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kyuuketsuki to yukai na nakamatachi bitterness of youth
進展がなく気になっていた吸血鬼と愉快な仲間たちシリーズ。
久しぶりに世界観に触れることができるということで手に取りました。
が、どこかで読んだような。
そうです、旧版の5巻に掲載されていた番外編と同じでした。
それに、書き下ろしのSSが追加されています。
SSは、暁の留学時代のお話。
なるほど、そんな経緯だったのねという、ひとコマが描かれています。
そりゃ、そうでもないと暁からは連絡取らないよね。
本編は、比べてみると若干、修正が入っていました。
細かい部分ですが。
気になるところで終わっている本作。
早く続きが読みたいです。
気長に待つしかないのでしょうか。
これ、Holly Novelsから集英社に移り、非BLという扱いにかわったのですね。
5巻のあとがきには、2人の関係を進展させる予定とありましたが、非BLとなったことで、2人の進展はないのでしょうか。。。残念
アルをアメリカに置いて帰国した暁の元にエンバーミング依頼の遺体が届けられ、その人物は暁に馴染みのある人物で…ってところからの回想。
こんな事があったから暁が頑なで1人で強く生きていく人物に成長せざるを得なかったのがわかった。何処にでもありそうで実際に自分の周りでも起きてたかもしれない出来事。嫉妬や後ろめたさ、誤魔化しや自己欺瞞…。正しく有りたいと思うほど、人の狡さや身勝手さが許せなかったりやるせなかったりする。
一見いい人、優しい人で心を許して好きになった相手に裏切られたり、利用されたりしたらそりゃもう傷付きたくなくて簡単に心開かないように信じない様にしてしまうわ。
本当にしんどいお話でした。シリーズ中1番しんどかった。その中でも救いがあるのが、リチャード周りの人達と女装のイングリットと同居人由起奈、留学先で仲良くなったパット。
暁を尊重しながら愛情や友情を与えてくれて、時には金銭的に助けてくれる存在。
100%心を許してしまって裏切られたくないからと節度を持った付き合いをしがちな暁だけど、アラサーになった今はもう分かってるんじゃないかな?信用していい人物だって。
同じ施設にいた海斗が遺体を引き取りに来た時の園長を嫌っている態度を見て過去の自分を見ているようで幼く感じた暁。自分はもう過去は気にしないってステージに立ってるってのなら、海斗の園長への気持ちを聞いてあげてもよかったのにって思ってしまうのは、綺麗事なんかな?
シリーズで1番感情が揺さぶられました。
「吸血鬼と愉快な仲間たち」のスピンオフ。暁の子供時代の話。本編前日譚。
暁がどうしてあんなに頑ななのか、極端に自己完結型なのか、蝙蝠を好きなのか、高校時代にゲイビに出たのか、エンバーマーになったのか、すべての裏打ちが詰まっていました。いちいちなるほどと思わせられます。
高校時代の話も出てきますが、忽滑谷は登場しません。忽滑谷との関係性は別途語られるのでしょうか。忽滑谷は暁が蝙蝠を好きなことを知っていたのだから、やはり他の人達とは関わり方がだいぶ異なると想像します。
それはさておき、苦労ばかりの壮絶な半生で、これからの暁の人生がすべていいことで埋め尽くされるように祈ります。
こんなに小さいうちから、物わかりのよい子供でいなければならなかった。自身に向けられる好意に疑念をもち、あらゆる関係性を拒否せざるを得なかった。子供は無力だとつくづく思いました。
特に最初の家族については、本当に残酷でした。なまじ叔母さんが暁に優しく接していただけに、それが逆に作用した結果になってしまいました。叔母さんの言動にも端々に布石があります。甥なのだと訂正したり、年末に暁を家に置いて行ったり(暴力が続いていると絶対に気付いているはず)。
ただ、施設の方は、諫早視点の語りを知りたくもありました。リチャードからの送金を暁に内緒で施設運営に回していたのはおそらく事実であろうと思います。でもリチャード側に、嘘を言って暁を会わせなかったり(お葬式で渡米するのは別なのか)、プレゼントを渡さなかったり、(おそらく暁が最初に英語で書いた手紙も転送してないと思う) そうしたことも全部悪意ゆえなのか。理由がどうあれ悪行に変わりは無いですが、知りたくはありました。
再会した海斗が諫早をあしざまに言うのは、おそらく海斗も暁と同じような気持ちを味わっていたからなのだろうと想像します。
諫早の述懐で、父の後継ということがあったので、その辺りの鬱積なども知りたいと思いました。
こうして暁のこれまでの人生に触れると、否応なしにアルのことを想起します。
考えてみると、アルは暁の心を苛立たせるのと同時に、欠けているところ、敢えて欠けたままにしているところを埋めたり引っかけたりして、爪痕を残しているのだと気付きます。
なりが蝙蝠であること、愛してると何度も伝えること、「ママのだっこ」と言って抱きかかえたこと、ほかにもたくさん。
これまで様々な人の好意を叩き落としてきた暁が、自分にとってこんなに大きな存在になってしまったアルを、そのままにしておけるはずがなかったのでした。
手の込んだ、ものすごい嘘をついてまでアルを遠い地に置き去りにした理由も読み解けました。
そう、暁は、大人の嘘に振り回され、嘘を吐くことを嫌悪しているのに、自分も盛大に嘘を吐くのです。
諫早はじめ施設の人達にも、イングリットにも、リチャードや真人にも。
後天的なものだと理解しましたが、その辺りのことも今後の展開で変わっていくでしょうか。
新装版5作目…ではなく、番外編となります。
旧版5巻に収録されていた、暁にフォーカスをあてた番外編作品と、暁がアメリカでエンバーミング技術を学び始めた頃の書き下ろし短編「友達とライスボール」が収録されています。
やはり4巻があの展開だったものですから、どうしても続きが読みたい!と思ってしまいそうなところですが…
久しぶりに読んだこちらのなくてはならない番外編に、またしても見事に感情を引っ掻きまわされ、すぐには言葉が出ない読後感でいっぱいになっています。
綺麗なところも汚いところも含めて、木原先生は人間の生々しさを描くのが本当に上手い作家さんですよね。
だから私は木原先生作品を追いかけたくなるのかもしれません。
最後のページまで読み終えたあと、1巻から読み返せばまた違った世界がきっと見えてくるはず。
何度も読んでいるはずなのにもう1度読み返したくなってしまいました。
今作はなんといっても、高塚暁という人を知る上では欠かせない1冊でしょう。
今までの吸血鬼シリーズは、書き下ろし短編を除けば全てがアル視点なのです。
なので、読者には「アルの目を通して見た暁」の情報のみが与えられていて、その他の彼の背景に関しては想像をするしかなかった。
今作では、そんな彼の謎めいていた過去が暁視点でじっくりと解き明かされていきます。
エンバーマーの暁の元に、よく知った1人のご遺体が現れるところから始まる物語。
暁のこれまでの歩みが痛いほどにわかる、非常に濃厚でずっしりとした重みと読み応えのあるお話です。
なんだかもう言葉にならないんですよ。苦しくて。
でも、どうしようもないほどに心が揺さぶられる。
これ以上ないほどに、暁という人がどんなものを見て感じて生きて現在の暁が形成されていったのかが理解できてしまうんです。
なぜ、他人を寄せ付けたがらないのか?
なぜ、嘘が嫌いなのか?
なぜ、エンバーマーを志したのか?
なぜ、蝙蝠が好きなのか?
なぜ、生きている人間を愛せないのか?
そして、なぜあれほどまでに愛情深く優しいのか。
暁に対して感じていた「なぜ」の全てがここにありました。
1人の人間に奥行きを持たせ、どんどん立体的に浮き上がらせていく繊細で複雑な心理描写と、生きた人間の誰しもが持つ残酷な部分が容赦なく切りつけて襲いかかってくる恐怖。
隠れていて見えない、もしくは見ようとはしていないだけで、身近にあるかもしれない残酷な側面ばかりが描かれています。
なぜ大人は嘘をつくのか。たった一言がとても重く苦しい。
イグリットの真理をついた言葉がじくじくと胸に刺さりました。
暁の過去を知れば知るほど、丸腰で嘘のない感情を真っ直ぐに暁へと投げてくるアルは、もしかしなくても本当に特別な存在なのだろうなと思えてなりません。
最初から最後までどっぷりと没頭して読ませてくれる1冊でした。
5巻の前にこちらの番外編を挟んだということは、ずっと待っていた旧版5巻よりも先が読めると期待をしていいのかな。
叶うことなら彼らのこの先を最後まで見届けたいです。