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minazoko no tsuki
目の色を隠すため、生まれて一度も遊郭の外に出たことがない深月。
昼間は部屋の外に出ることもできない。
男でありながら遊女として暮らしていた。
遊郭モノですが、遊郭で仕事するシーンは少ないです。
異国から来た船長・コンラートは商館長に接待として用意される遊女の相手に面倒を感じていて、「男を呼べ」と言ったら流石に誰も呼ばなくなるだろうと思った。
そこで呼ばれた深月は、コンラートの興味を惹く存在で、一夜を共にします。
一度きりだと思ったのにまた呼ばれ、島に渡り、客であるコンラートの家でしばらく過ごす事になる。
自分の寝床が無くて文句も言わず腰掛けで寝る深月をベッドに連れて行ったり、序盤からだいぶ優しかったですね。
いつかコンラートは異国に帰る事がわかっている。もしかしたら妻子がいるかもしれない。
異国に帰るまででいいから一緒にいたい…という深月がとても健気です。
楼主に呼ばれ、島から戻った深月はとてもいい条件の身請け話を聞くが、
コンラートに会えなくなるからと断ってしまい、楼主の怒らせ他の見世に売られる事になってしまう。
そんな事態になってもその事をコンラートには話さず、自分の気持ちを抑える深月だけどコンラートはその事を知っていて…
深月を島に行かせるのを渋り始めた楼主を脅して寄越させていたとか、最後に深月を連れて行く方法とかコンラートの決断力や性格がハッキリしていて良かった。
深月がコンラートに気持ちを伝えてから、泣いても嫌がっても絶対に連れて行くと言ったり。
こういう閉じ込められた受けが外から来た攻めに連れて行かれる話、好きです。
男の深月が遊女として働く設定に無理がない所も良かったです。
今まで読んだ健気受で1位、2位を争うくらいに健気でした。
商談が終われば自国に帰ってしまう攻め様と天涯孤独で生まれ持った容姿の所為で隠れるように生きて行かなければ行けない受け様。
受け様の祖母、そして母親も遊女でした。受け様の容姿は母親側の先祖還りのようですが、そういう事が珍しい為に、母親は身請けをしてくれるはずだったの受け様の父親に捨てられて、遊女として一生を終えます。
そして、受け様。生まれが生まれなのでそのまま母親がいた遊郭にお世話になるのですが、容姿のせいで引きこもった生活を強いられます。自分がどういう存在なのかを分かっている受け様は文句を言わず従順に小さな世界で数人とだけ関わる人生を送っていました。
そして、攻め様の気まぐれで呼ばれた受け様。攻め様と一緒に居る事で世界が広がります。そして、自分にやさしく、世界を広げてくれる攻め様に自然と恋をします。
でも、攻め様はいずれここから去ってしまう人。この恋は成就しないと知っている受け様は、ただ彼が出立する時に近くで安全を祈れればよいとよい条件を身請けを断ってしまいます。そして、それを断ったが為に、その先に待っているのは使い捨てのような底辺の陰間茶屋へ移される運命。
名前も姿も忘れられても、そんな事があったと攻め様の思い出の一部になれれば十分という受け様。そんな自分の運命を攻め様に告白することなく、綺麗に身を引こうとするんです。
健気すぎです。
彼らの先にあるものが幸せかどうかは分かりません。でも、他人の都合や願いを優先せずに”自分がそうしたいから”で出した決断ですから、この先待っているの運命にしっかり立ち向かえるのではないかと思います。
ある秘密を守るために遊郭で女郎として小さいころから外に出されずに育てられた少年の話。
受けの深月が陰間ではなく女郎の格好をしているには訳があるのですが、ここが大きな好みの別れどころですよね、男同士の恋愛小説を読んでいるのに、相手が女装していると男同士の話では無くなってしまう…実際、ストーリー設定を鑑みるとこのお話は特に深月が男で無くても十分成り立つお話でもあるのです。
だからといって深月を完全に女性としてみると、後々今回深月の相手役であるコンラートの「本当の自分として生きたくないか?」というようないくつかの台詞が生きてこなくなってしまうと思うのですよね。
この話が好きか嫌いのどちらだと二者択一の選択を迫られたら高坂は迷わず「好き」だと答えます。どこに萌えを感じるかは人それぞれなので、こういう物語はあまり細かいことを考えていると読めなくなってしまいますからあまり細かく考えず物語自体を純粋に楽しむのが一番いいのかもしれませんね。
父親が誰かわからずに生まれ、身寄りが全く無かった彼が出生どころか性別すらも偽らなければならなかった時代背景と、全てをあきらめなければ生きてこれなかった深月が初めて乞うた者、それが本来なら絶対手の届かない相手である人物だった……だからこそ生まれてくるもどかしいまでの切なさや哀しさなのだと思うのです。
深月は深月だからこそ、コンラートの目に止まった…誰でも良かったわけじゃないのです。
ラストの方ではそんな彼の行く末がどうなることかとやきもきさせられました。だってあまりにも深月が欲が無いんだもの。
深月は本当に耐える人でその決心というか、自分の気持ちよりも今まで自分に目をかけてくれた人たちの立場や考えを優先させようとする一途さみたいなものとでもいいましょうか、それが並大抵じゃないのですよね。
そのくせ自分の境遇を悲観するでもなく前を見て歩けるような強い一面も持ち合わせていて、読んでいて何度か涙が出そうになりました。
生まれてからコンラートに見初められるまで長い間ずっと、幸薄い境遇に身をおかなければならなかった深月。
これからは本当の自分の姿で今までの分以上の幸せな生活を異国の地で送ってほしいです。
遊郭以外の世界を知らない深月。
楼主の言いなりでいるのかと思えば、なかなか芯はしっかりとしています。
いくら周りが諦めろと言わんばかりに「いつかは国へ帰る人だ。国には妻や子供がいるかもしれない」と言い続けても、好きでいることを止めなかったし、身請け話を断ったため別の店に売られることが決まっても、それを受け入れコンラートの傍にいることを選んだし。
綺麗なだけの人物とは、ちょっと違いました。
そんなところに、コンラートは惹かれたのかもしれません。
好きになってしまったけれど、コンラートとの身分差がネックとなって、ひとりグルグルと考え、身を引こうとした深月には、ホント泣かされました。
コンラートがいつかは国へ帰ってしまう、国には家族を残しているかもしれない……とわかってはいても、島を離れるまでは傍にいたいと、心から願っているんです。
自分のことは後回しにして。
島を離れる前にもう一度呼ぶと、コンラートが約束してくれたことを健気に信じて待つんです。
が、コンラートが島を離れる直前、別の遊女を呼んだりしているから「きゃ~、このまま別れちゃうの? 深月は捨てられるの?」とやきもきしましたが、ちゃんとハッピーエンドになれて、ホッとしました。
後はふたりの努力ですね。
特殊な生まれのせいで、男でありながら遊女として暮らす深月。
閉ざされた世界の中ですべてを受け入れてきた深月は、ある日楼主の命令で異国に向けて開かれた「島」へ渡ることになる。
そこで出会ったのは異国船の船長、コンラート。
外の世界の匂いのする男に惹かれていく深月だったが……
遊郭モノ。正直遊郭モノはあまり得意ではなかったんだけど、これは好きでした。
遊女の息子として生まれた主人公の深月には少しだけ外国の血が入っていて、人とは違う青い瞳をしている。そのせいでまっとうに暮らすことはできなくて……という。少年が遊女として働かなければなかったことに一応の理由付けがあるので安心して読める。
深月がコンラートに惹かれていく過程と、二人の間にある障害の大きさが切ないです。
見たこともない外の世界にあふれている綺麗なものや素敵なもの。
今だけだからという想いは儚くて美しい。
お話としてはバッドエンドの方がきれいなのかもしれないけれど、いいんです。