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作家さんの新作発表
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先日読んだ新刊が予想外に良かったので、旧作も読んでみることにしました。
(初単行本とのことです。)
前後編物1作と、短編4作で、コミックスの題名が付いた作品はありません。
失礼ながら、絵柄がこんなにも好みじゃないのに、お話はひねりが効いていてホント好きだわ。
【シークレット・バカンス 前後編】
詐欺の片棒を担いで、美人局のような生活を送っている男と、詐欺のターゲットにされたヤングエグゼクティブな男のおかしな関係のお話。
ミイラ取りがミイラになるお話は良くありますが、ただ単純にミイラになって終わりではなかったところがなかなか良かったです。
説得力としてはちょっと不足気味ですが、優秀だった男が美人局に転落した理由であったり、金持ちの慈善事業絡みの話が出てきたり、ひねりが効いているところがいいのだと思います。
【せつない片想い】
どうせ実らないと思っている相手に思い切って告白し、恋愛の何たるかを説かれて振られたのかと思いきや、何だあなたも好きだったんじゃないって言うお話。
もっともらしい理屈とそれを覆せるほどの情熱。当たって砕けて正解でしたね。
【お前がライバル!】
頑張っているのに、同姓の同僚には追いつけないジレンマと、当の彼に憧れている自分・・・ヘタレ受のお話かと思っていましたが、ただの単細胞くんだったみたいです。ちなみに、受攻ははっきり描かれていません。
【秘密】
学生時代から、今でも家族ぐるみの付き合いがある二人。
村田は色々ありながらも妻子を大切にし、あくまで友人づきあいを通そうとしています。
里谷は偽装結婚して、他に若い男の恋人がいて・・・
ある日事故を起こしたために村田に性癖がばれてしまうことになるのですが・・・
こういったお話の場合、お互いの気持ちに気付き、所謂当て馬である若い男が身を引いて、二人がくっついてめでたしめでたしになりやすいですが、これはそうじゃなかった!そこが良かったです。
二人の友情が無くなったわけでもなく、周囲の人たちも誰も不幸にならず、優しい気持ちだけが残る。いいお話だ。(あとがきは笑えますが。)
【最近の若者は】
37歳の喫茶店オーナーと、アルバイト店員のお話。
親子ほどの年の差があるものだから、若い子から積極的に迫られてもいまひとつ疑心暗鬼になってしまうオジサン。
不安な要素を見つけるたびに、最近の若者はわからないと思いつつ、そんな全てを可愛いと思えてしまうほどにほだされていくオジサンなのでした。
つい頷きながら読んでしまうという、オバサンとして共感を覚える作品でした。
で、私が好きなのは【秘密】と【最近の若者は】です。
ほんとにふとしたことで目について読んでみました。
絵も古いし語り口もうまいとは思えないのに、どこにたどり着くのかわからない展開が面白くて、ついつい続きが読みたくなってしまいました。
取り留めもない独り言のような言葉で、さらりと昔話のように紡がれるストーリーが面白い。それなりに世慣れた風でいてもどこかぎこちなく不器用な登場人物たちは、取るに足りない存在でしかない悲しみを抱えているように見えました。
現実をよくわかっているがゆえに現実逃避してしまうような、片足は地面について片足は宙に浮いているような感覚が逆にリアルで、不思議な感覚でした。
繰り返しになりますが、絵も語り口も決してうまくないんです。なのになんか読んでしまうんだよなー。
ほんとに不思議なんですが、面白いです。