伊吹亜弓さんのマイページ

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女性伊吹亜弓さん

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信じることができるまで、お待ち下さい…。

一言で言えば、そういうお話だったと思います。いやぁ素晴らしい。なにが素晴らしいって、間と表情と温かさが素晴らしい。
元ハルコ先生は私が最も愛する作家さんの一人なのですが、こういった“間”は、その中でもハルコ先生がダントツに巧みでいらっしゃるなぁと思います。私事ですが、そんな先生の魅力に出会ったのがこの作品が雑誌に掲載されていたときです。思わず雑誌のバックナンバーも補完してお話を追いました。つまりお話は100%存じ上げている…のに!コミクス化したことで更に更に輝きが増していますね。
ほんとうに最高の一冊でした。

このお話はですね。
田中さんが人の温度…それだけでなく他人それ自体まで苦手な傾向にあることと、堂島さんがそんな田中さんに惚れ、決して強引に事を運ぶことなくあくまで田中さんを待っていたというのがあらすじであると共に感動ポイントなんです。

重要なのは、田中さんの“過去”が彼のいまのスタンスを築いてしまったにも関わらず、それについてはほとんど言及されていないという点です。
これが素晴らしい。
田中さんに必要で大切なのは、過去を穿り返してどうのこうのとするのではなく、“いま”、堂島さんとどのように向き合うのかということなんだと思います。雑誌掲載には、3つ目のお話の表紙の部分にしっかりとそのようなアオリ文がありました。「ねぇ田中さん。俺と、どうなりたい?」と。
それに、お話の後半で田中さんが諸悪の根源と思われる元彼に再会してしまったときも、堂島さんは「あの人誰?田中さんの何?」など一切口にはしません。「(“いま”)どうしたの?」と聞くだけです。
もう、チョーかっこいいじゃないですか。この堂島さんの言動は総てにおいてかっこよかったです。堂島さんは、“いま”、“いま”の田中さんとどうにかなりたいのだなぁと思いました。
最初の頃は田中さんとの間合いの取り方をあまり弁えていなかったですが、田中さんを愛おしむ気持ちが柔らかく甘くなっていく様がほんとうにキュンキュンしちゃいます。

それから、その「どうしたの?」に答えられずに堂島さんを怒らせて(≒傷つけて)しまった田中さんが、自分から「気持ちは言わなければ伝わらない」と思うようになったのが最高に感動しました。
ちょっとだけ元彼のアドバイス?があったとはいえ、温度という…一番確かで正直な感覚を嫌っていた田中さんが、全身優しさでぬくぬく毛布みたいな堂島さんに「好きです」だなんて…!
………「気持ちは言わなければ伝わらない」。これは、田中さんにとっては目標でしたし、堂島さんにとってはずっと田中さんにしてきたことですよね。田中さんがそれをできるまで、堂島さんには「下がってお待ち下さい」ということだったのでしょうか。

田中さんは言葉でも伝えたけれど、体でもそれを伝えてきたのが感動でした。
体といっても、性的なアレではなくて、表情ですよ!(笑
この全5話の中で、最初の頃におばあちゃんに愛想笑いした以外では全然笑わなかった彼が、体を繋いだあとに寝ちゃった堂島さんに対して「くすっ」と笑うんです。
これがほんとうに……キました!
一番幸せそうで、一番誰かをいとおしむ顔をしていて………。私は散々感動泣きした後でしたが、最後にまた波が押し寄せてきました。ここで笑顔は反則ですよまったく!

晴れて幸せになった二人ですが、書き下ろしのSSが可愛くて可哀相で笑っちゃいました ((´∀`))
デートしたい堂島さん。えーと思う田中さん。
エッチしたい堂島さん。えーと思う田中さん。
なんですかこの温度差…!!!!!
でも最後に、田中さんの消える魔球のようなデレがあって最高にキュンとしました。
もう…、堂島さんと田中さんとハルコ先生の手の平で転がされている気分になりました。

ということで、間違いのない一冊です!

追憶 コミック

小山田あみ 

かっ…かわいい!

「スタートライン」について語ります!
いやぁ~可愛かった。今年の夏は活きのいい年下攻めに出会う率が私の中では高めです。
こちらは、陸上部の中堅・圭ちゃんと、中学時代に大会でメダルを獲るほどの活躍をした幼馴染み・颯人のお話です。なんと言っても、颯人が可愛すぎました…!!!!!!!!!!
圭ちゃんが大好きすぎてガキっぽくなっちゃうところ、圭ちゃんに見てほしくて再び陸上を始めるところ、圭ちゃんに見てほしくて頑張っているところ…全部がかわいくてデレデレしてしまいました!
めっちゃめちゃヤンチャな犬ですよね。先輩にもあんまり敬語を話さないふてぶてしい奴なんですけれど、明るくて憎めません。でもただ明るいだけではなく、圭ちゃんを中心とする世界や陸上にもしっかりと向き合っていて、男に片想いする圭ちゃんにもどかしくなっている姿も萌え萌えしました~ヽ(*´∀`)八(´∀`*)ノ

小山田先生の絵の美しさは挿絵などでも充分に味わえていましたが、こうして漫画となって動くキャラを拝見して、こちらでも魅力的な作家さんなのだなぁと思いました。
アングルとトーンのセンスが良すぎます。直接局部が描かれてはいないのに(そういう意味ではエロは薄めでしょうか?)なんか…ハァハァする…!! 微妙な半ケツ具合や表情がたまらなくエロかったです!本番の絡みではちょっと汗が多め?なのですが、“絡み合ってる”感がすごくある画面で恥ずかしくなっちゃいましたw

これが初コミクスだそうですが、挿絵でもご活躍の小山田先生。これからまんがでも売れっ子さんになりそうです!

もう私が君達のものになる…! ←

年下ってすばらしい。
大人相手にも余裕綽々な子というのもいとをかしですが、大人の余裕に翻弄されっぱなしで悶々するのはさらなり!大学生の隆之の、年下ゆえの必死さにはほんとうにドキドキさせられたし、社会人の沖屋の、年上の余裕ぶりとその裏の弱さなんかにもときめきっぱなしでした。
隆之のキャラに、とにかく萌え萌えしましたヾ(*´∀`*)ノキャッキャ
要領が良くてイケメンでとにかく優しくて、モテ要素に溢れる子なのですが、そういう子が一筋縄ではいかない相手にたじたじにされている様の萌えること萌えること…!
沖屋は例によって暗い過去があり、そのせいで恋人は作らずにいる人なのですが、そんなスタンスの人が直向な大学生に惹かれていく姿もときめきましたv
隆之のナチュラルな優しさと、それに逐一気付ける沖屋。二人ともすごく素敵な心を持ち合わせているんだろうなと思いました。
二人とも、BLには珍しいくらい(!?)人間としての偏差値は高めなのですが、沖屋のトラウマがとっても大きな引っ掛かりになっていて、最初は沖屋が、連動して隆之が、それに翻弄されているようでした。
恋人の過去に嫉妬することほど、恋愛において空しいことはないかと思いますが…それでもやっぱり、恋人が過去を大切にすればするほど気になってしまうんですよね。なんで相手にするのとか、なんで俺だけ見てくれないのとか、すごく見っとも無いことを考えるし、言う。隆之のそういう、ともすれば見っとも無い所はとても可愛かった。いじらしくて、すごく切なかったです。
沖屋からの確かな言葉が欲しいだけなんですよね。「お前が好きだ、お前だけだ」…それがほしいのだけど、沖屋は言ってくれない。はぁー悶々するゥ!(笑

でも、沖屋が過去を大切にするのは、いま、隆之を好きだという思いがしっかりとあるからなのでしょうね。ようやく不安がる恋人に気持ちを言う…というか聞かせる彼に涙腺が崩壊しました…!
とくに、元彼に 「そんなにあの年下の男が好きなのか」 と問われた時の彼が半端じゃなかった。
「好きだよ。かわいくてしかたない。あいつのものになりたい」
この言葉の重さや意味は、このお話を追わないと実感できないと思います。
なのですが、いままで散々ツンツンして隆之を不安がされた小悪魔まがいな沖屋が、こんなストレートに隆之への気持ちを言うなんて、信じられないくらいでした。
しかもこれを、隆之に聞かせているんです。元彼との話し合いを向こうで聞いている隆之に、思い知らせてやっているんです…!
特に 「あいつのものになりたい」 が素晴らしい。隆之としては恋人になっても “恋人” と実感できなかった、させてくれなかった人がそう言うんです。もう、これまでの彼の冷たさが総て溶けてしまったかのような、そういう力がある言葉だと思いました。

そんな感じで、恋愛面にキュンキュンしまくったお話でしたが…絡みも卑猥で素晴らしかったです!中盤までにある何度かは、くっついているけど繋がっていないというか、ドライな印象なのですが、上記の沖屋の告白のあとは、いい意味でものすごく湿っぽかったです。沖屋も、すごく気持ち良さそうなんですよね…!なんだか、彼は色々と解放しているなぁという印象でしたっ

最後のSSもすっごく秀逸なのです。
これだけは沖屋視点なのですが、彼の隆之に対する思いは常に “まんざらでもない” なのかな?と思いました☆年下の若干夢見がちな彼氏のことを、大好きなんだなぁ…としみじみ思えました。

とにかくいいたいこと→  年下って可愛いv

コートになりたかった男、赤頭巾ちゃんを食べる。の巻?

期待を裏切らないというか、期待通りというか、期待以上というか、とにかく素敵でした。
一つだけ裏切られたとしたら、チッチ×あっくんないしあっくん×チッチとばかり予想していたものが、まさかののん×あっくん!
前作ではパパ同士の恋愛で、それぞれの同い年の息子 「チッチ」 と 「あっくん」、そしてチッチに弟ができて 「のん」 がいて。てっきりチッチとあっくんがどうにかなるのかと思っていました。あの変な歌を大声で歌っていたチッチが…立派に夫になってホモ街道を通過せずにいただなんて…!のんなんて、前作のラストでちょっと出たくらいの子ですよ…まさか主役格にのし上がってくるとは思ってもみませんでした。でも、そうして予想を裏切ってくれたから、いままで勝手に妄想していたチッチ×あっくんの像も全部ぶっこわしてもらった気がします☆

あっくんが、宮本さんに似てしまっているのがおもしろかったです☆ふつうならお父さんに似るはずなのに、人生の大半を宮本さんと暮らしたからか、髪色だけでなく性格とか態度とかがすっごく宮本さんじゃあありませんか!
なんなんでしょうね、あのツンデレーション… 「を゛っ ぬ゛っ」 と泣き叫んでいたあのあっくがそんなスキルを身につけただなんて!なんだか、読者なんだけど近所のおばさんみたいな目線で拝読していた気がします。「あっちゃんたら…ちっちゃい頃はあんなに可愛かったのにっ」 みたいな…。
まぁ今も可愛いんですけれどね! ←

それにしても、前作のちっちゃいころのあっくんの様子がすごく活きた作品となりましたね。喘息持ちでお父さんのコートの中にズボッと入って保育園に通っていたあっくん…v
そのコートの中の安心した様子をビデオで見て、のんはあっちゃんのコート的存在になるべく、小さい…ほんとうに小さい頃からずっと、あっちゃんが泣いた時にはずっとそばにいたんですよね。
のんが持つそうした考えが、すーっごくキュンキュンしました…。
だってコートって!
コートって…喋らないんですよ。ただそこにあって、あっくんを包んで温めるだけなんですよ。それを目指したのんの健気さというか…男気に、ほんとうに切ないですよね…。
そんな事は露知らず、ごく微力な強引さで来るのんにズルズル引っ張り込まれていくあっくんが可愛いったらなかったですvvvv

その後にある 「sweetie」 シリーズも素晴らしかったです。
すっごくイイですよ…おっさんで地味でメガネなのに、エリートで一途で参謀タイプとか…!
それから宗一郎さんのずるさがとっても良かった。
いまやトラウマになっている過去の自分を愛して愛してオタクで仕方がない塚本への酷い仕打ち、でもそれを 「わざと傷つけた」 のだと理解している塚本へのそっけない言動、それでも、塚本が離れようとすれば手を伸ばして引き止める…っ
宗一郎さんをそうさせたのは塚本の、シェリーちゃん時代からいまの宗一郎まで、言うなればAからZまでの彼という存在に対する、あくまでもとことんピュアな愛情なのだと思います。塚本は読者からみてもすっごく愛おしい人だと思います。あんな人にあんな風に好き好きビームだされたら…そりゃあ…どんなオカマでも男モードになりますよね!
絡みでは宗一郎さんが “宗一郎さん” モードでガッツンガッツンしていたのが最高でした。好きな子を攻めていたぶって悦ぶ男にしか見えなかったです…宗一郎さんがほんとうに素敵すぎました。
がっちり系おネェさんって良いですよね…
なんだか、前々から萌えではあったんですけれどそういう作品に出会う機会がなくて…気のせいかな (?) と思っていたのですが今回の作品で思い知りました。
萌えポイントです! (どーん

このお話は2年前 (だったかな?) の 「このBLがやばい!」 にランクインしたものの続編ですし、言うなれば宮内庁御用達というか…安心と絶対のおもしろさが在ったと思います!
井上先生の局部論?も拝読できたし、とってもお腹いっぱいになりましたっ

有樹はなんなのか

本来のカップルは報われたかもしれない。でも、その裏で存在を奪われた人がいると思いました。

鳴沢は、亡くなった恋人にとにかく心を奪われているのだと思います。
12年ですよ。年賀状の絵柄が一周するほどの過去に亡くなった人を思ってる。それは亡き孝徳が生前に誓った 「必ず戻ってくる」 という言葉を信じているから。…信じているというよりも、縋っていると言ったほうがいいような気もするほど、縛られていました。
しかし13回忌の日、鳴沢の元に現れた11歳の少年が孝徳とだけ共有していた思い出を語ったことからお話は展開していきます。
孝徳はほんとうに生まれ変わっていた、ほんとうにもう一度会いにきてくれた…そうしたこと事態は、愛の力ってすごいんだぜというような流れでとても良かったと思います。

が。
私は読破してから、その少年…有樹というのですが、彼が可哀相でならなくなりました。そもそも “生まれ変わり” というものの概念自体、私の考えるそれとズレていたのかも知れません。
というのは、有樹があくまで孝徳とされていたからです。鳴沢の前に現れた有樹は、自分は孝徳の復活した姿だと主張しています。過去の記憶をまだらに覚えており、大好きな鳴沢に会いにきた、と。
鳴沢も始めは信じておらず、中盤では嘘つきと罵り、最後にはほんとうに孝徳なのだと解る。これってつまり、有樹は “有樹” ではなく “孝徳” なのでしょうか?肉体としては有樹でも、精神が “孝徳” になっていて、“有樹” の部分の描写は全くなかったと思う。
有樹という存在はあくまで器でしかなく、中身が “孝徳” であることだけに意味を要しているように思えて、有樹のアイデンティティをまるっきり無視しているような気がしました。有樹は “有樹” のはずなのに、“孝徳” にさし換わっている。それを鳴沢はおろか本人も自然に受止めてしまっているのが気になりました。

なので、生まれ変わりというよりも、私はこれは憑依だと思いました。生まれた瞬間、あるいは生を受けた瞬間から “有樹” は “孝徳” に奪われてしまったのだと思う。
そうでなければ、有樹がなんのために生まれてきたのかが解らないです。
「僕は君に会うために生まれてきたのかも知れない…」
などという言葉がありますが、実際にそんなことって、有り得ないじゃないですか。
それなのに、有樹はあたかも孝徳の器となるためだけに生まれてきたようで…それがとても可哀相だった。このあたりのフォローが欲しかったです。

箱庭に物を詰め込みすぎてカオス

シリーズの前作は拝読していませんが、こちら単体でも大丈夫だとのこと。ですが…こちらの作品…すくなくともこちらだけを拝読すると、とっても不親切に感じられます。というのは、主人公である智久に関する重要な事柄も、お相手である蓮音に関するそれも、お話の最後に一気に…ほんとうに一気に種明かし(?)されるのです。
しなくてもいいような思わせぶりな言い回しを何度も繰り返し、さんざん横道にそれたりなんかしながら展開させていき、ようやくキーマンが現れたかと思えばきゅうにテンポが速くなる。…なんだか、後半になって突然、強制給餌させられている気分になりました。読者はフォアグラになるカモではないのだから、もう少し丁寧にお話を進めてほしいですね…。

色んな伏線(?)を張り巡らせた後にそれらの正体を一気に明かそうという…その流れ自体は悪くは無いと思いますが、その正体…とくに蓮音に関する事情はあまりにも予想外すぎて、吃驚を通り越してポカーン…でした。
先ほどからこのレビュに(?)を取り入れているのは、狙いは判るけれども、どうも空回りしている感が否めないからです。伏線が甘い。設定が多すぎる。それゆえ後半に明らかな矛盾が生まれてしまっているようなので、お話の完成度は、あまり高くは無いという印象を持ちました。

せめて主人公に共感できたら…と思いましたが、いかんせん視野が狭くて細胞の少なそうな言動が目立つ智久なので、それも…ちょっと残念でした。
こういった…事件性を孕む作品は、お話の流れにもキャラの考え方にも、とにかく論理的展開が大切だと思うのです。1→2→3と順番に展開させなければならないものを、読み手の補完にまかせて1→3と一足飛びしてしまっている気がする。
それに、強調させたい語の横につける「・」がやたらに多いので、読み手の注意力を散漫させてしまっていると思いました。結局なにを強めたいのか判らない。結局なにが言いたいのか判らない。
もう…とにかく自分の好みではなかったので辛辣に言ってしまいますが、いろいろと…狙いが裏目にでている作品だな、と思いました。

信じたいと願えば願うほどなんだか切ない

(by宇多田ヒカルさん)…と、思わずにはいられない作品です。
もう、すっごく良かった~~~~~~~ですっ!!!!!
私は雑誌掲載分である前半を既に拝読していたのですが、こうして文庫化となると、一層一層より一層!!!!!大好きになりました。後半の書き下ろし 「言ノ葉ノ光」 で、何倍も仮原がいとおしくなりました…。

前半の雑誌掲載分では、仮原が砂原先生作品でも稀に見る?いやな奴だという印象を得ました。人の心の声が聞こえるということを悪用しているし、それを悪いとも思っていないし、自分よりも弱い人間を平気で詰れるような奴だったんですよね。
本音を言わないことであったり、手の内を明かさないことで成り立っているモノを平気で壊しにいくんです。コノヤロゥ…!!!! と思ってしまうくらいに人にチャチャを入れる奴だったのですが、藤野に出会い、藤野に恋をしてからの彼はほんっとうに可愛かった~ 。゚(゚´Д`゚)゚。

積極的に人の心に踏み入っていった頃とは反対に、藤野の心の声が怖くなってしまう。それはきっと、自分を愛していながらも自分の能力を受け入れてくれなかった母親に由来しているんですよね。
息をするみたいに心の声を読んでしまう仮原に、「うんざり」 しながらも 「ごめんなさい」 と思っていた母。それはどちらも本音だったし、だからこそ仮原も母を恨みきれないのだと思います。でも藤野は仮原の母親ではない他人だから、「うんざり」 したらそれっきりになってしまうんですよね。
仮原の能力を知った藤野が、必ずしもそれを良しとは思っていないらしいのは前半の方で分かっている。だから仮原は、なんとかして心の声が聞こえなくならないかと考え出すのだと思いました。

藤野に嫌われたくないから…という理由で能力を失いたいと思う仮原の気持ち、とても素敵でした。
でも、もしほんとうに聞こえなくなったら…仮原はきっと余村よりも参ってしまうのではないでしょうか。余村(前作「言ノ葉ノ花」の主人公)は大人になってから聞こえ、また聞こえなくもなりましたが、彼は先天的なんですよね。生まれてからずっとそうであったものがきゅうにそうでなくなったら、たぶんもう “自分” ではなくなってしまうんじゃないかな。
藤野のことを好きになったのは 「心の声が聞こえる自分」 だし、藤野が好きになった相手も同じです。だから、彼は、子供のころから迷子みたいに彷徨っている自分自身を受止めてあげるべきなのだ…と、拝読中にとても感じていました。

結果、仮原の願いはやはり叶わずに終わるので良かったです。
自己主張をあまりしない藤野が、はっきりと仮原を認めているのだと示してくれる場面が素晴らしかった。前半からは考えられないくらい、すっごく強くなっていたなと思います。
替わりに仮原は、お話が進むにつれてどんどん弱くなっている気がします。周りの人間に散々幻滅していながらも、仮原が一番信じられなかったのは自分自身だったのだと思いました。本気で人と関わりあいたいと思ったとき、ほんとうは心の声が聞こえるなんて無意味…あるいはマイナスの要素なのだと知ってしまってから、仮原は可哀相なくらいに迷っていました。
心の声はいつまでたっても聞こえるし、藤野とどれだけ繋がっていられるか分からないし…、他人の心の声が聞こえるからこそ、一人だけで完結させてしまおうとしているのかな、と感じました。

仮原ってほんとうにほんとうに寂し男…というか、寂しんぼだったんだなぁと思います。相手から言葉による反応が返ってくる前に諦めてしまう…、心の声が聞こえるってそういうことなんですよね。仮原はそうして総てを諦めてしまう前に藤野の差し出した手を掴んだわけですが、もしそれを突っぱねてしまったら……、その未来が 「アキムラ」 なのだと思いました。
砂原先生曰く 「余村ではないが限りなく彼である存在」 だそうですが、余村も、あのとき修一が掴んだ腕を振り払ってしまっていたらアキムラになっていたんですよ、きっと。

心の声が聞こえるという能力に意味を与えるとしたら、私は 「人を信じる強さを学ぶ」 ためだと思います。
それを学べた人だけが独りぼっちではなくなるのだと思います。
アキムラも…、最後には強くなれたのでしょうか。

一歩違えば変質者…?

久我先生10周年おめでとうございます。
久我先生のトレードマークといえば、登場人物たちの関西弁。今回もそれが発揮された高校生モノでした。
水泳部の開士と美術部の市村が共通の友人を通して仲良くなるという冒頭から始まるお話ですが……………赤裸々に告白します。
市村くんが気持ち悪かったですw
「攻め様に向かってなにを言うか!」 というところですが、開士に対する彼の言動はちょっと “やりすぎ” だと思いました…っ
付き合ってもいないのに帰り道の心配をするだとか、一人で帰らせたら連絡してくるだとか…やたらと開士の世話を焼きたがる市村なのですが、彼は “好きな子” と “付き合ってる子” の区別がついていないように思えました。
大前提として、開士にとって市村は友人の友人でしかなかった男で、仲良くなってからも友人というポジションには変わりがない。開士はべつにゲイなどではないからです。
それに対する市村の言動はとても異常。こちらはおそらく先天的なゲイ気質を持っているのですが、いくら開士に気があるとしても、そんなに優しさ(?)を見せ付けられたら怖くなってしまうと思うのです。
開士は男の子で、市村に対して恋愛感情を直結させないから救いがありますが…彼が女の子だったら、いくらイケメンでも市村を変質者扱いしてしまうでしょう。
いえ、いくら開士が男の子だとしても、友達に奢られたりプレゼントされたり…果てはプレゼントし返したり……そうしたことを受止めているのはちょっと驚きでした。お互いにお姫様気質と王子様気質が備わっていたのかも判りませんが、それを発揮するのはもっと後の段階ではないのか?というツッコミが否めません。

市村のおかしいくらいの優しさ(?)についての理由付けも、なんだかビミョウです。
要するに極度の面食いなのでしょうか?
可愛い子(世間一般的にはカッコいい子)が大好きなのは分かりますが、その 「好き」 は最初から恋愛感情なのかどうかが曖昧。
私も日常において俳優さんや道行くおじさまなどを「カッコいい」と思うことがしばしばありますが、だからといって「好き」「ヤリたい」(←見も蓋もないな…)と思うわけでは有りません。殆どの場合において「可愛い」などというプラスの評価は「好き」の一因にはなれど総てにはなれないと思うのです。けれど、この市村という少年はどうも「可愛い」が「好き」に直結しているようで……もう少し、彼の言葉が欲しかったですね。

変態だなという印象を得てしまった前編ですが、後編の「白雪王子」は受験生編で大変楽しめました。
2年間もプラトニックを貫いてきた2人なのに、開士が悶々の臨界点を突破するのが、あろうことかセンター後という最も大せつな時期だったということがリアルな気がしました。
高校三年生は受験だけではない、卒業というイベントもある時ですからね…。
恋人達が二人揃って同じ大学に入れる…そんな美味い話があるわけない!!と受験体験者は思うわけですが、合格という夢を掴んだら、目指すのはもうゴールインしかありませんねっ ←
開士が想像妊娠する日は近い! (えぇー

いろいろと美味しかった☆

事件モノは伏線の巧さが命と言っても過言ではない!と思います。こちらの作品はそれが完璧、しかの沙野先生の「あの」エロスも詰め込まれていて、とても濃ゆい一冊でした。
カルト集団の設定が神だったな。
靫の過去…というよりも、人が少なからず持っているであろうモノをターゲットにしたカルト集団。最初の謎掛けからして不可思議で興味深かったし、次々明かされる事実に驚かされっぱなしでした。
“洗脳”してナンボな世界ですから、当然靫にもそうされる危険性があるわけで…、そんなとき彼の精神の拠り所となるのが“あの音”…というのも、タイトル等への良いリンクになっていて秀逸だと思いました☆

ただ、靫が“あの音”…周を象徴するものを拠り所たらしめた理由付けが、ちょっと少なかったように思えます。
大きな事件が絡んでいることと、このページ数であることがネックになっているのか…周への気持ちの傾き方、拠り所とするまでに至った信頼感や依存心…そうしたものの描写がもう少し欲しかったです。

しかし…、その物足りなさを払拭するかのごとく炸裂するエロスがたまらなかったです! 個人的には、周×靫よりもカルト集団4人の4Pの方が滾りました(死活問題?
櫟があちらの役割をになったという時点でもう…ね、鼻血ですよね。 ←
あとエネマグラが出てきたのがツボでしたv
まだBL界ではマニアックな部類ですよ…ね?エネマグラ。他人にどうされているというわけでもなく、しかし自分の力ではどうにもならない様子がひどく心を揺さぶりました。
エネマグラには拘束が必須だと思っている次第ですので、見事それが成されていて大満足でした☆

愛が……ツイストしてる。

んー…。エロスにばかり気を取られた内容になっていたかなぁ…と思います。陵辱、3P、二輪挿し…悪くないし、むしろ大好きですが(ぁ)兄弟から亮輔に対して繰り返される無体も甚だしい仕打ちの動機付けが、解らなくもないけれど、論理的には崩壊している。

しょうじき何度も繰り返される絡みに愛をさほど感じることが無く、あくまでネタとしての陵辱と見なしていました。やっとそれを感じられるのは、最後にある二輪挿しの絡みだけ。
というのは、兄弟が亮輔犯すにあたり提示した理屈に、非常に引っ掛かりを覚えてしまったからです。
詳しいあらすじは端折りますが、「亮輔の体には父の一部が入っているんだから、亮輔は僕たちのもの。だから犯す」 という理屈にどうしても納得が出来なかった。大好きだった父の一部が存在している (と思われる) 体を、どうして犯すことができるのでしょうか?尊敬していた父を犯すことに繋がるんじゃないのかなぁ…。
ちょっとした父子相姦に思えるし、兄弟が抱く父への憧憬を鑑みると、亮輔への行為は、まさに自分達の父への思いを踏みにじるものだと思うんですね。
仮に…単純に、好きだから抱く理由が欲しかっただけだとしても、そこに父の件を引っ張りこんでくる人間性に危機感を覚えます…。

陵辱エロスが濃ゆすぎて、三人の気持ちに対する描写におざなり感を否めません。兄弟視点のくだりが一つあるだけでも違ったと思う。
しかし表紙の様子や内容のエロス比から見て取れるように、エロスに重きをおいた作品なのかなと思います。あんまり展開へのツッコミは入れず、単純に絡みを楽しめばいいのかな。
そういう面から見れば、絡み自体は申し分ないパッションでした!