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gakeppuchi made hashire
ストーリーはまさに石原さんらしい一冊。
しかし、デジタルに移行されたのか、昔の絵からはかなり印象が変わりました。
昔の絵の方が好きですが、読んでいくうちに、ストーリーに引き込まれてあまり気にならなくなります。
ただし、人物の描き分けや、時制の入り乱れが分かりにくい部分があり、なかなか一回読んだだけではお話が入ってきません。
さて、ストーリーは、少年院で気楽を共にした4人の仲間の話。
クロ、銀など色をイメージする名前の人物が多い。主人公は、母子共に父から虐待を受けた青年。出会った破天荒だがリーダーシップのある青年に惹かれる。
しかし騒動で意識を失ったまま何年も寝覚めない。。
トラウマを払うために二人の絆、愛が活きる、そんなお話でした。
何と受け攻めが意外だったのが美味しいポイントでした。
最後が切ないですね。。
前作「カレノドロイド」が、今までの石原さんの作風から少し変わった気がして、もちろん良かったし好きなんだけど、だけど…と思わずにはいられなかった…
が!今作で、これだよ石原さんのこの感じがまた読みたかった…!と感激しました。
訳ありの少年達を受け入れる、山奥の閉ざされたシェルター。
飄々としてるけれど、自分を抑えつける大人達に決して屈せず抗い続けるソーマ、
実父による虐待から逃れるためシェルターに来たハル。
2人の少年が、強烈に出会って惹かれて、お互いが自分の思うように生きるために闘い続ける物語です。
時系列が、成人後の現代と少年時代を行ったり来たりしますが、その切り替わりが映画を観ているようになんとも滑らか。
ソーマは、はじめ、なんだか得体がしれない。
何者?良いやつ?悪いやつ?何でシェルターにいるの?となかなか掴めないキャラクターです。
それがまあ…読み進めるうちにですよ…
めちゃ良い子T_T イケメンだしT_T あとエロいT_T
ぶっきらぼうだけど根は優しくていつもなんだかんだ助けてくれるイケメンを地でいくやつ。
逆にハルの方が色々と複雑なものを抱えています。
実父からの虐待は精神的・肉体的・性的なものを全て含んでおり、更に父親本人は警察官僚ときていて、誰も助けてくれないと諦めています。
だから逃げるしかない。ただ、逃げて逃げて…
シェルターで出会ったソーマとハルは、初日からお互い強烈な第一印象を受け、なんとなく心を通わせます。
ですがお互い本当の意味で心を通わせていくのにはまた過程を経ていくんですよね。そこがまた、良くて…。
父親にシェルターに居ることがバレて、逃げることを決心するハル。
でも1人じゃ無理。
助けて欲しい時、ソーマにかけた言葉が、「お前が必要だ」なの凄く男っぽくて良い。
そうしてソーマ、ハル、そしてシェルター仲間で少し年下の銀とクロの4人は派手に脱走し、少年達の逃避行が始まります。
この逃避行がまたね…なんだか眩しくて。
この4人の少年達には何の力もなくて、行き場所だってないのに…。
ただその時を一生懸命生きてるんですよ。
そしてこの時間を通じて、ハルとソーマは真から心を通わせたのかなと感じます。
身を潜める場所を探していた時、見つけた空き家。そこにあった、孤独死したであろう死体。ソーマは、この家はやめよう。死体は放っておくしかない。そう言ってその場を去ろうとします。
けれどハルが言うんです。
"警察を呼ぼう。ちゃんと弔おう。心に反したことはできない" ───
1番逃げたいのは、逃げなくちゃいけないのはハルなのに、その心があまりに綺麗で真っ直ぐで、愛おしかった…。
そしてクロと銀の存在もあまりに愛おしい。
銀はしっかりものだけどまだまだ子どもだし、クロはおバカでどんくさくて、いつもふわふわしている感じ(可愛い)。
足手まといになりそうな2人だけど、この逃避行に2人がいることで、ハルはその心の清らかさを守れたんじゃないかなとも思います。
銀の、小さい体で誰よりもしっかりしていようとするお兄ちゃん気質なところや、
クロの、トロかろうがおバカだろうが全然卑屈にならずに、いつだって純粋に彼等と共に
いようとする感じが、すごく好き…。
そして石原さんの作品で本当に好きなのがセリフとシーンの見せ方です。
今作も本当に、なんだか神がかっているほど、好きでした。
屈しかけてた時、花火を見た。
その花火はずっと、ここにある。
深いところに、ずっとある。
お互いが、大人の身勝手に巻き込まれて傷ついた無力な少年時代。
大人になっても、その頃の苦しみや葛藤の鎖はより強く絡まっていて、何も解決できていない。
だけど、ソーマがいれば…
ハルがいれば…
守りたくって遠ざけていたのに、ソーマのあまりに熱い熱に絆されて、素直になったハルの頼り方が、少年時代と重なり合うのにあまりに言葉の重みが深まっていてしんどいくらいに尊い。
ハルの、あの表情よ…。
ずっと1人で抱え込んでいたハルにかけたソーマの言葉も、あまりに優しくて堪らないんです。
"怒りに焼けそうになったら、俺が愛してるってことを思い出して"
ソーマって…。炎のようで、暖炉のようで、本当に熱くてあたたかい人…。
段々と、深く深く2人が繋がっていく過程が分かって、その絆に悶えそうになるのです。
身体を繋げるのも同じ。
ソーマがハルを抱くのか?ハルがソーマを抱くのか?
読み手としてやはりその前後には好みがありますが、もう、どんな形でもいいか…この2人が、繋がれるのなら。
そんな風に思える2人なのです。
石原さんはエッチシーンは基本的に控えめな作家さんですが、今作も控えめに少しだけ。
充分なんです、これでもう…。
ストーリーやキャラクターの関係性に燃えられれば、エッチシーンは…そりゃああれば嬉しいですよ、嬉しいですけど!でも全然、無くてもいいんです。
キスだけでも充分(さすがにキスくらいはあってほしいと思うのが乙女心ってやつですね)。
彼等が性別を超えて、性的に、そして人間的にも惹かれあってるのが分かれば、それだけで尊いんです。
それを描くのが、石原さんは抜群に上手いと思うのです。
ただ…やっぱり…全BL作品の中で1番大好きな作品、石原先生の個人的最高傑作、私の魂のバイブル「あふれそうなプール」時代に比べると、絵柄やストーリーの乱れを感じる時はあります。
石原さんの作品は好きなものが多すぎて、自分的神評価が多すぎて、それならば今作は好きだけど、他の石原さん作品と比べた時どうだ?と少し迷いました…が…
読み直して、ああ〜やっぱり大好き(ToT)!となったので神評価をつけさせていただきました。
石原さんは、ご自身も色々と闘い続けている方だと思います。だからこそ、描く作品からメッセージが強く伝わってくる…
そして描き下ろしでは、泣きそうになりました。
蒼馬と破流。この2人の物語を、まだまだ見守っていたかったです。