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kizuitara koi
ほんっとに短い物語を集めた短編集なんだけど、テーマは一貫して「恋に気付いた瞬間」を切り取っていて。それはとても甘くて何だか切なく胸をキュッとさせる。
どの物語も「それから」を知りたくてたまらない。
◆表題作「気づいたら恋」
表紙の2人。セフレ関係を続けていた、と思っている剛と三木。しかしある夜、三木は『自分ばっかり好きで、悔しい』と思う気持ちから、声をかけて来た男について行こうとする。偶然BLあるあるで、その場を通りかかる剛‼︎
この時、剛自身も気付いてなかった恋にやっと気付く。気付いてからの剛が甘くて。優しくて。
『恋人らしく優しくして欲しい』とずっと願ってたのは三木なのに。くすぐったくてたまらなくなる。
恋人同士の甘あまは始まったばかりなのに。余韻だけを残して物語は終わる。
◆「ソメイヨシノ」
桜の季節になると思い出す、あの人が言った一言。
風来坊の染井は、写真家で海外を拠点に活動することにした。商店街の花屋の息子、良乃は 染井に想いがあるけども、関係が壊れてしまうのが怖くて言い出せない。
けれど、染井は帰国する度に良乃の家で寛ぐ事を楽しみにしていた。そんなある日、帰国した染井は、商店街の花屋がひっそりと閉店している事に気付く。
知らずに拠り所にしていた大切な事に気付いた瞬間、染井は初めてそれが恋だと気付く。
◆「グリーンデイ」
植物園の職員と、そこに通う物憂げな大学生。いつから心に棲み付いた気持ちなのか。
いつ恋に変貌したのか。爽やかなグリーン達がむせ返る様な青々しい匂いを放つ様な。
それはくすぐったい恋の瞬間。
◆「ハニーレイン」
幼馴染の賢成は喘息持ちでひ弱な男の子だった。母親から「おまじない」と言ってキスされているのを見た大樹は、自分も賢成に「おまじない」をしてあげる。
高校生になった今 思い出すのも恥ずかしいけれど、賢成は無邪気を装って「おまじない」をねだる。
甘くて可愛い2人の物語。きっと、賢成が恋に落ちたのは 最初の「おまじない」の瞬間。
そして、大樹が恋に気付くのは 現在。
一番続きが知りたいかも‼︎ 賢成がちょっぴり腹黒ちゃんな気がしないでも無い。
大樹が翻弄されまくるその後を見てみたい。
「アイス」「桜」「グリーン」「雨」と、モチーフになっているものも何だか可愛くて。
気持ちいい連作でした。はぁ〜。続きが欲しい。