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shousetsukasennsei no inu to haru
笠井さんの表紙がイメージする通りの物語。
表紙絵から面白そうだと思い、「猫屋敷先生と縁側の編集者 」を読まずに、この本を購入。読み始めて、前作があることに気付きました。
前作は、猫好き。
この作品は、犬も猫も好きな作家。
犬明の心の変化と、ゲイを隠して静かに生きたい春のやり取りが、面白い作品。
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春は、マイノリティの生き辛さをずーっと、高校生の頃から感じていて、とうとう大学を中退して、ゲイバー勤務をはじめていた。
元彼女の弟・春が、手の怪我で不自由している間の犬明のサポートの為に暫く同居することになる。
久しぶりに会った春は、垢ぬけて随分綺麗な青年になっていた。
実は春には、同じマンションに住む店の馴染みの客の医師に、不払いの店のツケの請求することが本当の目的だったけど、勤務先がゲイバーであることを隠したくて、本当の目的を言えずにいた。
色々あって、作家の犬明と春は恋人として付き合うことになる。
恋人として付き合うようになると、犬明は嫉妬深い愛が暴走する人になる。
溺愛されているのに、春はいつか別れる日がくるかもしれない、と不安を抱く。
人生感の違い、二人にはちょっとした隙間がある。
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捨て猫を拾った元同僚から、里親を探すまでの間預かってほしいと頼まれて、白い子猫・リーを預かる。
懐いて情が移った頃に、子猫の行き先が決まり、子猫が居なくなった後の淋しい心情。
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飼い主が決まった後、ちょろちょろ動き回る子猫が居なくなって静かになった家の中が、寒い。
ありありと想像できる情景が書かれていて、心が温かくなった。
猫も、犬も、犬的な犬明先生も可愛い。
「猫屋敷先生と縁側の編集者」で、右手を怪我して「一人で生きていられなくなったとでも泣きついたら、同情して戻ってきてくれるかもね」と呟いていた犬明先生。
その後、彼女とヨリを戻したかなぁ、うまくいってればいいなぁ…と妄想してたのですが、犬明先生もBL世界の攻めとしてお仲間入りしちゃったんですね。。。。
彼のスピンオフは特に望んでいなかったんだけどな。
でも、猫屋敷先生の攻めが大好きなので彼がちらっとでも登場すればいいなぁと思ったのと、犬明先生が恋に落ちたらどうなるのか見たかったので読んでみることに。
受けは、元カノの弟とのこと。
そこらへんをちゃんと理解したうえで、特に気にならなかったので買ったんです。
なのに、濡れ場になった途端、「元カノの美冬」が気になって仕方なくなってしまいました……。
だって、犬明先生ときたらエッチもお上手。(ほんとパーフェクトな男だわ。)
あぁ…数年同棲までしてた「元カノの美冬」ともこうやってエッチして、さぞや「元カノの美冬」をアンアンさせてたんだろうなぁ……って思ってしまったんです……。
ちなみにエロ自体はとっても素敵なんですよ。
ほんといいエロなの!!!!!
こんな複雑な気持ちを抱いたのは、凪良さんの「愛しのニコール」以来、二回目。
他作品のレビューで申し訳ないのですが、あの時、私は
「ニコに「めっちゃ好きだ。どうしていいかわかんない。」とか「どうしよう。めっちゃ幸せで死にそう。」とか言ってるけど、絶対コイツ、エンドにもこう言ってたんだろうなぁと思ってしまうんです。」
「ようやく身体を重ねたときも、初めてでガチガチのニコに対して、ニコの反応を伺いながら解せる手慣れた様子に、あぁ…エンドともう数え切れないほど、それこそ猿のようにやりまくったんだろうなぁ…だからこんな手慣れた様子なんだなぁ…こうやってエンドの事も抱いてたんだろうなぁ……と思ってしまう自分がいる。」
と書きました。
自分なりに分析してみると、どちらの作品も「元カレ」「元カノ」の存在感が濃いせいだと思う。
犬明先生の元カノ・美冬は、当然付き合ってた頃のエピソードに、そして犬明先生をどうやって振ったかというエピソードにも、そして別れた後は受けの姉としても結構登場するんですね。
決してナナシの元カノではないんです。
元恋人の存在感がリアルすぎたところが、予想外の感想を抱いてしまった敗北原因かと思います……。
(決して、攻めは童貞でないとダメ!とか、手慣れたエッチは嫌!とかそういう主義ではないです)
受けはとてもいい子だし、犬明先生も素敵なんだけどなー……。
だけど犬明先生が、受けを愛するようになるきっかけが、今ひとつピンと来なかった。
ちらりと登場する猫屋敷先生は、相変わらずで萌えました。好き。
はぁ素敵でした。猫屋敷先生とは正反対の犬明の完璧ぶりがまた違った魅力があってとても面白かったです。
「小説家先生の犬と春」
最初は戸惑いながらも人助けのつもりで受け入れた元カノの弟の春。
その春がずっと作家の犬明に憧れていて初めて会ったのが姉の恋人としてで、好きになった途端に失恋決定とか切なすぎました。更に同じマンションの医師をゲイバーの太客として選んでいた理由もです。
犬明が酔った春の姿を見てしまってから意識していくのにドキドキと期待して行き、春の危機に駆けつけた時は流石に期待を裏切らない作家と歓声をあげてしまいました。
逃げようとする春に告白して2人はセックスするのですが、春の快感を引き出す為に丁寧に抱く姿に好感が持てました。もう絶対にゲイだって気が付いて無かっただけでしょって思いました。
「小説家先生の犬と猫」
2人が恋人同士になってからのお話でした。犬明の協力で太客の未払い問題も解決した春は、円満にゲイバーを辞めてました。同居しながら犬明のアシスタントとして頑張っています。
犬明に大事にされても感謝されても、これはずっと続いて行くわけでは無いとどこか悲観的なんです。だから新しいバイト先も探すし、いつか部屋を出て行く準備をしている。この辺りがとても焦ったく感じます。
ゲイバーで同期だったタケルから子猫を預かった事から2人と1匹から2人と2匹の生活に変わります。一見すると2人の関係は上手く行っているようですが。
でも晶川に会った事で春は自信を失い、タケルが留守中に部屋に居た事で犬明は嫉妬するのでした。
ぶつかり合う事で春は壁を作っていたのは自分自信だと気が付いて、犬明が本当に自分を想ってくれていたと信じる事が出来たのでした。初めて自分から好きだと言う春に犬明がとても嬉しそうで可愛いです。
そこからのセックスはとても濃厚でした。そして甘い翌日に現れたタケルとその彼氏が子猫を迎えに来るのです。子猫が居なくなった感傷に浸る2人と1匹はまた元の生活に戻るのでした。
最後は2人が本屋敷と晶川と食事をするお話でした。春は犬明が右手を怪我をした本当の理由を知る事になります。そして子猫に反応した本屋敷に、子猫を抱きしめて眠る春の写真を自慢して見せる犬明にホッコリさせていただきました。
年上溺愛攻めが好きなので、前作カップルのお話より好きでした。
猫屋敷先生同様、笠井先生なのに着衣の表紙(カラー口絵2枚も95%着衣!)。優しい色合い、穏やかな表情、タイトルの字体、全部好きです、素敵です。内容も表紙に見合って穏やか、アップダウンは控えめに感じたのと、どちらかというと猫屋敷先生のキャラの方が好きだったので、こちらは萌にしました。大人な小説家先生のお話、本編160Pほど+その続き140P超+あとがき。
猫屋敷先生のお話で手をひねってしまった犬明先生。作家生活10年ほどで初めて原稿を落とすという屈辱(きっと静かに怒っていたに違いない)。ほぼ左手だけという生活は不便この上ないけど、ハウスキーパーお願いするのもなあと思っていたところ、1年前に別れた元カノから電話が。独り暮らししている弟が様子を見に行くと言っているとのことで・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
ベス(攻めの飼い犬♡、目で喋ります!)、後半にリー(白い仔猫)、猫屋敷先生&晶川(前作カプ)、攻め元カノ(受けの姉、さっぱりした方)、ゲイバーの同僚、お客少々ぐらい。
++攻め受けについて
受けは密かに、姉の恋人で売れっ子小説家である攻めに、恋焦がれて恋焦がれて恋焦がれていた方。いじらしい。地味男だったのにある日ぷつっとフッきれたらしく自分を解放して、超可愛くなった模様。ゲイバーでもご指名多数のようですが、元がそんなにハッちゃけたタイプじゃないから、指名は可能な限り絞っていたようで良かったです。攻めの飼い犬であるベスとのお散歩等交流も、犬好きだから嬉しかったです。
片や攻めさんは。
何でも出来ちゃうスーパーーーーーーーーーーダーリン!スーパーすぎてダメなんでしょうね。去っていく恋人たちの気持ちがよく分かるわ・・・自分が恋人でいる意義が分んないですもん。ちょっとぐらいダメダメなところを見せてくれる方が可愛いに決まってるじゃん!
そんな攻めさんがなんで受けさんがいないと寂しいって思うようになったのか、というあたりが今一つぴんとこなかったです。最後めちゃ執着するようになっているのはとっても嬉しかったんですけど・・。
ところどころ、前作カプが絡んでくるので、前作お好きだった方は嬉しいのではないでしょうか。私は、猫屋敷先生の「泣かれたらえらくしんどかったからな」というセリフと、晶川が「猫を飼ってるんですかっ?!」と豹変するくだりがめっちゃ好きでした!攻め受けとも無器用な方が自分の好みなんだろうな、と改めて思った一冊でした。
「猫屋敷先生と縁側の編集者」のスピンオフ作。
表題作+書き下ろしの2本立て。どちらも両視点です。
独立した作品ですし、前作が未読の方でも大丈夫かと思います。
ただ、前作でのエピソードやメインキャラクターもちらほらと登場しますので、そちらも読まれていた方がより楽しめるかな。
今回のお話は、ひょんなことから小説家×元恋人の弟がひとつ屋根の下で暮らすというもの。
ゆっくりと進む穏やかな日常の空気が素敵な作品でした。
登場する動物達が愛らしいんですよ〜。
動物がいるだけでも柔らかい雰囲気になりますね。
愛される犬猫も、犬猫を大切に可愛がる人々も、どちらを見てもニコニコしちゃう。
今作のアイドル的な存在・ベスに癒されます。
何といっても犬明先生が好き。
人気小説家である彼。
こちら、かなりのハイスペック攻めなんです。
男前な外見はもちろん、人あたりは良く穏やかな人柄で、締め切りは余裕を持ってきっちりと守る。
仕事へのプロとしての意識が高い辺りも好感度が高いですし、ファンへの対応も非常に丁寧。
料理も出来れば、ランニングをしたりスポーツをしたり、愛犬を愛してやまない一面も持っている。
波風を立てずに穏やかに生きるためか、若干八方美人の気がある部分にすら魅力を感じてしまう。
負けず嫌いなところもGOOD。
と、外も中も男前でどこに欠点があるのか分からないような犬明ですが…
なんとまあ、先日知人のある場面を目撃した際に、驚きのあまり勝手にすっ転んで利き手を怪我してしまい、作家としては致命的なギプス生活を余儀なくされて困っていると。
前作をお読みの方は「あそこのことね」とニヤリとするのではないでしょうか。
そんな、これまでの作家人生の中で過去に無いほど困り果てている彼の元へ現れた救いの天使が、元恋人である女性の弟・春。
姉からヘルプとして犬明の元へと派遣された春から、アパートを追い出されたのでしばらくここに置いて欲しいと請われ、共にマンションで生活を送ることになり…と続きます。
これ、上でも散々萌え散らかしたように、犬明の魅力もすごいのですが、春がまた一途で健気な子なんですよ。
なので、今作は攻めにも受けにも萌えたというか。2人の人柄が好き。
序盤では、ゲイである春が自身が働くゲイバーで寝起きをしていて、犬明に嘘をついてまでマンションに住みたい理由がミスリードのように描かれているんです。
ここからどう恋愛方面に持っていくのかなあ?なんて思いながら読んでいると、春と犬明の会話の中で春の姉の話が出てくる度に、姉に嫌悪感を持っていそうな春の反応に少し違和感が出て来るのですよね。
この辺りの描写がさり気なくて、砂原先生は上手いなあと。
ゲイバーでの春の初恋の話の最後の一文でとどめを刺されたように、うわーっとなりました。
ここを読んだ後に読み返すとすごく切なくて、春が愛おしくて愛おしくて仕方がなくなってしまうな。
見覚えのある右巻きのつむじ。震える手。
酔って眠った春が甘えるようにつぶやいた「先生」
すべてがつながった時の犬明の胸の高鳴りが聞こえて来るよう。
後半の書き下ろし「小説家先生の犬と猫」は表題作のその後のお話。
ゲイとノンケゆえの意識の差やすれ違い、完璧そうだった年上の犬明の少々情けない姿や嫉妬、余裕のなさなんてものまで見られます。
一歩進んだ彼らの姿が見られるのが嬉しい。
心理描写が本当にお上手なんですよ。好きだなあ。
不安な気持ちも言葉にしてしっかり伝えなくちゃね。
犬明先生はこれからもっと溺愛攻めになっていくんだろうな。
こちらも動物達が良い塩梅でキーになっていますね。
ところで、砂原先生の書かれるベッドシーンって、とても色っぽい雰囲気だというのに、セリフ以外の部分があまり直接的ではなく、言葉の選び方が独特ですよね。
上品さがあるというか。そこにものすごく色気を感じます。
そして、春がとっても気持ち良さそうですし、春を愛おしげに、大切に優しく抱く犬明の甘い言葉責めがたまらなく良いんです。
ベッドシーンまで素敵でした。あまーい!
本当に良いのでぜひ読んでほしい。
笠井あゆみ先生による、口絵のカラーイラストが作品の全てを物語っている穏やかで素敵なお話でした。
じゃれ合うベスとリーと、その姿を嬉しそうにカメラに収める春と、それを微笑ましく見守る犬明。
このイラスト、とっても可愛くて好きです。
前作を読まれた方も、まだ未読の方も、犬派の方も猫派の方もぜひ。
ちょっと気になったところがあるとすれば、愛犬・ベスは女の子だと書いてあるというのに、春の想像上の一人称が「ぼく」だったところくらいでしょうか。
砂原先生の『猫屋敷先生と縁側の編集者』のスピンオフ作品。スピンオフ作品ではありますが、前作未読でも問題なく読めます。
実は前作『猫屋敷先生と~』があまりツボらなかったこともあって(いや失礼)今作品も購入をためらったのですが、うん。笠井さんホイホイされてお買い上げ。だって見てください、この表紙を!
めっちゃ綺麗。
そして優しさが詰まってる。
思わず手に取ってしまう、そんな素敵表紙なのです。
でも、中身もすごく良かった。ということでレビューを。
主人公は超人気作家の犬明。
出す小説は大ヒット、原稿の締め切りはきっちり守り、人当たりも良い。そしてイケメンでファンサービスもスマートにこなす。
そんな完璧男性である犬明だが、現在最大のピンチに陥っている。
右手を怪我してしまいギプス生活を送ることになり、その結果原稿が進まないのだ。髪を洗ったり食事を作ったりといった日常生活すらままならず困っていた彼に手を差し伸べたのが元恋人の美冬(注:女性です)。
美冬は、ホームヘルパー代わりに使ってくれていいと弟の春を派遣してくれることに。そしてやってきた春は「家賃が払えなくてアパートを追い出された。お金が貯まるまでここに置いてほしい」と頼み込み、期限付きで同居することになるがー。
というお話。
主人公の犬明は、前作『猫屋敷先生と縁側の編集者』の攻めさんの本屋敷先生の友人。さらに言うと『猫屋敷先生と~』の終盤で本屋敷先生と晶川(編集者で本屋敷先生の恋人)とのキスシーンを目撃してびっくりしてすっころんでの、冒頭の右手のケガというつながりもあります。
そういったつながりもありますし、本屋敷先生と晶川さんは今作品でも時々登場するので、前作未読の方はそちらも読まれると面白いかと思います。
で。
今作品のキーパーソンは、ずばり受けちゃんの春。
彼が犬明先生のもとにやってきたのには、とある思惑があって。
犬明先生が住んでいるマンションに住んでいる、春が「せんせい」と呼ぶ住人に会うことが目的だった―。
この「せんせい」と春との関係は早々に書かれていて、なぜ春が「せんせい」に会いたかったのかといったその謎は早くに解明されてしまうのですが、「せんせい」を軸に紡がれていく春の感情の機微が素晴らしく萌えるのです。
普段ネタバレ上等でレビューを書きますが、これはネタバレなしで読んでほしいです。「せんせい」という存在が春にとってどれだけ大切で愛おしいものだったのか。春の切ない恋心に萌えが滾りました。
そして犬明先生のほうも。
彼はノンケさんで、春は元恋人の弟でもある。年も離れていて、だからこそ春への想いを持て余す。けれどそこはさすがスパダリさんか。そういったものを一息に乗り越えて春を大切にする描写になんとも気持ちがほっこりしました。
春はゲイバーで働いていて、で、ウリのようなこともしている。
しているのですが、あまり経験はないんですね。
そんな春を犬明先生が大切に抱くシーンにも激萌え。
めっちゃエロいの…。
春が痛くないように。辛くないように。
きちんと快楽を感じるように。
そこに愛があるのでめっちゃエロいのに優しいのです。
そして今シリーズで忘れてはいけないのが「モフモフ」。
前作は猫ちゃんでしたが、今作品はワンコちゃん。ゴールデンレトリバーのベスが登場します。美冬と共に迎え入れ、美冬が去った今も大切に過ごしてきたベス。このベスのモッフモフがまたいい味出してました。
猫と犬。
それぞれの特徴を生かしたシリーズでそこもまた良し。
タイトルも良き。
序盤から最後まで終始温かい空気感に満ちた作品で、読後気持ちがほっこりしました。
そして特筆すべきは笠井さんの描かれた挿絵。
今回もめっちゃ素敵でした。ベスも可愛いし。
春の友人である剛琉がとっても素敵だったので、彼のスピンオフも出してほしいなと絶賛切望中であります。