お互い俳優同士で受けが10才年上。攻めが子供の頃に出会って、当時優しくしてくれていた受けのことをずっと忘れられなかったようです。受けはゲイであることを週刊誌でスクープされて以降、5年間自主休業状態になっていて、売れ始めた攻めがBLドラマの共演者として受けを指名したことで俳優として復帰することになりました。
好意を前面に押し出してくる攻めに、徐々に受けがほだされていくのですが、旅館でいい感じになった際に受けが怖がって、攻めは「思ってたのと違うな」と言い残して出て行き、それ以来、受けのことを避けるようになります。強引にいきすぎたことを反省して、というBLでよくある展開でした。
5年間休むくらいトラウマになっているのに、路上や車中でキスしたりしていて、そういう点でトラウマへの共感も薄かったです。
モヤモヤする点はなく、読後感はよいです。
展開がありきたりだったのと、攻めの髪が長く中性的な見た目で自分の好みから外れていたので、萌えは少なめでした。
人たらしのイケメン×天然記念物級の純粋無垢な美少年。
趣味がぬか漬けで自分の気持ちを言葉にすることが苦手な美少年、ヌカチが選択授業の習字で墨を飛ばされてシャツを汚され、そのときに教室から連れ出してシャツを洗ってくれたのが、他クラスにもイケメンとして名を馳せる二宮君でした(墨を飛ばしたのは二宮君ではない)。
二宮君が天然記念物級に純朴なヌカチに興味を持ち、友達として交流を重ねていく中で、ヌカチも徐々に自分の気持ちを言葉にすることができ、二宮君に惹かれていきます。
児童文学を読んでいるような感じで初恋を自覚する過程がとても初々しく、瑞々しく描かれていて、ヌカチのクラスメイトたちの、悪気はないけれど他人の気持ちを慮ることに欠けた行為で、意図せずして人を傷つけてしまうエピソードなども、考えさせられるものがあり、小中学校の図書館に置いて欲しい一冊だなーと思いながら読み進めました。
そう思っていただけに、後半部分がとても残念でした。
思いを伝え合った二人は数カ月ののちに性行為まであっさり済ませてしまうのですよね。実際に初体験の描写があるわけではなく、回想する形で、初体験を済ませたことが書いてありました。
初恋を自覚するのにはあれほど気持ちの変遷や成長があったのに、初体験については事後報告の形で綴られていたことで、肩透かしを食らった気分になりました。
高校生で男同士で最後までしてしまうのって、そんなにハードルが低いものなんでしょうか。もう少し葛藤とか、徐々に段階を踏んでとか、タチネコどちらがするとか、そういった紆余曲折があったほうが、リアリティを感じます。
BLはファンタジーとはよく言われますが、前半部分で同性同士や初恋のリアルを感じてキュンとしたり切なくなっていただけに、後半でその部分が薄くなったように感じて、その点だけが残念でした。
人たらしの所轄刑事×準キャリアの生活安全課刑事。
サイバーセキュリティ課にいたこともあり仕事のできる優秀な美人刑事が、人のいいお節介刑事にやたらと絡んできて、売り言葉に買い言葉的な感じでいきなりキスをしてきます。最初は嫌がらせだと思っていたのが、要請先で酒瓶で殴られようとした際に身を挺してかばわれて、好意に気づく、というストーリーでした。
一巻で綺麗にまとまっていてさくっと読むにはちょうどよい作品でしたが、てっきり誘い受けだろうと思って読んでいたので、攻めだと思っていた人たらし刑事のほうが受けで開発されてしまったところだけがちょっと好みに合わなかったです。美人攻め好きさんには合うかと思います。