単行本版(限定描き下ろし付き)
kouhuku no oujisamato
流れるようにスムーズな展開、優しく穏やかな空気感。
好印象でもあり、物足りなさもあり、です。
受けの佐原くんの悩みはまあありがち。
攻めの篠塚さんはそこを悩まなすぎと思えなくもないけど、自分がゲイと気づいても「兄姉が孫を見せるしいっか」と割りきれる人なので、非常にさっぱりしているのかもしれません。
男同士の恋愛に進むには相手の指向というハードルが高く、ここは葛藤もなく恋人になるBLあるあるなノンケたちよりも現実的な印象で、逆にこのハードルさえ越えてしまえばもともとの割りきりのよさが適度なスピード感となるようで。
つまり篠塚の言動に矛盾はないのだけど、佐原はちょっと引っかかりが強いです。
ちょっと大げさに、くどくどとひとりでいる決意を出しすぎた気がします。
篠塚の求愛にあっさり応える、そのあっけなさとマッチしないのです。
もちろん性格も潔癖さも人それぞれなので、過去の事実と彼の決意が合わないように感じるのはあくまで私の価値観にすぎませんが、それにしては篠塚の受け入れがすんなりすぎてバランスが悪く思えました。
総合的に☆3寄りの4というのが卒直なところですが、4を選んだ決め手は篠塚の後輩、桑野くんでした。
先輩かつ上司の篠塚にズケズケものを言うし女の子には節操がないし、でも彼と篠塚の関係が篠塚のキャラを引き立て、佐原の悩みすぎるオーバーさを薄める働きをしていました。
そしてやたらめったら絡んでこないでしゃばりすぎないのも良かったです。
表紙がきれいで。読み始めたら絵がちょっとびっくりしたけど、すぐお話に夢中になりました。
佐原〜!そんなふうに考えなくていいのに!
でも反抗期や性の悩みで母親にキツく当たっていたら、死に際に家庭を持って幸せになってと言われたら…。
篠塚が優しくて佐原に寄り添いたい感じがすっごく良かったです。部下の、体をモノにしちゃえばみたいな台詞に引きましたが、そうじゃないんだよ!そんな人じゃないんだよ!
篠塚を好きになるほど辛くなる佐原。仲良くなれて浮かれてる篠塚と対照的でしたね。
そして佐原の自分は一人で…な理由が明らかになり。あのときは孤独で子供で困ってて頼れる大人もいなくて。でも汚れてなんかないよ!
何もかもを受け止めたい篠塚も王子様ですね。
幸福の王子。中学で学校祭で朗読劇したなあ。しかもバイトもホテルの宴会場で披露宴毎週やったなあ。なんか縁のあるお話かもなあ。
はぁ〜、良いお話でした。
Pixivで既読でしたが、他の作品もずっと追って読んでた作家さまなので、単行本化記念に購入。
とっても優しい世界観の作品です。攻めの性格からしてもう優しい。こういう穏やかな攻め、安心して読めるので好きです。そんな攻めに、ずっと不幸を背負ってきた受けが出会い救われるという、ストーリーとしてはまあよくあるお話です。絵柄や作品としての完成度は正直高くはないです。たまにセリフが、独白形式の小説か?と思うくらいくどいですし。
ですが、この作家さまの描かれる作品は本当に嫌味のない優しさが溢れており、読むと癒されるんですよね。
ホッとできるお話が読みたいときにオススメできる作品です。
物足りないなという感想です。日尾えりさんの生み出す面白さがまだ発揮されていない頃の作品に感じます。
受けにそんな過去が!というエピソードが有ります。ここが一番の盛り上がりだと思うのですが、それでもすんなりとストーリーは流れていきます。
攻めの部下目線のお話が最後に有りまして、彼が日尾えりさんの生み出すキャラクターの面白さを少し垣間見せてくれます。
他の作品の方が好きなので、今後の商業での活躍期待しています。