COLD FEVER(新装版)

cold fever

COLD FEVER(新装版)
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神137
  • 萌×214
  • 萌10
  • 中立3
  • しゅみじゃない7

--

レビュー数
34
得点
774
評価数
171
平均
4.6 / 5
神率
80.1%
著者
木原音瀬 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
祭河ななを 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
シリーズ
COLD SLEEP
発売日
価格
¥1,000(税抜)  
ISBN
9784862635501

あらすじ

ある朝目覚めた時、透の時間は六年の月日が経っていた──。事故でなくした記憶を取り戻したものの、周囲に愛されていた“もう一人の自分”の影に苦しみ、さらに誰よりも憎んでいた男・藤島と同居していたことに驚愕する。藤島に見守られ、失くしかけた夢と歳月を取り戻そうとする透だが、藤島の裏切りが明らかになり──! シリーズ新装版、ついに最終巻。同人誌発表作に大幅加筆し、「同窓会」シリーズも連動して同時完結!
出版社より

表題作COLD FEVER(新装版)

高久透,記憶が戻った男 
藤島啓志,透を見守る男

同時収録作品花咲く花散る花開く

黒川祐一 公務員
谷口雅之 カメラマン

その他の収録作品

  • LAST FEVER 四季
  • 花咲く花散る花開く
  • あとがき

レビュー投稿数34

どうしていいかわからなくなる

木原先生の作品はすべて読ませていただいておりますが、本作が1番心に残っています。

この作品を読んだ多くの読者さんは「痛い」とおっしゃいます。
私も心が痛かったです。ですが、痛みよりも「どうしていいかわからない恐怖」をより強く感じました。
暴風吹き荒れる台風の最中、外に出されたような気持ちです。
透や藤島さんと一緒に嵐の中に放り込まれてぐるぐる回されたような、もう何が何だかわからないという感じです。
感情をこんなに上下に揺さぶられる作品は読んだことありませんし、今後も出会えないかもと思っております。
唯一無二の作品です。木原先生を心の底から尊敬しております。

0

「愛してます」の終点

『COLD SLEEP』: 淡々とした展開、

『COLD LIGHT』:2人の過去を明らかにした。
 両想いで付き合って、幸せそうになりましたが、

『COLD FEVER』:ついに痛くなった!精神と肉体も痛いです!

以下は、COLDシリーズ3冊を読んだ後、『COLD FEVER』を中心とした個人的な読後感です。

「6年間」を忘れた透。

藤島にとって、
愛している人に好きだと言われて、愛されて、大切にしてもらって、蜜月のような「6年間」。
そして、すべて忘れられて、
それ以上のない幸せな日々を一瞬で無くし、
しかも、乱暴で理不尽で、藤島のことを嫌っている透に戻った。

透より藤島のほうが100倍も苦しいと思います。

藤島は、どっちの透も愛している。

「6年間」の透は、恋愛対象として愛している。

記憶が戻った透にも愛している。
それに、罪悪感を抱えて、罪を償うため今度こそ守らなければならないという責任感を持たれている。
頼りになる人がいなかった藤島にとって、
小学生の透と心を交わした時間はかけがえない宝物であり、
透は唯一自分で選んだ「もの」だし、
透に対して恋々の情を懐いている。

だから透から逃げない、
暴力を振るわれても、無理なセックスさせても耐えられた。

記憶が戻った透に嫌われている藤島が、
透に嫌な思いをさせたくないから、
恋愛対象として受け入れることができない。

藤島のすべての行動は、
透へ愛の表現だと思います。

ずっと一人だった透は、
一人は嫌で、誰かに構ってほしい。
帰る場所が欲しい。
昔も今も透に優しくしてる人間は藤島しかいない。
藤島は透の帰る場所となっている。

透は本当は藤島のことが嫌いではなく、
ただ信じてたら、裏切られるかもと不安していただけ。
「6年間」の自分が藤島と仲良くしていたことを嫉妬したり、
藤島がいなくなった時、気が狂うなるほど不安となったり、
実は藤島に執着し頼りきりになったほど好きだ。
藤島に対する暴力、暴言、強引なセックスもただ自己防衛、逃避だと思います。

公園で狂った透に
藤島が
「そばにいるから⋯」
「どこへも行かない」と伝えた。
透のために自分を犠牲しでも、一生愛を尽す覚悟をしたでしょう。

そして、
海で残った一枚「6年間」の写真を燃やしたのは、
開き直って記憶が戻った透と共に新しい未来へ歩き出すと決意をしただろうね。

藤島が優しい声で「透」を呼ぶたびに、
どんな想いで呼んでいるだろうかと考えて、
切なくなります。

最初から最後までどんな透でも、
温和な態度で彼を守り続けている藤島の姿に、
胸の中に温かい灯りが灯ったような気がしました。

本編の最後、
藤島の
「僕は君を置いて、もうどこへも行かない」
「行けないから」
という言葉

数年後、
透が谷口に自分にとって藤島は、
「体の一部みたいなもんだし」
と答えた。
2人は強く依存しているです。

『COLD SLEEP』に、
藤島が透に吐き出した
「愛してます」、
たどり着いた終点は、
お互いに必要とされ、
相手を失ったら、生きていけない、
切り離すことができない2人の愛です。

「同窓会」シリーズ
「僕は仕事より親よりも君が好きだ。君さえいたら何もいらない。君のそばにいられたらもう何もいらない」
黒川の病み付きになりそうな谷口への想い。
この2人も深くいつくしむことになり、
離れることはできないですね。
同棲して幸せになって良かったです。

痛くて、少し狂ったけど、
2組のカップルのハッピーエンドに感動しました。

0

『愛の本質』とは何か?その答えがこの本にある。

以前、ちるちるのYouTubeで木原音瀬先生の特集したとき、アンリ54世さんがこちらのCOLDシリーズを激推ししていたことをきっかけに、作品を知り、読みました。

これまで、木原音瀬先生の作品は何冊か読んでいました。その中でも、(自分にとっての)殿堂入りの傑作があったりするぐらい、木原音瀬先生は私にとって特別な作家さんなのです。……が、だからこそ、読む前から期待は高いし、ハードルもぶち上がっていたのですが、また……超えてきました。あぁ、もう、やられちゃいました。すごかったです。本当に。木原先生、本当にありがとうございます。

ラスト3行、特に一番最後の藤島の台詞『行けないから』に、この作品の全てが詰め込まれているように感じました。愛って何だろう?その答えがこの台詞に凝縮されている気がします。

一言では言い表せない、決して綺麗でも美しくもない、ずるくて、醜くて、子供くさくて、筋道が全然通っていなくて、でも、手放せなくて……3巻の透は、見ていて痛々しいと感じると同時に、すごく人間臭いなぁ、と。ずるかったり、矛盾したり、思っていることを素直に言えない。終盤、公園で、いきなり子供に戻ったみたいに、魂をむき出しにしながら慟哭するシーンが、とても印象的。もう、いろんなものが限界だったのだなぁ、と。

逆に、6年間の過去がバレてから、透から容赦なく降り注がれる暴力に、藤島はただひたすら耐えます。普通だったら逃げ出すよ、ってぐらいひどい暴力にあてられて、でも必ず透のそばにいる藤島。かつての幼い透にいけないいたずらをしたり、自分の心の弱さのせいで助けてやれなかった罪滅ぼし的な感情もあるのでしょうか……?いつか、記憶喪失の透が過去を思い出すかもしれない、それでも彼のそばにいる、と覚悟を決めたときにはもう、ある意味で、二人の行く末は決まっていたのかもしれません。

また私にとって特別な一冊と出会ってしまいました。出会えてよかった。これを読まずに人生が終わらなくてよかった、と、本気で思います。

そして、これからもたくさん木原音瀬先生の作品を読みます。木原先生、愛してます。

2

さぁここからは歯を食いしばって

シリーズ3作で、COLD SLEEPとLIGHTは透が記憶を無くした6年間なのでお話は繋がっていますが、このFEVERから読むのも面白いかもしれません。
前2作は「あれ…これは木原さんの中でも“痛くない、初心者オススメ”と言われるやつなのかな^^」なんて思いながら読む、ケーキやお花に囲まれた恋人のお話。
そこから透の記憶と共に暴力性を取り戻し大爆発、ツラ〜〜〜(涙)な展開に。

木原さんは読者の想像する安易な展開を用意してはくれません。
6年間藤島を恋人として接し、ケーキを作り、商店街の人気者だった透。同じ動作やものに触れる事で記憶が戻り、あの愛しい青年が戻ってくるのでは、とか。
記憶は戻らないけど、透が藤島をどれだけ愛したか、どれだけ藤島が記憶を取り戻した透の側で辛い思いをしたかを誰かが告げ口して改心するのではとか。
そんな、普段なら「はいはいベタベタ」と思うような優しい展開を心底望んでしまうくらい、読むのが辛かったです(彼女の作品は大体そうですが。)

6年間の自身を周りから求められ、今を否定された気分になる透もやり切れない。読者も2冊分6年間の透が好きですが、でも今の透が自分に妬んでしまうようなところも可愛いと思わせるところ、積み重ねた人生分の嘆き苦しみを子供のようにぶつけるしか出来ない不器用さが愛おしくなり、読んでいて凄く凄く面白い。

彼の中で藤島に対する印象が全て悪い方向で繋がってしまい、藤島の失態も多々あるのですがそれでも暴力過多。一番辛かったのは写真を捨てられたことです。もう戻らないもう一人の愛しい透の思い出が全て捨てられるなんて茫然自失でした。
最後まで読めば、全て捨てなければ今の透と真に向き合えなかったのだと思うのですが、それでも写真を捨てるのは余りに(略)

このお話は一人の人を何度も愛すること、その人という核とは、というのがテーマなのかなと思っています。それと共に、自分が知らないだけで周りの誰かはちゃんと愛していることもとても大切に描かれていると思いました。
恋人が居たらしいのにそいつは姿を現さない!と思っていれば「その人には会ってる。お前が気付かないだけで」と言われてしまう(もぉ〜〜藤島って事細かく教えてあげてよ…)自分が愛した人や物に全く感情が湧いてこないなんて、自暴自棄な透であれば更に辛いだろうと思いました。
生きてきた人生の積み重ねで様々なものに出会い付き合い人格を形成するのに、それらがすっかり無くなったらどうするのだろう。自分はどんな人間なんだろうと考えてしまいます。

そして巻末のお話を最後に一気に読みました。
黒川、自分と重ねる部分も多く純粋で重くて(笑)大好きです!
「今日は来てよかった。谷口とこんな風に話ができるなんて思いもしなかった。大人になってよかったなぁ」
「ずっと好きだった。ずっと好きでたまらなかった。高校を出てからも、何年たっても君のことが好きだった」
「あーあ、言ったよ。酒の力っていうのはすごいな」
「恥ずかしいな。恥ずかしいよ。死にたいぐらい恥ずかしいよ。明日になって全部忘れてるといいな。僕も君も」
捻りない言葉と融通の効かなさ、そして谷口と居るようになってどんどん世界が広がっていくのが最高でした。

3作通して、伏線の回収具合も筒が無く好きでした!

3

最高傑作…(拍手)

前の巻を幸せな気持ちで読み終え最終巻は記憶が戻ってしまうんだろうな~と思い読み始めた初っ端からそれで息が止まりました。

本来の攻めに戻ったのですがそのあまりの暴力性には悲鳴を上げそうになりました。
あまりに痛々しくて胸がズキズキして…しおりを挟む余裕なく本から手を離し距離を置いてしまったのは初めてです。
泣く時間が必要でした。

酷い部分を持つ攻めでもあるのですが彼を責めたり憎むことは決してできないんですよね。
彼の生い立ち、悲惨な過去…痛みを知り彼なりに自分を守る方法を見つけ…それでも彼自身苦しみながらも生きていくしかない姿を見ていると…言葉がつまるんですよね。

そんな彼と一緒にい続けた藤島さんのことを思うと…また泣きそうになります。
自分に懐いていた子ども時代の透…事故で記憶を失いまるで別人になった透…同一人物であれそんなかけがえのない人を二回なくしたようなものですよね。
それでも今、透と藤島さんの関係がまた別の愛で繋がり続けているのは嬉しいのですが…
藤島さん自身にその気はなくとも一読者としてはやっぱり比べたくなってしまうんですよね、記憶を失くした透との時間が一番幸せだったんじゃないかって。

今回は一気読みしてしまいましたがまた時間を置いてじっくり読み返したいです。
私の中で一番大好きな作品です。胸を張ってそう言えます。

1

ベスト オブ アダルトチルドレン‼︎

BLの設定に多いACだけど、その中でもこれは群を抜いて秀逸だと思います‼︎
生々しい感情の揺れが、透の抱える苦しみが凄まじかった。

藤島も機能不全家族の中で育ったけど、それでも「嫌われるのが怖い」と思える程には母親からの愛情を感じて生きてこれた。
典型的な毒親とその子供の関係だけど、子にとっての親の愛情がどれ程大きいかを物語ってる。

0と1には1と1000よりも大きい差がある。
的な事を誰かが言ってたのを思い出します。

藤島が透の為にしてた事は、贖罪や同情もあったかもしれないけど、1作目からずっとブレないのは藤島の「透に幸せ」になってもらいたい。という願い。
結果、「全部リセットして、何のしがらみのない楽しい人生を送って欲しい」って藤島の願いが、透にとって本当に1番幸せな状況だったんですよね…
そんな藤島の願いも虚しく、記憶は戻って透は混沌の中に落ちて行くけど…
どれだけ暴力をふるわれても痩せてボロボロになっても側に居たのに、透に新しい恋の気配を感じると離れる決断をする。
藤島からすれば、自分や過去への憎しみから解放されて幸せになって欲しい。
透の変化も執着も、藤島には自分に対する変わらない憎しみとしてしか届いてないんですよね…。

ただただ、相手の幸せを願い続けれる。どれだけ相手が変わろうと、それだけはずっと変わらない。
藤島にも透に対して執着や依存がある。
でも、色んな感情がある中で何よりも強い気持ちは通るの幸せを願う心なんですよね。。

純愛ですよね!
小さい子にイタズラしようとしてた醜悪とも呼ばれるような恋愛が時を重ねて純愛にまでなるなんて(´;ω;`)

藤島のためにも、透はずっと幸せで居て欲しい。。


ただ、この2人の生きてきた過程が苦しすぎて、黒川の甘ったれた感じに妙にイライラしてしまった苦笑

6

言葉にできない感情が湧き上がる

シリーズ3巻目。「COLD LIGHT」で、過去を乗り越えた藤島が記憶を失ったままの透の求愛を受け入れ、二人は恋人同士になったのですが…。突然透は交通事故以前の記憶を取り戻し、6年間の何もかもを忘れてしまいました。事故のこと、藤島を愛したこと、パティシエとして働いていたことも全部。
私は、ひょっとしたら透は6年間の記憶を失わず二人の自分の間で葛藤するのではないか、と予想していたのですが。甘かったです。

記憶を失う前のカメラマンになるという夢を実現させるため、専門学校に通い始めた透。6年間の自分の影に苛立ちながらも、藤島と暮らすうちに少しずつ日常を受け入れていきます。透は黙って自分を支え続ける藤島に心を開きかけますが、藤島の部屋に隠されていた写真を見つけ自分たちが恋人同士だったと知り、態度を一変。藤島に激しく暴力を振るうようになります。殴る蹴る、セックスを強要し、口汚く罵る描写に背筋が凍ります。
友人の楠田や交通事故の被害者遺族から6年間の真実を知るうち、透の気持ちは揺れていきます。なぜ藤島は自分を守ったのか。知りたいけど聞けない。そばにいたいのにいられない。矛盾する感情の中、透は藤島から離れられない自分に気付きます。
藤島が見ていたのは今の自分ではなく6年間の自分だったと知った透は、腹いせに藤島が大切にしていた二人の6年間の写真を捨ててしまいます。ショックを受けた藤島は家に帰らず…。
公園で藤島を見つけ追いかける透。逃げる藤島。透は藤島に守ってもらえなかった幼いあの日をやり直そうとしているように見えました。

そして、藤島が透をおいて帰ろうとしたとき、ついに透の本音が爆発します。「あと、あと…何をしたら、あんたは俺のそばにいるの」、「旅行に行くか」、「ケーキをつくってやろうか」。「あんたが好きな『6年間』のふりをしてやるって言ってんだよ」。泣きながら必死に告白する透が不器用でいじらしくて、胸がふるえて仕方ありませんでした。
藤島は幼い透も6年間の透も愛していたけれど、この瞬間、今の透も愛しく思ったのでしょうね。
不幸な出会いから始まり、離れようとしても離れられない二人の深い縁。それゆえの嵐のような悲劇を経てやっと訪れた救いに、言葉にできない感情が湧き上がります。カタルシスというのでしょうか。SLEEPもLIGHTも、このためにあったのだと思いました。この震えるような感情を味わいたくて、私は木原先生の作品を読むのを止められないのです。

透が藤島のことを「優しくて、温かくて、そして冷たい男」と表現したことに驚きました。タイトルのCOLDには、透から見た藤島のことも含まれていたようです。
その後の話、「LAST FEVER」で、二人が順番に熱(まさにCOLD FEVER)を出すエピソードが微笑ましいです。
透が6年間の自分と張り合うように、藤島の裸と自分たちの絡みあう姿を撮ったりするのも可愛いくて。

「同窓会」シリーズのカメラマン・谷口は、透と互いに刺激し合う良き友人になります。谷口の恋人・黒川も、谷口に半分嫌がられながらも二人の協力者として参入(笑)。
カラーの違う二組のカップルがリンクすることで物語の世界が広がったような気がします。世の中、いろいろな恋愛があり、いろいろな恋人たちがいるのですものね。

物語の最後には、透が藤島の好きな店のケーキを買って帰るエピソードが。ケーキは二人を甘く結ぶアイテムとして健在です。強がりながらも藤島を抱きしめることを止められない透は、とても幸せなのでしょう。あとがきの次のページ、初出一覧の上のイラストは、そんな二人なのかなと思いました。

6

記憶を失くした7年間の透、さようならということ。

前作、二作を読んで、藤島を好きな優しい記憶を失くした透が私は好きで好きで、透がいい子で切なくてなのに懸命に生きていて、痛い作品と言われていたけど、最終巻はどんなだろうと痛いとはこんな感じかなと、私は甘く見ていた。

「COLD FEVER」でまず最初に面食らったのだが、ページを開いた一発目から記憶を取り戻した透がいたのだ。

あの穏やかな優しいパティシエの才能豊かな藤島大好きな透がいないのだ。
読んでも読んでも現れない。
そこには正反対の暴力的な暗い目をした透がいるばかりだった。

どうしてこんなことに。
思わずこちらを読むのをやめて、「COLD LIGHT」を読み返してしまった。
何か読み落としているのかもしれない。
でもこの展開につながる情報なんて何もなくて、あきらめて「COLD FEVER」を読むと、記憶を取り戻した暴力的な透がいるばかりだった。

記憶を取り戻した透が言う。
「7年間の俺がいいんだろ」

暗い目をして叫んで苦しんでいた。

私はそして記憶を失くした透を諦めた。
永遠にさよならということだった。
それはそれはとても胸が痛みつらい気持ちになった。

藤島はこんな気持ちだったのかなと想像した。

記憶を取り戻した透が、7年間の透という存在に苦しめば苦しむほどに、記憶を取り戻した透から目が離せなくなっていく。

「一人は嫌だ」ともがいて泣き叫び苦しむ姿に涙が出た。

なんだよ、これ。
ホップ、ステップ、ジャンプのジャンプが飛び抜けている。
小説、前作二作を壮大な前フリにして高久透という男の苦しみ、もがきを描き切っている。

写真で成功して良かったね、生きてて良かったね。

「COLD HEART 」もCD化してほしい、そして透の声が聴きたい。

7

やはり痛い

「COLD SLEEP」「COLD LIGHT」に続く第三弾(ついに完結)
藤島の一番恐れていた展開。
透が過去の記憶を取り戻し、今度は記憶喪失だった6年間を忘れてしまいます。

このままでは終わらないと分かっていたものの、「COLD LIGHT」で二人が幸せに向かって進んでいただけに、何ともせつない。
日々繰り返される暴力も激しくていたたまれません。
あんなにも藤島を好いていた透がそのことを全く覚えていないなんて・・・。

そして、透の暴力にも文句ひとつ言わず耐え続けていた藤島が、記憶喪失だった6年間に取った幸せだった二人の写真を透に捨てられてしまった時の嘆きようは痛くてたまりませんでした。

壮絶な人生を歩んできた二人だけに元通りにはならないとしても、是非幸せになってほしい

5

私にとっては萌えではありません。

木原さん大好きです。木原さんが書かれる執着攻執着受が大好きです。
COLDシリーズの中で一番心が痛い巻です。
この最終巻は読んでいる途中からつらい、しんどい、苦しいと三重苦で「萌え」とは程遠い感情なのですが、時間が経つとまた読みたくなってしまう不思議な作品です。

COLD LIGHTでのラブラブから一気に急降下する空気で始まります。
透目線でお話が進んで行くのですが、暴行されたり、無理やり乱暴にされても、私には藤島の気持ちがすけて見えてしまって涙なしでは読めませんでした。
藤島が透の目を隠してセックスする描写がもう今思い出しても悲しくて苦しくて涙が出ます。
優しかった透のことが好きだったからこそ、6年幸せに二人で暮らしていたからこそ、同じ「透」だからこそ、藤島は透を見捨てる選択肢はないのだと思いました。
前作で「記憶が戻って今の自分がいなくなっても、藤島のことを好きだと自分で説得する」というような会話がありました。
藤島が無理やりされる度に、暴行されるたびに、その言葉が私の頭の中をよぎり藤島に感情移入してしまい涙も止まらず苦しい気持ちでいっぱいになりました。

最後に透は藤島に執着する形で、藤島はそれを受け入れる形で終わります。
すごく木原さん節が光るエンディングのような感じがします。
白黒はっきりした終わり方じゃないこの感じ。
ハッピーエンドというより、まさに「木原エンド」です。
読み終わった後、もやもやとしたものも残るけど、どこか暖かいようなそんな感覚です。

長々と失礼しました。

9

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