ほんわかした表紙ですが、中身は重症ガチ兄弟BLです。
本書を読む上で注意しなくてはならないのは、いわゆる「グルーミング」と呼ばれる性的虐待の手口を想起させる表現があることです。そういったことにトラウマがある方は、無理に読まない方がいいと思います。
兄のユキと弟のオミは、二人暮らし。ユキは交通事故の原因で記憶障害を患い、高校生なのに小学生のような知能と精神を持っており、そんな兄をユキが世話しつつ、無知につけこんで性的関係を持っている。有り体にいえばそういう話です。
見た目・精神ともに実年齢にそぐわぬ幼さの兄とは対照的に、逞しい体を持ちしっかり者のオミなのですが、兄の事を「にーに」と呼び、異常な執着心でもって束縛しています。
ストーリーと設定はグロテスクなのですが、絵柄がとても可愛くて清潔感があるのと、脇役達の倫理観がしっかりしているので安心感があり、スルスル読めてしまいました。
作中の台詞にもあるのですが、男同士の兄弟が裏で愛し合っていようが性行為をしていようが、子供が出来る訳でもないし、何ら問題がないと言われれば、反論し難いです。しかし、そういった後ろ暗い関係性に溺れる心理にはやっぱりなんと言うか不健康なところがあるように見えます。
しっかりしていつつも、年下らしい頑是なさで兄に迫るオミ。一方で、自分の欲が弟を正しい道から外し傷付ける事を畏れ、何が弟にとって最適なのかと葛藤し続けるユキ。
歪んでいるようでいて、互いにきょうだいを愛する気持ちは真っ直ぐであるということに心打たれました。
創作の世界にも現実同等の倫理道徳観を要求するのが当たり前の昨今ですが、想像の中では時に道を外れてもいいじゃない、と思う方におすすめです。
前情報無しで読んだら「えっ」ってなりました。えっ、ホラー? 逢魔が時って、そういう……?
タイトルの後半部分が「花屋で会いましょう」で、私はその部分にばかり注目してしまい、「逢魔が時の」の不穏さをスルーしてしまったんですね。よく見れば、表紙の赤いリボンも滴り落ちる血みたいでした。
ホラーBLですが、マジもんのホラーほどは怖くなかったです。一番怖かったのは、冒頭の蘇芳の初登場シーンです。こんな禍々しい登場のしかたをする攻め様っている!?(いなくはない。) てっきりこの人が怪奇現象かと思いました。
のっけからビビりましたが、中身はホラー系ヒューマンドラマといった感じで、BL部分以外のストーリーも面白かったです。
BL部分はというと、溺愛で甘々な感じ。両片想いからの相思相愛で、受けの遠野が蘇芳に甘え過ぎてはいけないかもと葛藤するけど、結局欲望に負けるところが、ほほえましくて良いです。
短編集です。なお『じじいの恋 命短し恋せよ老人』は表題作の続編でまるっと一冊じじいBLです。ちなみに私はうっかり『命短し』の方から読んでしまいました。
お金持ちな方のおじいさん・拓朗は、65年前にいじめられていたところを助けてもらって以来、小説家で独身な方のおじいさん・源太のことが大好き。
長期の空白期間を経て最近再会した二人。ところが熱烈にアプローチをしかける拓朗に、源太はつれない態度を崩さないのでした。
大体二人がベンチで語り合っているだけの会話劇ですが、じわじわくる面白さです。『命短し』の方から読んでしまったので思うのですが、まだエンジン温め中くらいの感じ。フルスロットルで爆笑させにくるのが『命短し』って感じでした。
「青春編」があるので、若かりし頃の二人をとっくりと拝めてよかったです。
じじいの恋以外の短編が3作品収録されています。私は3作品のなかでは『おとんとてっちゃん』が一番好きです。これはいいガチムチ受けひゃほ~い! という個人的趣味に合ってるのもありますが、シンプルにハートウォーミングでいい話だからです。
『ジョーク・スタート・ルームメイト』が良かったので作家買いしました。
超絶恥ずかしい秘密を知られたことにより関係がスタートするという、誰が何回煎じても美味な、BL漫画に希によくあるタイプの作品です。
ところが! なんとこの作品のカプ、BL漫画の登場人物なのにてんでBL漫画っぽいことをしません。だがそこがいい! !
会って、セックスして、お腹が空いたら一緒にごはんを食べに行って……社会人の恋愛すなぁ~。と、やたらリアリティーの高いお付き合い。なんだか、実在するカップルの日常をこっそり垣間見ているような背徳感を感じちゃったりして。ゲヘヘ。
セックスの最中になされる日常会話や、日常会話の中に挟まれるえっちぃ会話が萌えでした。
ほのぼのと平和な話なので、疲れた夜の寝る前に読み返したくなります。
タイトルの「悪い男」って攻めの諏訪だけじゃなくて受けの光成のことも指していやしませんか?
地の文が三人称文体なので、時々諏訪の心情も書かれることがあるものの、視点はもっぱら主人公・光成に寄っています。
そのため、読者から見た光成というのは「表」に見えるんですが実は「裏」なんですよね。
光成は初恋の人と歴代彼氏が揃いも揃ってクズ男ばかりだったため、無意識のうちに彼らにかなり毒されています。それで諏訪に対して気を遣いに遣った挙げ句一周回ってクズ男ムーブをしがち……それこそが光成の「表」の顔だ……ということが、さらりと描写されているけれど、光成本人は全く自覚していない、という点が非常に面白いなと思いました。
光成が歴代彼氏と諏訪を重ねては警戒しているのと同時に、諏訪もまた光成を諏訪自身の歴代恋人たち(所詮ヤリ目かよ)と重ねてうっすら警戒してるんですよね。
一見、ただの親切・単なる世話好き故のような諏訪の行動はいわゆる「試し行動」でもあるのです。こんな愛と優しさに溢れた包容力の高い「試し行動」なんて滅多にないだろうと思いますが。
そんな、過去に傷を持つ二人の攻防戦が楽しいお話でした。
ストーリーの終盤、全体から見て約1/5くらいがこってりとした濡れ場です。甘やかし系のセックスが癖の人におすすめです( *´艸`)
まず表紙に惹かれました。
うわめっちゃ麗人って感じ! ほぼほぼ『麗人』の作品読んだことのない私がいうのもなんですけど!
ストーリーが面白いので、黙々と読んでしまいました。いいですね、こういうストーリーに極振りしてるBLって。しかしきっちりエロ入れてるのがすごいなと。
初読ではぁ面白かったーと思って、時間を置いて2周目を読んで思ったのですが、面白いんですけど、超有能でちょっとミステリアスなコンシェルジュの白石さんの表の顔の出番が、ストーリー全体からすると案外少ないなと。
もっと見ていたい、コンシェルジュの白石さん。上下巻とか三巻完結とか、もっと長いスパンで楽しみたかったような気もします。一冊だけでけっこうボリュームがありますし、タイトに纏まっていて良いですけどね。でももっと見たいな、コンシェルジュの白石さん。
めちゃめちゃ実写ドラマ向きの話かと思います。ドラマ化されないかな~。
紙の本を買ったら分厚さに驚きました。余裕で自立する厚みです、すごい。
礼央(れお)と獅子丸(ししまる)という、名前がライオン同士の幼馴染み両想いBLです。ほのぼの青春BLかなと思ったらビターでした。
両想いなんだけれど、獅子丸が男同士であることを引け目に思っており、上手くいくはずの関係が上手くいかなくなってしまいます。
幼い頃に母親から言われた、男同士はダメだという言葉が、心に引っ掛かり続けている、獅子丸。
その母親の言葉は、獅子丸が礼央と結婚すると無邪気に言ったのと同じくらい、特に深い考えがあるでもなしに何気なく放たれたものだと思うのですが、まだ幼かった獅子丸には刺さり過ぎてしまうんですね。
ストーリーの本筋からは少しずれてしまうのですが、獅子丸と母親の関わりが、子供を持つ身としてはグサッときました。
親として我が子に望むのは元気に生きてくれることだけだったはずなのに、いつの間にか余計なことも願ってしまうもので、それが子供を苦しめてしまうことにもなると。
時々、基本に立ち返らなくては。生まれたてでふにゃふにゃな我が子抱きながら、死なないよう育てなきゃ! と強く思ったことを思い出さないとですね。
礼央周りに魅力的で興味深い脇役が多かったです。お母さんや友人のゆかりん、そして先生など。
とくに先生とその同性のパートナーさんについてはスピンオフを読んでみたいなと思いました。
私は心が真っ黒に汚れてしまったかなしい大人なので、この作品を初めて読んだ時は、めちゃめちゃスリルを感じびびり散らかしながら読みました。
大丈夫? 実は最後に地獄に落とされたりしない? と。
良い意味で、現実にはまさかこんなこと起きないだろうということが次々に起こるので……、こんな「まさか」が立て続けに起こると悪い方の「まさか」が特大級で起こりそうな気がしてしまうんですよね。たとえば待ち合わせとかしたら、攻めか受けのどっちかが車に轢かれてしまって音信不通になったりとかしそうな気がしてくるんです。我ながらなんってネガティブなんだと思うんですけど。
読後、疑ってゴメンっていう気持ちでいっぱいになりました。
いい話だった……。
エピソードをあらかた忘れた頃にまた読み返そうと思って、一年寝かしてからまた読みました。
いい話だった……。
汚れ切った大人のハートを浄化する癒しのパワーがあります。人生にうんざりした時に読むと良いかもしれません。
シリーズ最新刊の試し読みを読んだら面白そうだったので、このシリーズ第1作目から購入しました。
内容は、沓名さんとリョウの出逢い編って感じですね。行き倒れていたリョウに沓名さんが一目惚れしてお持ち帰りしてしまいます。そして沓名さんはリョウに自分の帽子屋を手伝わせようとするのですが……。
ストーリーのかなりの割合を沓名さんとリョウのそれぞれの過去が占めています。ごく普通の家庭に育った沓名さんに対して、リョウの過去はなにやらきな臭い感じ。マフィアに通じ、しかも使いっ走りの才能に溢れているらしいリョウの運命やいかに!
絵柄が可愛くて好きです。が、最新刊の絵柄とはだいぶ違っているので、この絵が見られるのは初期だけなんですかね。新装版のために描かれたらしいおまけページは、誰!? っていうほど絵柄が変わっていました。それはそれで好きですけれども。
続編は沓名さんニューヨーク進出、そしてリョウの過去に関わる何かがあるっぽいので、楽しみです。