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作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます
地味目なお話ですよ。でも何故か心を掴んで離れない「何か」があって、故に「神」評価です。
主人公は、伊藤晴也。
学生時代に大きな文学賞を取ったけれどプレッシャーからスランプに陥って小説が書けず、今は雑誌記事を主に書いている。
晴也はゲイで、大学からの友人で担当編集者の八木沢とセフレ関係。
ある日、海辺で少年・マキ(17才)を拾う。
マキは人に触られるのがダメで、手を洗いすぎる強迫神経症の不安定な子。
でも何故か晴也に懐き、晴也も下心ありきで何かと面倒を見てあげる。そんなはじまり。
ふたりの距離が段々縮まって、晴也のインスピレーション源になっていく感じ、それに気付く八木沢の心の内、不安定さから脱していくマキがとても繊細に描かれています。
後半、八木沢がある行動を取り、結果晴也とマキが最後まで結ばれます。そこで晴也は自分の逃げの姿勢が自分も八木沢も追い詰めていた事に気付き、創作面でも八木沢との関係も一皮剥ける。
…1年後、すっかり明るく年相応になったマキの姿。
晴也はいつかマキが自分から離れるかもしれない、と感じている。
そして描き下ろしの「もうひとつの空」はまたそこから3年後、マキは21才の大学生で晴也と同居しています。
でもマキはまたこの幸せが手から滑り落ちるのではないか、と不安を抱いて悪夢を見たり。
多分2人は別れないとは思う。でもお互いそんな気持ちを心に抱いている、という設定が何だかすごく…いいんですよね。ここのリアルさが「神」なのかな。
本作は、「甘やかな棘」「愛さない男」「バニラ・スター」と続く4連作の1作目となっています。
東京から車で一時間半、海辺の田舎町にある一軒家で一人暮らす作家の伊藤晴也。編集担当の八木沢とは大学時代からお互い慰め合う仲で、恋人ではないが地味に十年続いている関係だった。小説が書けず「ライターズ・ブロック」に陥っていた伊藤は、ある日海岸で真希という若い男と出会う。この少年との出会いが彼を変えていく…
『バニラ・スター』で終結するオムニバス第一作目。やっぱり切ないです。登場する人物が数珠繋ぎで次の物語の主人公になっていき、『手をつないで、空を』→『甘やかな棘』→『愛さない男』→『バニラ・スター』と続きます。
このお話では伊藤と真希が互いにかけがえのない存在となっていくまでが描かれているのですが、わたしは最初っから当て馬的八木沢にロックオンしていて、終始八木沢視点で読んでいたものだから切なくって切なくって…。苦しみを抱えていた青臭い真希が救われていくのは大変喜ばしいんだけれど、あんまりにも八木沢が可哀想過ぎだよぉ!!
…と思って読み終えたわけですが、八木沢推しゆえの行き場のない個人的な思いが、次の『甘やかな棘』で見事に昇華されるのでした。さてさて次は八木沢さんご本人の物語です。
手をつないで空を→甘い棘→愛さない男→バニラスターと続くシリーズものの一作目なのですが、シリーズものと知らずに読む順番を前後していました。
ストーリー自体はどれから読んでも単独で読めますが、登場人物がリンクしています。基本的にフラれるキャラがいて、その人が次の主人公というシリーズです。
関東の田舎に隠居しながら執筆活動をするスランプ中の小説家・晴也。わけありな高校生・真希を拾い面倒をみているうちに、真希の複雑な家庭背景を知っていきます。
真希は育児放棄を受けていて栄養失調症で学校も休んでいる。
面倒をみてあげたいという気持ちから恋へ発展していくという、お話としては王道を行く歳の差ラブストーリーだと思います。
次の作品が書けないスランプに苦しむ晴也も何かを探していて、真希に手を伸ばしながらも自分にたりないものを補っていく様子が丁寧に描かれています。ちょっと重くもありますが、あたたかいお話です。
真希の境遇は悲惨なのですが、何というか・・・これが宮本さんの初読みの作品ならよかったのですが、何冊か読むとこの作者さんの描く受け側の性格が似たタイプが多い事に気がつきちょっとデジャウを感じてしまう。
俯きがちでマイノリティに悩み、どこかふわふわしていて流されやすい、けと吹っ切れた後は非常に子供っぽい屈託のなさ。
このキャラ前もいたような・・・という既視感が少し真新しさの邪魔をしている気がしました^^;
それと、当て馬役である八木沢の、晴也への執着がよくわからなかったです。わからないまま、晴也と真希の邪魔をする憎まれ役となってしまい、それがなんだかしっくりこなかった。
この次の八木沢が主人公のお話も読みたいと思いました。
宮本佳野作品の中ではそう目立った位置にはないように思われた本作だったが、今般作品集に収録されたとのことで、この作品のファンとしては密かに喜んでいたところだった。
小説家崩れのくたびれオヤジである晴也と、荒れた家庭環境のために潔癖症になってしまった高校生・真希。
この世捨て人のような2人が、互いに寄り添い労わりあう様子は、地味だがとても温かい。
派手さはないので好みは分かれるだろうが、たまにはじんわりと染み入るようなお話も悪くないかと思う。
初めはぎこちないふたりの関係が、次第に深まり変化してゆく中、一番目に見えて変わってゆくのは真希。
もちろん彼が重い問題を抱えていたからではあるが、最初と最後では顔つきが全く違う。
物語を追ってゆく過程で、読者もきっとそんな真希の様子に感情移入してしまうことだろう。
私は逆に所謂オヤジである晴也が、ついつい真希に世話を焼いてしまう部分に共感してしまった。
ちょっと世話焼きオバサン的なところがあるよね、晴也(´∀`*)
ちなみに晴也の担当編集者である八木沢だが、「甘やかな棘」では主役である。
シリーズ(と勝手に思っている)を通して読むと、ただの嫌な奴に見えた八木沢の別な一面が垣間見られ、彼の抱える大きな闇に胸が痛くなってしまうだろう。
そういう意味でも是非2冊続けて読んでいただきたい。
また先日新装版で発売された作品集には、そんな彼ら4人の後日談が書き下ろしで収録されている。
これも必見である。
海の近くの古い家という舞台設定も、このストーリーの透明さを際立たたせている。
天気のいい静かな午後に読んでみて欲しい作品である。