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この物語はトーマが自殺をすることから始まります。
誰からも愛されるアイドル的人間だったトーマ。そうして、トーマと同じ学校の優等生・ユーリの元に彼から遺書が届く。そこには「これがぼくの愛、これがぼくの心臓の音」と記されていた。
遺書の意味、トーマが死ぬことの意味、ユーリに遺書を送った意味。それが物語が進むにつれて明らかになっていきます。
ユーリは深い苦悩を抱えていますが、優等生であることがそれを増幅させています。自分が犯した罪の意識に苛まれること。誰にでも潜むはずの自分の二面性を認められないこと。別の二人の人間に惹かれていくこと。キリスト教の教えと自分の気持ちとの葛藤。
そして、物語の終盤になってユーリは自分の想いに気づきます。
この物語は段々強く首を絞められていき、最後には窒息してしまうようでした。愛とはこんなに深いものなのかと、こうまでして人を愛するものなのかと、それはまるで絶望のようでもありました。
魂を救済したトーマは天使のようです。神の遣いというか。自己犠牲も厭わずにユーリに気づかせようとした。
私はこの本をユーリと同じ年齢の時に読むことが出来ました。友達のお母さんが10代の頃に感銘を受けた作品の一つだということで、「ポーの一族」と共に貸してくれたのです。
その頃は、どうしてトーマが死ななければならなかったのか、頭では理解しても、辛くて納得ができませんでした。というかその点ばかりを見ていました。
この作品が漫画であることの意味はすごく大きいのではないでしょうか。私のような人間でも絵のついた流れによって答えをくれるのでわかりやすい。
読む年齢によって感じ方が変わってくる作品です。今、思春期を迎えている方はもちろん、大人の方でも、昔読んだことがある方も、響くものがあると思います。
この作品は私の中では別格です。「神+」でお願いします。