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幼馴染の使用人×同性愛者の社長令息の大正浪漫BL
kimiarite shiawase
初めて読んだ鈴木はこ先生の作品です。
奉公人 坂口 勇と商社の社長令息 倉沢 炳吾のお話。
時は大正時代――。
父親が経営する商社で働く炳吾の家に、10年前の友人 勇が奉公人としてやって来ます。
初めて会った時はまだ子供だった勇はすっかり大人になっていました。
そんな勇を見ていると昔を思い出してしまう炳吾には、誰にも言えない秘密があって…。
明治や大正を舞台にした作品が好きなこともあって、鈴木はこ先生があとがきに「大正BL」を描けることが嬉しかったと書かれていて嬉しくなりました。
しかし、鈴木はこ先生は現代以外の…例えば、着物や日本家屋、子供などを描いたことがなく悪戦苦闘されたそうです。
おそらく、大正時代の資料を丹念に調べられたのでしょう。
大正時代の雰囲気が上手に表現されていると感じました。
背景や建造物、服飾等も丁寧に描かれていて違和感はありません。
炳吾と勇の想いにそれぞれの家庭の事情と身分の違いを取り込んでおり、最後までドキドキしながら読めました。
経済の激しい浮き沈みや西洋文化の影響など新時代への急激な変化があった大正時代。
その中で、自分の性的マイノリティに葛藤する炳吾の運命も勇と10年ぶりに再会したことで変わっていきます。
このお話には、当て馬の登場や事故や災害に見舞われるような大きい出来事は起こりません。
スリリングな展開を望んでいる方には物足りないかも知れませんが、無理のない自然な流れで進むのが良かったです。
また、2人のキャラが優しく穏やかなのも魅力の一つだと思いました。
大正時代の物語は、時代背景が伴って暗く重いストーリーも多いのですが、この作品は2人の性格が反映しているかのように、明るく心があたたまるような感覚を覚えました。
Hシーンは、本編に1回だけあります。
エロさは薄いのに、炳吾の恥じらいにキュンとしますよ。
硬派な勇と純粋な炳吾…これからエロくなりそうな予感がする(笑)
さまざまな事由から自分の気持ちを言葉に出来ない2人ですが、最後は口に出して想いを伝えます。
勇気を出して一歩を踏み出せば、自分の世界は変わるかも知れない。
個人的には、一年後のラブラブな2人をもっと見たかった~。
作品の中では、明治時代の評論家 北村透谷の思想が引用されています。
「恋愛は人生の秘鑰(秘密の鍵)なり」
恋愛至上主義の主張にふさわしいですよね。
お互いが人生の鍵になった2人。
将来を誓い合い、共に生きる未来は平穏で幸せに満ちた日々でありますように。
大正BLだけでなく、大正ロマンの気分も味わえるおすすめの作品です。
さわやかな後味の大正BLでした。
大正時代のカフェーって風俗店なんですね。知らなかった。
社長令息の炳吾の家に、弟のような存在だった勇が奉公人としてやってきて……と、いうお話。
10年ぶりに再会した勇は、体も大きく男前になっていました。
よそよそしい勇を寂しく思いながらも、昔と変わらない態度で接する炳吾がとても感じのいい青年です。
炳吾はゲイなんですよね。
この時代は理解がなくて大変だったろうなと思ったら、やはり友人に「真っ当になれ」と言われていて辛かったです。
それから、炳吾は自分の性癖を隠そうとして生きてきたんだと思います。
だけど嫁をもらうのは無理だし、カフェーも苦痛だしで、かなりな生き辛さを感じました。
そんな炳吾の秘密を知り、想いを寄せる勇。
しかし、真っ当にならなければ……と思っている炳吾はなかなか踏み込めません。
恋愛を人生の「鍵」として表現している北村透谷の言葉を引用していて、それがロマンチックだと感じました。
家での立場やしがらみが二人から自由を奪っているのかなと思う所もあり、時代BL故だなと思います。
勇は父親に言われて奉公に来るのですが、取り入ろうとしているのかな?と思わせる表現もあって、少し勘ぐってしまいました。
が、父には父の思いがあり、そこはグッときました。
結婚はできなくても、努力を止めなければ一生一緒に生きていくことができる。そう思わせてくれるラストが良かったです。
やっと、欲しいものを欲しいと言う事ができた二人が尊かった。
舞台は大正時代。
10年ぶりに再会した炳吾と勇。
容姿や立場が10年という年月の間にいろいろと変わってしまっているのですが、ふたりの間の想いや絆は変わらずに、開いてしまっていた時間を徐々に埋めていく過程が新たに芽生えていく感情を絡めながら穏やかに紡がれていきます。
時代モノらしく、言い回しや表現がレトロで大正モダンといいますか、奥ゆかしさを感じます。
柔らかな絵とも合っていて、あまり歴史に明るくない私でもしっかりと作品の雰囲気に浸ることができました。
勇が忠実なわんこで、小さな頃から成長して炳吾を越している身長や体躯。
そして、炳吾を尊重して、包み込む温かさが溢れていて心の芯までその温かみが伝わってきました。
勇から炳吾の、炳吾から勇の手に触れる描写にそれぞれの熱情が込められていて、控えめなふたりらしい表現で素敵だなあ、と思いました。
炳吾が勇と手を取り合い寄り添い、繋がることで感じられる『倖せ』。
『きみ在りて倖せ』というタイトルがしみじみとじんわり沁みる優しいお話しでした。