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hatsukoi wo yarinaosu ni atatte

将棋棋士と何でも屋のお話。基本は敦也視点で、人生の迷子状態だったのが、雪と再会して好転していく様子が良かった。雪の方はトラウマと向き合い、乗り越えられたようで安心した。ラストが遠恋状態なのは気がかりかな。
有田焼の修行から逃げ、何でも屋で働く敦也。24歳で将来に迷いつつ、ゆるゆる生きてる印象。雪にとって大切な子供時代の敦也との思い出は、敦也にとっては何気ない一コマで、敦也視点だと純粋に大人になった今の雪に惹かれていく感じ。
雪は、棋士設定にありがちな極端なキャラ付け。積極的に告白して、すぐ一方的にお断りは意味が分からない。隠してる理由があるにしても、これでは敦也が気の毒。狭い世界で生きてるそういうキャラって設定だから、こうなるのかな。
物語はくっついて終わりでなく、それぞれの人生が上向くところまで描かれていてとても良かった。対局シーンはなんか熱い、いや熱すぎて、キラキラしたファンタジーな何かを見ている気分になった。
気になったのは、取材ゼロの観る将(作中では“見る将”表記)が書くとこうなる、の見本のようなとこ。観る将特有の偏見をアマ段持ち設定の敦也が言ってて違和感だし、知識の偏りが見受けられる。また、有田焼の説明と将棋の説明で、熱量の違いを感じて微妙。
でも良い部分もあって、外から見える綺麗で華やかなところだけを煮詰めて崇高なものに昇華しているようで、書き手の将棋愛に圧倒される。リスペクトと同量の将棋に夢見すぎてる感もある気がして、置いてけぼりにされるところもあったが。
どちらかというと、BLより将棋描写に細かなこだわりを感じる作品。雪の自己完結と内向的な面は、特殊な環境が説得力を出していたのかな。敦也の鷹揚さとバランスが良く、しっくりくるカップルだと思った。
幼馴染みの再会もの、ではあるのですが、一筋縄ではいきません。
読みながら、よくわからなかった雪の行動の謎が解けたのは、本の半分を過ぎた頃でした。
初恋で両片思いで再会して、どうしてそうするの?と首をひねりながら読み続け、ようやく現れた過去のエピソードで、なにもかも腑に落ちました。
そこには、それはそれは深い心の傷と、背負うにはとてつもなく重い枷が隠れていました。
小学生には背負えない。潰れてもちっともおかしくない。
周囲の支えと、本人の強靱な精神力によって、雪のこれまでの人生があったのだと判りました。逃げたのでも弱いわけでもなく、逆だったのでした。
判ったことでタイトルの「初恋をやりなおす」の意味の深さを思い知りました。
ここを知れるまでの約200ページと、それ以降とでは、雪に対する印象は全然違います。
そうだったのか、と思えるまでが長すぎる気がするのは、そこに至るまでの雪の言動が不可解だったからです。
もう少し早い段階で知りたかったかもしれない。
もっとも、読後に最初に戻り再読すればよいだけの話かも知れませんが、うーんでもそれも違うような気も?
雪がどんな思いを抱えて敦也と顔を合わせていたのか想像すると胸が痛いです。
最後の最後でやっと向き合って結ばれた二人。敦也は新たな道へと進みますが、遠距離恋愛になってからの二人が気になります。
続きは同人誌なのかな。
といっても受けがプロ棋士で攻めがなんでも屋という異業種BLでもあるのですが。
まず、受けの雪の初登場シーンに度肝を抜かれました。これまでの人生で読んできたBL作品の受けの中でも、最も奇っ怪な登場のしかたをするせっちゃんです。
棋士としての二つ名も「後退王子」という奇妙なもので、その由来もまあ、まあまあまあ、キャラ立ちが半端ないですね。きっと、対局ちゅうにひふみんがおもむろに鞄からベビーチーズを取り出して食べ始めた時の藤井聡太の気持ちって、こんな感じかなと思いました。
そんな癖の強さが将棋のプロ棋士っぽくてインパクト大な雪に攻めの敦也は存在感をかき消されそうですが、彼はなんでも屋さん業の前は有田焼の窯元で修行していた人なのであり、これまたお仕事BL好きには興味深い人物です。
という二人のBLなんですが、雪のインパクトがあまりにも強かったので、BLを読んだ気持ちより将棋やべぇという気持ちのほうが勝りましたw
巻末のおまけ話がかわいかったです。
尾上与一先生のXアカウントを拝見しましたが、根っから将棋好きな方のようなので、いつかライバル棋士同士のお話も書いてほしいなと思いました。(もう既にあるのかな?)
名人を目指す若手棋士の雪と何でも屋の敦也。
彼らは仕事を通して出会いますが、実は小学校時代の同級生で…
初恋で再会モノなんですが、ベースに将棋というものがあって、棋士という職業の過酷さや集中力、異常さ(いい意味で)が丁寧に書かれています。将棋というものが分からなくても、問題無く二人の関係を眺められるようになってました(笑)
雪が片思いしていた相手が敦也だったことは物語の結構早くにわかります。敦也も敦也で、誘われた?雪に思わず欲しくキスしてしまうというくらいには好意を持っていて…
二人の恋模様がベースにあるのはその通りなんですが、お話の中心はお仕事モノとも言えるくらいに将棋と有田焼の絵師のことがよくわかった気になります(笑)
特に棋士!
だからこそ、っていうシチュエーションも多く、エピソードも将棋に関係していたりするんで、萌、という意味では薄いかもしれません。
が、作品としてはとても面白く、あまり合わないと思っていた尾上さんでしたが、一気に読み進められました。
特に雪がか弱く受けらしい感じなのに、事、将棋に対してはめちゃくちゃ没頭し、強く、そして夢を掴み取る力を持っていて、それが読みどころにもなってます。
最後は遠恋に落ち着くので、そこはちょっと先の二人をどーなるの?と心配してしまいましたが…
丁寧な説明や背景の文が多く、文章もやや独特だった。自分の好みの作風ではなかったが、将棋に知識があり何度も読み返せばとても面白いだろうなと思う。試し読みで、家事を他人が依頼するほどの生活力のない将棋指しとオールマイティな何でも屋さんが運命の出会いって面白そうと思って購入したが糖分不足でした。木下先生のイラストにも惹かれた。イラストレーターさんの影響力はすごいな。
今まで尾上先生作品は時代背景とかあらすじで読んでて痛そうだなと思ってずっと避けていたんです。
でも「キャラ文庫アンソロジー3 瑠璃」でこちらの番外編を読んで、とても惹かれたのでフェア対象作品で評価も高かったので購入しました。
将棋に関しては一切知識が無かったですが、用語を知らなくても関係ないくらい面白くて雪の対局を緊迫感を持って読みました。
それから雪の抱えていた過去を知ってとても苦しかったです。
初恋の人のお母さんを助けられなかったとずっと苦しみ続けていたなんて、それも小学生の時ならどんなに辛かったことか!
大人達がどんなに頑張っても助けられなかった事実とか、雪は悪くなかったと言い尽くしても苦しみは続いていたんですよね…
敦也と再会したを喜びながらも辛く感じていた事を知り更に涙でした。棋士としての雪の覚悟と矜持は凄まじいと思いました。
そしてそんな雪を側で見ていた敦也が再び窯元で修行出来るように気持ちが変化したのも素晴らしかったです。
最後の最後に結ばれたから甘さは極端に少ないけれど、そんなの関係ないくらいに読ませる作品だったと思いました。
ただ最後に救済があったものの、窯元の師匠がお見合いを薦めた陽菜が人を使って調べて雪の家の前に現れたのはホラーでかなり怖かったです。敦也が一言も受け入れて無くてあれだけ拒否られてたら、いくら古い価値観のところで育ったとはいえ友人とかに話したら絶対に陽菜がおかしいって言われると思うんですが…。
敦也の婚約者だとか結婚しようと言った時は恐怖を感じてしまいました。
窯元の師匠に謝りに行った際に一言も触れられていませんでしたが、敦也が追い詰められて逃げた理由の一端ではあったのですから師匠から一言欲しかったです。
ボリューミーではありましたが、萌えたかというとちょっと微妙。お話のトーンがつかみにくく、恋愛の部分がよくわかりづらかったからかも。棋界の部分は素人にもわかりやすく、自然に入ってきました。
木下先生の口絵でテンション上がってたんですけど、うーん、再会後の雪と敦也の温度差に違和感がありました。しかもその差を埋めていく過程がすんなりいかなくて。
決して読みにくいわけではなく、むしろ将棋がわからなくてもスーッと理解できるように書かれているところがすごいのですが、ストーリーが進む先々でどんどん色んな情報が詰め込まれていくんです。なので途中、二人ってお互いに好きだったんだっけ?と我に返ること数回。
雪が特殊な世界の住人で、常人には理解できない設定なのはわかるんですけど、敦也に囚われる原因となった出来事が、最後まで雪の恋愛感情につながる理由に変換できず。
敦也はバイで、ワケアリ。敦也の婚約者が登場した時の雪の反応がもう、きみさぁ、敦也と付き合ってるわけじゃないよね?しかも敦也からの気持ち拒んだよね?ってツッコみたくなるくらいプンプンしてるのね笑
雪が敦也を拒む理由をかなり引っ張られたのも、なんとなくモヤモヤ。後半、同じ事柄に関するバージョン違いの情報が塗り重ねられていくので、どんどん重たくなっていって、雪の執着がどんなに切実なものなのか、もう想像を超えてしまって。
とはいえ、敦也も忍耐強く宥めすかして、頑固な雪をよく口説き落としたなぁ。雪の生き様に感化されて、自分探しの答えもちゃんと見つけて。それが恋の力なのかな…。
赤の色が印象的なのは何かメッセージがあるのかなとか、有吉師匠が敦也の苗字を一度も正しく呼べない伏線だとか、詰将棋でのオツな告白エピソードとか、お話の中に盛り込まれたネタをとりこぼさないように読むので精一杯。じっくりと二人の恋愛を味わうには難易度が高かったです。SS「内緒の棋譜」の手紙のエピソードにやっとキュンとできてホッとしましたけど笑
わたしの頭では受けが病弱というのもあって、反則だけど友情物語だった方が萌えたかもしれないです。
プロ将士って過酷なんですね。
将士って頭が壮絶に良い人、というイメージしかなかった私だけど、受けの命を削るかのように将棋を指す姿は壮絶で圧倒されました。
「初恋」という言葉から、何となく甘酸っぱいものを想像していたのだけど、思っていたよりも壮絶な覚悟が込められた「初恋」だったなぁ……というのが読後の印象。
初恋の思い出そのものは、小学生時代ということもあり実にたわいのないエピソードなんだけど、初恋の記憶が「受けの心の支え」なんてなまっちょろいものではなく、根幹のようになっていた。
初恋の相手である攻めと再会して、明らかに両思いなのに、きっぱりと縁を断とうとする受け。
何故?やっぱり天才の思考回路は凡人にはわからんわー……と思いながら読み進めていたら、その理由、そして背負っていたものが想像よりも重い。
「ぼくには将棋しかない(比喩ではなく本当に)」という受けの将棋への原動力が、攻めへの気持ちであり、攻めと自分を結びつけているもの。
その気持ち、思いの強さといったら半端なくて、胸アツ。
記憶に残るキャラだなぁって思います。
喘息持ちで体は弱いけれど、根性はバケモノ級で、わりと頑丈な性格。
でもそうじゃないとプロ将士になんてなれないんだなというのが、この本を読んでて良くわかった。
本当に狭き門なんだなというのはNHKのねほりんぱほりん「プロになれなかった元奨励会員」というのを見て、ほぉ〜!なんて思ってたけど、ほんとソレ。
将棋は全く解らない、知らない私でも面白く読めたけど、少しでも知っていたらもっと楽しく読めたんだろうなぁという感はあります。
というのも、ちょい錯乱しかけた受けを心配する攻めに「見てて、敦也くん」「僕はずっと、将棋を指してきたんだ」と言って、(ここカッコよくて痺れた)対局に向かうのだけど、ここの描写が手に汗を握る系なんですね。
将棋はちっともわからない私でも、たった一人で戦に臨む受けの孤高さに痺れるのだけど、「桂馬?銀って何?」な私には、戦いの流れや意味が判らなくて、もどかしい思いがしました…。
どうしてもこの受けに比べると、攻めの印象が薄くなってしまうのは仕方ないかなぁ……。
成就後、いちゃいちゃ同棲生活になるのかなぁ?過酷な勝負師の受け&お気楽生活な攻めというのは何か嫌……と思っていたので、遠距離になるけれどもお互いの道を進むという選択をした最後が良かったです。
「やりなおし」「再生」というキーワードが最後に繋がっていて、とても良かったと思う。
設定も現代もののせいか、今までの尾上先生の作風とだいぶ違いました。
時代物に比べると、尾上先生持ち前の「物語の深さ」が薄まっているように思いました。
今フィーバーの将棋界という伝統と格式ある世界に在籍する才能のある若手棋士の知能戦に向けた日々のストイックな鍛錬、ユニークな人柄、将棋に捧げた人生模様などを覗けて面白かったです。
棋士の雪のキャラがたっていてなかなか可愛かったです。攻めの敦也も職人気質で尾上作品らしさもありました。紆余曲折あり、敦也も雪と同じ様に一生を捧げたいものが雪以外にも見つかって良かったです。
ただカップリング萌えは薄かったです。初恋の人を小学生からずっと想っていて、大人になって再会して結ばれて、という設定も現代が舞台ではリアリティに乏しく、ピンと気にくかったです。将棋一筋で敦也に罪の意識もある雪にとってはアリかもしれませんが、心理描写がぼんやりしていて、イマイチハマれなかったです。攻めの敦也もノベルゲームの主人公のようにキャラクター性が薄く、魅力が伝わりにくいし…。一般の人が将棋界の面白さのツボを知るライトな入門書にはいいかもしれませんが、ボーイズラブ小説としては盛り上がりに欠ける所が気になりました。
尾上作品への個人的な期待値が高い事も影響しているかもしれません。
設定や世界観が特殊なものはインパクトが強く、読後感が残りやすいですが、現代日常ものの物語を面白くする事の難しさを感じました。
家事全般得意な青年が生活能力ゼロのプロ棋士のお世話をすることから始まる物語、のはずが、物語はもっとずっと前から始まっていて、そこにはいくつもの思いが絡まっていて、登場人物全員の温かくて真っ直ぐな思いに読んでいる間はずっと泣いていた気がします。
華奢で繊細で「雪」という名から連想されるイメージをほとんど裏切らない儚さを持つ受けが、それでも棋士を痛感させる負けん気の強さで決して弱弱しく守られるだけの存在ではないことがすごくよくて、自分の存在を証明するために指す将棋はまさに彼の命そのもののように見えました。
こんなに、命の全部を賭けて「ここにいるよ」と伝えるために将棋を指されたら、一生好きになっちゃうよね......
割と早い段階で受けが攻めの気持ちを受け入れられない理由に察しがつくのが残念ですが、推理ものではありませんし、受けの悲痛な思いにやっぱり泣いたので問題はありません。
幼いころに何気なくもらったものが宝物になって、それをあげた方は忘れてしまっていても、もらった人は永遠に心のよりどころになる。いいよね......こういうの......
大丈夫と強がってしまう受けを「大丈夫じゃないでしょ」とおぶってくれる攻めがいる世界でよかった。