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ギャグがさえないし、いまいち面白くない。
なぜならジェンダー方面へ進出しすぎているから。
九州男児さんの『課長の恋』は、本作と同じようにギャグ路線サラリーマンものだけど、主人公があまりに非現実的なので、安心して笑うことができた。でも、今回は現実的な男制社会を露骨に考えさせてしまう作品なので、楽しめなかった。ギャグなのに白けるっていうか。
以下かたい話。
男性学っていうのかな。たとえば
* 伊藤公雄『「男らしさ」のゆくえ』新曜社、1993年
* デイヴィッド・ギルモア『「男らしさ」の人類学』春秋社、1994年
* イヴ・K・セジウィック『男同士の絆』名古屋大学出版会、2001年
こんな学術書が出ていて、「男らしさとは何か」を問題にしています。
そして、本作もこれらとテーマを共有している。
舞台は、男らしさを金科玉条とする会社。新入社員が「机と椅子のどちらが男らしいか」を真剣に考えたり、社員が男らしさの実践事例を報告しあったり、次第に男だらけの職場に安心感をもつようになったり、どこまでも男らしさがつきまとってくる。
コレがまあまあ笑えるんですよ。さすが九州さんです。
ただ、この男らしさという概念は、現実でしばしば批判されるものです。学術書が俎上に載せるような現実の問題を、マンガでも扱っているわけです。
九州男児さんはといえば、日本のゲイスポットをあちこち見に行ったり、アメリカのゲイバーに突撃したり、とても活発な方です。だからこそ、こういう問題意識を打ち出すことができるのだと思います。BL はゲイの立場から差別的だといって批判されることもあるので、こういう問題意識/批評性をもった BL は、評価されてしかるべきだとは思います。
ただし、忘れてはならないのは、BL が「ファンタジー」(息抜き)として読まれているということ。現実と接点をもつことは大事でも、あまりに現実問題が前景化すると、重たく感じられるものなんですよね。批評性をもった上で、さらに面白さや萌えを盛り込めるかというと、難しいです。下手すると白けてしまう。(その点『課長の恋』は成功例。お見事!)
…というわけで、楽しいことは楽しいのだけれど、九州男児さんの他の作品よりトーンダウンしているように感じました。
本作の続編に『毎日がメンズデー』があります。