耳から恋に落ちていく

mimi kara koi ni ochiteiku

耳から恋に落ちていく
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神42
  • 萌×256
  • 萌25
  • 中立7
  • しゅみじゃない4

--

レビュー数
16
得点
516
評価数
134
平均
3.9 / 5
神率
31.3%
著者
月村奎 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
志水ゆき 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
価格
¥620(税抜)  
ISBN
9784403524899

あらすじ

なりゆきで料理研究家になった渚に、TVの仕事が入った。新番組では口べたな渚と掛け合いをする天の声もキャスティングされているという。その声優・横田の声を聞いてびっくり、それは渚がいつも見ている深夜アニメのレッド隊員だった。気さくに接してくれる横田に緊張しつつも収録は楽しく、やがて仕事にも前向きになる渚。ところが横田との距離が縮まるうちに、ただのファン以上の気持ちを抱いてしまい…?

表題作耳から恋に落ちていく

渚が夢中のアニメに出演中のイケメン声優
料理研究家の母を持つ二世料理研究家

その他の収録作品

  • もっと、耳から恋に落ちていく
  • ますます落ちていく
  • あとがき

レビュー投稿数16

とりあえず、めちゃくちゃ甘くて可愛いよ!(≧∀≦)

月村先生のしっとり切ない系のお話も好きなんですけど、こんなひたすら甘くて可愛い系のお話は更に好きだったりします。
超ネガティブ思考で空回り気味で、その上わりと迂闊な主人公が、王子様的攻めにグイグイ絡めとられて行くのが楽しいったら無いですよ。

またこの超ネガティブな主人公、書き下ろしの方では結構な天然ぶりも発揮してくれるんですよね。
そつの無い王子様風だった攻めが、若干余裕を無くして振り回されてるのにも、楽しくて仕方ないですよ。
いや、受けの前で格好つけて必死でやせ我慢してる攻めが、嫉妬でちょい情けない姿を晒しちゃう言うのが、個人的ツボなのです。

内容ですが、人気声優・横田×料理研究家・渚による、甘くて可愛い日常系ラブコメになります。

パワハラによるストレスで身体を壊し、社会人一年目で退職せざるをえなくなった主人公・渚。
母親が料理研究家だった事から、なりゆきで二世タレントの料理研究家としてデビューしたんですね。
そんな中、自身がメインとなる料理番組の仕事が入りますが、口下手な自分をフォローして掛け合いと言う形で進めてくれる天の声の担当声優ー 。
それが、渚が憧れている深夜アニメの「レッド隊員」だと分かりー・・・と言うものです。

まずこちら渚ですが、超ネガティブ思考で自己評価の低い青年になります。
と言うと、鬱陶しい受けを想像すると思うんですけど、これが真面目すぎて空回り気味な所が微笑ましい、こう放っておけないキャラでして。
何だろう・・・。
会話で仕事の話になれば、「何の仕事ですかと世間話的に聞いた方がいいのか。そんな立ち入った話を聞くのは失礼なのか」と悩んでるうちに不自然な間が空き、ますますテンパる。
で、後から「会話の一つもまともに出来ないなんて、自分はなんてダメな人間だろう」と落ち込むみたいな。
これ、本人は自分の事を「なんの面白みも無い人間だ」と言ってますが、この思考回路だけで相当面白いですよ。
こう、両親からも愛されて大切に育てられと、大事にされてる人間特有の素直さを持ってる為、嫌味と言うのが無いんですよね。

で、そんな彼のお相手となるのが人気声優・横田。
優しくて紳士的で気さくでと、パーフェクトな攻めになります。
ついでに、渚は頭から「好い人」だと信じきってて気付いてませんが、意外と強引で策士だとも思うんですよね。
自分の武器(声)を上手い事使い、かつ断りにくいように仕向けた上で、グイグイ渚のテリトリーに入ってくる。
いや、こういう攻め大好きだけど!

まぁ、そんな感じの二人で、ここから可愛い恋愛劇。
元々、渚にとって横田は憧れの「声」だったワケですが、番組の収録で本人を知り、その気さくで優しい人柄に恋に落ちちゃうんですね。
これが、甘酸っぱくて仕方なくてですね!

前述の通りやや強引に、横田が渚を食事だの自宅だのに誘い出し、二人が少しずつ距離を縮めて行く様が丁寧に描写されてます。
声優仲間も交えて楽しい時間を過ごしたり、一緒に料理をしたりと、もうひたすら「甘っ!」て感じなのです。
また、超ネガティブな主人公ですので、(自分なんかに好かれてると知る事で)嫌な思いをさせてはならぬと、自身の恋心をひた隠しにするんですよ。
で、普通に接しようとすればするほど、ちょっとした事で過剰に反応しちゃったりしてテンパってるのが、もうめちゃくちゃ可愛いのです!
いや、こういう空回りしまくりのキャラを書くのが、本当にお上手ですわ。
「自分は面白みの無い人間で・・・」って、だから十分面白いって!

と、そんな日々を過ごすうちに、意欲的で仕事に対しても誠実な横田の影響により、少しずつ前向きになって行く渚。
しかし、横田のライブに行った事をキッカケに、彼が遠い存在なのだとショックを受け・・・と言うスレ違いです。

こちらですね、横田が超行動力があるので、そこまでヤキモキするまでも無く解決だったりします。
いや、誤解が解ける瞬間と言うのは毎回滾りますが、今作ではニヤニヤが止まらない、素晴らしい可愛さなんですよ。
横田は横田でライブを見られた事により、自身が軽薄な人間だと思われたんだと誤解してるんですね。
で、「だから渚くんには来て欲しく無かったのに」的に告げる。
それを聞き、「自分の恋心に前から気付いていたんだ。こんな気持ち悪い男に、ファンが集まるライブに来て欲しくなかったんだ!」と、更にショックを受ける渚・・・みたいな。
こう、二人の認識と言うのは明らかにズレてるのに、何故か噛み合って行っちゃうコント系のスレ違いなのですよ。
また、渚はわりと迂闊な為、会話の途中でペロッと自分の恋心を言ってしまう所まで、セットで楽しくて仕方ないなぁと。
とりあえず、スレ違ってるのに読者は笑いが止まらないと言う、お目出度いパターンなんですよね。

と、ここまでが雑誌掲載作で二人が結ばれるまで。
ここから書き下ろしで、結ばれた二人のその後となる「もっと、耳から恋に落ちていく」と、こちらも書き下ろしの横田視点によるSSになります。

この「もっと、耳から~」ですが、気持ちは通じ合ったものの、極度に緊張しいの渚を気遣い、なかなか最後まで結ばれる事が出来ない二人。
そんな中、同じ二世タレントで料理研究家の渚の幼馴染みが表れ・・・と言うものです。

こちらは、格好つけてやせ我慢をしていた横田が、嫉妬から本音を漏らすと言うのが萌え処。

渚ですが、やや横田を偶像化してるんですよね。
彼が初めて嫉妬と言う人間くさい部分を見せた事により、二人の距離がグッと近付くと言うのが素敵です。
ついでに、これをチャンスとばかりに上手い事言いくるめ、渚とのエッチを成功させる横田にもニヤニヤします。
いや、とりあえず良かったね、横田。

あとSSですが、こちらはひたすら甘々。
いかに渚が可愛いかと言うノロケが、横田視点で延々と語られてます。
もう勝手やっててくれい!って感じですかね。

16

恋のパワーってすてき

 二世料理研究家ではあるけど、親の七光りだけでお仕事してる、なんて思っているとっても自己評価の低い受け様である渚が、新しい料理番組で憧れていた人気声優である攻め様の横田と親しくなって恋が成就するまでがほっこりと甘く優しく綴られてます。


 一度社会人としての仕事を挫折している渚なので自分自身に自信が持てず、今の料理研究家としての仕事も流されてる感が否めない。
真面目に一生懸命だけど、人見知りで遠慮遠慮しくてスタッフさんとの付き合い方もよくわからない、人付き合いは不器用な渚。
 そんな渚の不器用さを繊細でかわいい、とにこやかに距離を詰めてくるのが料理番組の天の声として見守っている横田。

 横田はけっこうぐいぐい距離をつめようと頑張ってるけど、なんだか押し付けがましくない、というか爽やかでかわいく感じちゃう。
そして、横田の仕事への姿勢を聞いて、自分も仕事への気持ちを見直して自分から動いていこうとしている渚の頑張りがいい。

 自分に自信が持てない渚だから、自分から告白、なんてまず無理だよね、と思っていたのに、まさかの勘違いからの自爆のような告白だなんて。
想定外でしたわー。
でも、おかげですぐに巣の中に引っ込んじゃうような渚と最短距離で相思相愛になれたんだから、よかったね。

 ただ、えっちな雰囲気になると、イケボすぎる横田の声に渚は動悸息切れ過呼吸のような症状になってなかなかそれ以上すすめない2人。
さらりと大人の余裕を見せていた横田だけど、内心怖がられているのか、とじれじれのようだったようだけど、でもね、これわかる、わかるよ渚ーー。
だって、大好きな恋人が、憧れてたイケボで耳元で愛をささやいて来るんだよ。
そりゃー、はわわわわわってなるって。
なぞの変死を遂げそうになるよね。

 書き下ろしの最後の横田視点のお話がものすごーく甘かった。
横田が渚に名前呼びをお願いするのだけど、もうねー、渚がかわいいったらありゃしない。

 
 仕事のために恋をセーブしていたという横田は、渚と恋人になってプライベートが充実して幸せになったらこの幸せをファンの人へ、と仕事に意欲的に気持ちに。
渚も、楽しく仕事を頑張っていこう、前向きな気持ちになっていて、恋のパワーっていいな、ステキだよね、と微笑ましく思ったのでした。


 そうそう、イラストは志水ゆき先生。
イベントに参加した渚に横田がおちゃめにウィンクして、真っ赤になってドキドキの渚のイラストがとってもかわいかったー。
ラストのえちシーンはとっても色っぽくてステキ。
目の保養なステキなイラスト、ありがとうございます。

2

恋のパワーは、自分を変えてくれる。-受け君の可愛さに萌え、踏み出す勇気ももらえる物語

すごく良かった…月村先生ならではの読みやすい文体で、しっとり、じんわり胸に沁みる、優しい物語でした。

自分に自信が持てず、ついなんでもネガティブ思考してしまう受けの渚の言動には、共感しきり。
渚視点で「わかるなあ…」と思ったり、憧れの人との恋愛に過呼吸を起こすほど(!)ドギマギしてる姿を「がんばれ!」と心の中で応援しながら読みました。

声優 × 料理研究家の、人気者同士のカプです。(受けの渚は、自分が人気者だとはあまり自覚していないのですが)

主人公は、料理研究家2世の渚。彼はパワハラに耐えかね、新卒で入社した会社を一年で辞めて、それ以降有名料理家である母の仕事を自宅で手伝って暮らしています。自分がメインのテレビ番組のオファーなども来ているのですが、”ちゃんとした仕事に就いていない”という思いや、上手に人間関係が築けない自分のコミュニケーション能力の低さに劣等感を覚え、自分に自信が持てずに日々過ごしています。

そんな渚が、ひょんなことから大ファンの人気声優、横田と料理番組で定期的に共演することになりー

と続くお話。

卑屈になりがちな渚の言葉を、ポジティブに言い換えて「すごい才能がある」と渚のことを認めてくれる横田。
そんな横田に感化され、以前のように「不釣り合いな自分は身を引いた方が…」ではなく、「少しでも釣り合う努力をしよう」と思えるようになった渚の内面の大きな変化と成長に、自分も勇気がもらえました・:*+.

そしてもう、付き合い始めた後の、渚の無自覚天然っぷりと、それにやきもきする横田の描写が面白くて面白くて!
幼馴染と二人きりになるのを心配し、独占欲から額に汗をかき飲み屋に駆けつけた横田を見て、「走ってくるほど人を惹きつける飯島(幼馴染)の魅力はすごいんだなあ」なーんて思ってる、渚くん…罪作りな男だ( ̄∀ ̄)

その後、誤解を解いた後の横田の「ばかなオオカミだから、もう『待て』はできません」で私の萌えが天井を突き抜けました…

”恋は仕事への意欲や熱意を削ぐものではない。むしろ、自分を癒し、幸せを感じれば感じただけ、それをたくさんの人に還元したいと思わせてくれるもの。”

そんな横田の思いに顎をガクガクさせて頷きたくなるお話でした(●´ω`●)

そうそう、最後の攻め視点のお話で、名前呼びしてくれた分だけキスをあげる、と言われた渚の5回連続「ゆうひさん」呼び、攻めと一緒に最っ高に興奮しましたよ〜!!! 渚くん…可愛いにもほどがある!!!

0

モエルンジャーのレッド隊員は超イケボ

先生買い。安心の月村先生お話に加えて、サブキャラたちがとっても明るく、そして声優話が面白かったです!天然無添加天使受けが好きでしたが、もう一押しインパクトが欲しいなあと思うので神より萌2にしました。雑誌掲載分120Pほど+その続き80Pほど+攻め視点の後日談15Pほど+あとがき。

コミュニケーション能力に難のある渚。就職したものの、教育係にパワハラされ敢え無く退職。著名な脳外科医の父と料理研究家の母はゆったり「一生養ってやるよ」と言うのでめでたく引きこもり生活を送っていましたが、超多忙な両親の代わりに家の事をちまちま丁寧にやっていたところ、ルックスや暮らしぶりがウケる!とプロデューサーの目に留まりテレビデビュー。そして深夜の5分間料理番組のメインとなることになったのですが、その相棒として参加したのが大好きなアニメ、モエルンジャーの声優で・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
四ノ宮(声優仲間、陽キャラ!)、海崎、向井(声優仲間)、飯島(妻子持ちの料理研究家、受けの昔からの知り合い、陽キャラ)ぐらいかな。サブキャラがみんな明るくってホント楽しい!

**好きだったところ

受けの無添加100%な天使度合いが最高に良かった!そんなに強調した書きっぷりじゃないように感じられたのも良かったです。前半はコミュ障部分が勝って、不愛想な印象なのですが、攻めさんの一生懸命なところに引きずられて前向きになった後はとにかく「無自覚無意識に可愛い」く、たまりませんでした。

「こんな私が」という後ろ向きキャラなんだけど、イケボにきゅんきゅんで「失神する・・・」という様子なところや、実際に耳元でささやかれて過呼吸になるくだりなんかは、あーーーーーわかるーーーーーーーと一人萌え転げです。すごい美人さんなはずなのに、自分の魅力なんかこれっぽっちも自覚無くて、自分の推しの前では「口はくはく」させて緊張しまくっている感じなのがとても好きです。

攻めさんはイケメンという程度ぐらいにしか感じなかったので、月村先生テイストでは無いかもしれませんが、もうちょっとだけ腹黒っぽい方が好きなんだよな・・と思いました。(途中、嫉妬を隠したクール笑顔の挿絵があるのですが、そこはめっちゃ好き!その表情のまんま他の部分でももっと腹黒さを出してくれるとめっちゃ嬉しいのにーーーーー)

私としては声優ネタがお好きな方や、すっとぼけ部分のある無添加天使ちゃんが好きな方におススメしたい一冊でした。面白かった!

8

心が疲れているときに♪甘くて優しい癒しのサプリ♡

ずっと気になっていた月村先生の小説。
新刊が出た機会に初読みですが、期待していたとおり、甘く優しく可愛らしい恋愛描写がとても好きでした♡

若手料理研究家の渚は、深夜の5分間の帯番組を持つことに。
そこで“天の声”として参加することになったのは、密かに声に惹かれていた、アニメ『深夜戦隊モエルンジャー』の“レッド隊員”の声優・横田で…。
コミュ障で恋愛経験もない渚と、気さくでコミュ力の高い長身イケメンの人気声優横田。
そんな二人の恋愛や、仕事での成長を、甘く描いた本作。

受けの渚は、人見知りが激しくコミュニケーションが苦手で、自己肯定感が低い子です。
サラリーマンとしてうまく行かなかったことが、さらに渚から自信を奪ってしまっています。
有名な料理研究家の母と、脳外科医の父を持ち、本人はアイドル並みのルックス。
明るくチャキチャキした母親とタイプは違えど、料理の才能は受け継がれているし、インテリアやテーブルコーディネートも上手で、居心地のよい空間を作り上げることに長けてもいる。
なのに、それが才能であり天職であることに気付けていない。今の仕事に自信が持てない。
「家事能力が高くてもなぁ…」という、どこか自分の好きなことをしているだけのそれが、仕事に結びつかないものだという先入観を持っている男の子なのです。
家事でも趣味でも「得意」を超えたら、それはプロの仕事になり得るもの。
なので、(ええい!もっと自信を持てぃ!)などと勝手に叱咤激励しながら、熱くなって応援してしまいました。

生まれながらに与えられた高い初期スペックを、存分に生かして華やかに生きることが出来る人もいれば、それを荷が重く感じて器用に使いこなせない渚のような人もいる。
もどかしいし、面倒くさい性格の子です。
そしてそれは渚自身もわかっている。
そんな彼は私にとって、ものすごく共感出来ると同時に、成長を応援したくなるキャラクターでした。
ほんっとにネガティブで卑屈で、攻めの横田曰く「物事を悪い方にとる天才」なウジウジくんなんだけどね。
そこがなんだかいじらしくて、可愛らしくて。
不器用な子、結構好きなんです。

この作品では、横田が渚と恋愛関係になる前からずっと、ありのままの渚のことを、ものすご〜く愛おしく感じてるのが伝わってくるんです。そんなところに、とても胸があたたかくなりました(*^^*)
王道タイプの攻めですが、横田くん、くっそカッコイイですから♡

テンパりすぎてつい渚からしてしまった告白〜初めてのキスシーンなんて、もう可愛すぎて、ドキドキしすぎて、悶えまくりでした。ウブなのにめちゃくちゃエロいキス♡
それにはっきりと男らしく応えてくれる横田くーん!何度でも言う。きみ、終始カッコよすぎるんだー!!!

横田のことが好きすぎて緊張しまくる渚は、身体に触れられると過呼吸気味になるほど。
なかなか関係は進みませんが、そんな渚を受け入れ、無理強いしない横田は本当に優しい。
でも横田が完璧すぎるのもあり、渚はいつまで経っても自信がなく、横田の気持ちに鈍感なまま。
それが横田を傷つけてしまう場面ではさすがに鈍感すぎる渚にイラっとしたけど、そのおかげで“雄”になった横田が見られて幸せ♡

お料理やインテリアへのこだわり、梅仕事やジャム作り、そんな丁寧な暮らしが身についている渚と、声優として仲間たちと切磋琢磨しながら明るく向上心を持って生きる横田。
そんな2人の恋が、成長が、優しく綴られていて、とても好印象でした。
志水ゆき先生の挿絵もイメージ通りの美男美男で最高でした。

本当に甘くて甘くて、特にSSの『ますます恋に落ちていく』なんて甘い言葉の応酬で、砂糖の塊ほどに甘いです。それはまぁ、笑えるほどに。

…はぁ、甘いって何回書いたかな。
この甘さに癒されること間違いなしの一冊ですよ♡

8

神声優もほっこり恋愛したい

読後の印象だけで言うと、あとがきで先生が書かれている通り確かに地味。

内容も「料理研究家の男の子が仕事を通して好みの声の声優さんと仲良くなり、お互い惹かれていく」というもので、展開の起伏は少なく、エロもあったっけ??と思っちゃうくらい極少量(最近読んだ作品の中では断トツで少ない)。すごーくなだらかで安全運転なBL小説です。
刺激たっぷりの作品に馴れているとひょっとして物足りなく感じてしまうかも…

でもこれ、まさに作中に出てきた渚くんのスタイルそのもののような作品だと思いました。

作品を読んで頂くとすぐにわかるのですが、渚くんの料理って特別な材料や技は使わず、基本に忠実なのにちゃんと美味しく美しい。料理に限らず生活自体も自分が心地よく住みやすいと感じることをシンプルかつ丁寧に織り込んでいくスタイル。
そしてその魅力に自分では気づいておらず、年齢に比して未成熟+ぴゅわーなところが可愛くもあり脆くもある。

この物語自体もそう。
「ネガティブ可愛い子ちゃん+包容力王子+自爆告白スタイル」という月村奎コードに忠実に進行。
あざとさ、駆け引き、身体的危険、暗い過去、アップダウンなどの添加物は一切使用せず。
ギャグ、エロなどの刺激物はさらっと控えめに。
志水ゆき先生の美麗イラストで彩られるほっこり癒し系の文章。
ジャンキーさやパンチは無いけれど、無添加こそが魅力なんですよという独特の雰囲気を持っています。

ただ、起伏が少ないせいか、受目線進行なせいか、当初は平凡男子がハイスぺ男子から一途に恋慕されるというパターン色が濃く映りすぎてバランス悪いかも…などと思ってしまいました。
攻の若手トップ声優・横田悠陽が(渚くんから見て)「顔良し・声良し・性格良し」な抜け感のない神的人物として描かれていたのもその理由の一つ。

ところが、神イケメンはもちろん気まぐれに渚くんを好きになったわけではありません。
背景には、ほっこり丁寧な渚の暮らしとは対照的に描かれる声優業界事情がありました。
多忙でアップダウンは激しく、裏方にとどまらず、表舞台で自分自身までも演出する者としての誇りと苦労が混ざり合う場所。妙に道徳的で落ち着いた攻をはじめ、彼ら声優仲間の会話の節々からは早熟が求められる世界であることが伝わってきます。

そして最後の悠陽視点のストーリーまでちゃんと読んだところで二人の関係の必然性にストンと納得。
この業界で頑張ってきたこの性格の悠陽くんだったからこそ、ほっこり暮らしの渚くんにより一層魅力を感じ、一生懸命アプローチしていたのだなと。

そういう意味では付き合ってからも「自分なんか釣り合わない…」とネガティブ発言を連発されてしまう悠陽くんは気の毒ですが、そこも含めて丸ごと愛して渚くんを精神的に成熟させてあげて欲しいなと思ってしまいます。
実際、渚くんは悠陽くんと出会い、社会性や意欲の面で成長し、悠陽くんは渚くんに癒され人生の活力を得ることができました。まだまだ「ほっこり」と「ドキドキ」でちぐはぐな所もありますが、幸せそうで何よりです。

小説部分に切り取られた二人の物語はやはりどこもかしこも平坦で地味です。ただ二人にとってはかけがえなく丁寧で心地良い時間の積み重ねの一幕なのだなとも思います。その地味さこそが魅力に映るとってもほっこりな小説でした。

6

声フェチな受様の成長物語

今回は深夜アニメで白一点のキャラクターを演じるイケメン声優と
料理研究家の母を持つ二世料理研究家のお話です。

攻様との出会いで料理家としての自信をつけていくまでと
恋人になってからの続編と攻様視点での短編を収録。

受様は高名な脳外科医の父と料理研究家の母の間に生まれた一人息子です。
可愛らしい子供であり、社会的に名のある2人の息子故に利発な子だろうと
思われがちでしたが、残念ながら受様は人見知りでコミュニケーションの
苦手な子でした。

コミ障の自覚はある受様は学生時代は目立たない様に過ごしますが、就職
した会社での新人指導で目の敵的な扱いのパワハラを受けて胃潰瘍で入院、
そのまま退職となります。

幸い両親は職場の事を深く話したがらない息子を詮索することなく受け入れ、
受様は親後任のニートとなります。受様は元々多忙な両親に代わって家の中
の事をしていて家事全般が得意で好きだったこともあり、母親のキッチン
撮影の際にインテリア配置や食器等のアドバイスするようになります。

少し前から二世の男性料理家のブレイクとアイドル並みのルックスの受様に
番組プロデューサーが目を止めてアシスタントでり出演依頼が舞い込みます。
受様はスポットライトを浴びるての七光り的な出演は苦手と断り続けますが、
根が真面目な故にニート生活の引け目と、母親の仕事相手の顔を立てるため
と1度だけという条件で出演する事に。

しかし、その収録で緊張のあまりほぼ放送事故レベルな終始無言無表情で
作業をした受様の予定調和よりも予測不能なキャラが視聴者に大いに受け
二世料理家デビューを果たしてしまうのです(笑)

それから1年、受様のコミ障は相変わらずで番組撮影のスタッフ達からも
「二世だから」「二世なのに」と言われ続けてる日々を送っていました。

そんなある日、今度は深夜枠の料理番組のメインを依頼されます。とにかく
話だけでも向かった会議で、実は受様への依頼は予定していた二世料理家が
出演NGとなったための代打だと知らさた受けはほとぼりが冷めるまでの間
ならと秘かに安堵します。

しかし、作業に集中すると無言になる受様の為に進行役として天の声を担当
するという声優が現れて、彼の声を聴いた受様は驚愕することになります。
その声優は受様が大好きな深夜アニメの戦隊モノに出演している声優だった
のです。この声優こそが今回の攻様になります♪

攻様はかなりなイケメンな上にフレンドリーで、受様をTVや雑誌でみている
とファン宣言をかましてきて、深夜アニメの攻様のキャラを癒しにしている
受様はテンパリ度MAX!!

自分こそがファンだと打ち明けようとしますが、かつて友人に「声が好き」
と言って気持ち悪がせれたトラウマから、攻様目的のアニメ鑑賞を他の声優
が出ているから楽しみに見ていると告げてしまうのです。

はてさてこんな2人の競演番組の出来栄えは如何に!?

雑誌掲載作のタイトル作に続編短編を書き下ろしての文庫化になります。
コミ障で内向きな受様が憧れの声優だった攻様との仕事を通じて自分の
殻を破って仕事に恋に踏み出していくラブコメディになります♪

月村先生は引っ込み思案な内向きキャラの受様が自分に自信をもっていく
事で成長 していくストーリーがとってもお上手ですよね♡ 本作もそんな
受様の成長と恋をハラハラしつつ見守るスタンスで楽しませて頂きました。

受様は人見知りでコミュ障なのを自覚している為に、万事控えめに過ごし
てきますが、就職した会社でその性格と言動を悉く否定されたことから、
料理家としてデビューしても親の七光りだし、一時的に受けているだけと
自信にはなりません。

そんな受様を変えるのは楽しみに見ている深夜アニメの声優である攻様との
共演なのです。受様は攻様の声か好きすぎて深入り防止に名前しか知らずに
いた為に、顔合わせの際には大パニック、ファンである事を隠す行動に出て
しまうのです(笑)

攻様はそんな受様にも臆することなく近づき、番組内でもナイスアシスト
で、収録終わりには毎回「今度食事でも」と声をかけてくれるなどいつも
腰が低くて明るく感じよく、益々受様を魅了していくのです。

そんな攻様の「今度食事でも」のお誘いが声優仲間の飲み会で実現した際に
攻様の出ているアニメで受様の一番のお目当てが攻様だと暴露する羽目に
陥ってしまうのですが、それがさらに2人の距離を縮める事になるのです。

人と違う自分を認める事って本当はかなり難しいと思います。誰でが自分の
仕事や生き方に自信満々なんて事はないと思いますが、受様は自分が人見知
りで引っ込み思案な自覚があるだけに、自分が他人に誇れる(はずの)家事
能力の高さにも全く無自覚なのです。

受様にとっては自分のできる事、好きな事ができてもソレは当然、皆ができ
る事が出来ない自分はダメな人なのです。そんなことないよ!!と読者はハラ
ハラで見守っているので、受様が攻様と知り会うことで徐々に自信をつけ
ていき、恋人になるまでワクワク&ドキドキで楽しく読ませて頂きました♪

声フェチの受様が攻様の声に心の中でキュンキュンしている様子がとっても
萌え萌えでした♡ 受様が深夜アニメから攻様にハマったのではなくのCM
で既にトキメイていたというオタクな感じもMYツボでした (^O^)/

攻様の友人の声優陣も受様の知り合いの二世料理家も登場人物は皆様個性派
揃いで、彼らの絡みもすごく面白かったです。

今回は料理研究家繋がりで栗城偲さん『ラブデリカテッセン』をお薦め♪
こちらは同級生同士の再会モノです。

5

心から応援したくなる主人公なので

月村さんおなじみの『素直で良い子なんだけれど異様に自己評価の低い主人公』が、恋をして少しずつ自分を認めていくお話でした。
ここ最近読んだ月村作品と比べれば『痛さ』は少なめですが、そこはそれ、安定の月村さん作品。
「自分なんか……」と思っている主人公が好みど真ん中の声を持つ声優さんと接し、その声に萌えまくり、その人柄に感銘を受けてモダモダジタバタする可愛らしさを堪能しながら楽しく読めます。

父は有名外科医、母は料理研究家。
渚はキラキラしい家庭のひとりっ子なんですね。
それなのに両親に似ず人見知りで、緊張のあまり不愛想と思われる態度を取ってしまう。
不器用なんです。
就職先で虐められ体を壊して退職している間に、二世として料理番組に出演したり暮らしに関する本を出版して好意的な評価を受けても、自分の力だと思えずに「ちゃんとした仕事に就かなきゃ」と常に思っています。
両親に理解があることも余計に渚を追い詰めているのかも。

そんな風に思う一番の原因は、会社員時代の経験から『仕事というものはつらいもの』という刷り込みがされてしまっていること。
だから楽しいと「仕事だ」という認識が出来ないのです。
いや、ここの部分は非常に身につまされるというか、良く解る気がしました。
そもそも仕事って『自分の持つ能力で他人にサービスをする』という、本来であればとても楽しいことのはずなんだけれど、なかなかそう思えないことが多いですよね、実人生では。

そんな渚の認知の歪みが、誇りをもってしかも楽しく精一杯仕事をしている横田と触れ合うことで解消されていく部分が、とても読ませられたのです。
さらっと書いてあるのですけれどもね。
結構ここはグッと来た。

「お話の運びが予測できるのに、なんでこんなに面白いんだろう」って不思議だったんですけれども、多分、主人公に大きな共感を持つからなんじゃないかと思いました。
気がつけば応援している。
これが月村テイストなんじゃないかと思った次第。

最後のSS『ますます恋に落ちていく』は必見です!
横田視点なんですけれども。
どんな話かは書きません。
どうぞ読んで渚くんの可愛らしさに悶えてください。
もう……可愛すぎて鼻血が出るかと思ったよ、私は。

5

甘くて可愛くてお腹が空く話

穏やかなお話ですが、テンポよく読める、可愛い癒し系なお話です。

二世料理研究家で、親の七光りで仕事が出来ている事を理解している渚。生真面目で大人しい性格で、お仕事も頑張っていますが、非常に後ろ向きで自信がない。そんな中、新しく始まった番組で、相棒として天の声を務める人が、ヒーローものの番組で大好きになった声の声優で…。

渚くんが非常に可愛いです!ネガティブだけど、素直で頑張り屋さん。憧れの声の持ち主だった横田さんと過ごす中で、少しずつ前向きに変わっていく様子が微笑ましいです。周りに出てくる人達も、嫌な人がいない、優しい世界なので、ホッと一息つきたいときにぜひおススメです!

4

家の中を整えよう!という気にさせられる

受けがネガティブで自己否定の強い受けだったけど、まったくイラァっとせず読めました。

引っ込み思案なのに、華やかな経歴を持つ両親の元に生まれついてしまったために否応なしに周囲から期待&注目されてしまうのってツライだろうなぁ……って思ったので。

受けの渚は
「男もほっこり暮らしたい」
「実家男子のていねい暮らし」
という本を出しているけどそれを誇るどころか、いい歳した男なのにこんな本出して…と恥じ入っていたり、「二世料理家」でしかない自分というものに価値を見出せずにいるんですね。

でも、私はこういう人好きだなぁって思いました。

だって、「目に見る範囲を心地よく整えるのが好き」とか素敵じゃないですか。
そして心がけ一つで日常を快適に過ごせそうだなぁという気持ちになれるんです、読んでいると。
きっと渚のファンもそうなんだろうなぁと思ったし、私も渚の出した本、欲しい。

実際、私のヤル気スイッチが入ってしまって、以前からやらなくては……と思いつつも後回しになっていたカーテンの洗濯やら照明器具やら、エアコンの掃除、おまけにスイートポテトまで作ってしまった!
ものぐさでダラダラ人間にとっては、盆と正月がいっぺんに来たような……。

渚、ありがとう!
おかげで、うちんなかきれいになったよ〜!

家事のやる気がまったく起きないときに、また読んでみよう!って思いました。

そしてそんな渚を暖かく見つめ&見守る攻めの横田がめっちゃいい男。
二人の恋愛模様もかわいらしく、読んでて癒されました。

嫌な気分になるところが一つもない、それどころか読んでると家事、がんばろ!って気持ちになれる貴重な一冊です。

3

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