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yuyami wo futari
1冊すべて表題作の長編です。近石(受け)の視点でストーリーは進みます。
近石は高校で好きになった長尾(攻め)と大学時代から付き合い始めます。それから五年、近石は長尾の冷たい態度に不安を感じて…という話です。
サブキャラとして近石の後輩・遠野とその彼氏・谷垣というもう一組のカップルが登場しますが、主役達を脇においてという程でなく良い感じのスパイスになっています。
火崎先生があとがきで書かれていますように、近石の目線なんですが、長尾が近石に優しくできないけれど大好きだというのが透けて感じられるので安心して読めます。近石は好きなのは自分だけかもと落ち込んでいましたが、実は片思いだと思っていたのは長尾の方だったというオチが楽しかったです。
傲慢で自分勝手なようですが実は一途という長尾を私は「人でなし」に思いませんでした。ファスナーを口で開けてというエッチの描写も素敵でした!
ただ、近石が谷垣と一緒にいるのを見て帰る場面、遠野との関係を誤解しているのに今度は違う男で不思議に思わないのかとも感じたのですが、近石が好きすぎて誰も彼も嫉妬してしまうと考えると納得できました。
火崎先生の作品はどこかで何かひとつ隠し玉を入れてるように感じるのですが、今回は近石が長尾に一度も告げていない言葉のようです。私には予想外でした。するりと読みやすく、それでいてストーリーに虚をつく部分が入っているというので大好きな先生です。
あとがきの後に実相寺紫子先生のラフ画と、それに対して二人の先生のコメントがあります。表紙や口絵カラーへの書き込みもありますし、見ごたえがあると思いました。
冷たいけれど実は受けが大好きな攻め、自分を卑下する美人の受け、社会人カップル、両想いなのにすれ違う設定がお好きな方にお勧めの作品だと思います。
言葉よりも行動、強引だけど実は臆病(?)な攻・長尾と、言葉も行動も控えめで尽しますタイプな受・近石。
始まりは長尾の行動からでしたが、「好き」という気持ちは近石の方が先。
けれどその気持ちを言葉にしなかったことから、5年間も付き合っていながら、すれ違ったり誤解したり、疑心暗鬼になって傷ついたり。
どちらの「好き」が強いかなと考えたら、私は攻・長尾の方じゃないかなぁ…と思います。
本当は近石に嫌われているんじゃないか(カラダの関係はあっても「好き」って言われてないし)。
好きな男が出来たのなら、解放してやらなければ(でも未練たらたら)。
突き放したのに、思い切れなくて近石をたずねて行ってしまう(だけどつい辛く当たってしまって自己嫌悪)。
受・近石が悩んでキリキリしている姿も好きですが、攻・長尾が近石のうかがい知らぬ所で健気(笑)な努力をしていたのには…いやあ、カワイイ攻です。
行動力のある攻は、たいてい気持ちも言葉も強くて、ハッキリしているものなのですが、長尾は気持ちも言葉も弱い…というか、臆病で格好つけ。
お互いに臆病で言葉が足りないカップルの場合、片方が行動派でもう片方がじっくり待つ派と正反対だと、こんな展開になるんですね。
一見、亭主関白に見えて、実は尻に敷かれている馬鹿カップルでした。
強引な寡黙攻・長尾×包容力抜群な健気受け・近石
強引めなHあり、ラブラブの見応えがあるHもあります。
高校生の頃からのつきあいで大学も一緒で、社会人になっても関係が続いている。
つきあいはじめて、5年。最近、忙しい長尾は部屋に夜に現れて抱くだけ抱いて、背中を向けてすぐ帰っていく。
好きだから関係を続けていたけれど、自分が都合がいい存在だったから?
同じく男の恋人を持っている後輩の様子を聞くと、自分達とはあまりに違って楽しそうで、比べずにはいられない。
たまたま、部屋に後輩がいた時に、長尾が来て浮気を疑われて、あっさりと別れる羽目に。
とにかくお互いの言葉が足りなくて、長尾は長尾で誤解を重ねるようなことをするしで、泥沼です。
普段の仕事はしっかりやっていて後輩の面倒見もいい大人の近石が、ぼろぼろと涙を流しながら赤裸々に告白するシーンがとても綺麗でした。
泣き虫とか甘えた様子が一切ない人だからこそ、胸に迫るものがあって、長尾がおろおろとしている姿に笑っちゃいました。
その後の長尾が色っぽくてカワイクて、前半の切ない感があっただけにたまらなかったです。
切ない展開に耐えに耐えて最後はラブラブにという王道展開に、してやられました。
非売品小冊子は、『パンドラの箱』
長尾視点で書かれていて、どれだけ長尾が近石を好きなのかがよくわかる話でした。
近石は、どんな長尾であっても好きということがわかるイラストも1ページありました。