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eien no kinou
トンデモ設定のお話。現象は受け入れられても、付加される説明のおかしさが気になって、前半は物語世界の空気にノリ切れない。説明が減った後半はとても良く、後日談も綺麗なお話で、読後感は良かった。
始まりから驚きの展開。浩一の状態は、ゾンビと言って良いんだろうか。まず真面目な話なのか?と戸惑い、読むテンションに困る。ゾンビ状態を日常に溶け込ませる辻褄合わせの説明がおかしすぎて、ツッコミどころが目立ってくる。
こういうトンデモ系は、有無を言わせない強引さで書いてくれると楽しく読める。が、浅い専門知識を並べてそれらしさを出されると、誤りや虚飾部分がはっきりするため、逆にあり得なさが強調されてしまうと感じる。
破綻部分のスルー力を試される描写ばかりで非常に読みづらかった。
後半は結構ファンタジーに振り切った感じで、引き込まれた。ゆっくり消えていく切なさを感じられるのがとても良い。
生命が誕生するシーンでは泣いてしまった。
浩一の最期は、あれで成仏……と一瞬冷める。ここにきてBLのお約束。満の心残りはそこじゃないと分かってはいるものの、夢オチ作品の読後と同じような虚しさ・物寂しさを感じてしまう。
その後の満の父の話が素晴らしく、下がった気分は取り戻せたが。
満の想いと浩一視点の後日談で初めて分かるお互いへの気持ちは、深く温かいものがあふれていて、泣いてしまいそうだった。
全体を見て、感情に訴えてくる部分は本当に素晴らしいと思った。
正直、初読み作家さんの作品だったら途中で脱落していたと思う。ネームバリューに釣られて読み、刺さるところはとても刺さった。
角川文庫版のこの表紙がめちゃくちゃ好き。
トラックドライバーは満と浩一に救われたじゃないの
浩一の家族の弟妹と名前の雰囲気が違うこと、違和感覚えたし、3度目の出産や最初に抱かせるとか、やっぱそう言うことかって思った
妹に擦り付けられた子供のために何年も実子を持つこと見送ったんだろう若い夫婦、人間が出来すぎてて凄い
それにしても泣いちゃったわ
満のお母さん、私はてっきり母がいなくなっても困らないように躾をしなくてはって焦りからなのかと思ったけれど、寂しさを薄めるためだったなんて…親もまだ若かったんだよね、強情な性格で、満の心が一番大事だったんだ
初めグロいかもって思って、あとなんか悲しく終わるに決まってるのが辛くて読む手が止まっちゃってたんだけれど、そんなにボリュームもないし読み切れてよかった
別れは悲しいけれど、出会えた事、一番好きだと思えた気持ちは、忘れない限り永遠に変わらない。
最後は涙無しには読めない本でした。
誰かの1番になりたい…と願う高校生同士の切ないお話。お互いに相手の1番目を願いながら、今も暮しているのかな…って思うぐらい最後の余韻がずっと残る作品です。
最初からクライマックスとはよくいうけど、このお話は本当に最初からクライマックスで始まって、ここが最終着地点ならこの後はどうなっていくんだろうって二人から目が離せなくなって最後まで一気に読みふけってしまいました。
クラスの人気者の浩一と、無愛想でクールな満。
一見正反対の二人だけど、内に抱えたトラウマのようなものは共通していて、『誰かの1番になりたい、愛されたい』という思いを秘めた二人が出会います。満はあくまで、奇跡という言葉は都合のいいもので、そうしたからそうなった、と論理的に考えがち。けれど、浩一は1番最初の出会いから最後まで、奇跡を信じています。
このお話は、ファンタジー、スピリチュアルな雰囲気もあって、論理的とは正反対の内容だけれど、まさに『奇跡』という言葉がぴったりの内容になっていたと思うし、私自身も二人に起きた出来事は奇跡なんだと信じたいです。
高校生ならではの初々しさが残るラブシーンも良かったです。
一番を求めていた人同士が、それぞれの一番を見つけて、たとえその人が居なくなったとしても忘れずに思いながら生きていく。
人によってはこのお話はメリバ…なのかな?
けれど、いつまでも心の中にはその人がいて、忘れない限りずっと自分の中でその人が一番の存在であり続ける。昨日は、永遠になる。私は、ハッピーエンドと解釈しました。
読み終えて、はー…と長いため息が出ました。
ラストに向かうに連れて、無意識のうちに息をするのも疎かになりながら読んでいたのでしょうか。
今でも何とも言えない感情がぐるぐるとしています。
とても不思議なお話だと思うのです。
現代ものなのは確かなのですけれど、浩一の身に起こった現象はファンタジーやオカルトめいたもの。
でも、なぜかそうは分類したくない自分がいるのは、あまりにも山田浩一という少年が当たり前にそこに存在し、確かに生きていたからなのかもしれません。
開始数ページで目を疑い困惑しました。
こんな始まりがあるのだろうかと。
そして、普通ではありえない事ばかりが続きます。
だというのに、矛盾しきった不可解な現象を受け入れ、ごく普通に生活し想い合う彼らの姿を追いかけながら、お願いだからどうかこの魔法を誰も解かないでほしい。
終始そんなことを考えながら読み進めていたように思います。
当たり前の日常って、本当は当たり前に来るなんてことはないんですよね。
作中の言葉を借りるのなら、家族や好きな人と毎日会えることだって、生きていることだって奇跡なのでしょう。
最後の最後まで読み終えて放心してしまい、しばらく何も言葉が出て来ませんでした。
明るめのトーンで進むのがよりぽかんとさせるというか…
泣けたかどうかで言うと、泣くまではいかなかった。
しかしながら、心地良かったぬくもりがふっと突然どこかへいってしまったような喪失感に包まれています。
青春も、強い想いも、愛も、生も、その逆も、斬新な切り口でありながらしっかりと丁寧に描かれている作品です。
書き下ろし部分も含め印象に残る言葉が多く、じっくり咀嚼しながら読みたくなる1冊でした。
みっちゃんに本当の意味での明日が訪れるのだとしたら、それはみっちゃんが浩一と再び逢えた時なのかもしれませんね。
今やBLは一大コンテンツなので良作はいくらでもあるが、この当時は縛りがなかったので(ハピエンオンリー、死ネタNG etc.)、この頃なりの先の読めない良さはあるかな。あと、残された時間と離別を意識しながら共有してゆくという内容はなかなかないので、そちらも評価させて頂きます。
うまいこと言ったつもりなんだろうけど、文庫本の帯の「いかないで。……いって、いいよ。」は、今の人からするとただのギャグにしか受け取れなくて逆に寒いので、是非そちらの文句を変えて欲しいところ。
とにかく泣けると聞いて、最新の文庫本を購入しました。旧バージョンを読んだことはないのですが、私のように最近知った人でも今から読めるので、古参ファンの方が発売当時からたくさん応援し続けてくださったんだなぁと感謝の気持ちでいっぱいです。そして、文庫化までしていることからも本当に名作です。今知って読んでも間違いなく感動できると思います。
いきなりネタバレになりますが、いわゆるハッピーエンドではないです。満が17歳から37歳まで描かれますが、この期間の彼を思うと自然と泣けますね。思春期の話なので浩一と満以外の登場人物もたくさん出てきますし、彼らが全員個性的なのも良かったです。榎田尤利先生の作品はBLも一般もいくつか読んできましたが、登場人物がたくさん出てきてもそれぞれの個性が強いので「あれ、今の誰だっけ?」となることはまずないですね。今作でも学生・先生・家族と全員のキャラクターがしっかり引き立っていて読みやすかったです。
最初は設定が少しファンタジーっぽいかな、と思いつつも違和感なく読み進められましたし、ずっと満視点で話が進むのですが、最後に浩一の気持ちが描かれるので二人が惹かれ合った理由がストンと腑に落ちる、という分かりやすい作りになっていたと思います。BLファンなら一度は読んでほしい名作です。
作者買い+ドラマになったとの事で期待買い。
あらすじ未知で読んだのですが、タイトルや表紙の感じからシリアスな作風なんだろうと思ってたので序盤に起こった出来事にびっくりしました。
シリアスと言えばシリアスだけど、コミカルでもあり、とても読みやすかったです。
悲惨な出来事が淡々と進むのは多分みっちゃんが混乱してるせいなんでしょうけど。
でも終盤はやはり悲しいエンディングの予感がひしひしと伝わって来て、段々とシリアス味が増してきました。
浩一との別れはやはり涙が止まりませんでした。
1番大切な人との別れ、もう会えないなんて悲しすぎて…。
いつまでも一緒に居られると思っていた未来が途切れてしまった、2人の気持ちを考えるともう無理でしたね。
書き下ろしの37歳になったみっちゃんも、明るく毎日を過ごしているようで安心しましたけど、まだ浩一以上に好きになれる人がみつかっていないみたいで、さらに泣けました。
すんなり浩一を超える恋人が出来ていても複雑だけど、いつまでもみっちゃんが1人なのも悲しくて…。
同着でもいいから浩一に似た誰かに出会えますように。
ドラマ化もされて(ドラマは未視聴です)、だいたいのあらすじは知っていたのですが、始まってすぐ故人になってしまうんですね…。
高校2年生の浩一とみっちゃん。もう2人の普段の描写からお互い好きなんだな~と好きが滲み出ているようでした。
突然の事故に当然みんながパニックになるんだけど、何故か本人が一番あっけらかんとしていて、状況とのチグハグさが面白く、悲しむ暇もないんです(何せ動いて喋る訳ですから)。重いテーマなのに重くなりすぎずに進められる榎田先生、さすがですね。
このお話を読んでいて思ったのは死ぬってどういうことなんだろうってこと。もちろん医学的な死に関してはみっちゃんが解説してくれてるんですが。そうではなくて、意識としての死って言うのはどういうことなんだろうか…と。みっちゃんが言うように、故人のことを関係した人が忘れてしまうことがその人にとっての死だとしたら凄く悲しいことだし、それがみっちゃんのように親しくしていた関係の人なら怒りさえ覚えてしまうんだなぁと思うんですよね。
その点、浩一が轢かれて直ぐに動けてしまったのはみっちゃんの思いが強すぎたことと、もちろん浩一の未練も強かったんだろうなぁ、と…。最後に浩一サイドのお話もあって、浩一が一緒に暮らしていたご両親が実の両親では無いことが書かれていて、ショックも受けたし納得もしました。伯父さん夫婦に引き取られるのは珍しいことでは無いけど、血の繋がった両親の愛情を受けていない分(たとえ義両親からの愛はいっぱい受けていても)、みっちゃんに対する愛情の深さがあったのかな…と。
一方のみっちゃんも、両親からの愛情はあったにも関わらず、それを十分に実感できない状況にあって、本人は寂しいなんて思ってもいなかったけど心の拠り所が欲しかったのかな、その点、自分を真っ直ぐ見つめてくれる浩一に絆されて、惹かれていくのも無理のない話だったんだな、と納得が行きました。
2人の歯車がピタリと合って惹かれあったのに事故で引き裂かれてしまい、みっちゃんは光一が亡くなった後20年もその辛さや孤独と共に居たんだな…と思うと胸が熱くなりました。同級生や高校の先生など、2人の関係を後押ししてくれる登場人物がいた事はとても救いになりました。
故人を偲ぶってよく聞くフレーズだけど、その意味を考えて、せめて命日だけでもしっかりその人を思い出す時間は作らなきゃなと改めて感じましたし、親しい人が亡くなった人にも寄り添える本かな、と思います。
初出は2002年の作品なんですね。
クロスノベルズ→花丸→角川と3度目の出版で
今年は2020年。
本当に20年たって最後の書き下ろしでみっちゃんもクラスメイト達も17歳から37歳になっています。凄い。
攻めである浩一くん、めっちゃいい子です。
素朴で一途で溺愛で読んでいて苦しい。
残りページが少なくなるにつれて、あーここで
何かマジック的な事が起きて
浩一くんに起きた事が覆らないのか〜、と
何度思ったか。
でもそうはならなかったよ。
受けのみっちゃんもその生育歴からか
なかなかの難しい性格なんですが
冒頭1ページから2人は凄く好きあっているのが
わかります。
そんな2人だからこそ浩一くんが交通事故にあって
即死だったにも関わらず、さも生き返ったように
高校生活を送るべくみっちゃんが古今奮闘、画策に画策を重ねる様子と、教室の演説シーンはハッキリ言ってだいぶ笑える。
でもみっちゃんが浩一くんと離れたくなくて一生懸命で必死であればあるほど読んでる私たちは悲しくて胸が張り裂けそうなくらいつらいです。
物語全体に流れる空気感は青春小説?のようでもあり所々ホラー味もあり、コミカルな言葉の応酬や
ファンタジーチックな夢のシーンもあり
ほとんどがみっちゃん視点ですが浩一くん視点の
1章が凄く新鮮で救われました。
最後の章の本当の最後の最後の文で浩一くんを想い続けるみっちゃんのあまりの一途さに
涙が止まりませんでした。
榎田先生、素敵な物語ありがとうごさいました。
「近々、白泉社版を入手しよう」と考えていたので、角川文庫版の発売はすごくありがたかったです。
一般文庫は、BLレーベルより価格が安く、レジにて驚きました。でも、一般文庫版は挿絵が1枚もありません。そこが残念です。
<以下ネタバレを含みます>
主人公は、山田浩一と青海満(みっちゃん)。みっちゃんが語り手の一人称で、物語は進みます。
物語の最初の方で、「これは涙のエンドになるな」との予想がついてしまいました。
その予想は違わないのですが、そこまでたどり着く過程の描き方が丁寧で説得力があり、かつ、思わぬ展開を見せるので、頁をめくる手が止まりませんでした。
まず、冒頭でいきなり、浩一が交通事故で死にます。
この事故の様子、遺体の様子が、詳細かつ生々しくスプラッタ。めまいを起こしてしまいそうなほどでした。
結果、浩一は生ける死体となってしまいます。ゾンビではありません、生ける死体です。
この後の、みっちゃんの行動がすごいです。(浩一が延々と「みっちゃん」と呼び続けるので、本名の満より、頭の中で「みっちゃん」になってしまいます。)
冷静かつ沈着に、サクサクとことを運びます。
クラス委員長を説得し、わちゃわちゃ楽しいクラスメイトたちを、浩一が遺体であることを、他の人たちには秘匿するよう巻き込んでしまいます。
この謎の結束力は、高校生ならではのものでしょう。
変なことを頼んでいるシーンなのに、この辺り、妙にわくわくします。
その後も物語はどんどん進んでいくのですが、チラチラといくつも変な違和感が、私を襲いました。「これは、いわゆるミスリードというヤツなのでは…?」と思ったのですが、いつの間にかまんまと乗せられましたね。それもまた善し。
一番の違和感は、みっちゃんの冷静さです。
それは、過去の浩一とみっちゃんが語られていくにつれて、どんどん大きくなっていきます。
幼い頃の母の死。亡くなったという先生の恋人。目の前の生ける死体の浩一。
輝ける新しい生命の誕生。
みっちゃんは、次々と「死」と「生」に対峙していきます。
この物語は、まさに「生と死の物語」なのです。
ラストも近くなり、違和感はみごとに回収されて、私は涙をこぼすことになりました。
ラストのエピソードは、おそらくこの文庫化のための書き下ろしでしょう。新装版を買って、本当によかったと思いました。