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wakusei
すべて読み終えて、こちらの作品に惑星というタイトルをつけるセンスの良さにうなってしまう。
読み手を落ち着かなくさせ、感情にざわつきを与えてくれる木原音瀬先生の作品が好きです。
それはBL作でも一般文芸となる今作でも変わらずでした。
主人公となるのは、ホームレス生活と日雇い労働者を行ったり来たりしながら暮らしている42歳の男性・ムラ。
ただひたすらに彼の毎日が淡々と綴られているのだけれど、これがなんとも不思議な感覚にさせられるものなんですね。
わかりやすい作品ではないですし、内容的にも結末的にも好みは分かれるかなと思うのです。
すごく純粋で、時に幸せで、すごくやるせなくて、ちょっぴりあたたかくて、すごく残酷。
少年の心のまま時が止まってしまったようなムラの思考が読み手の頭に直接入り込んでくるものですから、彼が感じている恐怖や混乱、名前がつけられない安心感といった複雑な感情が押し寄せてきて、なんだこの読み心地は?とぐるぐるしてしまう。
彼のどこか幼い口調で語られる日々と過去は、一般的な感覚でいえば決して楽しいとはいえないことばかりでしょう。
ですが、純粋なまま時が止まっている彼の目線を通して見ると幸せにも思えることもあり…
どこからどう見ても孤独なのに孤独じゃない。
噛み合っていないのに噛み合っているようで、絶妙に噛み合っていない。
この激しいギャップとアンバランスさが好みでした。
気が付けば、自身を宇宙人だと信じているムラの惑星の中に私も入り込んでしまっていたのかもしれません。
遠いところで母と一緒に待っていて、いつか星から自分を迎えに来てくれるはずだった父親。
そして、カンさんと呼ばれる若き芸術家青年との出逢いと暮らしが平坦だったムラの心を徐々に波立たせていく。
独特な語り口に慣れるまではとっつきにくさを感じるかもしれませんが、ページをめくればめくるほどな作品だと思います。
あたたかさや安らぎに触れていたら、突然首筋に刃物を当てられるような展開も上手いですし、苦しいだけでも甘いだけでも終わらない不思議な余韻が残る作品です。
噛めば噛むほど味わいが増す、随所に木原節を感じる人生を描いた1冊でした。
淡い恋のようなもののその後を覗き見たい方はぜひコミコミさんで。
これは最初のページから辛い。お願いだからムラに平安をって願いながら読んでいく。
ムラは知能が低い故、自分を「宇宙人」だと思っている。だから「人間」のことがよくわからない。ただいい人と嫌な人がいる。それでも悪いことをしないように、怒られないように過ごしている。
曖昧な過去に理解できないことばかりで、騙されたり傷つけられたりしてきた。
カンと出会って一緒に暮らしていくうちに、やっと安心してすごして、このままふたりでゆったりとした中でやっていくのかと思っていたら、やっぱり木原先生。辛すぎる終わり方だった。
読んだほとんどの人にとってこの物語はバドエンであり、後味の悪いものだと思う。
でも、わからないから幸せなのか、わからないから不幸なのか。結末は想像することしかできない。きっとわかる側にいると思われるわたしには、ムラが物語で向かった先は不幸で死しかない。でもわからない側にいると思われるムラには、わからないままに身体が朽ちていく死はようやっと「ジブンの星」に帰れるから幸せなのかもしれない。
サイン会のお土産として「ジブンの星」という小冊子を頂いた。その中に書いてあるムラの想いは切ないけれどがんばっている。だから不幸じゃないといいなと泣きながら思った。
貧困・暴力・摂取・死。とても重くて辛いテーマでした。
木原先生、すごいな。
救済とか期待しないでください。
正直読んでてしんどいです。
そうやんな、そうなるわなの連続。
都合よくハッピーな展開なんてならんのよね。
でも、案外上手く生きられてるしムラさんの周りって親切な人多くない?なんて思えた。
この物語はムラさん視点でお話は進んでいく。ひらがなが多いし、口語体で頭の中で考えた事が垂れ流されているような描写に最初戸惑う。
でも、これが知的障害のある人の感覚なのではないだろうかと思えてしまう。日雇い人夫としてその日暮らししています。
ちょっと考えたらわかるやん、普通はそうやん。が通用しない。理解できないし、覚えられない、すぐに忘れてしまう。相手の言う事が理解できないなりに、常に怒られないかこの受け答えであっているかどうかをビクビクしながら暮らしてる。
めちゃくちゃ生きづらいだろうな。
去年ドラマ化された漫画、ざくざくろ先生の【初恋、ざらり】は軽度の知的障害と自閉症の女の子の生き方が描かれていた。そこでは、コンパニオンで派遣された先で悪い男に騙されてお金を掴まされて抱かれていた。そんな生活が嫌で、昼職について恋愛もしててこのお話にはしんどいけどあたたかい部分もあった。
今作のムラさんのお母さんもきっと知的障害者で隣に住む悪い男、きぃちゃんにたぶらかされてAV出演、シャブ中になってしまったんじゃないかな。
ムラさんは、守ってくれる、生き方を教えてくれる存在のお父さんが生きていた頃はよかったけど、お父さんが居なくなってからはしんど過ぎる人生だったろうな。忘れっぽいから生きていけたのかもしれない。
カンさん、よくもムラさんの事を癒し系程度の認識で一緒に暮らせたな。いくら好みのタイプの男でも限度があるでしょ。あっ、これはサポートが必要な人だってわかるはず。カンさんは、ボランティア精神ではなく、本当にムラさんといるのが心地よくて同居してたっぽいよな。
[猫を飼う事は、猫に安心できる場所を提供する代わりに癒しを一方的に求める。だからといって人間は猫を愛しても見返りは求められない]っていうような事を最後の方でカンさんがムラさんに話してるんだよね。
ムラさんは猫みたいな存在で
でも、恋人みたいな関係になりたかったんだろうな、カンさんは。
わからないことばっかりの毎日を最低限の生活で野良猫のように生きていくの本当にしんどそうだよ。
土工作業で日銭を稼ぐムラは自分のことを宇宙人だと思っていて、いつか父母のいるジブンの星に行くことを夢見ている。易しい言葉で穏やかに話してくれれば少し分かるが、早口だと分からない。大きな声も苦手、怒られる、怖い、と常に怯え、父親が教えてくれたことを守って正しく生きているものの、コミュニケーションが取れないので周囲の理解は得られず、騙されたり搾取されたり、でも人の優しさに触れることもある、そうした日々が描かれるお話です。
夢中になって読みました。まったく先が読めず、着地点はどこなのかと。
BLなら概ねハッピーエンドでしょうが、こちらは文芸。メリバも当然あるし中途半端に投げ出されることもあります。びくびくしながら最後のページを読んだときに、そうなのかー、と。すぐにコミコミ様のSSをすがるように読み、また、そうなのかー、となりました。
ムラさんの人生は非常に困難なものです。はっきり書いていないけれど発達障害? いつまでも親は生きていないからいつかはこのような日が来ますが、庇護なくして一人で生きるのは過酷だと思いながら見守っていました。
家もないし、土工の仕事もその場限りのものなので不安定。
物理的、精神的身体的なたくさんの困難、胸には溢れんばかりの思いを抱え、言葉に出来ずただため込むだけ。
そんな中でのカンさんとの出会いは、彼の人生を一瞬光らせた宝物のようだと思いました。
三和甘雨。なんて素敵な名前なのでしょう。カンさんは勿論ムラさんの来歴や抱えている何物も知りませんが、ムラさんの存在を親以外で丸ごと受け入れた初めての人でした。
たとえお家が裕福だとしても(そうは書かれていませんが)、アルバイト生活をしているカンさんが、2人分の生活をそれほど長い間養えるとも思えないので、ずっと二人のやさしい暮らしが続くわけでもないとは思いながらも、突然の破綻はショックでした。
仕方ないことです。カンさん、20代後半~30歳くらいなのかな。42歳の、一人では出来ることが限られる、謎な部分の多い成人男子を、丸ごと抱えるのは難しい。実親だって丸抱えしかねると思うのに。ましてや二人の間には明確な関係性がありません。成り行きとはいえ家に連れて帰ったことだけでも相当なハードルです。出会って連れて帰った怪我した野良猫を洗って餌をあげて手当して、放り出せなくて一緒に暮らすうちに猫がなついて自分も癒やされて、といった感じなのかなと。猫じゃなくて人間ですが。
いろいろあったけれど結局、ムラさんにとっては、ジブンの星に行くことが一番の幸せなのでしょう。最後の最後、お母さんのいいつけを破り、お父さんの言いつけを破りました。そうなればもう、このあとの転落が見えてきます。
でも頭がお花畑な私は、いつか北の海に写生旅行に行ったカンさんが、偶然ムラさんを見つけるお話を妄想し、自分を慰めるばかりです。
42歳のムラさんが主人公のお話。
今風に言うと生きずらさを抱え、福祉とかそういったものに頼ることも分からず、ギリギリのところで生きている人物。
いい人なのですが、そのせいで、色々と割に合わない思いをしているのもまた、現実。
そんな日常のなかで、ムラにとって父のような存在――芸術家のカンさんが現れるのですが、、、
カンさんとの同居生活。
辛く苦しい生活が、カンさんと出逢ったことで変化していくのですが、大幅にすれ違う違和感がいったいどこでカタチとなって外へ表出されるのだろうもいう不安感が、終始ついてまわった作品でした。
で、衝撃的なラスト。
く、苦しすぎました。
救いようのないエンディングは、おそらくこの先ずっとムラについてまわるもの。
安易にハピエンにさせなかったこと。
かえって、木原先生の凄さ(語彙力皆無ですみません!)をそこに見たような気がしました。
今、こちらの作品を読もうかどうしようか。
悩んでいる方がいらっしゃったら、ぜひここで肩をソッと押したい。
ひとりでも多くの方に読んでいただきたい。
そんな作品でした。
惑星っていうタイトルもまた、読了後に意味を考え始めると深いです。
木原音瀬先生の独特な暗さと痛みが全編を支配し、
最初は主人公・ムラの思考のよって、
現実と非現実の境界が曖昧に感じられて、
読み進めるにつれて無慈悲な現実に引き込まれる展開。
「宇宙人」という設定のファンタジーではなく、
BLや恋愛ものでもないと思う。
(恋愛要素ががはっきりしていれば、間違いなく神作品)
生活が厳しい階級に生きているムラという社会の孤立者、
彼の深淵に潜む無自覚な絶望を容赦なく書き出して、
救いのないメリバのような結末が心臓に鋭く突き刺さる。
自分のことを「宇宙人」だと思い込む
中年のムラ(知的障害?精神年齢は子供のまま)が、
物事の多くを理解できないまま、
「宇宙」に帰った(=いなくなった)お父さんとお母さんを思い続け、
いつか自分も「宇宙」に帰れることを待つ。
ただ食べるためだけに土工の仕事をして、
金も体も騙されて、
物理的な飢えだけでなく、
さまざまな理由から体に痛みをも抱えている。
虚しい日常と無情な現実の中で、
彼が出会ったのは年下の芸術家・カンさん。
優しいカンさんのアパートで暮らすようになって、
カンさんが描いた宇宙の絵だけに惹かれるだけではなく、
次第にカンさんに依存していくムラ。
現実に対抗する術を持たないムラにとって、
カンさんは唯一の逃避先。
カンさんといると安心し、
必死に彼に縋りつく無助な感情の中で、
孤独と無力感が鮮烈で痛々しい。
垣間見えるカンさんの過去の恋が、
カンさんがムラに恋心を抱いているのだろう。
(コミコミスタジオ特典の書き下ろしSSカードは必見)
直面してしまう
大好きなお父さんの遺体の発見、
お母さんの知られざる一面
カンさんに拒否される現実・・・
崩壊しかけるムラの精神の苦しみに震えが止まらない。
社会の底辺で疎外感に苛まれて、
希望が見えても、絶望が絶え間なく、
それを払拭する力を持たないまま、
それでも生き続けるムラ。
辛辣なリアリティが胸をえぐる作品でした。