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ayakashi chouto kieta hatsukoi
海野先生は設定を考えるのが本当に上手いですね。しかもその設定の膨らませ方と生かし方が凄い!
攻め受けの属性が好みでなくても、一つの作品として楽しめると思うので、ぜひたくさんの人に読んでもらいたい!
若干の攻めザマァも楽しめる今作。蝶々に心を奪われるという突飛な設定が、誰にでも優しくて自分だけを見てくれない攻めとそんな攻めと虫が大好きすぎる受けの関係を大きく変えていきます。
受けがどんどん攻めを好きじゃなくなっていく珍しい構成のお話。あんなに好意を見せてくれていたのにと焦る攻めにニヤニヤしてるのも束の間、このままでは受けは心を無くして廃人になってしまうのでは?と私も攻めと一緒に慌てることに。
最終的に受けは心を取り戻すのですが、この決着の仕方がなるほどなと納得できる、ご都合主義的でないと言いますか、上手い着地を見せます。さすが海野先生。
虫がたくさん出てくるので、都度調べては顔をしかめていたのですが、夏の気配がまだまだ残るこの時期に読めて良かったなと思いました笑
超オススメです!
最っ高に萌えて、萌えて、そしてじんわり感動する、海野先生のちょこっとミステリーなお話!
先生の新刊「結婚したけどつがいません」がとてもとても良くて、
既刊も読みたくなり、こちらを手に取りました。
一年近く積読にしてた自分を殴りたい…!!
こんないいお話、よく放置してたな自分…、と読後の今だから言える反省です;
主人公は無類の虫好き、自他共に認める”変人”の朝陽(受け)。
彼には高校時代からの片想い相手である大学同級生・国吉(攻め)という友人がいるのですが、
彼は博愛主義で誰にでも親切、誰も彼の”特別”になることはできない。
自分のマシンガン虫トークにも、ただ一人楽しそうに付き合ってくれる国吉のことが
大好きで、独占したくてたまらないけれど…
それは土台無理な話だと、諦めの気持ちも持っています。
そんなある日、国吉の実家の神社で不思議な光を放つ蝶の群れに遭遇した朝陽。
なんともいえない妖しい魅力に取り憑かれ、何度も蝶を見に通っていたところ、
蝶に首元を刺されてしまいます。
それから徐々に、虫や国吉、ゲームといった色々な物事・人に対する”好き”という
気持ち、興味を失っていきー
と続くお話です。
これ、攻めの国吉が物語中盤までヘタレ気味で、焦ったくてちょっと「もーう!」
となってしまったんですが。
後半の怒涛の変貌っぷり!!!!! 萌え過ぎてドキドキし過ぎて興奮しすぎて、
内心ずっと読みながら悲鳴を上げてました。
蝶に刺されるまでの、朝陽→国吉への執着が、見事に後半ひっくり返るんです。
朝陽の自分に対する気持ちの変化に気づき、焦り、なんとか取り戻そうと必死な様子の国吉の姿が切なくもあるんですが、
自分の中の萌え心に刺さって刺さって仕方なかった…!
国吉が朝陽のことを「特別な存在」として意識するようになったきっかけの
エピソードも、最高に良くて。
辛い気持ちを抱えていた国吉に対し、「お前は変わらなくてもいいし、
もし変わりたいと思うなら応援する」と語った朝陽の言葉、国吉と一緒に
自分までパワーがもらえてしまうような、魔法の言葉だと思いました。
ありのままの自分も、変わっていこうとする自分も、どちらもいいんだと
ストレートな言葉で伝え、認めてくれる人。
…そんなん、好きになっちゃうよね!!!
と、そんな彼らの”両片想い”の行く末からも目が離せないんですが。
恋愛要素以外でとても印象深かったのが、「好き」と思う気持ちや興味情熱を失った結果、
まるで抜け殻のように衰弱していった朝陽の姿です。
何か・誰かを好きでいるということ。
興味がある、知りたい、と思い、心動かされるものがあるということ。
それが本当に生きることのパワーの源になっているんだなあ、と改めて考えさせられました。
自分も色々一時熱狂的に応援し推していた対象があるため、
その情熱がある日突然失われてしまったら…と考えると、訪れるであろう虚無感に身震いしてしまう、というか。
何かに熱中できるって、すごく幸せなことなんだなと
読みながらしみじみ感じてしまいました。
Kindleで購入したんですが、限定SSの二人のベッドでのいちゃつきも
期待に違わず虫のお話満載で(笑)甘くて、最高of最高でした✨
新刊とこちらの既刊、大好きな海野先生の作品を2冊も読むことができ、
幸せすぎる読書タイムを持った一日でした☺︎
どんなに好きだと想いを伝えても「知ってるよ」という答え。
決して同じ想いを返してくれない。
うわーん。
もうずっと、朝陽がかわいそうでかわいそうで。
本気の想いを国吉に躱されてしまい、この気持ちを諦めようと何度ももがく朝陽の姿に、読んでいて何度も涙を誘われました。
昆虫オタクとして喜々と薀蓄を語る朝陽の無邪気な朗らかさと、切ない恋心を抱く朝陽の痛いほどのケナゲさとの対比よ。
もう、先生上手いなーと。
さすがだな、と思いましたよ。
こんな魅力的なキャラ、応援しないではいられませんもの。
だから、朝陽が感情をどんどん失っていって焦る国吉には、内心「ほら見ろ」と。
朝陽の気持ちを蔑ろにしたら、痛い目見ることになるぞ、と全読者が言ってた(たぶん)だろうがーー!と。
思いましたよ。
朝陽の危機を救うべく積極的に動いたり、過去の話や、朝陽へのひねくれた想いも知って、多少国吉を見直しましたが、如何せん、朝陽への仕打ちの数々を思い出すと、完全にはモヤモヤは晴れませんでした。
2人のえっちは、話の雰囲気としては最後まで致しちゃわなくても良かったんじゃないかな。
ただ、ラストシーンの国吉は、朝陽への特別扱いを継続していってくれそうな、そんな終わり方だったので、それはなんだかほっとしました。
すっっっっごく面白かった!!作者様の作品は以前から好きでよく読んでたけど、今作はこれまでで一番好き。キャラクターがすごく魅力的で受けの朝陽くんの一生懸命なところが可愛いこと可愛いこと…。
攻めの国吉くんは一見クールで、中盤までは本当に何を考えてるのか分からないところがあるのですが、その想いが明らかになったときはかなりグッときた。
謎めいた蝶のエピソードもすごく心を掴まれましたし、イラストもすごく綺麗で大満足。強いていうならば、もっと二人のラブラブが見たかった。でもお話のバランスとしてはちょうどいいと思った。
昆虫大好き大学生→くるもの拒まず変人ホイホイ爽やか大学生
昆虫が好きすぎて周囲から孤立気味の朝陽(受け)に声を掛けてくれた国吉(攻め)。
どんなに昆虫の蘊蓄を語っても嫌な顔せず付き合ってくれる国吉に凄い勢いで懐き、好きになってしまいます。
でも、国吉は博愛主義の来るもの拒まずなので、好きだと言っても流されてしまいます。
だから自分から会いに行かないとダメなので、ずっと追いかけています。
何度か諦めようと思いましたが、結局諦めきれず、国吉が結婚するまでは無理だろうと諦め気味です。
他の人の相手をする国吉を見るたびに嫉妬に苦しみ、会うたびに好きだという思いが溢れてきて困っています。
そんな時、国吉の実家である神社で、見たことのない光る蝶を見つけます。
新種ではないかと観察するのですが、国吉にみつかり、光る蝶は神社の御神体で人の感情を吸い取るから不用意に近づいてはダメだと言われます。
それでも、珍しい蝶を観察するのをやめない朝陽でしたが、国吉への苦しい想いを蝶が吸い取ってくれたらいいと思うようになり、ある日突然好きだった昆虫や国吉のことをなんとも思う思わなくなっていたことに気が付きます。
いつも嫉妬心で苦しかったのが嘘のように穏やかに学生生活を謳歌できるようになり友人も増えていくのです。
でも、そんな朝陽になぜか今度は国吉の方が追いかけてくるのです。
執着のすごい朝陽がどうにもならない恋心に苦しむ姿が本当に切なくて切なくて、読んでるこちらも国吉のことを早く諦めた方がいいよと思ってしまうくらいでした。執着心がなくなった時は楽になったんじゃないかと思ったのですが、執着心は無くなったのに、記憶だけは残っていてこれがまた切なくて。
そして、何度告白されても流していた国吉が、全く自分のことを追いかけてこなくなった朝陽に焦る姿は自業自得すぎて滑稽でした。
あれだけ追いかけてもらえればさぞかし気持ちよかったでしょう。
ただ、国吉の生い立ちを考えれば同情しないでもないですが、それでもやりすぎでした。
反省した国吉が必死になることであっさり気持ちが帰ってくるのかと思ったけど、そうは問屋が卸しません。今までズルかった国吉にとってかなりきついお灸を据えられた形になりました。
最終的に朝陽からの矢印しか出ていなかったところを丁度いい感じにお互いを思い合えるようになったことを鑑みると結果オーライだったのでしょう。
大学というところは高校と違ってクラスというものがないため、気の合う人とだけ一緒にいられるし、それまでの息苦しさから解放される場所です。
数ヶ月おかしかったの朝陽に対して、あっさり元に戻ってよかったといって笑ってる友人達のおおらかなのかてきとうなのか、朝陽はなんだかんだでいい友人に囲まれていたんでしょうね。
snsで交流していた高名な昆虫博士たちとこれからどういう風に付き合って昆虫道を突き進んでいくかすごく楽しみです。
2人にこれからというよりは朝陽のこれからがとても気になる話でした。
浮世離れするほどの昆虫オタクの朝陽は、虫と同じくらい国吉のことが好き。
国吉のことが好きで好きで、国吉がいずれ結婚して二次会の後に新婦とタクシーに乗り込む姿を見ても諦められないとわかっているけれど、この片思いが成就する可能性はゼロ。
だって「好きだ!」「好きだ!」とどんなに伝えても冗談にされてスルーされてしまう。
こんな不毛な思いは蝶にでも食われてしまえ!と思う気持ち、わかるんですよね。
それほど朝陽の想いは切なくて苦しいから。
で、不思議な蝶に出会って以来、すっきりさっぱり国吉への想いは消え去ってしまった朝陽を見て、国吉はめちゃくちゃ狼狽えるんだけど、今更感でいっぱい。
ふん!!おせーわ!!と思ったし、これは一種の攻めザマァでは??と思って読んでたけど、なんか攻めザマァ的な爽快感がない。(攻めざまぁ大好き人間です)
というのも、あんなに好きだった昆虫愛も消え去ってしまっていたからで……。
前半の隙あらば昆虫話、隙あらば昆虫愛を披露していた朝陽って微笑ましいなぁと読みながら思っていただけに、すっかり別人のようになった朝陽の様子がなんか空恐ろしいよ〜………。
魂の抜け殻っぽくて……。
一緒に山へ向かう途中で、「朝陽は俺の手を取るどころか、俺のシャツの端っこを掴むのすら迷ってたよ」って国吉が言うところがめちゃくちゃ切なかった。
国吉に対しては、おまえ!そんな些細な行動も見逃さず朝陽の気持ち含めてわかっていたくせに!!と思うんですよ。(国吉の事情もわかるけどさ)
それを言われた朝陽の胸にふと蘇ったのかつての切なさ、苦しさが、読んでて胸を打つんです。
いじらしいなぁ、苦しかっただろうなぁ……って。
だからその後に国吉が、「朝陽はずっと、こんな気分で俺のそばにいてくれたんだな」ってところで、わかったか!!って思う一方で、あぁ遅いよ〜……(泣)ともなる。
積み本であらすじを読まずに開いたんだけど、途中でファンタジー展開っぽくなったので、あれ?これファンタジーだっけ??とちるちるを開いた時に目に飛び込んできたのが朝陽の属性「男前」。
え??朝陽って虫オタクだけど、男前?どこが??と思ってたんだけど、最後は男前でしたね!
朝陽、強い。
「好き」という要素がその人を形作るんだなーとか、「圧倒的な好き」がある人は強いなーとか、色々自分の「好き」も含めて考えさせられました。
作家買いです。海野幸先生はお気に入りの作家さんなので、楽しみはもう少し後に取っておこうと思っていましたが、我慢しきれずに読んでしまいました。
途中からは想像以上に切なくて苦しくて何度も泣きましたが、すごくすごく良かったです。
冒頭から朝陽の変人ぶりが際立っていて、度を越した昆虫好きであることと国吉のことが大好きであることが、たった数ページでこれでもかというほど伝わってきました。
この二人は両想いじゃないの? と思わせるような朝陽と国吉のやり取りにニヤニヤさせられ、国吉は朝陽の昆虫を交えた独特な表現を瞬時に理解し、朝陽は昆虫好きであることを肯定してくれる国吉に堂々と「好きだ」と言い、それに対して国吉は平然とした態度で「知ってる」と返し、周囲にとっては日常の光景なので誰一人として突っ込みません。
ところが国吉は朝陽だけと親しくしているわけではなく、不特定多数の人たちにも分け隔てなく接します。趣味に熱中する人の話には興味深く耳を傾け、何かを相談されたら真剣に対応し、困っている人やポツンとしている人がいたら自ら声をかけるのです。
誰もが自分は国吉にとっての特別ではないかと夢を見ますが、時が経てば国吉はただ誰にでも優しいだけという現実を目の当たりにします。朝陽もその内の一人です。
だけど朝陽はそんな国吉を否定せず、同じクラスになった高二以来ずっと恋心を持ち続けていました。その国吉の優しさがなければ朝陽は孤独のままで、今の関係もなかったからです。
高三でクラスが離れてから、自分から会いに行かない限り国吉と接点を持つことができなかった朝陽は、本来なら高校卒業を機に国吉をあきらめるつもりだったのに、国吉は朝陽と同じ大学を受験していたのです。しかも同じ学部なので、朝陽は国吉の近くにいるのに特別になれない切なさを大学生になっても感じ続けることになります。
初見でも国吉はずるいなと思いましたが、国吉の事情を知った読後の今はさらにそう感じます。
朝陽の恋愛感情に気付いていながら、特別扱いすることも突き放すこともしないなんて、いつまでも生殺し状態の朝陽が本当にかわいそうでした。想いには応えないけど、自分の振る舞いで朝陽の心を乱して、それでも朝陽に想われ続ける立場はさぞ心地よかったことでしょう。
だから、国吉神社に現れた蝶が人の心を食べることを知った時、真っ先に朝陽の国吉への恋心を食べられたらいいのにと私は思ったのです。その後も朝陽の精一杯の遠回しの告白を受け流した時は特にそう思いました。
いわゆる攻めザマァ展開になればいいと安易に考えていましたが、実際に朝陽の感情がなくなってしまうと想像以上に悲惨な展開でした。
まず、朝陽が失ったのは恋心だけではありません。昆虫への興味関心までもが奪われたのです。朝陽の人生を彩ってきたものはなくなったのに記憶だけは残っていて、時が経つほどそれに苦しめられ、オスのセミは体内が空洞で、それがまさに自分のようだと揶揄する朝陽の姿が辛かったです。
そんな朝陽に追い打ちをかけるのは国吉です。こちらは完全に自業自得ですが、朝陽が変わってから必死に追いかけます。でも朝陽には片想いで苦しんだ記憶がしっかり残っているので、国吉の変化や昆虫関連も含めて記憶と現実のギャップの大きさに戸惑いと苛立ちばかりが生じます。
そこまで朝陽に執着するなら最初からもっと朝陽を大事にしなよ、と思ったのは私だけでなく朝陽もそうでした。
まあ国吉も自業自得とはいえかなりかわいそうな目にあっていたので、この辺で朝陽を元に戻してあげてと思ったけど、海野先生は容赦しません。夏休み前から朝陽をどんどん心の死へ追いやって友人と疎遠にさせるし、国吉はいくら朝陽に拒絶されても毎日メールを送ったり家まで行くという献身的な姿を見せます。
親の心配が深刻になってきた頃にようやく国吉が朝陽の部屋まで入り、そこで朝陽が感情を爆発させた場面はとても良かったです。
国吉の過去や事情も、もっと前から朝陽に話しておけば良かったのにとは思ったものの、打算的だったり八方美人な部分や、それら全てを肯定してくれた朝陽のことを好きになり、恋人になれば別れがくるから友人のままで一生途切れない関係でいたいと臆病になるのも、どれも共感できました。
海野先生の作品は両想いが確定するまで丁寧に書いてくれるので、それだけで心が満たされ、個人的に性描写はなくてもいいとすら思うのですが、本作の朝陽が元に戻ってからの性描写は結構好みでした。早く相手を自分のものにしたいという執着心が二人とも出ていたのが良かったです。
その後の二人も上手くやっていけそうで安心しました。国吉はきっといい執着攻めになれそうです。
朝陽が心を取り戻す場面は想像したらゾワッとしますが、何らかの「思い」を養分にしていた説は幻想的で素敵だなと思いました。
作中で鬼の話が出てきましたが、私は妖怪とかの類いではなく、やっぱり蝶は国吉神社の御神体(縁結びの神様)だと思っています。
朝陽は蝶を見つける前に御神木に触って国吉を想っていたので、それを神様が成就するように取り計らい、二人に試練を与えてくれたのではないだろうか。実際ああでもしないと朝陽と国吉は永遠に結ばれなかったと思います。
蝶の数だけ誰かの恋が叶った、もしくは真の愛を見つけた、と思うとロマンチックです。
お話だけでなく、Ciel先生の絵もどれも本当に素敵でした。
電子ですが、あとがきの後の絵でさらに余韻に浸ることができていい演出だなと思いました。
虫好きではないけれど、知らない虫が出てくるたびに怖いもの見たさでネットで検索するのをくり返したのですが、初回のモモチョッキリで早くも挫折しそうになりました。モモがつくから勝手にかわいいイメージを持っていた私が悪いのです。
でも不思議と愛着がわいてきて、昆虫博物館に興味を持ってしまいました。
今までにない展開で、面白かった。
Ciel さんの挿絵が無かったら、凡庸な内容に感じたかもしれない。挿絵、大事。
鬼退治のあとに生まれた蝶は、光る。
蝶は物の怪の類で、国吉家は、蝶塚を隠すために本家から密命を受けた神社。
鬼の復活を防ぐ為、神社の真の目的は隠されている。
寄生虫のような蝶の産卵。
幼虫が食うのは、宿り主の「心」。
心を食われる宿り主は、どんどん衰弱していく。
もう少しで、朝陽も衰弱し思想になった時、蝶が羽化して、外に出る。
そして片思いが終わって、ハピエン。
蝶に項を刺されて、朝陽は徐々に心を食われて「好き」が消えていく。
蝶は、朝陽の首を刺したのは、産卵のためだった。
羽化して、群れの跡を追って飛んでいく蝶。
その後、一気にハピエンにまとまる。
終りがあっけない、紙面上の都合だろうけど、残念。
虫の話題だ。思った瞬間、体の底からサイダーの泡が上って弾けるような高揚を感じた。
粗筋が面白そうで電書発売楽しみにしていて、読み始めた瞬間、「この二人が好きだ!」と思いました。
昆虫と国吉に夢中直球な朝陽と、朝陽の目線を独り占めしつつその他大勢に構われまくってしまう国吉。
そして夏の夜の山や虫の音、「お前を嫌いになる日なんて来ない」という青年たちの会話に「BL読んでるなー!」という気分になれました。
冒頭は朝陽の好き好きテンションに、これはラブコメかなと思ったのですが、読んでいくうちに、どんなに「好き」と言っても通じないモテ男国吉のしぐさにはときめいたり朝陽と一緒に嫉妬したり、失って楽になりたいと思ってしまう程の片想いの苦しさと変人の自覚と夜の山に切なくなっていきました。
「好き」という感情とそれを失っていく描写が沢山出てきて、特に蝉の比喩には納得。好きなものの為に苦しみ、でも好きなものがあるからこそ各々の人間性があって感情の起伏がある。
ウサギΩ作品と同様、海野さんはBLらしい話の流れと萌えを書きつつ、日常私達に潜む意識に繋げて共感させるのが巧みですよね。
朝陽の片想いの苦しさと、感情(自身の生き方を物語るもの)を失っていくこと、国吉の焦りと、切なくて胸が苦しくなり泣けました。
朝陽が虫にも国吉にも反応しなくなり、二人の立場が逆転して国吉が気を引こうと必死になるところ、「どうして今頃」ときちんと詰め寄る朝陽にはスカッとしました。ホントダヨ…
私は国吉が子供の頃心を蝶に喰われてしまい、朝陽が喰われたところで入れ替わりに心が戻ったのかなと予想していました。なので、理由はどうあれ単純にそういう性質なのだと言われると、いくら朝陽が許しても、恋心と好意を長年スルーし続けたのは流石に酷いし、そこまで人の感情に疎くなさそうなのに天然で酷い野郎だと思いました。最後の特別扱いの甘さは一生続いてほしいし延々と読みたい。
大の昆虫好きである大学生の朝陽は好きなものに熱中しすぎてしまい、周囲の人間に敬遠されがち。高校の時独りぼっちだった自分を救ってくれた国吉に、予てから思いを寄せているが、彼は天然の人たらしで…。
国吉の周りには常に人に大勢の友人が。聞き上手で人当たりのいい国吉に朝陽は意を決して告白しても、「知ってる」と笑顔で返されてしまう。
もうこの恋を諦めるべきかと悩む中、国吉の実家の神社で“人の心を食う"という美しい蝶に出会い、いっそこの気持ちを食べてくれたら…と願うと忽ち国吉への気持ちが消えていって…!?
ミステリーとしても世界観を楽しめる一冊です。
私はですね、犬の追いかけっこみたいなのが大好物なんですよ…
追いかけてきたと思ったら、追いかけてこなくなって、気になって追いかけちゃう…みたいなね。あれ、お前俺のこと好きじゃなかったっけ?みたいな。
人間って欲深く、傲慢ですよね。でもそこがいい。自分に向けられていたはずの熱い想いを感じられなくなった途端、
またその熱が欲しくなって求めてしまう。
以下ネタバレです。
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光る蝶に心を喰われた朝陽は、好きだった昆虫にも、あんなに目で追っていた国吉にも全く心を奪われなくなってしまいます。
虫の話を聞いても、いつもなら走って観察しに行ったのに、そうかと聞き流すばかり。教室に国吉が入ってくるなりすぐに見つけていたのに、国吉の存在にも気づかない…
朝陽はその変化を重く受け止めていませんでしたが、国吉を含む周りの友人は心配するばかり。
「自分の感覚が揺らぐ。当たり前に持っていたはずの感情が薄れていく。
胸の底に残っていた感情を絞り尽くされるようだ。名前はつけられなくても手触りだけは知っていたはずの感情が、全て消える。忘れてしまう。(p.152より)」
しっかりと自分の中に在ったはずのものが、思い出せない。心にぽっかり穴が開いたみたいに、自分の真ん中を風が通り抜けていく感覚。
在ったはずのものがなくて、空洞で、何もない。でもそこには在った。なにが在ったのかは、思い出せない。
やがて、「在ったこと」すらも忘れていく…。
それがどんなに怖いことか。
国吉は朝陽の気を引こうと昆虫の本を読んでネタを収集したり、朝陽を昆虫園に連れて行ったりと、元の朝陽に戻ってほしくて奮闘します。
しかし朝陽は国吉が期待している反応を見せず、好きだった昆虫園すらすぐに飽きてしまう始末。
理想と現実の差に落胆する国吉でしたが、二人は意を決して再度光る蝶のいる山に入り、解決法を見つけようとします。
そして突然、朝陽の首から光る蝶が羽化し、美しい翅を羽ばたかせながら遠くに飛んでいきました。光る蝶が餌にしていたのは、朝陽の「感情」でした……。
そして朝陽は昆虫愛と、国吉への想いを取り戻します。
腐女子の方でなくても、ミステリー小説として楽しめる作品なのではないでしょうか。光る蝶という不思議な世界観と、各所にちりばめられた昆虫のうんちくは読者を飽きさせません。
何より私がお気に入りだったのは、朝陽が国吉への想いをなくした後の国吉の反応です!
じっと朝陽を不満げに見つめたり、朝陽を狙う女子の邪魔をしたり…。
国吉の視点で書かれていないのにもかかわらず、心情・表情の変化が手に取るようにわかります。
執着攻めが好きな方へぜひ!おすすめの作品です。