嫌な奴(文庫版)

iyana yatsu

嫌な奴(文庫版)
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神58
  • 萌×29
  • 萌6
  • 中立5
  • しゅみじゃない6

--

レビュー数
20
得点
349
評価数
84
平均
4.3 / 5
神率
69%
著者
木原音瀬 

作家さんの新作発表
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媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
講談社文庫
発売日
価格
¥693(税抜)  
ISBN
9784065162798

あらすじ

杉本和也は、大嫌いな「親友」三浦に会うため12年ぶりに故郷を訪れる。再会した三浦は昔と変わらず嫌な奴だったが、和也はどうしても突き放すことができない。三浦に押されるまま、一緒に暮らすことになってしまい……。不器用な友情と、胸が張り裂けるような愛情と性愛を見事に描く傑作!

表題作嫌な奴(文庫版)

和也の元同級生、小学4年生→27歳
高校教師、小学4年生→27歳

レビュー投稿数20

異常

古い作品とどこかで見た気がして、スマホなど出てくることに違和感を感じましたが、巻末の記載を見るに大幅に手が加わっているようです。

さて、三浦が異常なのはまぁ当然として。いや、その三浦もこの作品が和也目線で描かれているからとびきり異常に見えるのかもしれない。対和也には異常以外の何者でもないけれど、それ以外は小学生時分の横暴以外、そこまで狂気を発揮しているわけではない気がする。小野寺はなんだかんだ三浦を気にかけている。和也と気持ちを確かめ合った親友でありながら三浦を気遣えるということは、小野寺にとって少なくとも大人になった三浦は嫌うほどの存在ではない。かつて子どもを失った彼に、それを知ろうが知るまいが、女がつく嘘で最悪の部類に入る嘘をつくなら、その女は何発か(よりは過剰だったかもしれないが)殴られてもいい気がする。少なくとも子どもができた女とその子を彼は大切にするつもりであったし。
学校に来たところは際立って異常だったし、古い作品だと感じた。今どきそもそも立ち入るのは無理だろうし、学生が自発的に警察を呼ぶだろう。書き直さない程に重要なシーンということでもある。

前置きが長くなった。それよりもフラストレーションがたまるのは和也の異常さである。地の文が和也目線であるせいで、彼の異常さはあまり取り沙汰されない。小野寺が火事のときに彼の異常性に言及してくれたが、和也からしてみれば異常でも何でもないし、和也の気持ちさえ知っていれば当然死体を見に行くはずがない。ただ外野から見れば、元同居人なわけである。そもそも普通は、真っ当な職を持つ男なら尚更、嫌いな相手と同居したりはしない。ちょっとした冗談に義理だてして、同居を始め、気づいたら8ヶ月経ってました、なんてことはない。和也の異常さが語られることが圧倒的に少ない。読者でなければ、男友達と同居とか仲良くしてるとかちょっと照れくさいから三浦に対して冷たいそぶりをしているように見せている、程度にしか思えないだろう。だって自分の意思で引越しして同居してんだから。四万十川行ってんだから。
家からこっそり出て、同級生と自転車で走るのは青春の1ページですらある。なんせ三浦は和也と仲が良いと思っている。和也は心の中で嫌だと思っているばかりで、結局は自分の意思で毎度、旅行にも行くし、見舞いにも行くし、本も買うし(哀れにもゴミ箱行きとなった)、婚約者に会わせたりもする。これで三浦のことは死んで欲しいと思っているとくるなら、とんだ異常者だし、三浦があまりにも哀れだ。

高校生と駆け落ちした女もまた異常である。折角三浦に三浦自身の異常さを突きつけてくれたと思った高校生もまた非常識極まりない若者だったので、結局三浦は自分を省みる機会を失う。
小野寺ももうそっとしておけばいいのに、やたらと関係を引っ掻き回してくる(が、これは和也が心底三浦を嫌っていると知っている読者の感想で、小野寺からしてみれば、和也の三浦が嫌いなフリはハイハイまたそれね、というところだろう)。

そんな異常者ばかりの本だった。
『箱の中/檻の外』に心動かされた読者のひとりだけれど、その主役たる2人は「嫌な奴」ではなかったもんなぁ。だから違う結末を迎えられたし、自分のこの作品に対しての評価とは違う評価をもつんだろう。三浦と和也の関係性は彼らの人生の結末までは語られなかったけれども。

0

最後の最後であれはズルい

嫌な奴、この主人公って嫌な奴だよな、と思いながら読み進めた。でもこれも人間らしさだよな、とも思う。本編のほとんどを和也視点で語り、最後の最後でチラっと三浦視点を見せてくるのはズルい(良い意味で)。読後は三浦のことで頭がいっぱいになってしまった。

和也は外面が良く、嫌いな三浦とも表面上は仲良くしているが、陰では悪口三昧。子供時代はそんな態度も分かるけど、大人になっても三浦を怖がり、不自然にこだわっている。その根源に何があるのかは、結局最後まで自分自身にさえ隠し続けたのかな。言い訳と自己弁護の多い心理描写からもそう思う。

三浦は怖い。和也視点で恐怖が伝わってくるせいもあるが、どこか得体の知れなさがある。何かが欠けているように感じるのに、その何かを言葉にできない。子供時代の和也を優しいと言って執着する姿を見ると、なぜか泣きたくなった。

家に転がり込み、嫌がられても拒絶されても、どこまでも和也につきまとう三浦はただの迷惑ストーカーなのかもしれない。でもそれだけだと思えないのは、和也には三浦の執着を受け止め続けた過去があるから。

小野寺の忠告も聞かず、三浦の一番で在り続けた和也が今さら逃げても無駄なのは、自業自得と言えなくもない気がする。和也はこうなることを分かっていなかったのか、実はちょっと予想してたんじゃないかと疑ってしまう。

三浦の命が尽きるまで、この関係は変わらないのかな。終わり方があまりに切なかっただけに、あれが最後の会話で、三浦の最期だったりしないよな?と不安になった。余韻がものすごい作品、とても良かった。

0

愛なんていらない執着があればいい

木原音瀬先生の作品は設定や展開がすごく好みのものばかりなのですが毎回オチだけ受け入れられない!ってことが多く今回もびくびくしながら読みました。
結果、この作品は最後まで好きでした!
途中なんでやねん!ってところもありましたが、私も木原節に慣れてきたのか今回はこれか〜って感じで割と流せました笑。

とにかくこの二人の関係が大好きすぎたのでもう細かいことはいいです!愛し合ってない、信頼関係が築けていないカップルが大好きなのですが、この二人はそれがすごくてどちらからも純粋な愛は0(元々はそんなことなかったはずなのにね)なのに離れられない。逃げられない。苦しくて悲しくて怖くてしんどい地獄。辛くて楽しかった。

最後の三浦がまた悲しくてやるせなくて素晴らしかったです。どうしても三浦に肩入れしちゃう…どこで間違えたんだろうね…でもこれでいい。二人は良くないだろうけど私は読んでて楽しかったです。

1

自分にかけた呪い

再読。

プライベートでも仕事でも死ぬほど忙しく精神的に余裕のないこの頃。
ふと夜中に目覚めてしまい、眠いのに寝付けず、こんなことをしている場合じゃないのにと焦りながらも現実逃避でこの本を手に取りました。

さらに追い討ち。

この追い込まれた気持ちを記録として残さなくては、、、と変な使命感に掻き立てられてレビューします。

嫌な奴

このタイトルの意味。
終始、受けの和也の視点で物語は進みます。
自分に執着する、攻めの三浦から必死で逃れる和也。
執拗に追いかける三浦。

逃げたかったのは、何からか?

途中から、和也の三浦に対する認知にズレがあることが明らかになります。
和也の中では、転校初日の印象のままの三浦のままです。
彼の内面に触れることを頑なに拒絶し、認知の修正を拒否します。
客観的に見ると、三浦は人たらしと言えるほど魅力的。
けれども、和也の中では、乱暴で自分勝手で鈍感な奴のまま。

諦念から三浦を受け入れはじめた和也。
ようやく認知のズレも受け入れはじめます。

小学生のような幼い情緒から、成長をはじめます。
これは、和也の成長物語と受け取りました。




1

愛の不条理

 何か面白い小説が読みたいと思い、木原音瀬ってBL界では巨匠らしいし読んでみっか〜と軽い気持ちで「美しいこと」「箱の中」の文庫版を読んだのですが、す、っすげえ‼︎と衝撃でぶっ飛んでしまいました。

 私は面白かった作家の本をローラーするヘキがあるのですが、とにかく作品数が多いので、文庫になっているのを拾って読んで、出会ったのがこの作品です。やっぱりすごい〜すごく面白いよー!

 子どもの頃から苦手だった男に粘着され、大人になってもなんやかんやとそばを離れてくれず、結婚が決まってやっと逃げられると思っていたら婚約者に式当日に駆け落ちされ、戻ってきた男に最終的に手ごめにされる…という、ノンケの男子からしたら悪夢でしかないお話。でもこれが、腐女子の目を通すとなぜか良い…。なんだろう、ラブもときめきもなく、荒涼とした物語なのに、なんでこんなに面白く感じるんだろう。不思議です。

 この話の見どころは、やっぱり執着攻めのものすごさでしょうか。授業中に教室に乱入してきた三浦に、学校の中を追いかけられるシーンは圧巻です。あと、いきなりシャツを引き裂かれるところでわくわくしてしまいました、すみません笑

 攻めの三浦は、杉本に嫌われていることを知りつつも、離れようとしない。自分も相手も傷ついてもうぐちゃぐちゃなのに…。心はくれないんだろう、でも体に触れれば温かいとか、出会わない方が良かったとか、セリフがもう切なくて、一方通行の愛の悲しみを感じます。最後の一文にも胸を締めつけられました。三浦に感情移入しているのかも…
 三浦と比べると、どうしても杉本は見栄っ張りで情のないやつに感じてしまいます。彼も相当かわいそうなんですが。最後の方で、怒りと憎しみの中にあきらめの安寧を見い出しているような描写がありました。

 愛って決して甘いだけのものではなく、不条理かつ理不尽なものだということを思い知らされる傑作だと思います。いやあ、本当に木原作品はすごかった。

2

嫌な奴

小学生時代の凶暴な三浦のイメージが染み付いて大嫌いなのにかといって無下に扱うことも出来ずズルズル関係を続けた結果、救いようのない状況になる話
和也の本性が垣間見え初めてから三浦が傷つく様子が痛々しくていたたまれなくなる。一方的に追い詰めているのは三浦なのに。
無理やり体の関係に持ち込めても本当の意味では受け入れて貰えない。でも心が反応を示さなくても身体は応えてくれる。それが自分には優しいんだと吐露する三浦が哀れで愛しくて泣けます。
全く救いようがないかと思いきや、終盤の和也のエピソードから三浦を受け入れつつある事が窺えました。
なんだかんだ死ぬまでずっと一緒に居そうな二人。

新装版と旧版どちらも読みましたが、セリフなど変更されてる箇所が多く見られます。新装版では初回限定でその後の2人の様子が書かれたリーフレットが付いてきました。

1

萌えるか?基準だと中立・・・

このずっしり来る読後感。
これぞ木原音瀬。という作品です。

中立にしていますが、作品としては神評価です。萌えるポイントがあるか?というとほぼ無い(苦笑)
もうBLって世界じゃおさまらないのかもと思います。
というか私はビブロス版を読んだのですが、文庫版はBLレーベルじゃないのですね。比留間久夫さんのYesYesYesのような読後感。

この受け(和也)の偽善者というか、幼い頃に「みんなと仲良くしましょう」という先生の言葉で縛られ、嫌いな三浦のことも嫌いと言えない。三浦は和也を好き(このときは友情だったのかも)で同じ高校に行くために必死で勉強をしたり、親友のような立ち居振る舞いをしていたために離れられない状況に。

逃げ出すしかない、どうやったら逃げられるのかと考えていたときに、母親の再婚を期に引っ越しする。そのまま大人になって高校教師になったりしている訳ですが、ひょんなことから三浦と再会してしまう。
でも再会の前からずっと気にしていたので、勝手ながら読み進めるうちに結局心の奥底では好意?それとも情なのかな、があったのではないのかと思いました。

この三浦がめちゃくちゃな執着(いや、ストーカ的なんじゃなく)で和也を蝕んでいく・・・・その様が描かれています。
和也がはっきりと決別するとか、はっきりした行動を取っていたら、友人の小野田にも話を出来ていたら、、、壊れなかったのかもな。(和也が明確に壊れた表現はなかったのですが、そう読めたんです)
嫌な奴だけど切り捨てられないっていうのは、男女間でもありえるし、それが同性だから余計ややこしいことになっちゃっていて。三浦も同じこと言ってましたけど。彼らはどうやったらぐるぐるから抜け出せるんでしょうね。

この先の二人がどうなっていくのか、、、
モデルがいらっしゃるとも書かれているのですが、どうしても気になってしまう作品でした。
また、他の方のレビューを見るとビブロス版と文庫版で改定されているところがあるようです。ですので、私の感想はあくまでもBL版!のビブロス版のものです。
文庫版ではちがった受け止め方になったのかも知れません。。。
逆に変更しなければ講談社文庫では出せなかったのか、それとも作者の意図でそうしたのか、ちょっと気になりました。

0

どんなに嫌われていてもそばに居たい

幼馴染同士の何年にも渡る片思い。

主人公2人は幼馴染同士なのですが、受けの和也は攻めの三浦の事が嫌いで何とか逃げようと悩み、もがき続けます。
三浦はどんなに気持ちが通じなくても嫌われていても、何とかして和也のそばに居ようとするのですが、その姿が健気で泣いてしまいました。

2人の気持ちは最初から最後まで交わることはなく、それでも傍に居続けるという不思議な関係が続きヤキモキさせられました。

ずっと和也視点で、最後に少しだけ三浦視点の話があるのですが、悲しくて涙が止まらなかったです。

1

愛とはなんだ。情とはなんだ。人間の深い業とは。

他のレビュアー様のレビューを、わかるーーー、わかるーーーと頷きながら読みました。愛とは温かいものだけじゃないんだな、それは行き着いた執着となって、もはや本人たちすらも、自分を行動させる深層心理を理解できないでいる。すごい本でした。

あらすじは他のレビュアー様が書かれているので感想を書きます。

とにかく、三浦、杉本の非常に繊細な心理描写を淡々と延々と書き綴り、物語の軸となるところに一切のブレがない。木原先生の想像力と語彙力、表現力は凄まじいもので、秀逸とかそういうレベルでは語れないほど。作品世界に惹き込む描写力は、他の追随を許さないほど圧倒的だと思います。

杉本に執着する三浦の様々な行動は恐怖です。杉本にどんな風に思われても、冷たくされても、その執着をやめることがない。じわじわ、杉本のテリトリーに入ってくるんですよね。遠慮もなく、本当に一方的に。

一方、杉本は三浦を徹底的に嫌悪するも、外面だけはよく、三浦を心底疎ましく思いながら、世間体や周りの目を気にしてはっきりできない。杉本は自分の教え子から「偽善者」と呼ばれ、ハッとするんです。自分が三浦に対してしてきたすべてが「偽善」であることに。

三浦が激しい執着の一端を見せるのは、決まって「杉本が黙って自分の前から消えたとき」なんですよね。杉本が高校進学直前に、自分に何も言わずに消えてしまったことが相当のトラウマになっていて、見境なき執着を見せる。杉本の勤める高校にまで押し入って追いかけるなんて、恐怖以外の何者でもないです…。

この作品は、愛とは何か、三浦の杉本に対するそれは、愛なのかなんなのか、ということを深く考えさせられました。三浦もわかっているんですよね、すべて。自分のこの抑えきれない執着が杉本の幸福には繋がっていないということ。ただ、三浦は杉本に優しくしてほしい、ただ、そばにいたい。本当にそれだけなんです。でもはっきり言ってめちゃめちゃ自己中ですよね。そこに、杉本の心はないし、明確に拒否されているんだし。でも、自分の抑えきれない欲望のために、執着をやめられない。

心をくれない、愛してくれない。けど、身体を繋げているときは優しくしてくれると感じられる。隣に眠るだけで安心していられる。身体だけでもいい、杉本という男がいてくれるなら。そこまでに思う三浦ってほんとーーーに、闇が深いなぁって思いました。

三浦が前妻との間にもうけた子供が夭折してしまったり、その後付き合った女性に妊娠していると嘘をつかれ、憤怒する描写があって、三浦にとって子供って本当に愛情を寄せられる絶対的なものなんだなって思いました。それは孤独な三浦のたった1つの断ち切れない絆になるものであり、この描写から、三浦の抱える孤独や過酷な過去を生き抜いてきたしんどさみたいなものがわかって、三浦が本当にかわいそうに思ってしまいました。だからこそ、杉本にあそこまでの執着を見せるのかなと。セックスを重ねた杉本に対して、孕めばいいのに、と話すセリフがあるんですけど、三浦は本気でそう思っているんだろうなと。自分にとっての愛情の絶対的なもの。愛に飢える三浦の奥底を丁寧に描いています。

杉本も杉本で、まぁ本当に嫌な奴なんですよね。私はこの作品の題名は、杉本のことを言っているんだと思いました。杉本も全然ブレないんですよねーー。どっかのタイミングで絆されて受け入れるのかな?と思いきや、ずーーーーっと、嫌悪(笑)ずーーーーっと拒絶(笑)ずーーーーっとすきあらば逃亡したい(笑)本当に二人の間に、愛は生まれないは、ずーーーーっと嫌いなんです、三浦のこと。これ、ほんとにすごいなって(笑)こんな作品初めてでした。でも、すごい。本当に徹底的に変化がないんですよ、杉本も。一貫して、三浦が嫌いだし、終始イラつくし、憤っている。その描写も生々しくて、細かくて、本当に木原先生すごいなーって思いました。脱帽です。

身体の関係になってからは、もはや杉本は無駄な抵抗せず、受け入れている。そのほうが楽だし、もはや、杉本自身もわからなくなっているんですよね。でも、三浦が入院することになり、やっと一人の時間、一人寝ができるようになっても、そこに三浦の存在を確認してしまう。ストーカーのごとく電話がかかってきて、ウザいな、めんどくさいなって思っても、三浦の存在がなくては安眠できなくなってきている。

これ、なんですかね…。杉本のなかに、ある種、三浦から逃れられなくなったことへの絶望感とかそういんじゃなくて、別の感情がうまれているんですよね。それは愛とはまだ呼べないものだけど、ある意味、三浦を受け入れたってことなのかなと。

単行本化を記念したSSが本の中に入っていて、三浦と肉体関係を持ってから何年後かの話なんですけど、すでに三浦との同居、というか、三浦と生きていくことを、半ば傍観者のように認識する杉本が描かれていました。でも、三浦との肉体関係は完全に杉本の一部になっていて、自分自身の身体を三浦に委ねるほどになっています。

つまり、お互いがお互いに向けたベクトルは違う方向に伸びてはいたものの、結果、同じところに着地はして、そこにいわゆる一般的でいうところの愛と呼べるものはなくとも、(三浦はあるかもしれないけど)お互いを受認して、なんというか、同じ想いではないんだけど、それぞれにいろいろ決着させて一緒にいる、という選択をしたのかなと。うーん…これをハッピーエンドというのか、という感じですが、杉本も長い年月、三浦という男に囚われてきたわけだしね…。結果、落ち着いたのかなと。

木原先生の作品は、人間突き詰めると…みたいなテーマが多いように思いますが、それを読者側に考えさせるだけの圧倒的な筆力に、もうなんもいえねー状態になります。あまりに圧倒されて、神以外の評価は考えられなかったです。

5

NoTitle

嫌な奴とは三浦の事なのでしょうがあまりそう思えません、粗暴な時期があったのは確かですが中学を卒業する頃には普通の人格になってます。それを否定するのは和也だけでそれでいてはっきりと拒絶せず相手を自分の隣に居させる。嫌なら拒否すればいいわけでそれがプライドからか本心は嫌でないのかはっきりしない。

二人は同じ進学校に受かりますが和也は離れるために遠い土地へ引っ越し、三浦は一人で全寮制学校に通う事になります。独居で車椅子の三浦の父親は家具で下敷きに、それで和也を追いかける三浦を理解できず物語に入り込めませんでした。

0

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