かえっちょ
実はずいぶん前に本編を手放してしまい内容を思い出せないのですが、そんな私でも充分楽しめることのできた作品でした。
世界観は冒頭に解説が入ってますし、そこを飛ばして読んだとしても話そのものにはファンタジー要素は薄いので問題はないかと思われます。
紺野キタさんのギムナジウム風なBL作品は外れがないですね。
そんな思いを強くしてしまう、とても上質なお話だと思います。
以下、完全ネタバレです。
ローランドのアーサーに対する報われることない想いがメインとなっていますが、読むたびにたった一度しか語られないアーサーの想いにぐっときます。
どんなにローランドのことが大切であっても、けして女性を愛するようにローランドを愛すことができなかったアーサー。
愛せなかったくせにローランドにとって一番でありたいと願ってしまう、狡いと解っていても止められない想いがひどくせつなく思います。
ローランドの苦しみからしたら、大したものではないかもしれない。
でもこの我が儘な欲求はとても人間臭く理解できてしまえるものであり、彼は彼なりの苦しみがあったのだろうなぁと思えるのです。
最期までローランドに我が儘を通したアーサーですが、同時にローランドにとっても淡くきらめく終わりのない美しい思い出として残り、想いを昇華することができたのでしょう。
性を飛び越えることができなかった、
でもだからこそ行き着ける先もあるのだろうと思える、せつなく美しいお話でした。
でも、ローランドとアーサーがお似合いすぎて、一緒になって欲しかったです(号泣)
魔法使いのいる世界を描いた非BL作品『Dark Seed』(幻冬舎・BIRZコミックス・全3巻)のスピンオフ同人誌。
本作の主人公・ウィロビー卿自身は本編中にさほど多く登場するわけではないし、逆に本作には本編の重要登場人物はほぼ登場しないのだが、本編の世界観が分からないとかなり理解し難い可能性があるため(一応4ページを割いた補足説明はあるのだが)、本作自体はまぎれもなくBLなのだがなかなかおすすめしにくい(しかし内容は非常によい)1冊である。
この作品世界では、魔法使いはその余分な力を逃がすための「石」を握って生まれ、その「石」を預かり守る同年代の「対(カノン)」と誓約を交わし、何よりも強い絆で結ばれたパートナーとなる。
魔法使いであるローランド・ウィロビーと、そのカノンであるアーサーとの恋になりきらない一生が、この短編(実質41ページ)に凝縮されており、紺野氏の作品は読み応えがあるとつくづく思い知らされる。