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PLEASE-プリーズシリーズについては、リブレの新装版でレビュー済みなので、ここにしか収録されていない(はず)「海の鳥篭、空のドア」についてレビューします。
海に面した田舎町が舞台のお話で、私は好き。
母を亡くし、とある事情で父親と一緒に引っ越してきた転校生・竜が主人公。
この竜が抱えている秘密がとにかく重い。
そしてそれが理由でクラスメイトとも馴染めず浮いてしまっている。
時折、海岸に座っては海をぼーっと眺めている竜。
そんなある日、いつものように海を眺めていたところ、近づいてきた犬がきっかけで飼い主のステファンと知り合います。
ステファンは外国人ということで、そして竜は何やら秘密を抱えた転校生ということで、人々から好奇の視線を寄せられている。
彼らは、海に面した狭い鳥籠のような田舎町における異端児なんですね。
そしてついに竜が恐れていたことが起きます。
実は、竜は一年前ケンカに巻き込まれた結果、人を誤って刺し殺してしまった事があり、それをどこからか聞きつけた同級生によってあっという間に噂が広まってしまうんです。
以前の学校もそれが原因で退学させられ、海辺の高校へ転校してきたのに、またしても追放されるはめに……。
それを知ったステファンが一緒にアメリカに来ないか?と誘い、心揺れる竜。
正当防衛だと判断されたとはいえ、あまりにも重い十字架を背負っている竜。
そんな彼を支えている父親の愛に気づくことにより、日本に踏みとどまるというところが良かった。
仕方がないとはいえ、一人の命をこの手で殺めてしまったという重さから逃げることなくきちんと描かれています。
一人アメリカに帰ったステファンとのその後については描かれていないけれど、あれこれ想像の余地のある終わり方で私は好き。
「海の鳥篭、空のドア」というタイトルもいい。
「どんなことがあっても、リュウの味方だよ」と言ってくれた人と出会えたということは、「自分が死ねば良かった」と言う竜の何よりの支えだと思うんですよね。
そして、それがすぐにステファンへの愛には繋がらないとしても、まずは竜が自分自身を愛するきっかけになると思うんです。
遠く離れた空の下に、そう言ってくれた人がいる。
未来へ繋がるかのようなタイトルが好きです。