夜明けには好きと言って

yoakemae ni wa suki to itte

夜明けには好きと言って
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神30
  • 萌×230
  • 萌23
  • 中立5
  • しゅみじゃない0

--

レビュー数
24
得点
344
評価数
88
平均
4 / 5
神率
34.1%
著者
砂原糖子 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
金ひかる 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
シリーズ
夜明けには好きと言って
発売日
価格
¥552(税抜)  
ISBN
9784344806382

あらすじ

白坂一葉は、交通事故に遭ったのをきっかけに顔を整形、名前も変え別の人間として生きることに。
ホストクラブで働き始めた一葉は、同級生だった黒石篤成と再会。
かつて一葉は黒石に告白され、夏の間付き合っていたのだ。
同僚となった黒石は、一葉に好きだと告白する。
つらい過去を思い出しながらも再び黒石に惹かれていく一葉は…。

表題作夜明けには好きと言って

25歳,ナンバーワンホスト
25歳,別の人間として生きる

レビュー投稿数24

“卑屈は人を醜くする”

再生の物語かな、という作品。応急処置の再生から、本当の意味での精神的な生まれ変わりを遂げたような。黒石の一途さが素敵で、適度に待つ姿勢を見せながら白坂に関わっていくのも良かった。泣きのシーンは最高に萌えた。

大きな事故に遭い、別人として生きることにした白坂は、因縁の相手黒石に再会する。過去に付き合い騙された、と恨む理由を語っているが、白坂の心理描写から黒石への怒りはあまり伝わってこなかった。

学生時代、二人が付き合っていたころの回想シーンは結構多い。たくさんの良い想い出話をされているようで、黒石の全部が嘘にも見えないし、騙された相手だとしても、黒石を悪人とは思えない。

白坂の心理描写は、無理やり黒石を悪者にして、黒石を好きだと訴える自分の心を縛り付けているよう。黒石の転校後に始まったいじめに対し、直接の加害者でなく黒石を恨み続けているところからもそう思う。

問題を抱えたまま二人の距離は近づいていき、邪魔者の新二が登場。ここは大人しく脅される意味が分からなかった。
黒石と別れた白坂はもう何も持っていないし、逃げても新二に見つけ出されると考える根拠が不明だし、以前はホストを辞めると言っていたのにこの脅し内容で従う必要はない。黒石にバレる恐怖だとしても、いまいち腑に落ちなかった。

でもその後の展開はとても良い。新二に殴りかかる白坂を、もっとやれと応援したくなった。
最後のネタバラシはサクサク進んで気持ち良い。ツッコミどころもいろいろあるけど、まあファンタジーなので。黒石の長い長い片思いというか両片思いというか、拗れた二人が良い方向に進んで本当に良かった。

強く印象に残ったのは、“卑屈は人を醜くする”という言葉。言い方を変えながら、作中に何度も出てくる。まさに!その通り!と深く頷きたい。

後日談のような二人のその後の話もとても好き。温かく幸せな読後感の作品。

1

トラウマと愛憎の末のカタルシス

数回目の再読。
自己肯定感が低く性格難ありの受けが、七転八倒でボロボロになりながらようやく自分と向き合い、ずーーーーーーーーーーっと差し伸べ続けてきた攻めの手をようやく握る。
砂原作品でしか得られないカタルシスがありますが、これもその一つです。

受けの一葉は砂原さんの作品で時々見かける「めんどい受け」ってやつです。
継母から「気持ち悪い顔」と言われ続けたせいで、自己肯定感が皆無で、自分の顔や人の目もまともに見れずに育ってしまった人。
だけど事故をきっかけに顔を整形し名前も変え、ホストの面接を受けに行った先で中学時代の同級生・黒石と再会します。
黒石とはごく短い間に付き合っていたことがあるけど、ある理由で天国から地獄という経験を一葉はしているんですね。そして黒石がナンバーワンホストであることを知り復讐したい一心で、自分がナンバーワンになって見下ろしてやると決意します。

と、書くとホストクラブを舞台に男のプライドをかけたサクセスストーリーのようですが、違います。
整形前も整形後も顔に雁字搦めになっている一葉と、ナンバーワンホストなのにホスト風情が皆無の黒石とのすれ違いストーリーです。

中学生の頃の黒石は真面目で朴訥な田舎の少年で、ナンバーワンホストとなった今でもプライベートは古ぼけた一軒家に住んでてジャージなんか着ちゃってて、口下手で不器用というオラオラ感が皆無のお方。
おまけにあの頃と同じように目尻に優しげな皺が出来て…とか、一葉が黒石のことを憎みつつもまた好きになっちゃうのもわかるというか……。

一葉に拒絶されて雨に打たれながら涙を流す黒石のシーンが、好きです。
不動の岩を思わせるような泰然自若の男かと思いきや、こっそり一人で泣いちゃうとか、ぎゃああああってなる。
で、ふつーなら、あそこでくっついて終わりなのに、終わらないところがこの作品の手強いところ。

それにしても黒石がほんと忍耐強くてアッパレです。
色々問いただしたいこともあるだろうにじっと待ってるし、一葉にぶんぶん振り回されても愛想を尽かさない。
最後、絶倫発揮してて萌えるけど、ほんとよく今まであれこれ我慢出来てたねと感心する。

「めんどい受け」と書きましたが、でもそれが一葉にとって生き延びるための術であったとわかるから見放す気にはなれません。
彼の「あの言葉と、たった一度のキスが拙い自分のすべてだった」というところが、哀れを誘います。
本当に「すべて」だったんだよねと。

顔の問題じゃないってことに気づくまでの一葉の七転八倒と、マリアナ海溝のように深い黒石の包容力が光る作品だと思います。

1

攻めが魅力的でした〜♡

ホスト×ホスト、それもNo.1×No.2という組み合わせ。
私自身はホストクラブに足を運んだことはないのですが、この華やかな男だらけの世界には興味津々で、ホストものが大好物です!

『優しいプライド』に続く砂原先生によるホストもの。
こちらもめっちゃ面白かった!

継母に「気持ち悪い顔」と暴言を吐かれ続け、容姿に対するコンプレックスを持つ一葉。
陰気で人の目を見られない一葉は、会社をリストラされ、自暴自棄のまま交通事故に遭います。
事故を機に、一葉は顔を整形して過去を捨ててやり直すことにするのですがーー…

この、整形して別人に成りすます……と、いう設定が面白い!
そして、ホストとしての第一歩を踏み出そうという時に出会ったのが、一葉の因縁の相手・黒石です。

罰ゲームで告白された黒石に本気になってしまった一葉は切ないのですが、黒石には黒石の本心があるのですよね。
この黒石は何ともホストらしくないホスト。
寡黙で誠実で一途で、一葉にだけ向けられるムッツリさにも萌え上がりました♡
個人的に、黒石かめっちゃツボでした〜!

中学の時に一葉を〝ホモ〟と言って虐めていた相手や、大学時代に〝20点〟と揶揄していた女子が出てきて、一葉の傷を抉り出すのが辛かった。
それでも、全て黒石の一途さに救われたなあ。

整形がバレてどうなっちゃうの……と、不安でいっぱいでしたが、まさかのオチ。
コンプレックスのせいで、あまり鏡を見てなかったかな?
まぁ、人は自信や身につけるもので雰囲気ガラッと変わりますもんね。まぁ、よかったよかった。

エロも描き方が上手いですねー。めちゃめちゃ官能的。
ずぶ濡れのスーツを脱がす描写にも萌えました♡

バーで黒字が出るようになったら犬森を雇ってあげて欲しいな。
この子がシリアスな雰囲気を中和させてくれて、すごく和みました。

0

継母の呪い

ドラマCDを何回も聴いて大好きで原作を読んでみました。
音声が脳内で声優さんの声で聴こえてくるようでした。

とにかく辛い苦しいお話ですね。
黒石も一葉もずっと忘れられず。
金崎のクソ加減も相当で。

中学のあの短い間の付き合いで芽生えた気持ちを…。

何も言わず一葉を見守る黒石。ホストになっても中身は変わってなかったみたいで。
一葉に入れ込む黒石。まるであの当時を取り戻したいようで。戸惑う一葉。
復讐なんて一葉には無理なんだよ!本当は良い人なんだから。

呪いにかけられた一葉が気の毒で。継母の呪いがようやく解けて前を向けるようになって。
なぜそこでホストに?だけどあのお店に行かなかったら黒石と再会できなかったしなあ。

黒石が絶倫で良かったです。

1

呪縛、再会、そして解放

ホストxホストBL。
ですが、きらびやかさは無く逆に泥臭ささえ感じる作品。
というのも、主人公のホスト・白坂がとにかく暗い。

子供の頃からの容姿コンプレックス。
自動車事故を契機に形成手術で顔を変え、名前も変え、都会に。
ところが、紹介されて行ってみたホストクラブに中学時代の同級生・黒石がいて…
中学時代、黒石が告白してきたので白坂も真面目に考えて少しの間付き合ったのだが、実は黒石は罰ゲームとして告白してきたのだった。白坂は深く傷ついて…
白坂は恨んでいた黒石に復讐を誓って、なりふり構わずナンバーワンホストを目指していく。
…で、実際黒石を抜いてナンバーワンになるのですが、これはサクセスストーリーではありません。
黒石も内面に暗いものを抱え、そんな2人が関係を通じて過去を越えていくというようなお話とでもいうのかな。
これはまさに小説としての効果を発揮してる作品で、というのも「顔」が重要な焦点なんですよね。「絵」で描いてしまうと展開の妙が失われる。まさに文字で書かれているものを想像力で補うことが大切なポイントになります。
呪縛から解放されて、心も解放させていく白坂。
重い枷を外して、白坂と向き合う黒石。

とにかくベースが暗い物語なので、2人の未来に幸あれ、と思うのですが、ホストクラブに黒石と白坂と、もう1人中学時代のイジメ野郎・金崎という男もいる。そこは偶然の重なりすぎ、と引っかかった。
そして、次作はその金崎のスピンオフです。

1

顔のコンプレックスは抱えてしまうと根深い

2005年刊。
自身の顔の醜さが原因で周囲に蔑まれていると思っていた一葉は、20代半ばにしてリストラに遭い、再就職に回った面接先全てで不採用となる。
どん底の気持ちが引き金となって死ぬ間際の事故を起こして大怪我を負った一葉は、九死に一生を得て吹っ切れたものもあったのか、顔を変えて過去を捨てたつもりで上京する。

一葉の顔に対するコンプレックスの根深さはネガティブながらも共感を汲み取れるものがあった。
冒頭にある一葉の”顔を治す為の手術”って整形とは違うんじゃない?って引っ掛かりは、クライマックスで「ああ、やっぱりね」となるが、でもまぁ生まれ変わったと思い込める強いきっかけが必要だった訳だ。

上京してホストクラブを紹介された一葉は、皮肉にも過去の苦い思い出となった黒石と再会する。
一葉の感情は彼への復讐というよりも『ざまぁ見ろ!!』を見せつけたいかのようだが、そんな痛々しさを包むような黒石のフォローに包容力を感じる。

既にトップホストである黒石は店から離れると普段着はTシャツにジャージ、住まいは昭和の面影が色濃い平屋と、センスとはかけ離れたギャップの持ち主だ。
一葉と離れていた間の黒石の境遇も切ないものがあるが、ホストに染まり切らない彼の素朴さ切実さにほっとできる。

実はこの話、メインは復讐ではなく黒石と一葉の過去の初恋の拗れの修復にある。黒石にとっては親の都合で転校しただけで、一葉への一途な想いは消える事がなかったので、一葉が絆されていく様子を待つ辛抱強さは健気なものだ。
しかし黒石だけでなく、金埼といい一葉の元知人といい偶然の再会率が半端ない。
この辺りは都合が良すぎる気もするが、一葉が顔のコンプレックスという呪縛を断ち切るには必要な過程として受け入れられる。
ぶち切れた一葉が金埼に向かって殴り掛かる場面は結構好きだな。

まぁ整形に対しての是非はともかく、一葉が自ら立ち直った事、長年の拗れを解消して黒石と無事に両想いになった事、ホストを引退して立ち上げた二人の店のオープンを祝して乾杯。

0

コンプレックスとホストの純愛

ホスト・整形というワードであらすじから購入。
筆者の作品は2作品目です。

主人公の性格は少し難あり。幼少期の継母からの態度と、それによって卑屈になった主人公への周囲からの評価は最悪。大学時代のあだ名は20点。リストラにあい、まだ若いからと色んな会社の面接にいくものの不採用通知は30社にも及び全てが嫌になり自暴自棄になった挙げ句の事故。そして整形し名前も変えて人生をやり直し、ひょんな事からホストになる事に……その店のナンバーワンは中学生の頃の同級生で……。


個人的には小説ならではの作品!というのが読み終えた後の印象です。読了すると、なるほどなと思いました。それにしては周囲の20点という評価どうなの?と思わない事も無いのですが……(笑)

ここは実際に読んで、そういう事だったのかと思ってもらいたいです!

ホストというとどうしてもチャラチャラしているイメージがありますが、そういう部分は無く実直さを感じますね。慣れてそうな相手が自分相手には真っ赤になるところも可愛いです。恋愛面はピュアで、純愛な感じなのでホストなのに純愛!みたいなのが好きな人におすすめですかね。

1

メタモルフォーゼ?

私は卑屈な受けが結構好きなんですが、BL作品て美形が出てくる作品が多くて、時々その卑屈さに違和感というか説得力が無い作品に当たってしまい、orzとなることもあるんですが、こちらの作品は大当たりでした。
主人公で受けの一葉の卑屈ぶりは中々リアリティがある気がしました。小さい頃から後妻さんに不細工だ何だって言われたらそりゃ暗くなりますし、暗いからいじめられてさらに自信が無くなって…。好きだって言ってくれた相手にも裏切られたとあってはもう決定打に加えダメ押しの一撃食らった感あります。
そんな一葉が顔が変わった(という思い込みをした)ことで、ホストという、ある意味自信もコミュ力も必要な職業で成功する様も下克上感あって面白かったです。
黒石との関係で、黒石が好きだって気持ちと、恨んでるって気持ちで、戸惑って苦悩する一葉の心理描写は中々リアルなんじゃないかなと思いました。好きだけど心の底からは信用できない。それが苦しい。という感じが伝わってきました。
徐々に距離が近くなっていく構成が面白く作品にとても合っていて、ドキドキしながらページをめくりました。
また黒石の純朴さ、一葉を想う懸命さが、一葉に対して事情や過去を問い詰めないことで伝わってきました。無理やり聞き出したりせず、一葉が本当に話したいと想う瞬間を待つのは一葉のことをわかっていて尚且つそれをじっくり待てるのはやっぱり愛かなと思いました。

蛇足ですが、毎度思うのですが私は砂原先生の濡れ場描写がとても好きです!!!!特に今回はとても好みでした笑
ねちねち攻め続ける黒石も可愛らしい一葉も読んでてものすごく萌えました笑

2

再読すると印象変わりそうな気がしました

作者買い。
砂原先生のお話好きなんですけど、
今回は可もなく不可もなくだったかな…。
今まで読んだのは、必ずと言っていい程どこかで1シーンは読んでるこっちが泣いちゃうようなシーンがあったんですが、今回はなかったです。
設定も好きだし、攻めの黒石も好きだったんですけど、
全体的にさらーっと読めてしまったので、
再読したら、初読みよりも想像が広がって深読みして、
また印象が変わるのかな?と思いました。

一葉が抱えてきたトラウマからのひん曲がっちゃった性格っというのがある訳ですが、
実際にはひん曲がってなくて、難なくクリア、
ただ難なくクリア出来た(自分の気持ちを素直に認められた)からこそ黒石との関係のひん曲がりを直せなくて苦しむ訳ですが、
そこにあまり時間掛けられてないので、さらーっと読み流せちゃった。
前半の一葉の葛藤もそこまで掘り下げてないので、
爽やかなのでさらーっと読み流せちゃう。
なので前半もさらーっと、後半もさらーっとで、
爽やかに楽しく読めたけど、可もなく不可もなくだったなーというものでした。
黒石にしてみたら気分はジェットコースターだったと思うので、
黒石目線がちょっと読みたかったなーと思いました。
気付いてるのは最初から解ったので。

砂原先生の作品は、
泣けて泣けてしょうがない所まで我慢させられる所とか、
ふとした台詞のチョイスとか、
ふっとプチエピソード入れて通り過ぎるんだけど、それが妙に残ったりするのが好き。
今回、一葉の父の葬儀で父の知り合いから言われた事を思い出す所が好きだった。
ぶわっと継母の事が見えてきて、
あの頃こんなだったのかな、
今なにしてんのかな、なに考えてるかな、思い出す事はあるのかなとか思ったら、
何か急に世界が広がる感じがして
それに伴って一葉が置かれてる今が小さいやら広いやらよく解らないけど、
急に距離持って見られるような感じがして、
その感覚が好きだった。

イラスト、ちょっと気になりました。
好みじゃないのもあるけど、
お風呂上がりのはずなのに、なんでスーツ?というのが妙に気になってしまった。
イラストって、時々「あれ?」というのを思っちゃったりすると、妙に気になったり冷静になっちゃったりするんですよね。

1

雨降って地固まる

「萌x2」か「萌」で迷って…色々あったけれど立ち直った一葉へのエールを込めて「萌x2」評価です。

砂原さんの手に掛かるとホストBLもこんな仕上がりになるんだなぁと感心しました。整形して名前を変え、別人として生きようとしたのはどちらかというとネガティブな理由からだった一葉が、過去とも黒石ともちゃんと向き合って、自分を取り戻す物語…だと思います。

朴訥な攻が好きなので、黒石がとても良かったです。過去についてはもうちょっと言葉を補ってあげれば良かったのに、と思わなくもなかったですが、このお話は一葉だけでなく黒石が過去と向き合う姿勢も描かれているので、二人にとっては辛くて切なくても、今に繋がるステップだったのかな。

「雨降って地固まる」という表現がぴったりなエンディングに、素直に良かったなぁと思いました。

3

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