Sakura0904さんのマイページ

神作品

女性Sakura0904さん

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選択を変えれば結果が180度変わるかも

 今回は異国の地で会った日本人男性に、心ない言葉を吐かれるという残念な出来事がありました。いろんな経験を積んでどんなに成長しても、人は人によってこうして何度も傷付けられてしまうものです。突然の出来事に2人がその場では何も返せなかったのもリアル。けれど、再会した時朝日はもう一度声をかけてみる。なかなかできないことですよね。相手を知らないとつい軽率な、失礼な言動をとってしまうことがある。なら、まずは相手を知ろう。2人は年配の彼の言葉には彼なりの経緯があったことを知ります。だから他人を傷付けていいとはならないけれど、彼を赦して縁を大切にする選択をした2人が素敵だなと心から思いました。朝日の変化は朝日自身に変わりたいという意志があったからだという深月の言葉も沁みました。きっとその意志は大切な深月を悲しませたくない、という気持ちからでしょうね。

 今更ながらの感想ではありますが、BL要素だけでなく世界各国を渡り歩く旅漫画としても本当に秀逸なシリーズだなと改めて思いました。描き込みが非常に細かくて、写実的だけどソライモネ先生独特の柔らかい線のおかげで唯一無二の味を感じられます。主要な観光地も大体登場し、朝日の情報のおかげで行ってみたくなる国がたくさん。乗り継ぎや移動・宿泊の手配など、大変な部分も現実的に描写してあり参考になります。また、各国の名物料理も毎回とても美味しそうに描かれていて、グルメ漫画としても楽しめる。今のところ濡れ場もないので、某ゲイカップルの料理漫画のように幅広い人に読んでもらえるシリーズになったら嬉しいなぁと思います。

正解はない。2人だけの答えを見つけて

 あ〜やっぱり素敵なシリーズだなぁとしみじみ。深月と朝日は安定したカップルで、もちろん別れ話など出ないし、濡れ場もなく、ただ国を変えてずっと旅をしているだけなんです。でも、同性の恋人を持つ自分とどう向き合っていくか、周囲にどう打ち明けていくか、そして、一番大切な恋人と互いをどう理解し合うかの答えを見つけていく過程を、ゆっくりゆっくり、長旅と共に朝日のペースに合わせて描かれている所にソライモネ先生と深月の深い愛情を感じて、毎回とても温かい気持ちになれるんですよね。

 今回は朝日の弟・空斗とその彼女・アリシアが登場し、朝日の家族へのカミングアウトが1つの山場となっていました。初めて聞いた時の空斗の反応は現実的で。お兄ちゃんが大好きだからこそ、他の家族に言いにくいことでも自分にだけは言って欲しかったという弟らしい気持ち。取り繕われるよりも、兄弟だからこそ素直な感情を見せてくれる方が私は安心します。自分の感情に正直に向き合い、兄にとった態度を振り返り、また空斗が歩み寄ってくれて良かった。3人それぞれに愛をもって接してくれたアリシアも本当に素敵な女性でした。朝日の指輪を探すことを4人が皆諦めなかった所も感動しました。大切な人の大切なものを、大切に想える人でありたいですね。

CANIS-THE SPEAKER- 4 コミック

ZAKK 

1人が3人に。3人が1人に。

 このシリーズの完結を見届けられて、本当に嬉しいです。忘れられない作品となりました。最終巻だからといって3人のBL的な絡みが増えたりすることはなく、今まで同様大国を舞台にした静かな情報心理戦が繰り広げられます。普通なら萌えが足りん!と不満に思うところですが、このシリーズに限ってはそんな風に思えませんでした。なぜなら3人の目線、口元の綻び方、台詞の言い回しから想像できる声音から常に、他2人への愛、信頼、彼らと一心同体であることへの歓びを感じ取ることができたからです。ZAKK先生の描き方は稀有で、BL界の宝だと思いました。

 メアリー・ロスと数十年ぶりに対面する展開、痺れました。彼女にとっては皮肉にも、サム1人が意志を伝える状況もあの時と同じで。当時はサムが最も優秀で弁が立つからだった。でも今は違う。ハルもノブもサムと同じ人間だから、サム1人が話すだけで十分なんですね。ノブを見た彼女は何を思ったでしょうか。驚き、恐れ、後悔、罪悪感。少なからず過ぎったでしょう。しかし何の感慨も見せないノブの平坦な瞳を見て、きっと彼の人生に己が寄り添える余地は1ミリも残されていないことを悟ったんじゃないでしょうか。彼女の罪の振り返りに一言も耳を貸さなかった3人の毅然とした態度がとても印象的でした。彼女は残りの人生を、じっくり自分と向き合って過ごす必要があるでしょう。他人に吐き出してわずかでも気持ちを楽に、罪に赦しを、なんて許されるはずがありませんね。

 3人は一体何を目的に、これほどの闘いをやり遂げたのか。メアリー・ロスに再び3人が集結したことを突きつけ、罪を認めさせること? 人身売買を助長した罪人たちに鉄槌を下すこと? 今いる子供たちを守るため、孤児院を支援すること? それらはあくまで副次的なもので、結局真の目的は、いつまでもこの3人で笑い合える暮らしを手に入れる、ただそれだけだったんだと思います。ノブさえ健全に卒業させてもらえていたら、もっと早く、お互いもっと平凡な人物として叶えられたはずだった。あの日、そんな未来を壊されてから、細やかな夢を現実にするため3人は危険な橋を何十年も渡り続けた。とても尋常な精神力ではないように思えるけれど、やっぱり他2人が一緒なら何でもできる気がして、突っ走れたんだろうな。各々の他2人への愛の重さがどこをとっても同じなのも、彼らの関係性で好きな所です。性欲からでなく、愛から行為に至るBLも素敵じゃないでしょうか。

CANIS-THE SPEAKER- 3 コミック

ZAKK 

どんなに複雑化しても、基盤に変わらぬ情がある

 3人がそれぞれ地道に築いてきた地位や人脈を用いて、時間をかけて同じ目的を達成しようとする執念に心を打たれます。正直、組織や企業、個人名の相関図、関係性の変化は相当込み入っており、すんなりと理解して読み進めるというわけにはいかず。その時々の大体の「どこが味方でどこが敵か」を頭に入れて、読みました。ここまで骨太なストーリーを描くには、かなりの知識があるか、勉強・取材をされたかだと思います。ZAKK先生のこのシリーズへの意気込みを感じ、嬉しいですね。

 スピンオフ元作品のキャラも登場し3人の立場が何度か危うくなりますが、3人寄れば文殊の知恵で、しかもその3人が皆頭の切れる人物ですから、強固な絆を駆使しどんな危機もさらりと躱していく様は読んでいて気持ちがいいです。一度強引に引き裂かれた恨み、長年の理不尽に耐え忍んだ不屈の精神、再会してから燃え上がり盤石となった情は、巨悪の世界に対抗するのにも十分なものでしょう。ここまで来たら、絶対に成し遂げて欲しい。まだまだ困難が待ち受けているでしょうけれど、行き着く所まで見届けたいです。

CANIS THE SPEAKER #2 コミック

ZAKK 

サムに安眠できる日が訪れますように

 長年の離別を経て、ようやく再会できた3人。サムは頭脳を鍛え人脈を手にし、ハルは大事な人を守る武力と権力を手に入れた。2人がノブを見つけるために、また、孤児院の闇を暴くために、平和に生きる道を選ばず暗躍してきた覚悟に惚れ惚れしました。そんな2人もきっと、ノブまで同等の力を手に入れているとは思わなかったのではないでしょうか。ノブは幼い頃の控えめな性格のまま、悪環境で声も上げられず耐えているのではと想像していたんじゃないかと思います。しかし、2人の親友もまた成長していた。満足な教育も受けずに辞書とたった1人の親切な人間との関係のみで、ここまで自力で這い上がってきたノブの精神力、けっしてここでは終わらないという強い意志に感銘を受けずにはいられませんでした。

 きっとノブも、2人が自分との強制的な別れを経験した後で、心から幸せな生活を送っていたとは考えていなかったでしょう。それでも、理不尽な扱いの差にはやりきれない想いが溢れて当然ですし、6年もの長い月日を2人と同じような環境で過ごせていたら、立派な肩書きを手に入れた2人の隣に自分も堂々と並べたかもしれない、という想いもあったのかなと。再会した時の悔しさとも恨みとも寂しさともつかない、空虚な表情を浮かべた彼の心には、とても一言では言い表せない感情が怒涛のように渦巻いていたのではないかと思います。2人を危険な目に遭わせたくないのはもちろん、2人に非のないことで自分の激情をぶつけてしまうことが怖かったのかなと。そんな彼を、目を背けたくなる傷ごと受け入れて抱いた2人。情事の描写はあっさりしていたけれど、こんなに胸が熱くなる濡れ場もないでしょう。未来を変える3人に期待しています。

CANIS THE SPEAKER #1 コミック

ZAKK 

淡々としたノブの表情の変化に目頭が熱くなる

 発売年に読んでいたのですが、なかなかレビューが書けずに7年も経ってしまいました。スピンオフ元に先んじて初めて読んだZAKK先生の作品であり、改めて読み直しても当時受けた衝撃が鮮やかに甦ってきます。主人公の1人である表紙の青年が倫理を大きく踏み外した世界を知る、それも、明るく温かな世界から堕ちるのではなく堕とされるという内容なので、一口に面白いと言ってしまうととても語弊があるのだけど、とにかくページを捲る手が止まらなくなります。

 孤児院の外に広がる後ろ暗い世界、メインは仲良し3人組ということで、アニメ化もされたジャ○プ系の某漫画に通じる点もありますが、こちらにはファンタジー要素はありません。あるのはひたすら醜悪な現実。そして、3人組がシスターによって格差をつけられる所も悲痛で、憤りを覚えずにはいられない。サムやハルと同じく、未来に期待も不安も感じていたノブの子供らしく愛らしい瞳が、たった数年でこれほどまでに光を失くし、虚無を感じさせる瞳に変わったことが本当に悔しいです。それでも、サムとハルとの記憶が彼を鼓舞する。BLとしての萌えもちゃんとあって、シリアスな展開とBL面を期待させるシーンが上手く絡んでいます。モノローグが少なく、読者に余韻と想像の余地を残している所も引き込んでくれる要因の1つ。絵もストーリー構成も素晴らしい作家さんです。

先生にもいつか再び愛が訪れますように

 吸血属性のあるキャラが出てくる商業BLでここまで萌えたのは、この作品が初めてかもしれません。こういう高貴な学園ものは設定や煌びやかな生活にばかり焦点が当てられることも多いように思いますが、こちらは吸血人類と人間の違い、その関係性、彼らの苦しみ、希望、問題の解決がしっかりとした流れで描かれ、萌えも読み応えも、納得のいく結末もすべて揃っていました。

 忘却型の牙を持つパベルと、彼と想い合ったアウラの何度も繰り返される初めての出会いは吸血人類の苦悩に共感するには十分過ぎるものでした。そして、メインのジーンとユキ。前半でユキが吸血人類に寄り添い、ジーンへの愛も自覚して想いが通じ合っても、そこでなし崩し的に手を出さなかったジーンが素晴らしいなと。作者的にも読者的にも美味しいシーンだけれど、本人たちにとっては発情はあくまで強制的なもの。パベルの話を知った後なら尚更、ちゃんと意識がある状態で、互いの心が素直に発する好意を感じ合いながらしたいですよね。両カップルとも、相手が大事だから距離を置こうという状態に陥らなかったのも良かったです。好き合っているのが分かっているなら、相手の手を離さない方が素敵ですよね。

シロさんの愛が大海のよう

 いやぁ、1巻の頃からは考えられないくらい、史朗のケンジへの愛が日に日に大きくなっていくようで腐女子としては嬉しい限りです。小日向とジルベールの結婚式でのスピーチ、緊張で台詞がとんだ史朗だったけれど、かえってこのかけがえのない時に感じた感情をありのまま伝えることができて、ゲストの心に残るものになったんじゃないでしょうか。あんなに素直に人前で、ケンジといることの喜びを言葉にした史朗に目頭が熱くなりました。

 霊媒師の呪いを信じるなんていう意外な一面に笑ったりもしましたが、風邪のケンジのためにプリンアラモードを作る史朗のマメさには驚き。さすがに非常時のプリンは市販のものを買ってくると思っていました。自分のせいという負い目もあったとはいえ、ケンジに喜んでほしい、元気になってほしいという心からの気持ちを感じました。ケンジはまだ史朗の周りの男に嫉妬するし、史朗はケンジのためにこんな面倒なものも作れるし、この2人はいつまでも安泰でしょうね。台風の日のかぼちゃコロッケも、史朗の思考の中心にはいつだってケンジがいるんだなぁと。

敬語で話す2人が愛おしい

 初めて読んだ作家さんでしたが、細部まで繊細に描き込むタイプのタッチではないのに、不思議とキャラクターの心情が表情、瞳の動きひとつでとても伝わってくる画ですっかりファンになってしまいました。破局した元恋人のことを思い出して涙する木村に何度も胸がきゅっと締め付けられ、国島も読者も思わず彼に寄り添いたくなるんですよね。

 実は遊びだったとか、結局女性に勝てずとかでゲイのメインキャラが過去に振られたことがあるケースはよく見かけますが、木村の場合はお互い本気で好き合っていて、ただ、相手に勇気がなかっただけ。愛に疑いがないからこそ、2人とも余計に苦しんだんじゃないでしょうか。相手を受け入れられくなった木村にも罪はないし、同性愛の最も難しい所ですね。

 そんな木村に対し、ノンケの国島は遠慮し過ぎず、図々しくなり過ぎずに、いつも心地良い距離感と態度で誠実に接してくれた。ゲイではない国島が木村を可愛いと感じることが増えていく様子も、木村の未練が徐々に溶けていき国島に惹かれていく様子も、とても自然に描かれていました。初めてのキス、初めて相手の体に触れる時、初めてタメ口になる時、初めての名前呼びにこんなにドキドキしたのは久しぶりです。相手を傷付けたらすぐ謝るところも、2人の善人っぷりが溢れていて微笑ましくなります。涙のシーンは多くとも湿っぽくはならず常にどこか温かさがあり、心が満たされる作品でした。

攻めの愛おしさが限界値突破

 清宮あああ! お前はなんていじらしい奴なんだ!! と頭を抱えて心の中で叫びのたうち回りながら読んだ最終巻でした。1巻ではきっと誰もが牧野の境遇に共感したり同情したりするばかりだったはず。そんな彼が立ち直って田舎で恋人もゲットする話が読めるんだなぁと思いましたよね。でも2巻で気付く。あれ、ゲイとしてそれなりに割り切って飄々と生きていそうな清宮の方が、余程繊細で傷付きやすい男なんじゃないかということに。そして、この最終巻で彼の少年期からの苦悩を知り、あの短冊に書いた「恋がしたい」にはこんなにも本気と熱意と希望が切実に詰まっていたのだなぁと気付かされ、清宮よ幸せになってくれ!という気持ちが湧き出て止まりませんでした。

 自分を好きになって欲しい。なんてシンプルな願いでしょうか。毎回相手に誠実に本気で接して、それでも双方向の恋愛に一度も出会えなかった彼の寂しさを考えると、心がぎゅっとなってしまいます。いつしか弱っている人間に優しくすることを覚え、しかし、そんな相手も元気になったら去っていく。牧野が健全さを取り戻していくほど、逆に不安を募らせる清宮が痛々しくて。閉塞的な田舎でひっそりとゲイとして生きながら、相手とちゃんと愛が通う恋愛を切望していた彼にとって、牧野の何度関係が拗れても修正しようとする根気強さや生来の真面目さ、前向きさはどんなに救いや喜びになったでしょう。

 下心があったから助けたのだと清宮は正直に言うけれど、それはきっかけに過ぎません。彼がそうして行動を起こさなければ、こんな結末はなかったかも。何事も行動から始まる。今まで何度も痛い目を見てきたのに、懲りずに今度こそもしかしたら、と期待と希望を持って吹雪の中から牧野を助けた清宮の初手、あっぱれでした! 一途な彼の恋人になれた人は本当に幸せ者。心身共にすっかり健康的になった牧野、これからも清宮が前に踏み出せない時は、年下の先生としてしっかり手を引っ張ってあげてね。受けが攻めを心底可愛いと思う、これぞBLの極致。牧野が逞しくなるばかりの2、3巻でしたが、濡れ場ではまだ戸惑うばかりの彼を経験値のある清宮がリードしてくれるので、攻受のバランスもとれています。安則も名脇役だったし、意外と甘えたな可愛い福のスピンオフも楽しみです。