条件付き送料無料あり!アニメイト特典付き商品も多数取扱中♪
wakusei
木原音瀬先生の独特な暗さと痛みが全編を支配し、
最初は主人公・ムラの思考のよって、
現実と非現実の境界が曖昧に感じられて、
読み進めるにつれて無慈悲な現実に引き込まれる展開。
「宇宙人」という設定のファンタジーではなく、
BLや恋愛ものでもないと思う。
(恋愛要素ががはっきりしていれば、間違いなく神作品)
生活が厳しい階級に生きているムラという社会の孤立者、
彼の深淵に潜む無自覚な絶望を容赦なく書き出して、
救いのないメリバのような結末が心臓に鋭く突き刺さる。
自分のことを「宇宙人」だと思い込む
中年のムラ(知的障害?精神年齢は子供のまま)が、
物事の多くを理解できないまま、
「宇宙」に帰った(=いなくなった)お父さんとお母さんを思い続け、
いつか自分も「宇宙」に帰れることを待つ。
ただ食べるためだけに土工の仕事をして、
金も体も騙されて、
物理的な飢えだけでなく、
さまざまな理由から体に痛みをも抱えている。
虚しい日常と無情な現実の中で、
彼が出会ったのは年下の芸術家・カンさん。
優しいカンさんのアパートで暮らすようになって、
カンさんが描いた宇宙の絵だけに惹かれるだけではなく、
次第にカンさんに依存していくムラ。
現実に対抗する術を持たないムラにとって、
カンさんは唯一の逃避先。
カンさんといると安心し、
必死に彼に縋りつく無助な感情の中で、
孤独と無力感が鮮烈で痛々しい。
垣間見えるカンさんの過去の恋が、
カンさんがラムに恋心を抱いているのだろう。
(コミコミスタジオ特典の書き下ろしSSカードは必見)
直面してしまう
大好きなお父さんの遺体の発見、
お母さんの知られざる一面
カンさんに拒否される現実・・・
崩壊しかけるラムの精神の苦しみに震えが止まらない。
社会の底辺で疎外感に苛まれて、
希望が見えても、絶望が絶え間なく、
それを払拭する力を持たないまま、
それでも生き続けるラム。
辛辣なリアリティが胸をえぐる作品でした。