売りをやる必要が…」との思いが邪魔するんですよ~!
もう押さえ出るこいつを踏んづけて読みました。
それさえなければ、彼らが本当に少しずつ少しずつ不器用に細い線がやがて太い線になって手を繋ぎ身体を沿わせるまでゆっくりと、ゆっくりと。
成瀬は藍を買う時、白シャツというリクエストをしています。
白いシャツを着た藍に成瀬は救いと癒しを求め、藍はそんな成瀬に揺らいでいく。
綺麗で切ない恋愛ストーリーだと思います。
ただどうしても最初に引っかかった部分が最後まで気になっちゃいましたが。
ラブストーリー部分だけなら神なんですが、その設定の土台の部分が収まり悪くてイマイチ納得出来なかったのがちょっと悔しい。
ただ良いモノは持ってる作品だとは思います。惜しいなー。

4

人の不幸を「可哀相」と思える人が勝ち組のお話。

不幸自慢がしたい男の子と、純愛してみたいおじさんが、ピッタリ噛み合って良かったね。というお話。

育ての親との確執、客からの扱い、店長とのトラブル。
次から次へといわゆる「不幸」らしきものがチラつくのですが、どれひとつとっても不幸でもなんでもない。

親のことだって、ちゃんと育ててくれてるんだし何か変な扱いを受けたわけでもないのに、勝手に受けが自分を「いらない子」だと思っているだけの話。

店の客だって、オーナーが対応しようとしてくれているのに断る自分が悪いし断る理由も分からない。
っていうか、ここが「そういうことOKな店」って思われることで、他のホストたちも同じ扱いを受けてしまうかもしれないとか考えないあたりが自分勝手すぎる。

店長とのことだって、突っぱねれば済む話。
信頼していたんなら「信頼してたのに」と一言言ってみることで何かが変わるかもしれないのに、その程度のことすらサボってひたすら「やっぱり自分は玩具だ」と浸る。

全部が全部、自分の責任。
ならいっそ全部を「それが自分だ」と受け止めればいいのに、攻めに対しては「自分は汚い、醜い」と卑下してみせる。
それは恋をしているからだよ、と言われても、ちょっとピンと来ないですね。

この受け、ちゃんとしたたかな部分も持ってるから、良い方にも悪い方にも開き直れると思うんだけどなぁ。
なんか、自分から虎穴に入って親トラに頭かじられながら「どうせ俺ってこういう人生だ。人知れず死んじゃうのがお似合いなんだ…」とか言うタイプ。
虎穴に入る勇気があったんなら子トラさらってとっとと逃げてこんかい!と言いたい。

攻めともグダグダしてるけど、店をやめた後に家に入れるんならもう諦めろ認めろって感じです。
そこまでしておいてまだ拒絶する理由に共感できないし、それなのに中途半端に触らせる神経が分からない。
恋をする資格がないと思うなら、自分に惚れてると分かっている相手に構うべきじゃないと思うんですよね。

とにかく受けがひたすら自分の不幸に浸っていたいだけにしか見えなくてイライラしました。

私は「不幸」自体や浸る姿には同情は出来ないです。
天災のように降りかかってくる「不幸」の中で頑張って頑張って踏ん張ってるとか、沢山努力して積み重ねたものが突然降りかかった「不幸」でバラバラにされて、けどもまた一からやり直してやるぜ!って思うとか、そういう前向きな姿に「頑張れ」と言いたい。

攻めも…。
いや、攻めは好きだったんですが、恋に落ちた理由がさっぱり。
「性癖を認めてくれた」って…。
そりゃ風俗だもん。いろんな人見てるし、そもそも客を否定なんてしないよ;
っていうか、それは「性癖」じゃなくて「男のロマン」だし(笑)
そんなお話が出来るお友達が居なかったのかなぁ…。良い友達が居そうな人だと思ったんだけど。

ただちょっと、後半で攻めの男気のようなものは感じたので、少しだけほっとしました。
「連れて逃げちゃうぜ」な感じの男気とはまた別の、「伝えるべきことは伝えた、あとは自分から振り向いて欲しい」的な男気だったので、やっぱりじれったいんですが、私は好感持てました。

あとは…敬語の会話が前半すっごい違和感ありました。
「猫のためいき。」を読んだときにも感じたんだけど、あれはあんな感じの宇宙人みたいなキャラだからあんな変な喋り方をするんだとばっかり思ってたんですよね。
この作品で主役の2人がそろって変な喋り方をするのが、物凄く違和感あって気持ち悪かったです。
なんというか……、「中学一年生が英語の教科書を直訳した」みたいな会話。
「雪ですね」「はい。雪ですね。寒くありませんか」「はい。僕は寒くはありません。あなたは」「僕も寒くありません。大丈夫です」「それは良かったです」
みたいな会話、トモコレっぽくて笑えるんですが、小説で読むには血が通ってなさ過ぎて、ちょっと……。


ただ、文章はなんだか回りくどいというか小難しい言い回しというのを多用してあって、充分に酔えます。
私はこの受けに「イラッ」としたのでアレでしたけど、この受けを「可哀相」と思える方が読めば、地の文の余韻も相まって、すごく切ないお話だったろうなと思います。
私は残念ながら「しゅみじゃない」ですが。

最後に店長の股間でも蹴り上げてくれたら、今までとは違うんだ、こらから変わるんだ、と思えてスッキリ「中立」か「萌」にしたのにな。
受けの性格が好きじゃなかっただけで、お話自体は好きだったんです。

7

純愛がこんなにもどかしくも切ないのは初めてかもしれません。

丁寧な作りの文章に涙したストーリーです。

自分の出生に肉親から愛されていないと思い込み、ひねくれた性格と生活を送っている藍。
彼のバイトしているデリヘルの客として出会った成瀬は、白シャツ&ソックスフェチで、藍に何もしない。
そんな成瀬がただ何もせずに藍がそばにいることで満たされるというのを、突っぱねた態度と言葉で藍は否定しようとする。
でも、本当はその成瀬の言葉と態度はヒドイ客ばかり相手していた藍の心を揺り動かしていたんですね。
成瀬が心を伝えようと、昼間の藍のバイト先の古本屋に本を持ち込んだり(またその詩がじーんとくるのですが)プレゼントをしたり。
成瀬も自分の性癖を回りに隠して生活しているストレス、家族との軋轢などで本当の自分をさらけだせる、そして安心できる相手を求めていた。
彼のゆっくり、ゆっくり、相手をわかりあって好きになっていきたいという、自分も相手も思いやる態度がはがゆいものの、それは藍だけでなくて読者である自分にも暖かい気持ちを与えてくれました。
藍の周りに登場する人々も愛すべき人達です。
古本店主の佐藤には途中幻滅させられましたが、それでもやはりいい人なんです。
藍はそれらをみんな拒絶するような、本当にネガなひどい性格なんで、彼の心の声も葛藤しながらもあきらめの方向へ自分で勝手に進んでいる、そこがじっくりと書き込まれているので、終盤成瀬に別れを告げてしまうところで本当にバッドエンドなのか!?とハラハラさせられました。
先輩の野宮に背中を押されて、成瀬に気持ちを伝えに行くシーンに、藍は成長したよ、この気持ちを忘れずにこれからもっともっと愛されて、その愛情を遠慮しないで受け取って、自分も相手に与えられるようになればいいと、感動しました。

めちゃくちゃネガな藍に、いまどきいないだろというくらい誠実な成瀬の気持ちが繋がっていく様は、作者の丁寧な文章、過剰すぎない表現で切々と胸に訴えてきてスルっと自分に入り込んで行きました。
思わず涙腺が刺激されてしまいました。


4

心理描写の濃やかさには好感

以前から、ちょっと気になっていた作家さんでした。今回、初読みです。

主人公の藍くん、たまたまスカウトされてデリヘルのバイトを始めちゃったんですが、特にお金に困ってる訳ではない。見た目は可愛いんだけど愛想は良くないので、客商売に向いてるタイプでもないし、どうやらゲイというわけでもないらしい。
かといって、そういう仕事をしていることに罪悪感を覚えるでもなく。。。
イマドキの男の子と言ってしまえばそれまでなのかもしれませんが、生い立ちやなんかのバックボーンが希薄なので掴みどころがありません。
いや、複雑な家庭事情というのがあって、それでコンプレックス(というかトラウマ)を抱えているんだということについては書かれているんですが、なんか、薄い、というか、弱いんだな。

ある日、そんな藍を指名してきたお客はちょっと変わった人でした。
白シャツにハイソックスというコスプレ希望。(笑)
だけど、「ただ一緒に居てくれればいいから」とハグする程度で他には何にもしてこない。
幾度か接していくうちに、いつのまにか藍の中で成瀬の存在が大きくなっていき ―― と、まあ、こんな感じです。

不幸な生い立ちや過去を抱えた主人公が愛する人に巡り会って変わっていく、というある意味『王道』的なストーリー。
心理描写も繊細で、やたらエロに走ってしまうという力技を繰り出すこともなく読ませてくれますから、力量のある作家さんだとは思います。
ただ、なんか、弱い…というか、物足りないかな?
デリヘルの客については、結構エグい描写もありますし、信頼していた相手からの裏切られるというショッキングな場面もあります。
なんだけど、いまひとつ、気分的に盛り上がらぬまま読み終えてしまいました。
きっと、私自身ある程度年喰ってるんで、「逆境」という設定には適度なリアルさを求めてしまうんでしょう。
キャラに共感できなかったのも要因のひとつかな。
どんなに「かわいそう」な主人公であったとしても、そこに直向きさがあれば、感情移入もできるのですが…。

とは言っても、この作品だけを取って判断してしまうのは早計かもしれません。コバルトの方で活躍なさってる方らしいので、若干のスタンスの違いは否めないかもしれません。
現に、特典小冊子のほうのお話(後日談)は、アマアマですが良い感じでした。
もっと違うシチュエーション、違ったタイプのキャラでの作品を読んでみたい気もします。

7

藍はこれから育っていくんだと思います。

神にしてもいいくらいなんですが、主人公の生い立ちがいまひとつ説得力に欠けたかなと思ったのと、コスプレにそんなに拘る必要があるのかなと思ったのとで、萌にさせていただきます。

ワケありの生い立ちのため、肉親の愛情に疑問を感じ一人暮らしをしている藍。
心を凍らせたまま、昼は古本屋のバイト、夜はコスプレデリヘルで生計を立てています。
ある日のお客は白シャツハイソックス希望の真面目なサラリーマン・成瀬で・・・

他にも古本屋店長・佐藤や先輩バイト・野宮、デリヘルのオーナーたちが脇を固め、藍を優しく見守ったり、怖い一面を見せたりと、先が読めそうでなかなか読めない展開にしてくれています。

身体を求めず、ただ軽く触れ抱きしめるだけの成瀬を、はじめのうちは楽な客程度にしか思っていなかった藍。
お互いが敬語で話し、いつまでたっても距離が縮まない様に見える二人ですが、成瀬の方は好きな本を使ったり、指輪をプレゼントしたりと藍への気持ちを少しずつアピールしてきます。
しかし、藍は彼の態度を錯覚だと思おうとするのでした。

自分の価値観の中で生き、自己否定、自己完結、といった感じにどうにも救われない性格の藍。
真面目で穏やかだからこそ、ゲイである自分の寂しさを埋める方法がデリヘルしか無かった成瀬。

藍は頑なで、成瀬は臆病で、どちらもお互いを思うからこそ身を引くほうを選んでしまうというもどかしさ。
これだけのページ数のほとんどが、ただひたすらもどかしいのですが、キスとハグのみでその先に進まなくとも、彼らの純愛を感じることができて、私の気持ちも高まりました。

自らは受けるばかりで、被害妄想としか思えないような僻みと不満と妥協の中にいた藍が、傷ついてもいいからと一歩を踏み出すことが出来たのは、成瀬の一途な愛情と、無償の愛で支えてくれていた野宮やオーナーのおかげでしょう。
これを書きながらも雪の中成瀬を追いかけて、大阪まで行ったシーンを思い出し、涙が出てきます。

いやー、ハッピーエンドでよかったよかった。
で、初エッチは番外編までお預けですよ。
あとがきにも1ページのお話あり。
さらに、アニメイトで購入したので特典小冊子あり。大阪での最終シーンのあとの、成瀬宅にて、アマアマ。

えー、ここでお礼を。
ちるちるオフ会の日、池袋のアニメイトで平積みにされていたこの本を、ためつすがめつ底の方まで吟味して買っていかれたお姉さん、あなたがいなければ私はこの本を手に取ることは無かったでしょう。
「そんなに拘りたくなるほど、面白いのか?なに?小冊子付き!」って思ったので、買った私でした。面白かったです。ありがとう。

3

温もりを感じた優しい物語。

成瀬の性格のせいか、小説全体に優しさを感じた。
家庭環境のせいで淡々とした性格に育ち、身体を売る商売にも「単なる肉体労働で、引っ越し屋と同じようなもの」と言い放っていた無感情な藍。
彼が古本屋の店長の欲深さと成瀬の優しさの狭間で揺れ動くうちに愛情を学んでいく様が丁寧に描かれている印象。
一度信頼していた人間(この場合店長)に裏切られたぐらいでそこまで…?と思いもしたが。

後半に電話の会話だけで愉快であたたまるエピソードを入てきたり、形にとらわれない書き方もいい。
読後、売りの話にも関わらず汚さより至福感が残った。

2

ずっと、自慰を見せられているような。

私は、家庭に問題があるとか、過去に重い過ちがあるとか、いま辛い思いをしているとか、そういう“可哀相設定”が好きでは有りません。
だからでしょうか…こちらの作品は本当にムリでした…。

藍は、何故か本当の両親の兄夫婦の元で育てられていて、そういうことから生まれる辛い思いから家を出て、昼間は古本屋、夜はウリをして生活しています。
新しく客になった成瀬は、痛くしたり強引にすることがなく、ただ一緒にいたり抱きしめることを望む、変わった人です。
成瀬と接していく内に、少しずつ心に変化が生まれてくる藍ですが…、
もう言葉を濁さずに言うと、ひたすらに自分の不幸に酔っているように見えました。
総て自分が選んだことなのに、オヤジ達にヤラれることに“耐えて”いるし、古本屋の店長からのセクハラについても、嫌ならすぐに辞めればいいのに情がどうこうで辞めずに、キモイと思いながらずっと…。
心で成瀬を欲しながらも、いざ彼の前では自分は汚いだのなんだのと言っていて…。
延々と、藍の不幸自慢を見せられている気になりました。
すごく狭い…金魚鉢みたいな世界にいる子が、自分の世界だけに溺れているようです。
文章の比喩や言い回しがやたらと小難しいので、より「酔ってる…」という印象に拍車が掛かってしまいました。
対する成瀬はすごく肯定的に書かれていますが、藍が際どいことを言うたびにシブイ反応を見せる彼が、どうして男を買ったのか…という理由がまだ少し消化不良だった気がします。
ウリをやっている人に対して、大切に綺麗に接する…のは、一方では美しいことかも知れないけれど、中途半端に優しさを見せ付けられても、「?」ってなります…。

……なんだかほんとうに散々なことを言ってしまいましたが、
不幸設定が苦手なのと、BLはあくまでBLであって、純文学ではないという考えが私にはあるので、私としてはイマイチ…な印象がありました。

9

伊吹亜弓

【むつこ様へ☆】
おはようございます。ずけずけ書いてしまったので少々びびっていたのですが、愛するむつこ様からコメントをいただけて…なんだか…、もうキュン死しました。 ← 
コメントありがとうございます!
そうですね、やっぱり可哀相設定があるだけで、作品の世界もどよ~んとするし、主人公がそこで立ち止まってしまうと、イラッともします。読者は主人公と共にしか進めないのだから、しっかり前を見て安全運転してほしいです。
この作品も、もし藍が毅然とした子ならまた違った風にとらえることが出来たんじゃないかなぁと思いました。こう…、爽やかに感動したいです。夏ですしね!

むつこ

めっちゃ分かります。
書かれてること、ウンウン頷きながら読みました。全文同意といってもいいほど、ガツンときました。おそるべし…w
私は不幸設定が苦手というよりは、マイナス思考が苦手です。
フェミニストな人に怒られそうな言い方をすると、「お前は女の腐ったのか!」みたいなのが苦手で…。
不幸だけど明るく頑張ってたり、不幸をバネにして悪の道(笑)をたくましく突き進んでたりするのは好きです。

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