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boku ha kimi no otouto to koi wo suru
タイトルそのまんまのストーリーです。
「僕は君の弟と恋をする」
・「僕」は、主人公の敦也
・「君」は、敦也の親友・啓
・「弟」は、啓の弟・武
タイトルで既に物語の結末が分かるんですが、この結末に至るまでの敦也の心のトラウマが何とも切ないし痛いです。結末より、武と結ばれていく過程が大きな見どころです。
設定は三角関係になるでしょうか。厳密には違いますが…
というのは、武の兄で敦也の親友である啓は亡くなっているからです。しかも敦也をかばって命を落としました。それがきっかけで敦也は自分を戒めるように、誰とも馴れ合わず独りでひっそりと懺悔をしながら日々を過ごしています。
そんなとき、霊園で啓の弟の武と出会います。武は会いたかったと、これからも会いたいと敦也に言うけど、敦也は拒否。でも武の押しの強さに負けて何度か会うことになります。
というのは、敦也は昔から武に恋をしていたからです。武のことを好きだけど、大事な家族を奪った罪悪感から敦也は会いたくない。だけど、好きな気持ちはまだ残っているので、気が乗らないながらも会えた時は意識したり。
罪悪感は自分を庇って啓が亡くなったこともあるけど、啓が自分のことを好きだった(気がする)ことにもあるんですよね。自分は幸せになっちゃいけないと、楽しいこともしないし笑わないし、誰とも仲良くしない。もちろん武との恋なんて有り得ないと思っています。
ここまで追い詰められている敦也が不憫で、啓が亡くなっているからこそ出口がないのがめちゃくちゃツラいです。
武はボロボロな敦也を救おうと諦めません。武は敦也のことが好きだから。
啓→♡→敦也→♡←武
の図式です。
啓にとったら悲しい状況ですね。実は啓はそのことを知っていて、弟に彼女が出来たと敦也に嘘を言っていました。
2人の想いはあの時繋がることは無かったのに、啓の死後運命的に出会い再び惹かれあっていく展開になっていきます。
惹かれ合っていても、敦也のトラウマと呪縛は強いので一筋縄でいきません。でも敦也の気持ちを溶かしたのは武であり、啓の家族であり、そして亡くなった啓でした。死後に分かった啓の敦也への想いは本物で、確かに彼は敦也をものすごく愛していました。だからこそ、敦也には幸せになって欲しいんだと、前を向いて生きて行って欲しいんだと…啓の遺品はそれを物語っていました。
誰も敦也を責めたり非難などしていません。周りは皆、敦也の幸せを願う人たちばかりで読んでいて涙が出そうになりました。もう1人で悩み苦しむ必要もないし、何より傍らには愛する人がいます。
敦也はもう独りぼっちじゃない。
これからは自分のため周りの人たちのためにたくさん幸せになって欲しいなと思いました^ ^
素敵なお話だけど、切なく悲しい話でもありました。敦也自身は親友の死やトラウマに苦しんでいたけど、敦也の周りの人たちは本物に良い人ばかりで、それに救われながら読み終えることが出来ました。
決して明るく楽しいお話ではないのです。
自分自身に重い枷をつけてしまっているような、主人公である敦也の心理描写がすごく苦しい。
通り魔から自分を庇って亡くなった親友・啓を想い、喪失感と罪悪感でいっぱいの状態のまま生きている敦也。
彼らは親友関係で恋愛関係ではなかったのですが、どこか置いて行かれてしまった未亡人っぽさを感じるというか…それくらい中盤まで本当に敦也の内面がぐるぐると苦しくて。
そんな彼が、今まで会わないようにしていた啓の弟・武と思わぬ形で再会を果たし、少しずつ止まっていた時間が動き始める物語。
タイトル通りになるまでが本当にゆっくりと丁寧に描かれていて、お互いに気があるはずの武とすぐに恋愛関係にならないところが読みどころかなと思います。
啓を失ったのは犯人以外の誰のせいでもないというのに、それぞれが「あの時もしこうしていたら」を考えては悔やんではなかなか抜け出せないでいます。
中でも、庇われた形の敦也が1番重たいものを背負っていて、自分は幸せになってはいけないとすら思っているという…そんなことはないのに。
あの日と、啓の死と向き合いたくても向き合えない。
根深いトラウマと罪悪感部分の描き方が非常に重苦しくはあるのですが、重苦しいからこそリアルだなと。
敦也が再び前を向いて歩いていけるようになるまでずっと支え続ける武が良いんですよね。
本当に支えるという言葉がぴったり。
でも、武1人の力で歩み始めることが出来たわけではなくて、そこにはまた別の要素が…とここが良かったです。
正直途中まで読んでいてしんどかったのだけれど、言葉では語らない形で故人が遺したものが胸にじわりと広がり溶けていく。
萌えとはまた違うお話かもしれませんが、時間をかけてじっくりと救われる希望のある結びでした。
切ないお話にどっぷり浸りたい時にぜひ。