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susou no kadaberu
読む人を選ぶ作品かもしれない。テーマである連続殺人がガチすぎる上に、BLにもしっかり絡んでくるので。でもだからこそ得られる緊迫感やゾクゾク感が興奮に繋がり、夢中で読んでしまった。静謐な空気を感じさせてくれる文章も好き。
注意事項としては、まず序盤からグロい死体描写がある。そして(あらすじでネタバレされている通りの)このカップリングである以上、明るいハピエンを夢見ながら読むことはできない。
結末は人によって受け取り方が違うと思う。私はハピエンとは思わなかったが、これ以上の終わり方は無いと思った。言葉では言い表せない、心にずっしりのしかかってくる終わり方。読後は無性に泣きたくなってしまった。
颯一は不倫の末に左遷された美人若手刑事。霧嶋に出会って寝るようになってからは、関係性に疑問を感じたりと、一見ありふれた人物像に思える。だがいつからか正体不明の違和感が生まれる。
霧嶋はあまりにも内側が見えなくて怖いが、颯一が惹かれるのは分かる。神秘的で思わせぶりで、身を委ねたくなる魅力を持っていると思う。
終盤は衝撃的な展開の連続。霧嶋によって暴かれていく颯一の内面に驚き、霧嶋自身がさらけ出した本音に驚き。テーマがテーマだけに共感する必要はなく、むしろ分からないことに安心できる。同時に美しさだけは享受できる気がするという。
この不思議な読み心地を創り上げたのには、水槽の中の魚とキャラクターを重ね合わせた描写が一役買っているんじゃないかな。淡々と多くを伝えてくれる文章にも引き込まれる。
あらすじのカプ表記がめちゃくちゃネタバレになっており、これで分かってしまう霧嶋の正体を知らずに読んだ方が、もしかして……と希望を持ちながら読めて良かったんじゃないかと思う。とはいえ最後までしっかり面白かった。神。
とにかくネタバレせずに読んで欲しい。
描かれているのが愛とか恋とかじゃなくって、歪な人間の生き様なんですが、熱帯魚とかの比喩表現がとても秀逸で文芸作品として評価したくなる作品です。
読んでて理解できない二人だけど、深く刺さるものがあるのは作者さんの表現力の賜物だと思う。